ストレンジマン

真中 真(まなか まこと)

ストレンジマン(脚本)

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〇実験ルーム
  とある研究所
ブランコ博士「ついに・・・!」
ブランコ博士「ついに、完成したぞ!!」
ブランコ博士「『ストレンジマン』シリーズの最高傑作!!」
ブランコ博士「名は『シンザ』!!」
ブランコ博士「灰色の鎧が、お前の名に相応しい!!」
ブランコ博士「『ヴェルメリオ』は、自我が強すぎて、わしの手に余るからな」
ブランコ博士「お前なら、わしの手足となって働いてくれるじゃろう!」
「オイオイ、誰が手に余るって?」
ブランコ博士「お前は・・・!?」
ブランコ博士「ヴェルメリオ!!」
ヴェルメリオ「俺は、悲しいぜ・・・」
ヴェルメリオ「生みの親に見捨てられるなんてなぁ!!」
ブランコ博士「フン!心にもないことを!」
ブランコ博士「お前は、わしを親だとは思っておらんじゃろう!」
ヴェルメリオ「そんなことはないさ。子の心親知らずってな」
ブランコ博士「フン、親の心子知らずじゃ!」
ブランコ博士「一体、何をしに来た!?」
ヴェルメリオ「何をって、そりゃあもちろん・・・」
ブランコ博士「ギャア!!」
ヴェルメリオ「あんたを殺しにだよ!!」
ブランコ博士「くっ・・・」
ブランコ博士「ヴェル・・・メリオ・・・」
ヴェルメリオ「・・・」
ヴェルメリオ「・・・俺をこんな姿にしたことを、あの世で後悔するんだな」
ヴェルメリオ「・・・フン」
ヴェルメリオ「『ストレンジマン』シリーズの最高傑作・・・か」
シンザ「・・・」
ヴェルメリオ「お前も、とんだ災難だな」
ヴェルメリオ「こんな奇妙な怪人として生み出されて」
ヴェルメリオ「じゃあな。俺は、もう行くぜ」
「お前は、そのまま眠っていた方が幸せかもな・・・」
シンザ「・・・」

〇実験ルーム
  ──五年後
  ブランコ博士の研究所
「えっと・・・」
「電源は・・・」
「あっ、これだわ!」

〇実験ルーム
ララ「ここが、おじいちゃんの研究所か・・・」
ララ「いかにも、あの人の秘密基地って感じね」
ララ「さて・・・」
ララ「目的の『ストレンジマン』は・・・」
ララ「あった!これだわ!!」
ララ「思ったより、かっこいいじゃない!」
ララ「怪人って聞いていたから、もっと気持ち悪い姿を想像していたわ」
ララ「ちゃんと動くのかしら?」
ララ「えーと、マニュアルは・・・」
ララ「これだわ!」
ララ「ふむふむ・・・」
ララ「個体名は『シンザ』っていうのね」
ララ「起動方法は・・・」
ララ「「目覚めよ、『シンザ』」・・・」
ララ「これだけ?」
シンザ「『シンザ、起動中──』」
ララ「おお!動いた!」
シンザ「『初期設定中──』」
シンザ「『マスターの声紋登録完了──』」
シンザ「『マスターの容姿登録完了──』」
シンザ「おはようございます。マスター」
ララ「おはよう、シンザ」
ララ「私のことは、『ララ』と呼んで!」
シンザ「かしこまりました、ララ様」
ララ「かしこまらなくていいわよ」
シンザ「分かりました、ララさん」
ララ「さすが、おじいちゃんが作ったAI」
ララ「自然言語処理も、完璧だわ!」
シンザ「ありがとうございます」
ララ「あなたを褒めたわけじゃないけどね!」
ララ「さてと、シンザ」
ララ「あなたに、お願いがあるの」
シンザ「何ですか?」
ララ「詳しい話をする前に、あなたに、この世界のことを認識してもらう必要があるわ」
ララ「まずは、研究所の外に出ましょう!」

