透明色の raison d'etre

いしころ

告白(脚本)

透明色の raison d'etre

いしころ

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〇倉庫の裏
  2人の間を風が吹き抜けた。
  銃口を向けられているというのに、相手の少女は顔色ひとつ変えない。
  その冷めたような落ち着き振りに、明日香は疑惑が完全に確信へと転がった。
浅葱明日香(無関係なら、もっと驚いたり慌てたりするはず・・・ それをしないこの子は、絶対あの日現場に居たんだ・・・!!)
浅葱明日香「答えなさい!!」
蘇芳灯「・・・1人で盛り上がっているところ失礼ですが、なんの話かさっぱり。 人違いではありませんか?」
  慌てる様子も詫びれる様子も一切なく、少女は淡々と言葉を吐く。
浅葱明日香「しらを切る気? あなたが背負ってるその細長い筒、結構長細いよね? 移動式小型スクリーンのケース、といったところ?」
浅葱明日香「その手に持ってるものを鞘にしまっても入りそうな、丁度良いケースだよね」
蘇芳灯「別に特注品でもないし、誰が持ってても不思議はないと思いますが」
浅葱明日香「そうかな。 そのスクリーン自体は結構高額だよね?」
  弁明する気があるとは思えないほど淡白な相手の態度に、明日香は眉間に力が入るのを感じた。
浅葱明日香「新大特区ならまだしも、追憶街の中でも寂れてる方のあの場所やこんな所でそんな高価なもの・・・」
浅葱明日香「二度も、同じ背丈同じフードの女の子それを持ってるのを見かけるなんてさ」
  表情一つ動かさず逃げる素振りさえ見せないのは、銃口を向けて詰問する明日香のことを脅威であると思っていないからか。
  めんどくさそうにため息を一つ吐くと、少女は気怠げに口を開いた。
蘇芳灯「さぁ、本当に身に覚えがありませんね・・・ 絶対にぶつかったのが私って言い切れますか? 思い込みって結構怖いですよ」
浅葱明日香「っ!!」
  明日香は内心で小さくガッツポーズをした。
  こちらを一切の脅威ではないと舐めてかかったからか、相手が言葉を間違えた。
浅葱明日香「私、いつ”ぶつかった”って言った?」
  初めて、相手の表情が目に見える形で崩れた。
  語るに落ちたとはまさにこのことである。
  大人びて見えるが相手はやはり明日香より歳下なのだろう、詰めが甘い。
蘇芳灯「──っ!! 私は何もしていないし、何も知らない!!」
蘇芳灯「私が立ち去った時にはまだ、『貴女』は生きていましたっ!! 『貴女』が死んだのはその後です!!」
浅葱明日香「それを信じろって言うの!? じゃああそこに何しに行ってたの!? 何のためにその刀を持ってたの!?」
蘇芳灯「それはっ・・・!!」
  相手が何かを隠していることは確実だった。
  言えないことがあるのだろう、少女は何度も口を開きかけては音を紡げずに閉口する。
浅葱明日香「答えなさい」
蘇芳灯「っ・・・!! しかた、ないですねっ・・・!!」
  小さく呟くと、少女は真っ直ぐと明日香を見据えると、ゆっくりその手に持った刀を構えた。
  ザリッという音を聴いて初めて、明日香は自分が無意識に一歩後ずさっていることに気がつく。
浅葱明日香(っ、急に!?)
浅葱明日香(詰めが甘いとは思ったけど・・・!! やばい、殺られる──!?)
  まだ相手は一歩も動いていない。
  しかし明日香は直感的に感じていた。
  一発目の銃弾を外したら、絶対負ける、と。
  そう思わせるだけの気迫が、少女にはあった。
  詰めが甘いのも明日香を脅威と見做さなかったのも全部、最悪斬り捨てればいいと思っていたからだろう。
浅葱明日香(覚悟を・・・決めろっ!!)
