《エデン》

草加奈呼

エピソード3 対立(脚本)

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〇祭祀場
  ホンカルトの村
  
  長老の家
長老「雷火よ」
雷火「なんだい、じっちゃん?」
長老「おまえの宝玉が、輝いておる」
雷火「ああ、知ってるよ。 たぶん、魔術の封印が解かれたんだろ?」
長老「たわけ! 知っておるなら、何故行動せんのじゃ!」
雷火「んなこと言ったって、オレ1人で 何ができるって言うんだよ!」
雷火「アイ=リーン様の子孫って、全部で 8人なんだろ?」
雷火「どこにいるかもわかんねーのに・・・」
長老「雷火よ。まずは行動するのじゃ」
長老「おまえには、アイ=リーン様の加護が ついておる」
長老「行動すれば、必ず巡り合うはず」
長老「まずは、おまえの神具が祀られている、 雷光山《らいこうざん》に行くがよい」
長老「雷光山は、モステアの北にある」
長老「イージスの町から、モステア行きの馬車が 出ておる。それに乗って行くがよかろう」
雷火「へーっ。オレの神具って、そんな所にあったのか。この村にあればラクだったのに」
長老「こりゃ、バチ当たりな事を言うでない」
長老「他の神具はわからんが、本来、神具は然るべき場所に祀っておくのが良いとされておる」
雷火「わかった、わかったよ。 神具を取りに行けばいいんだな?」
雷火「で、旅費はもちろんくれるんだよな?」
長老「・・・・・・・・・」

〇西洋の街並み
雷火「・・・と、言うわけさ」
  雷の使い手の剣士 雷火《らいか》
  雷火は、体格に似つかわしくない大剣を、軽々と背負っている。
風華「じゃあ君は、 本当にアイ=リーン様の子孫なのね!?」
雷火「おう、剣士に二言はねーぜ。 ちゃんと、宝玉も持ってる」
  雷火は、お守りの袋から、黄色く輝く宝玉を取り出して2人に見せた。
紅蓮「嘘だろ・・・。 こんなに早くも3人目が見つかるなんて」
雷火「3人目?」
風華「私たちも、アイ=リーン様の子孫なのよ」
雷火「えっ? えええええっ!?」
雷火「マジかよ!? 御加護って本当にあるんだな!?」
雷火「オ、オレ、雷火って言うんだ! 姉ちゃんたちは?」
風華「私は、風華よ」
紅蓮「俺は、紅蓮だ」
雷火「な、なあ。オレと一緒に、 雷光山に行ってくれないか? あんたたちと一緒なら、馬車に乗れると 思うんだ」
風華「そうね。私たちも、モステアに行く途中 だったのよ。一緒に行きましょう。 紅蓮、いいわよね?」
紅蓮「おう、仲間なら大歓迎だ。 旅の目的は一緒だしな」
雷火「やったー! これで馬車に乗れるぞ!」
  一行は、再び乗合馬車の乗り場にやってきた。
兵士「こら、おまえ、また来たのか?」
雷火「へへ、今度はちゃんと、大人と一緒だぜ?」
紅蓮「俺たちと一緒なら、問題ないよな?」
兵士「え、ええ。 大人と一緒なら問題ありません」
兵士「しかし、モステアに何の用で? あそこは今、ひどい有様ですよ」
風華「そんなにひどいのですか?」
兵士「ええ。こちら側に避難してきた人もいますし、向こうの国境なんて、避難民が多くて大混乱らしいですよ」
風華(カートが、そこまで・・・)
兵士「悪い事は言いません。 用が済んだら、あなた方もすぐどこかに移動した方がいいですよ」
紅蓮「風華、大丈夫か?」
風華「ええ、大丈夫。 気をしっかり持たないと・・・」
  一行は、馬車に乗り込んだ。

〇荷馬車の中
雷火「そういえば、 風華たちはなんでモステアへ?」
紅蓮「風華は、モステアから来たんだよ」
風華「そう。だから、私の神具を取りに行くところだったの。それと・・・」
  風華は、カートの事を説明した。
  紅蓮にはまだ説明していなかった、カートがセ=シルの子孫である事や、風華の教育係であった事も。
雷火「えっ!? じゃあ、風華とそのカート ってやつ、知り合いなのか!?」
風華「知り合い・・・ ええ、そうね・・・」
雷火「そっか、そりゃ辛いよな。オレだって、犯人がじっちゃんとかだったら辛いよ」
紅蓮「しかし、なんでまたセ=シルの子孫が、 魔術の封印を解いてしまったんだ?」
紅蓮「俺たちも、セ=シルの子孫も、 自然の力を使えるはずだろう?」
風華「あの人は、風の能力に目覚めるのが、 とても遅かったの」
風華「私の方が早かったくらいで・・・」
風華「だからきっと、誰かを守れる くらいの力が欲しかったのよ」
紅蓮(『誰か』・・・ 『何か』じゃなくて・・・?)
紅蓮(風華は、迷わず『誰か』と言った。 それは、おそらく・・・)
紅蓮(それに、風華の口ぶりだと魔術の封印が解かれたのは、最近の事じゃないように思える)
紅蓮(でも、宝玉が光り出したのは、ここ数日の事だ。それは何故だ・・・?)
紅蓮(風華はアイ=リーン様の子孫、仲間、 だから、俺はついてきたけど・・・)
紅蓮(風華。 俺は、君を信用していいのか・・・?)