〇荒廃したセンター街
  ブランコ博士の研究所前
「だ・・・誰か、助けておくれー!!」
ララ「何かしら!?行ってみましょう!!」

〇荒廃したセンター街
おばあちゃん「誰か、助けておくれ!!」
悪者A「オイ、バァさん!!」
悪者A「早く金目のものを出せよ!!」
悪者B「助けを呼んだって、誰も来ねぇぜ!?」
「待ちなさい!!」
「誰だ!?」
ララ「そのおばあちゃんを、放しなさい!!」
悪者A「何だ、テメェは!?」
悪者B「放さなかったら、どうするっていうんだ?」
ララ「放さなかったら、あんたたちを!」
ララ「コテンパンにやっつけるわよ!!」
ララ「こいつがね!!」
シンザ「私ですか?」
ララ「そうよ!!」
ララ「行きなさい、シンザ!!」
シンザ「分かりました、ララさん」
悪者A「何だコイツ!?奇妙な格好しやがって!!」
悪者B「俺たちを、どうするんだって!?」
シンザ「あなたたちを、コテンパンにします」
ララ「ちょっと、シンザ・・・!」
ララ「やりすぎじゃない・・・!?」
ララ「それくらいで・・・!!」
ララ「ストーーーップ!!」
シンザ「どうしました、ララさん?」
シンザ「命令の実行を取り消しますか?」
ララ「取り消す!取り消す!」
ララ「もう、十分コテンパンにしたわ!」
ララ「これ以上やったら、死んじゃう・・・!!」
シンザ「殺しては、ダメなのですか?」
ララ「いや、ダメでしょ!!」
ララ「おじいちゃんは、シンザにどんな学習させてるのよ!」
ララ「『ロボット三原則』は、どうした!?」
シンザ「私は、ロボットではありません」
シンザ「怪人です」
ララ「怪人でも、ダメなものはダメ!」
ララ「人は殺さないで!!」
シンザ「分かりました。命令に従います」
ララ「これは、命令ではなく倫理観の問題なんだけど・・・」
ララ「シンザには、まだ理解できないか・・・」

〇荒廃したセンター街
おばあちゃん「ありがとう、あんたたち・・・」
おばあちゃん「おかげで、助かったよ」
ララ「どういたしまして!」
おばあちゃん「あんたも、ありがとうね!」
シンザ「私ですか?」
おばあちゃん「ええ、そうよ」
おばあちゃん「まるで、昔見たヒーローみたいだったわよ!」
シンザ「ヒーロー・・・」
おばあちゃん「本当にありがとうね!!」
ララ「気をつけて帰ってね!」
シンザ「ララさん」
ララ「なぁに?シンザ」
シンザ「あの方が言っていた、『ヒーロー』とは何でしょう?」
ララ「おじいちゃんは、ヒーローに関するデータは、インプットしていないのね・・・」
ララ「ヒーローっていうのは、そうねぇ・・・」
ララ「困っている人を助ける人のことよ!」
シンザ「困っている人を助ける人・・・」
ララ「昔はね、この世界にもヒーローがたくさんいたわ」
ララ「だけど、みんな怪人たちにやられて」
ララ「今は、ほとんどいなくなった」
シンザ「ララさん」
ララ「なぁに?」
シンザ「私は・・・ヒーローでしょうか?」
ララ「・・・」
ララ「そうね、見た目は怪人だけど・・・」
ララ「あのおばあちゃんにとって、あなたは、間違いなくヒーローだったわ!」
シンザ「そうですか」
シンザ「私は、ヒーロー・・・」

〇荒廃したセンター街
ララ「さて、そろそろ私のお願いについて話しましょうか」
シンザ「はい」
ララ「その前に──」
ララ「あなたには、この世界がどう見える?」
シンザ「荒廃しているように見えます」
ララ「そうね。建物だけではなく」
ララ「人の心も荒廃しているわ・・・」
ララ「五年前までは、こんな世界じゃなかった」
ララ「街は綺麗で」
ララ「人々に笑顔もあふれていた・・・」
シンザ「五年前に、何があったのですか?」
ララ「ある怪人が、世界をメチャクチャにしたの」
ララ「街を破壊し・・・人々を襲った・・・」
ララ「最初は、たくさんのヒーローたちが立ち向かったわ!」
ララ「でも、誰もその怪人には敵わず、殺されていった・・・」
ララ「怪人の悪意は、世界中に拡がり、生き残った人々の心は荒んでいったわ」
ララ「私は!!」
ララ「この世界を、元の笑顔あふれる世界に戻したいの!!」
ララ「この悪意だらけの世界を・・・壊したい!!」
シンザ「分かりました、ララさん」
シンザ「私は、この世界を壊せばいいのですね」
ララ「ちょっと待って!物騒ね!」
ララ「今のは、私のお願いじゃないからね!」
シンザ「では、ララさんのお願いとは?」
ララ「この世界を変えた元凶である、怪人を倒して欲しいの!」
シンザ「その怪人は、どのような怪人なのでしょう?」
ララ「私のおじいちゃんが作った『ストレンジマン』シリーズの、最初の一体──」
ララ「『ヴェルメリオ』よ!」