  明日香は一息に引き金を引いた。
  轟く破裂音。
  閃く刀と突っ込んでくる少女。
  全てがスローモーションに見えた。
???「はいそこまでーっ!!」
浅葱明日香「っ!?」
  突然、視界が岩の塊に遮られた。
赤銅圭子「はーい、おつかれおつかれぃ」
赤銅圭子「いやー、数日前までは人なんて殺せない⭐︎みたいな感じだったあっすーも、躊躇いなく人に発砲できるようになったのねぇ♪」
赤銅圭子「ダメだぞ、フツーの感覚どっかに落としてきちゃあ」
  無我夢中だったとは言え、確かに引金を引くその一瞬、明日香は自分の感覚とは違う何かに包まれた心地がしていた。
  明日香の中の普通ではない感覚が、少しずつ育ってきている。
  それがドッペルの記憶なのか明日香の本性なのか、明日香には分からないが。
浅葱明日香「圭子・・・お疲れってどういうこと? あの子とグルなの? ・・・雪乃は!?」
赤銅圭子「どうも何も、あっすーを助けてあげたんだよ?質問が多いなぁ。 そもそも、あんな鉛玉ひとつじゃあ、あかりんは倒せないぜぇ」
浅葱明日香「あかりん・・・? やっぱりグルなのね!? じゃあ、あの日のこともっ!!」
赤銅圭子「うぉーうぉー落ち着きなって。 今あっちはあっちで話し中だと思うからさ、ちょっと待ってちょ」
浅葱明日香(あの日現場にいたあの子と、雪乃や圭子は繋がってるってこと・・・!?)
浅葱明日香(雪乃、何を隠してる──!?)
赤銅圭子「あ、混乱して怒りたくなる気持ちはめっちゃ分かるけどさ?」
赤銅圭子「その手に持ってるやつ、雪乃に向けないでね?」
赤銅圭子「加減とか忘れちゃいそうだからさぁ」
浅葱明日香「・・・・・・」
赤銅圭子「ほらほら、友好的に、友好的にぃ。 一旦それ没収ね。 話し合いの場でこういうの持つとさ、ロクなことにならないんだよホント」
  胃が締め付けられるような緊張感。
  敵に包囲されている可能性を急に突きつけられて、頭の整理がつかない。
  今もヘラヘラしているが、その練能力は本物のようだ。
  おそらく、動きひとつで先程の岩の塊を作り出して明日香をバラバラに吹き飛ばすくらい造作もないだろう。
  今丸腰になるのは避けたかったが相手が悪い。
  ヒラヒラと手を差し出す圭子に拳銃を渡す以外の選択肢が、明日香にはなかった。
浅葱明日香(今は・・・耐えるしか無さそうね・・・)
  心底己の非力さを呪った。

〇レトロ喫茶
  あれからしばらくして、岩壁の向こうから雪乃に連れられてあの少女が出てきた。
  雪乃に何をどう諭されたのか、持っていた刀はもう背中の筒に隠されており、先程見せた気迫もすっかり消えていた。
  とりあえずノーチラスに行ってから話をすると言っていた雪乃は、バツが悪そうに視線を合わせようとはしなかった。
  ノーチラスに来るまでの車内は最悪だった。
  運転席の圭子は機嫌良く歌を歌い、助手席には居心地の悪そうな雪乃。
  明日香とあの少女はあろうことか後部座席で隣合わせだ。
  到着した頃には、明日香は精神的にだいぶ疲弊していた。
  そして今、その少女と向かい合って座らされている。
  目の前には藤の淹れたコーヒー。
  一体、なんの時間なのか。
  雪乃は奥で、圭子や藤と何かを話しているようだ。
蘇芳灯「・・・・・・」
浅葱明日香「・・・・・・」
蘇芳灯「・・・どうも、先程は失礼しました」
  先に口を開いたのは相手だった。
  失礼しましたと口では言っているが、全く感情が伴っていないのがよく分かる。
  その歪に大人びたような不自然に落ち着いた態度とは裏腹に、声色に不満が滲み出している。
蘇芳灯「蘇芳灯、と申します。 ・・・雪乃さんの13班の、班員です」
  この遊撃部隊というのが人手不足で構成員には規定がないというのはよく分かってきていたが、まさか現役の女子高生までいるとは。
  自分より歳下であろうことはなんとなく予想していたが、改めて言われるとなんとも言えない驚きを感じた。
浅葱明日香(この子も、訳あり・・・?)
