《エデン》

草加奈呼

エピソード11 ヒュートリーの占い師(脚本)

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草加奈呼

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〇占いの館
  港町ヒュートリー
  
  占いの館
  占い師は、風華の肩に触れて占い始めた。
占い師「・・・えっ!?」
占い師「あなたたちは・・・、一体何者ですか!?」
風華「私たちは・・・」
吹雪「何者かって・・・、どういう意味だ? 普通に人を探すために旅してる者だが?」
占い師「あなたたち、 魔術の封印を解いた者を探してるわね?」
「!?」
占い師「そうなのね? 魔術の封印を解いた者の 名前が、これでわかったわ・・・」
占い師「でもどうして? どうしてあなたたちは その人を探しているの?」
風華「それは・・・」
紅蓮「答える前に、君の顔を見せてくれないか。素性を明かさない者に話すわけにはいかない」
占い師「ふふっ・・・正論ね」
  占い師は、顔の布を取った。
影利「私は占い師の影利。 さあ、素性を明かしたわよ」
風華「私たちは、魔術を封印するために、 カートの居場所を知る必要があるんです」
影利「やっぱり・・・。 あなたたち、アイ=リーン様の子孫ね?」
紅蓮「君は・・・一体何者だ!?」
  雷光山での一件もあり、紅蓮は警戒を強めた。
影利「あらあら。待ってよ、私は味方よ?  ほら、宝玉もちゃーんと持ってるしね」
  暗がりでわかりにくかったが、それは確かに宝玉だった。
  宝玉は、仄かに輝いていた。彼女の言う事に偽りはないようだ。
  闇の使い手の占い師 影利《えいり》
影利「少し、お話しましょうか」

〇占いの館
紅蓮「魔術の封印を解いた者を探している・・・というのは、占いでわかったことなのか?」
影利「そうよ。今までにも何度か試したんだけど、魔術の封印を解いた者の居場所を知ろうとすると、必ず何かに弾かれて占いが失敗するの」
影利「だから、申し訳ないけど カート=フォルツァルの居場所は 私の能力を使ってもわからないのよ」
紅蓮「そうなのか・・・」
影利「あ、でも・・・。誰かがそのカートって 奴の居場所を知っていれば、私がその人の 心を読んで探ることはできるわ」
影利「問題は、誰が知っているか、だけど・・・」
吹雪「人の心を読むって・・・、 そんなことができるのか?」
影利「信じてないみたいね。それじゃあ、 あなたのことを当ててみましょうか?」
吹雪「ほう。よーし、それじゃ、 俺が今なに考えてるか当ててみろ」
影利「いいわよ? 手を貸してくれる?」
  影利は、吹雪の手を取って集中した。
影利「・・・・・・・・・」
影利「〜〜〜〜〜〜っ!」
影利「この・・・バカ!! ヘンタイ!! どアホ!!」
風華「えっ? 吹雪は何を考えていたの?」
影利「知らなくていいわよ! あー、なんでこんなヤツが仲間なわけ!?」
吹雪「わっはっはっは」
風華「???」
紅蓮「なにやってんだか・・・」