〇荒廃したセンター街
シンザ「『ヴェルメリオ』を倒して欲しい──」
シンザ「それが、ララさんのお願いですね」
ララ「そうよ」
シンザ「分かりました、ララさん」
シンザ「では、今から倒しに行きましょう!」
ララ「判断が早ーい!!」
ララ「ちょっと待ってよ!勝算はあるの!?」
シンザ「はい、あります」
ララ「あるんだ!?」
シンザ「もともと私には、ヴェルメリオを倒すためのデータがインプットされています」
ララ「おじいちゃん・・・そういうデータは、しっかりインプットしているんだ」
シンザ「ですから、ヴェルメリオの居場所さえ分かれば──」
「俺を倒せる──ってか?」
ララ「あなたは・・・!!」
ララ「ヴェルメリオ!!」
ララ「一体、何をしに来たの!?」
ヴェルメリオ「一体、何をしに来た・・・か」
ヴェルメリオ「お前は、親父と同じようなことを聞くんだな」
ヴェルメリオ「何をって、そりゃあもちろん・・・」
ララ「・・・ゲホッ」
ヴェルメリオ「お前を殺しに来たのさ・・・ララ」
シンザ「ララさん?」
シンザ「どうしましたか?」
ヴェルメリオ「・・・お前は、親父の研究所にいた『ストレンジマン』──だな?」
シンザ「あなたが、ヴェルメリオですね」
シンザ「ララさんに、何をしたのですか?」
ヴェルメリオ「フン!お前にも分かるように説明してやるよ」
ヴェルメリオ「俺は今、ララの肉体を破壊したのさ」
ヴェルメリオ「人はな、肉体が壊れると死ぬんだよ」
ヴェルメリオ「俺たち、怪人と違って──な!」
シンザ「ララさんが、死ぬ?」
シンザ「理解できません」
シンザ「あなたは、何故ララさんを殺すのですか?」
ヴェルメリオ「何故って?ララが、俺を殺そうとするからだよ」
ヴェルメリオ「俺の──娘だというのにな!!」
ララ「・・・娘?」
ヴェルメリオ「まだ生きていたか、ララ」
ララ「心にもないこと・・・言わないでよ」
ララ「あなたは私のことを、娘だなんて・・・思っていない!」
ヴェルメリオ「フン!・・・親の心子知らずか」
ララ「分かるわけないわ・・・怪人の心なんか・・・!!」
ヴェルメリオ「・・・」
ララ「あなたは一体、何がしたいの・・・!?」
ララ「おじいちゃんも・・・!お母さんも殺して・・・!!」
ララ「答えてよ!・・・お父さん!!」
ヴェルメリオ「・・・」
ヴェルメリオ「・・・俺は、怪人だ」
ヴェルメリオ「親父に、身体を弄くり回され」
ヴェルメリオ「『ストレンジマン』となった」
ヴェルメリオ「俺の人生は狂わされ、人として生きる道を失った」
ヴェルメリオ「世界はもう、俺を人とは認めない」
ヴェルメリオ「ならば──!!」
ヴェルメリオ「俺が、世界を変える!!」
ヴェルメリオ「人など、もういらない!!」
ヴェルメリオ「怪人の!怪人による!怪人のための世界に!!」
ヴェルメリオ「俺が、変えてやる!!」
ララ「そんなことは・・・させないわ!!」
ヴェルメリオ「フン!やってみろ!」
ヴェルメリオ「一体、誰が俺を止めるんだ!?」
ヴェルメリオ「この世界に、もうヒーローはいない!!」
ヴェルメリオ「いるのは、怪人だけだ!!」
ララ「・・・!!」
シンザ「ヒーローなら、います」
ヴェルメリオ「・・・何だと?」
シンザ「私が、ヒーローです」
ララ「シンザ・・・!!」
ヴェルメリオ「お前が・・・ヒーローだと!?」
ヴェルメリオ「どう見ても、怪人だろう?」
シンザ「私は、困っているおばあちゃんを助けました」
シンザ「私は、困っているララさんを助けます」
シンザ「困っている人を助ける人」
シンザ「それが、ヒーローです」
ララ「シンザ・・・」
ララ「お願い、シンザ!!」
ララ「ヴェルメリオを・・・!!」
ララ「私のお父さんを倒して──!!」
シンザ「分かりました、ララさん」
シンザ「私は、あなたのお願いを叶えます」
シンザ「ヴェルメリオを──」
シンザ「コテンパンにします!!」