浅葱明日香「・・・浅葱、明日香。 あなたが殺したあの孤児院の人たちはみんな私の家族だったの」
浅葱明日香「今この手に銃があったら、その頭撃ち抜いてやりたいくらい、はらわたが煮え繰り返ってるわ」
蘇芳灯「だから、それは誤解です」
蘇芳灯「先程も言いましたが、私が去るまでの間『貴女』は生きていました。 私は誰1人として殺していません」
蘇芳灯「私の話聞いていましたか?」
浅葱明日香「だから、それじゃあ何の為にあそこにいたのかって聞いてるの。 あと、その『貴女』っていうのやめてくれる?」
浅葱明日香「生憎、私まだ死んでないの」
蘇芳灯「・・・っ、失礼しました」
浅葱明日香「謝ってほしいわけじゃない。 質問に答えて」
赤銅圭子「おうおう、仲良くお喋りできてるかい?」
  場に合わない明るい声のトーンには慣れてきたが、それでも今は神経を逆撫でされてたまらない。
  銃口を突きつけてぶっ放してやりたい衝動に駆られ、明日香は自分の中に芽生え始めている攻撃性に驚いた。
蘇芳灯「圭子さん!! この人に説明してください。 私だってよくわからないんですよこの状況!!」
  灯が切羽詰まった声を出す。
  もしかして本当にこの子は何も知らないのかと明日香は内心で少し首をひねった。
赤銅圭子「いや〜生憎ねぇ あたしもよく分からんのだわ、ハハハ!!」
赤銅圭子「っつーことで、雪乃。 説明してあげなよこの子たちに。 かわいそうに、喧嘩してるよん?」
月白雪乃「・・・・・・」
「雪乃(さん)!!」
  短い沈黙の後、雪乃はようやくその重い口を開いた。
月白雪乃「何から、話せばいいか・・・ ごめんなさい、私、2人に色々と黙ってたことがあって・・・」
浅葱明日香「は?」
月白雪乃「まず明日香ちゃん、灯ちゃんは、本当に何も知らないの。 私の命令で、あのドッペルゲンガーを尾行してもらってただけで・・・」
蘇芳灯「雪乃さん、あの人が異形に狙われてる可能性があるから家までこっそり警護しろって言ってたの、嘘だったんですか?」
月白雪乃「・・・ドッペルゲンガーを、探してたの」
月白雪乃「そんなものがいるかの確証も無いけど、ずっと・・・探してた」
月白雪乃「それらしい噂を聞いては調査して、それで 空振っての繰り返し・・・」
蘇芳灯「たまにあった尾行やら護衛やらの仕事は、実はそれ関連だったってことですか」
月白雪乃「そう、です。 騙してて、ごめんなさい・・・」
蘇芳灯「どうして本当のこと教えてくれなかったんですか? 不確定な仕事だったら私がやらないとでも?」
月白雪乃「それは・・・」
赤銅圭子「大方、本当にいるのかどうかも怪しいドッペルゲンガー探しを班の仕事の一部にするのに躊躇ったんでしょ。 個人的な調査だし」
赤銅圭子「だけど人手は欲しいから、嘘をついてちょびっと手伝ってもらってた・・・ってとこかね」
赤銅圭子「まー、雪乃は嘘が下手だし? あかりんやあっすーが信頼するにつれて良心チクチクでしんどくなるだろうなとは思ってたよ」
蘇芳灯「圭子さんも知ってたんですか?」
赤銅圭子「いや全然。 雪乃がドッペルゲンガーに因縁あること自体は知ってて、一人調査してるのも知ってたけどね」
赤銅圭子「あかりん達にどれくらい何を隠して具体的に何をさせてるかとかはぜーんぜん。 あ、何か隠し事してるなぁくらいの感覚?」
蘇芳灯「・・・・・・」
赤銅圭子「雪乃の性格上、嘘をつき通すことも誤魔化すことも出来ずに、いずれは白状するハメになるんだろうなって思いながら眺めてた⭐︎」