〇荒廃した市街地
  モステア王国 城下町
  モステアに着いた一行は、市街地の状況を見て落胆した。
紅蓮「こりゃ、ひどいな・・・」
風華「ひどい・・・だけど・・・」
風華(自然がわずかに残っている・・・ という事は)
風華(カートは、魔術で市街地を 攻撃したわけじゃない)
風華(むしろ、風の能力で魔術に抗ったと 考えられる・・・?)
風華「とにかく、お城に行ってみましょう」

〇巨大な城門
  風華たちは、モステア城に来た。
  城は破損も少なかったようだ。城の中には、遠方まで避難できない民でいっぱいだった。
  風華は、宝物庫の鍵を預かる大臣を探したが、どこにも見当たらなかった。
兵士長「風華様。大臣はおそらく、 ジェストール側の国境にいます」
兵士長「そちらで、避難民の対応をしているかと」
風華「そう、ありがとう・・・」
兵士長「風華様が行方不明と聞いた時は驚ました。 ご無事で何よりです」
兵士長「国王陛下が亡くなり、 民は混乱しております」
兵士長「風華様、我々の指揮を取り、 民を導いてくださいませんか?」
風華(そうだ。私はモステア王国の王女・・・ 民を助ける義務がある)
風華(でも、アイ=リーン様の子孫としての 使命もある・・・ 一体、どうしたら・・・!?)
紅蓮「風華!」
紅蓮「困った時は、人を頼れ! 城の兵士たちも、俺や雷火もいる!」
雷火「そうだよ! オレにできる事があったら なんでも言ってよ!」
風華「紅蓮・・・雷火・・・」
風華「・・・・・・・・・」
風華「決めたわ」
風華「私たちは、まず雷光山に行きましょう!」
雷火「いいのか!?」
風華「私は、モステアの民を信じます。 決してくじけないと」
風華「それに、神具を手に入れて、紅蓮と雷火を仲間だって伝えれば、民の士気も上がると思うの」
風華「兵士長・・・申し訳ありません。 もう少しだけ、お願いします。 私は、神具を手に入れて戻ってきます」
兵士長「・・・わかりました。 風華様がそうおっしゃるのであれば、 仕方がありません」
兵士長「この兵士長、 民の混乱も鎮めてごらんにいれましょう!」
風華「ありがとう。 よろしくお願いします・・・」

〇雪洞
  雷光山 神具のほこら
雷火「いやー、比較的近くにあって良かったー! 山頂まで登らなきゃいけないのかと思ったぜ」
風華「私も、ここに祠があるのは知っていたけど、まさか神具が祀られているなんて」
紅蓮「ん? 待て、2人とも!」
紅蓮「誰か・・・いる!」
ジン「やれやれ、ようやくお出ましか・・・」
紅蓮「あいつがカートか?」
風華「いえ、違うわ・・・誰?」
雷火「あ、あいつが担いでるのって、 神具じゃないか!?」
紅蓮「どういう事だ? 神具は、アイ=リーン様の子孫にしか 扱えないんじゃなかったのか?」
風華「神具は、主人を選ぶはず・・・ あの神具が雷火のものだとすれば、手にできるのは、雷の能力を持つ者。 つまり・・・」
「セ=シルの子孫!!!」
ジン「ほう・・・。 どうやらご主人様のお出ましのようだ」
ジン「ちょうどいい。レグルス様の命令だ。 おまえら全員、血祭りにあげてやる」
  突如現れたセ=シルの子孫。
  相手は敵意剥き出しで、すでに臨戦態勢に入っている。
  彼がここに現れた目的は、神具か?
  それとも──

次のエピソード:エピソード4 神具サンダーブレード

コメント

  • 更新見逃してました💦
    少年!がんばれ!少年は正義!
    何気に兵士長さんも素敵❤️

  • 王道RPGって感じですね(^^ 移動中の戦闘が目に浮かぶようです。

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