〇占いの館
紅蓮「これから、どうしようか?」
紅蓮「一番見つけやすいのは雷火なんだろうけど、どこにいるかまではわからないんだろ? 闇雲に飛び回ってもしょうがないし・・・」
風華「世界中を廻っていれば、必ず出会えるわよ」
風華「私と吹雪がそうだったし、影利だって アイ=リーン様のご加護があって 出会ったようなものだわ」
吹雪「そんな悠長なこと言ってられねーって。 俺に考えがあるんだが、 ここからガイアまではどのくらいかかる?」
影利「馬車で数日かかるわね・・・。 でも、あそこってちょっと危険な場所 なのよ。盗賊も多いみたいだし」
影利「そんな所に、何をしに行くの?」
吹雪「もちろん、ガイアの村に入る」
影利「えーっ!? あの盗賊の村に!?」
吹雪「なに驚いてんだよ。俺の住んでる村 なんだから、大丈夫だって」
紅蓮「あーっ! 思い出した!!」
紅蓮「おまえ、どこかで見た事あると思ったら、 ガイア竜盗団の一味だな!? お尋ね者の!!」
吹雪「なんだ、今頃気づいたのか?」
風華「竜盗団《りゅうとうだん》・・・?」
影利「竜盗団は、飛竜に乗って活動する盗賊団よ」
影利「飛竜に乗って移動するから、 なかなか捕まえられないって、 全世界でお尋ね者扱いよ」
風華「なかなか捕まえられない・・・?」
風華「でも吹雪、 アクイアナの町で捕まっていたわよね?」
吹雪「あ、あれは、ちょっとヘマをしてな・・・」
吹雪「と、とにかく、そこに行けば俺の相棒の 飛竜がいるから・・・」
影利「なるほど! その飛竜を移動手段に使おうってわけね?」
吹雪「『使う』って言い方はよしてくれよ。 あいつらは友人で相棒だ」
吹雪「『協力してもらう』ってな」
影利「わかったわ。ごめんなさい」
影利「じゃあ、 明朝にはガイアに向かうのかしら?」
紅蓮「そのつもりだ」
風華「影利は・・・一緒に来てくれる?」
影利「当然よ! やっと魔術に関する手がかりが 見えてきたわ」
風華「じゃあ、明日の朝、迎えに来るわね」
影利「あら、どうせならうちに泊まって いきなさいよ。部屋なら空いてるし」
影利「女の子同士で語り合いましょ♪」
風華「ふふっ、いいわね」
吹雪「おっ、俺たちも男同士、語り合うかぁ?」
紅蓮「何を語るんだよ・・・」

〇レンガ造りの家
  ワイズラーナ領
  
  ハンスの町
  数日後────
  ヒュートリーから北へ、馬車を乗り継いで
  ハンスというのどかな町に辿り着いた。
紅蓮「はーっ、やっと町だー!」
風華「とてものどかな町ね」
影利「馬車は、ここで終点よ。 後は、ガイアまで徒歩になるわ。 道案内、よろしくね吹雪」
吹雪「まかせろ。ただ、こっから先道が険しい。 万全の準備で向かいたいから、 今日はここで宿を取ろう」

〇西洋風の受付
  ハンスの町 宿屋
レイシア「いらっしゃいませ!」
紅蓮「4人泊まりたいんだけど」
レイシア「かしこまりました。 では、こちらの帳簿にご記名お願いします」
???「やあ、レイシア。 今日の分、持ってきたよ」
レイシア「いつもありがとう。 ねぇ、おばさんに聞いたんだけど、 またガイアに行くんですって?」
???「うん、いつもの事だよ。 そんなに心配するなって。 今までだって大丈夫だっただろ?」
レイシア「そうは言っても、 心配なものは心配なのよ・・・」
紅蓮「あ、あの〜・・・」
レイシア「あっ、ハイ! すみません、4名様ですね!?」
???「それじゃ、俺はこれで」
レイシア「あ、ありがとう!」
影利「・・・・・・・・・」
影利(彼、何かありそうね・・・)
影利「すみません、さっきの人・・・。 ガイアに行くって言ってましたよね?」
レイシア「ええ・・・。ちょっと危険な道のり なので、心配なのですが・・・」
紅蓮「どうしたんだよ、影利?」
風華「あら、 それだったら、私たちと同じだし・・・」
影利「そうそう。 一緒に行けばあなたも安心でしょ? こっちには、腕っ節の強い奴が二人いるし」
吹雪「おいおい、ガキのお守りはゴメンだぜ」
レイシア「あの・・・。ぜひお願いします。 彼、月に一度はガイアに行っているので、旅慣れはしているんですが、やはり一人は心配で・・・」
影利「じゃあ、決まりね。彼の家はどこなの? 私たち、明朝出発しようと思ってるんだけど」
レイシア「ちょうどこの宿の裏なんです。 近くですから、案内しましょうか?」
影利「お願いします」
吹雪「おい、影利。 どういうつもりなんだ?」
影利「・・・何か引っかかるのよね。彼」
吹雪「どういう事だ?」
影利「確証はないけど、もしかしたら、 私たちの仲間かもしれない」