浅葱明日香「どうして、それを諌めたりしなかったの。 私や灯がただ良いように利用されてるのをただ眺めていたの!?」
  全てをおおよそ予想していながらヘラヘラと鑑賞をされていたと思うと、利用されていたことよりも腹が立った。
  雪乃は罪悪感を感じているようだが、圭子は自分は関係ないとでも言いたげな態度だ。
  よほど、タチが悪い。
赤銅圭子「だーってぇ」
赤銅圭子「班長自ら間違いに気付いて向き合わないと、この班はいよいよダメになるじゃん?」
赤銅圭子「雪乃も班長とは言えまだまだ未熟。 成長のためにも、”超天才”が口を挟むのはちょーっと違うかな?って思って〜」
蘇芳灯「圭子さん・・・ それ、ただ面倒臭かっただけでは?」
赤銅圭子「あっは、バレてるぅ」
赤銅圭子「でもほらほらぁ〜 幸い誰も怪我してないし? 決定的な事態にはまだ陥ってないと思わなーい?」
  なんだか上手く言いくるめられたような気がしないでも無かったが、確かに圭子の言うことには一理ある、と明日香は思った。
  事件の後、どんな理由であれ保護してもらい新しい生活基盤を貰えたことはありがたかった。
  ぐちゃぐちゃの感情にそっと寄り添ってくれた優しさは本物だったし、それに救われたことも事実だ。
  班への加入を打診されたときにも「力を貸して欲しい」のようなことも言っていたから、完全に嘘をつかれていたわけでもない。
浅葱明日香「・・・雪乃が知ってること全部話して。 それでチャラにしましょう」
赤銅圭子「おっ、さすがあっすー、話が分かる!」
  圭子に誘導された感が拭えず少し腹が立ったので、一旦圭子のことは無視することにした。
蘇芳灯「私は納得いきません。 私は何のために13班に加入したんですか? ただの都合の良い駒なら、私もう・・・!!」
月白雪乃「違う!!」
月白雪乃「それは違う、灯ちゃん・・・ その、そんな風に思わせちゃって、本当にごめんなさい。 でも、都合の良い駒とかそんなことは!!」
蘇芳灯「・・・ごめんなさい。 雪乃さんがそういう風に人を見ることなんてないって、分かってますので・・・」
蘇芳灯「ただ・・・ ただ、もう少しだけ信用して欲しかったです」
月白雪乃「うん・・・ 私のズルさと弱さだね・・・ ごめんなさい」
蘇芳灯「思い返すとそういう感じの任務の時って、 決まって雪乃さん、自分の異形を私に付けてくれていましたね」
月白雪乃「それは、その・・・ せめてもの戦力というか御守りみたいな感じで・・・」
蘇芳灯「・・・ありがとうございます。 もう、わかりました。 これ以上責める気はありません」
蘇芳灯「浅葱さんと同じです。 今までの調べで分かったことなどを話してくれたらそれでチャラにします」
蘇芳灯「私も、雪乃さんには多大なる恩義がありますし」
月白雪乃「2人とも・・・ 本当にごめんなさい。 許してくれて・・・ありがとう」
浅葱明日香「それで? 私のドッペルゲンガーの存在を前もって知ってたみたいだけど、情報源は?」
月白雪乃「『烏羽』っていう、この辺の荒くれ者を束ねてる割と大きい組織があってね。 そこからその日に聞いたんだ」
月白雪乃「聞いたのはその辺でよく聞く都市伝説みたいな噂程度だったんだけどね」
月白雪乃「その孤児院自体は知ってたし、ダメ元で一応灯ちゃんに明日香ちゃんを尾行して様子を見てもらったんだけど・・・」