〇荒廃したセンター街
ヴェルメリオ「生まれて間もない、怪人モドキが・・・!!」
ヴェルメリオ「図に乗るなよ!!」
ヴェルメリオ「何!?」
ヴェルメリオ「無傷・・・だと!?」
シンザ「私の鎧は、耐火金属でできています」
ヴェルメリオ「ふざけるな!!」
ヴェルメリオ「俺の炎が、そんな鎧ごときに防がれてたまるか!!」
ヴェルメリオ「ハァ、ハァ・・・クソッ!!」
シンザ「残念ですが、あなたの攻撃は私には効きません」
シンザ「何故なら、ブランコ博士に、そのように作られたからです」
ヴェルメリオ「あのクソ親父!どこまでも俺の邪魔をしやがって・・・!!」
シンザ「次は、私の番です」
シンザ「・・・ストップ」
ヴェルメリオ「・・・?」
シンザ「十分、コテンパンにしました」
シンザ「これ以上やったら、死にます」
シンザ「人は、殺さない」
ヴェルメリオ「人は、殺さない・・・だと?」
シンザ「はい」
ヴェルメリオ「お前は・・・俺が人だと言うのか?」
シンザ「はい、あなたは人です」
ヴェルメリオ「・・・!!」
ヴェルメリオ「・・・こんな俺を」
ヴェルメリオ「人だと言ってくれるのか・・・」
シンザ「はい、あなたは人です」
ヴェルメリオ「そうか・・・」
ヴェルメリオ「俺が人なら・・・」
ヴェルメリオ「怪人の世界は作れないな・・・」

〇実験ルーム
  ──数日後
  ブランコ博士の研究所
ララ「・・・」
シンザ「目覚めよ・・・『ララ』」
ララ「おはようございます。マスター」
ララ「・・・なんてね」
ララ「私を助けてくれてありがとう、シンザ!」
シンザ「はい。ララさんが死なないでよかった」
ララ「それに、私のお父さんも殺さないでくれて、ありがとう」
シンザ「はい、人は殺してはいけません」
ララ「そうよね・・・」
ララ「私はずっと、お父さんを怪人だと思っていたわ」
ララ「だけど・・・あなたのおかげで気付けた」
ララ「お父さんも、人だったんだなって──」
ララ「あの人は、今どこに?」
シンザ「分かりません」
ララ「そう・・・」
ララ「でも、またいきなり現れるかもしれないわね!」
シンザ「ところで、ララさん」
ララ「なぁに?シンザ」
シンザ「私は、ヒーローでしたか?」
ララ「・・・」
ララ「・・・ええ」
ララ「あなたは、私にとって──」
ララ「最高のヒーローだったわ!!」

コメント

  • クライマックスでシンザが攻撃をストップして「人は殺さない」と言うシーンでBGMがピタッと止んだのがすごく印象的で胸にグッときました。シンザのおかげで父親殺しの連鎖を止める事ができてよかったです。

  • それぞれポリシーがあって、なんだか憎めないし皆んなに共感してしまいました…。
    ヒーローってヒーローになろうとしてなるものではなく、いつの間にかなっているものなのかな?とも感じました!

  • ただの怪人ものではなく、人の心の動きがよく伝わってくる感動的なお話でした。怒り狂ってしまったものを最終的に救うのはやはり純粋さと愛のちからなんですね。

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