〇レンガ造りの家
  ハンスの町
???「レイシアから聞きました。 俺と一緒にガイアに行ってくれるそうで・・・助かります」
  目の前の少年は、年齢こそ15、6だが、どこか落ち着きのある、大人びた表情をしていた。
紅蓮「自己紹介しておこうか。俺は紅蓮だ。 こっちは吹雪。 で、そっちの女性陣は風華と影利だ」
「よろしくね」
地季「俺は・・・地季です。 ガイアには、月に一度薬を持って いってるんですよ。それが仕事なんで」
吹雪「ああ・・・なんだ。 おまえ、薬師だったのか?」
地季「ええ。父親の跡を継いで。 飛竜の調子もたまには窺ってこないとね」
吹雪「ふぅん」
紅蓮「俺たち、明朝には出発したいんだけど、 いいかな?」
地季「随分と急ですね・・・。いいですよ。 じゃあ、今日中に準備しておきますので。明日の朝、宿屋に行きます」

〇可愛らしいホテルの一室
  ハンスの町 宿屋内
  地季との話もまとまり、一行は宿屋に戻ってきた。
紅蓮「さっきの地季って奴が、俺たちの仲間かもしれないって、どういう根拠があるんだ?」
影利「だから、確証はないんだってば。あの子が宿屋に持ってきた箱に触れたらね・・・。こう、なにかを感じたのよ」
影利「私の占いは確かに良く当たるけど、 百パーセントってわけじゃないんだから」
風華「なにかって・・・、 どういう風に感じるの?」
影利「どういうって・・・。難しいわね。 “なにかがある”って、頭の中で閃いた ようになるのよ」
影利「だから、味方かもしれないけど、敵かも しれない。もしかしたら、全然関係の ない人かもしれない」
影利「そういう不確定なものなのよ。占いって」
吹雪「役に立ってんだか立ってないんだか・・・」
  吹雪は、ぼやきついでに袋に入っていた銀色の宝玉を取り出してみるが、相変わらず仄かな輝きを放っているだけだった。
  つられたように、紅蓮と影利も自分の持つ宝玉を取り出して見ていた。
影利「ね、風華の宝玉は?」
風華「私のは・・・ カートに盗られてしまったの・・・」
影利「そうなんだ・・・」
風華「さあ、明日は早いんだし。 もう寝ましょう」

〇可愛らしいホテルの一室
  4人は床についたが、風華だけが眠れずにいた。
  今自分の下にない宝玉。果たしてそれを無事取り返すことができるのか。
  魔術の封印に必要不可欠なものを、カートが易々と渡してくれるわけはないと思うが、
  それではカートが風華に言った“あの言葉”の意味は、一体なんだったのだろうか。

〇牢獄
カート「『俺を殺しに来い、風華・・・』」

〇可愛らしいホテルの一室
  そう言って、風華を遠い地方へと飛ばした。
  それは恐らく、神具を集めアイ=リーンの子孫と共に再びカートの前に現れ、魔術を封印しろという意味なのだと思っていた。
  しかしそれならば、風華の宝玉を奪った意図がわからない。宝玉がなければ、魔術を封印することは不可能なのだ。
  一つの可能性として考えられるのは、すでにカートが魔術に支配されているということ。
風華(もし本当にそうだったら、私は・・・)
風華(私は、カートを斬れるの・・・?)
  風華の手が、微かに震えた。

次のエピソード:エピソード12 カート

コメント

  • わたしは女性でも黒髪おかっぱに弱いんだなと思いました。影利さん可愛い😆💕
    少年も増えてほくほくです。

  • 頼もしい仲間がまた増えましたね!
    吹雪~😅影利さんにひっぱたかれなくて良かったねw

  • 吹雪ww
    占いの時に何を考えたかちょっとお話してくれるかな?(^▽^

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