蘇芳灯「私が尾けていた相手こそがドッペルゲンガーだったんですね・・・ 不覚です、すみません」
浅葱明日香「どこから尾け始めたの?」
蘇芳灯「追憶街の南の方・・・新大特区に少し近い商店街辺りです」
浅葱明日香「!? そっちの方は、私が滅多に行かない場所だ」
浅葱明日香「そいつがそこから孤児院に行って・・・」
蘇芳灯「孤児院では子供たちと普通に遊んでいましたよ。なので、まさかアレがドッペルゲンガーだなんて・・・」
蘇芳灯「そもそも私は護衛任務と聞かされていたので、あの人物が本物か偽物かなんて視点は持ち合わせていませんでした・・・」
蘇芳灯「それで、しばらく見てても様子が変わらないので、私は護衛任務を完了したと判断してそのまま自宅へ向かいました」
浅葱明日香「それが、私と道でぶつかった時だね」
蘇芳灯「あれは本当にすみません! 夕飯の当番の日だったので少し焦ってて・・・!!」
浅葱明日香「それは、もういいよ こっちも、言い掛かりつけて、ごめん」
浅葱明日香「それよりも、あなたが立ち去ってから私が到着するまでの間に・・・ 何があったの・・・?」
  灯とぶつかったあと、着替えをするために孤児院近くに借りていた安アパートに一旦帰り、それから孤児院へ向かった。
  その間、長く見積もっても1時間が精々だろう。
月白雪乃「私はその間に、烏羽から聞いた他の情報を精査するために新大特区の方に居て・・・ そしたら本部から事件の一報が入ったの」
月白雪乃「ついさっき聞いた孤児院の名前だったから驚いたよ。 それで、異形使ったり探索したりしてたら、明日香ちゃん、あなたと出会った」
月白雪乃「ずっと探していたドッペルゲンガーの手掛かり、絶対失いたくなくて、私の班に入ってってお願いした・・・」
月白雪乃「でも、接してるうちに、ただ利用しようとしてるだけの自分が嫌になってきて・・・」
月白雪乃「灯ちゃんと戦闘になってるの見た時はもうどうしようかと・・・!!」
浅葱明日香「もういいよ、雪乃。 わかったから。 あなたが優しくしてくれたのは本当だから」
蘇芳灯「私も、修学旅行から帰ってきて早々に酷い言いがかりと共に銃なんか向けられて驚きましたが、もう大丈夫ですよ」
月白雪乃「・・・ごめんね、こんな班長で」
浅葱明日香「これからは隠し事無しでよろしくね、雪乃」
  それぞれの視点の話を合わせていくと少しずつだがあの日何が起きたのかが分かってきたのは大きい。
蘇芳灯「・・・烏羽にもう一度詳しく話を聞きにいくのはどうでしょう?」
月白雪乃「それならさっき、先方に連絡したところ。 明日香ちゃんのことも改めて紹介したいし、明日行こうと思うけどどうかな?」
蘇芳灯「明日は自由登校なので問題ありません」
浅葱明日香「私はご存じの通り、毎日暇よ」
月白雪乃「じゃあ決まりだね。 明日、烏羽邸へ行きましょう」
  少しずつ、事件の全容が見えてきた。
  烏羽邸へ行ったら、全てがわかるかも知れない。
  そんな高揚感が、鼓動を少し早くする。
浅葱明日香(真実が分かったら・・・!!)
浅葱明日香(・・・分かったら・・・?)
浅葱明日香(分かったらその後、どうするんだろう・・・ どう、したいんだろう・・・?)
  ふっと浮かんだ素朴な疑問は、なかなか解けることなく明日香の心の片隅に小さくこびりついた。

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