忘れ去られた世界の君へ

YO-SUKE

第十二話「三号室の殺人鬼」(脚本)

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〇教室の外
  気が付くと、水のないプールの中で
  倒れていて、ボロボロの校舎が見えた。
城井奏太「本当に・・・ またこっちの世界に帰ってきたんだ」
  今度こそ、
  セナを助けて元の世界に連れて帰る。
  そう決意して、ゆっくりと歩き出した。

〇廃墟と化した学校
  だが、すぐに異常事態に気づいた。
  基地の入口には、無数の死体が
  転がっていたのだ。
城井奏太「な、なんだよ、これ・・・! どうなってんだよ!?」
  死体の山の中で人が動いた。
城井奏太「あんたは・・・!」
近藤孝久「新入り・・・お前、生きてたのか」
城井奏太「何がどうなってるんだ? なんでこんなことに」
近藤孝久「数時間前だ。 捕まえていたデフィジョンが数体逃げた」
近藤孝久「理由はわからんが、 奴らは急な進化を遂げて、 誰の手にも負えなかった」
城井奏太「逃げたってどこに?」
近藤孝久「この基地の地下だ。ついさっき、 最前線から戻ってきたセナさんが、 隊を編成して討伐に行ったよ」
城井奏太「俺もそこに向かう」
近藤孝久「兵士でもないお前が?」
城井奏太「俺は・・・セナに会うんだ。 セナを助けるためにこの世界に来た」
近藤孝久「なら・・・証明してみろ。地下に行って、奴らを一体でも倒してこい」
城井奏太「ああ、わかった」
近藤孝久「ただし、地下は迷路のように複雑だぞ。 ここ数年、デフィジョンの襲来に備えて、無数の地下道を作っていたからな」
城井奏太「・・・っ!」
近藤孝久「できれば案内人を用意するんだな。 一人で行けば野垂れ死ぬのが関の山だ」
城井奏太「・・・案内人、か」

〇保健室
  保健室では春斗が傷ついた兵士たちを
  手当てしていた。
城井奏太「春斗。話がある」
高島春斗「・・・君か。勝手に消えたくせに、 よくノコノコと戻って来れたな」
城井奏太「春斗・・・俺、地下に行きたいんだ。 協力して欲しい」
高島春斗「見てわからないのかい? 僕はいま手当てで忙しいんだ」
城井奏太「でも、早く奴らを倒さないと また犠牲が出てしまうだろ」
高島春斗「・・・彩音のようにか?」
城井奏太「!? き、聞いてくれ、春斗。あの時は──」
高島春斗「黙れ! 言い訳をするな! お前がいなければ、 彩音は死ぬことなかったんだ!」
城井奏太「・・・・・・」
高島春斗「僕は・・・君を許すことはできない。 地下に行くなら勝手に行け。 そこの引き出しに、戦闘服が入っている」
城井奏太「・・・わかった」
  戦闘服を取り出しドアに向かう。
城井奏太「その・・・色々ごめん」
高島春斗「・・・・・・」
城井奏太「じゃあ──」
高島春斗「一人で行くのか?」
城井奏太「でも他に頼れる人はいないんだ」
高島春斗「当たり前だ。 今、地下に行きたがる奴なんていやしない」
城井奏太「だから俺一人で──」
高島春斗「いや、待てよ。あいつなら・・・」
城井奏太「あいつ?」
高島春斗「体育館の奥に、いくつかの小部屋がある。 もし本当に地下に行くなら、 そこの三号室に寄っていけ」
城井奏太「そこに誰かいるのか?」
高島春斗「・・・殺人鬼だよ」
城井奏太「!?」

〇カプセルのある体育館
  あちこちの水槽が割られて、
  荒れ果てている。
  逃げ出したデフィジョンも、
  ここにいた奴なのだろう。
  奥に進み、
  春斗の言っていた小部屋を探す。
  小さな格子窓のついた小部屋があり、
  入り口には「三号室」と書かれている。
城井奏太「・・・ここか。この部屋はいったい──」
???「ククッ・・・牢屋だよ」
城井奏太「!」
  驚いて思わず飛び退いた。
  格子窓から中を見ると、不気味な男が
  地べたに座り込んで絵を描いていた。
柊ノボル「人間風情が調子に乗ってデフィジョンを 囲ってるからこんなことになるんだ・・・ ククク」
城井奏太「お前は・・・?」
柊ノボル「柊ノボル・・・第二部隊の副隊長だ。 あっ、元だな。元」
城井奏太「春斗の言ってた殺人鬼ってお前のことか!?」
柊ノボル「戦闘中に部下を殺したんだ、何人も。 まっ、俺の射程圏内に入って来る奴が 悪いんだけどな」
城井奏太「・・・っ!」
柊ノボル「それでこんな辺境の基地の牢屋に 閉じ込められてるってわけだ」
  柊ノボルと名乗った男は、
  ニヤリと微笑んだ。
柊ノボル「しっかし、あのデフィジョンも 気が利かねえのよ」
柊ノボル「どうせ逃げるなら、 ここもぶち壊してくれればいいのによぉ」

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