行き詰まる3人の物語

ヤマ

エピソード8(脚本)

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ヤマ

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〇繁華街の大通り
  暗い夜の街並みに、大振りのの雨が注がれている。

〇道玄坂
  その勢いはどんどん増しているようだった。

〇寂れた雑居ビル
  こうなると、表に出る人影は普段よりも随分と減ってしまう。

〇高架下
  この高架下の道に至っては、人の気配すら感じられなかった。
藤本真(ふじもと まこと)(多分、ここだったよね)
藤本真(ふじもと まこと)(覚悟はしてきたつもりだけど、 いざとなるとやっぱり怖いな)
藤本真(ふじもと まこと)(ジェットコースターに乗ってる時の、 高いところから落ちる直前の気分みたい。 あのカタカタしてる時みたいな・・・)
藤本真(ふじもと まこと)「・・・・・・・・・・・・」
藤本真(ふじもと まこと)(仮に今、逃げたところで どうせ運命は必ず迫ってくるだろうし)
藤本真(ふじもと まこと)「・・・・・・・・・・・・」
藤本真(ふじもと まこと)(仕方ない。諦めつけて行くか)

〇高架下
  少しばかり気合を入れるように深呼吸をしてから、藤本はゆっくりと高架下のトンネルへ足を踏み入れた。
藤本真(ふじもと まこと)(前から来るか背後から来るか・・・)
  神経を尖らせながら歩いていると、背後から不穏な足音が聞こえた。

〇黒背景
  思わず振り返ると、黒い人影がもうすぐそこにまで迫っていた。
藤本真(ふじもと まこと)「あ・・・」
藤本真(ふじもと まこと)(背後からだった)
  次の瞬間には、藤本の腹部に包丁が突き刺さっていた。
  その場で膝をつき、うつ伏せに倒れる。
  何とか顔だけを動かして見上げると、
  仮面を付けた黒いフードの男が
  血まみれの包丁を振り上げていた。
  藤本真
  (ああ、やっぱり夢で見た通りの光景だ)
  振り下ろされる刃を前にして、藤本は顔を隠すようにして地面に伏せた。

〇黒
  藤本真
  (こいつは相手が苦しむ顔を見たがっている)
  藤本真
  (このまま、良いようにやられるのは何か悔しい)
  藤本真
  (ならばせめて、苦しがる顔は見せないようにして静かに死んでやる)
  藤本真
  (悲鳴も上げない。助けも求めない。
   この男にとって一番面白くない死に方を見せてやる)

〇黒
  固く目を瞑り覚悟を決めて、藤本は刃が振り下ろされるその時を待った。
  藤本真
  「・・・・・・・・・・・・」
  ???
  「あがっ・・・!」
  藤本真
  「・・・・・・?」
  刃は振り下ろされなかった。
  代わりに、男の呻き声が耳に響いた。
  続いて響いたのは金属音。
  彼が持っていた包丁が地面に落ちたものと思われた。
  不思議に思い藤本は顔を上げる。
藤本真(ふじもと まこと)「えっ・・・!?」

〇黒背景
  そこには、蹲ってくるしそうに肩で息をする黒いフードの男の姿があった。
  更にその背後に立つのは、バイト仲間の出居実波だった。
藤本真(ふじもと まこと)「出居さん、何で・・・?」
  出居実波はその手に包丁を握っていた。
  血まみれの包丁だった。
出居実波(いでい みなみ)「こいつは悪い人」
フードを被った男「ぎゃっ・・・!」
出居実波(いでい みなみ)「悪い人には罰が与えられるべき」
フードを被った男「うああっ・・・!」
  出居実波は男に馬乗りになって包丁を突き立てた。
  二度、三度・・・・・・
  うっすらう微笑んでさえいる彼女の目には、狂気の色が滲んでいた。
藤本真(ふじもと まこと)(これはまずい、止めないと・・・!)
  藤本は慌てて立ち上がろうとするが、
  自身もまた腹部を刺されているため思うように動けない。
出居実波(いでい みなみ)「ねえ、痛いでしょ?苦しいでしょ? ・・・・・・その顔、見せてよ」
  馬乗りの態勢体勢のまま、
  出居実波は男の仮面に手を掛ける。
フードを被った男「あ・・・が・・・やめっ・・・・・・!」
  抵抗する男の肩に包丁を突き立てて、
  出居実波はその仮面を剥ぎ取った。
飯野恵一(いいの けいいち)「クソッ・・・!」
藤本真(ふじもと まこと)「え?飯野さん!?」
藤本真(ふじもと まこと)「飯野さんがあの滅多刺しの事件の犯人?」
飯野恵一(いいの けいいち)「くっ・・・!」
出居実波(いでい みなみ)「ああ、良い顔。 思い出すなあ、あの時のことを」
出居実波(いでい みなみ)「ずっと忘れるようにして生きてきたのに、 あなたのお陰で思い出しちゃった!」
出居実波(いでい みなみ)「すごく良い気分だった、あの時のことを!」
  笑いながら叫び、出居実波は包丁を高々と振り上げた。
  その時・・・

〇黒背景
青井聖樹(あおい せいじゅ)「やめなさい!!!」
  突如として現れた青井が出居実波を羽交い締めにして、その動きを封じた。
  同じく駆けつけてきた原が、出居の手から包丁を奪う。
増田朔(ますだ はじめ)「おい、大丈夫か・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「・・・て、君、刺されてるじゃないか!」
増田朔(ますだ はじめ)「それに、あいつは飯野恵一、 それから出居大輔の娘・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「一体何がどうなってるんだ!?」
藤本真(ふじもと まこと)「・・・・・・・・・・・・」
藤本真(ふじもと まこと)「・・・・・・」
増田朔(ますだ はじめ)「あ、藤本さん?」
青井聖樹(あおい せいじゅ)「原、すぐに救急車を呼んで!負傷者二人!!」
原 玄(はら ひかる)「は、はい!」
  青井に取り押さえられた出居実波は、
  それ以上暴れるような真似はせず、大人しく捕まった。
  飯野に刺された藤本は、出血の影響で意識を失った。
  出居実波に刺された飯野は、
  救急車が到着するまでずっと
  「痛い」「苦しい」「助けて」
  などと言って情けない姿を晒し続けた

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