読切(脚本)
〇トレーニングルーム
アン・羅騎「武蔵、紀伊。うちの戦闘課の単発バイトをしないか?」
バイトという名の訓練終わり近く。組織の上司であるアンさんが声をかけてきた。
鬼ヶ崎武蔵「お疲れさまですアン主任。俺たちが荒事に参加していいのですか?」
鬼ヶ崎紀伊「それ、超人コンプライアンスに違反してませんか?」
秘密結社錫のスプーンの戦闘課は敵対勢力との戦闘。成人してない超人の扱いを定めた超人憲章の明確な違反なのだ。
アン・羅騎「我々ヴィランがヒーロー側のコンプライアンスを順守とか、なかなか愉快な事だが・・・」
アン・羅騎「成人してない超人がヴィランとして実戦に出ていることがバレると、ヒーロー協会から強制保護対象者として指名手配されるからな」
アン・羅騎「守りたくない法だが、それでお前らをヒーロー協会には取られたくないから対策はある」
アン・羅騎「チャラチャラチャラチャン(謎の青狸のBGM)」
鬼ヶ崎紀伊「これは?」
アン・羅騎「ヒーローが好んで使う変身ブレスレットだな。懇意にしているヒーロー組織から情報提供を受けてウチの技術部が開発に成功した」
鬼ヶ崎武蔵「報提供とか言っているけど、貧乏ヒーロー組織に資金援助を餌にして徐々に取り込んでいって、技術を押収したのでしょ?」
アン・羅騎「当然だ。この手の組織乗っ取りは、相手がヒーローだろうがヴィランだろうが日常茶飯事だ」
鬼ヶ崎紀伊「ウチの組織は、金融機関を襲ったり、営利目的で誘拐したり、縄張りでみかじめ料を徴収するみたいな事は行ってませんよね?」
アン・羅騎「まあな。派手な不法は、国を跨ぐようなヒーローたちに目を付けられれる」
鬼ヶ崎武蔵「で、今回のバイトは、このブレスレットの実戦テストですか?」
アン・羅騎「それは二の次。メインはウチの表の会社である化粧品会社HEiSEiの顧客の娘の誘拐を企てているロシアのヒーロー組織の迎撃だ」
顧客というのはウクライナ出身のハリウッド女優エリーゼ・ジョヴォウィッチ・ホームズのことで娘とは同級生のマリーのことだ。
鬼ヶ崎紀伊「ロシアのヒーロー組織ってもしかしてヴィランと大して変わらないって噂のZZZ団ですか?」
アン・羅騎「よく勉強してるな。そう。そのZZZ団だ」
鬼ヶ崎武蔵「ZZZ団。一応、ロシア政府が認定するヒーロー組織のひとつですよね?」
アン・羅騎「そうだ。ま、実態は数年前のロシアのウクライナ侵攻の際に、減刑を条件に結成されたロシアのヴィラン連合だがな」
鬼ヶ崎武蔵「アルバイトが実戦的過ぎませんか?」
アン・羅騎「ウチの諜報部では、今のところZZZ団の大物は確認出来ていないから大丈夫だろ」
鬼ヶ崎武蔵(アンさん、それフラグを立ててませんかね?)
多少の不安はあるが依頼を引き受けることにした。
〇バスの中
『まもなく大多摩駅です』
戦闘員「大人しくしろ!このバスは我ら終末のゼット団が接収する!」
ドカドカと、バス前方の扉から黒づくめの男達が乱入してくる。
バスの運転手「緊急事態発生!扉を解放します」
乗客A「きゃあ!」
同時にバスの中扉が開き、乗客がバスから一斉に逃亡する。
ZZZ団リーダー「ちっ逃げられ。あ、お・・・なんだ獲物は逃げ遅れてるじゃねえか」
リーダーは誘拐の標的だった少女が同じ制服の少女と共に逃げられなかった事を確認すると、ニンマリと嗤う。
ZZZ団リーダー「おい。ドアを閉めろ!」
バスの運転手「ひいっ」
運転手は素直に応じる。
ZZZ団リーダー「素直なヤツは好きだぜ?苦しませずに殺せる」
言うなり男は腰に吊ったグルガナイフを抜き去り運転手の首に突き立てる。
バスの運転手「ギャッ!」
マリー・ジョヴォウィッチ・ホームズ「きゃー」
バス中に悲鳴が上がった。
〇田舎駅のロータリー
数台のパトカーが警告灯を光らせサイレンを鳴らしながらバスを取り囲む。
鬼ヶ崎武蔵「流石、大多摩市警察。出動が早い」
ちなみに俺と長門勇気は錫のスプーンでの同僚で同じ学校の同級生だ。
長門勇気「まあ、駅前方ロータリーは俺たち錫のスプーンが、不定期的にバスジャックのアトラクションを行うからな」
鬼ヶ崎武蔵「バスジャックは大多摩市では遊園地の娯楽イベントだからね・・・」
空想忍者隊バードマンズ イーグル「空想忍者隊バードマンズ イーグル参上!」
空想忍者隊バードマンズ フクロウ「空想忍者隊バードマンズ フクロウ、き、来たんだな」
空想忍者隊バードマンズ ハシビロコウ「空想忍者隊バードマンズ ハシビロコウ来てやったぜ」
重い思いのポーズで大多摩市のご当地ヒーロー空想忍者隊バードマンズが颯爽と現れる
空想忍者隊バードマンズ フクロウ「動きを封じるんだな。ふんぬ!」
フクロウがバスの後部バンパーを掴んで持ち上げる
空想忍者隊バードマンズ フクロウ「ジャッキ噛ませるんだな」
空想忍者隊バードマンズ イーグル「任せろ」
空想忍者隊バードマンズ ハシビロコウ「よし、任せろ」
絶妙のコンビメーションで二人はバスの底にデカいジャッキを噛ます
空想忍者隊バードマンズ イーグル「正義執行!撤収!!」
バスの移動力を封じると、あっという間に姿を消す空想忍者隊バードマンズ
戦闘員「くそが!」
バスの扉を蹴り破って戦闘員たちが飛び出してくる
空想忍者隊バードマンズ スワロー「空想忍者隊バードマンズ スワロー、華麗に後始末!必殺燕返し!!」
空想忍者隊バードマンズ スワローが低空飛行で現れると、戦闘員を跳ね飛ばして去ってく。
空想忍者隊バードマンズ クロウ「空想忍者隊バードマンズ クロウ 必殺の重力圧殺!」
空想忍者隊バードマンズ最後のメンバーでヒロイン?の重力アタックで戦闘員のいろんな所が押し潰される。
鬼ヶ崎武蔵「相変わらずえげつないなクロウの姐さん」
長門勇気「そして颯爽と去っていく」
ZZZ団リーダー「好き勝手やりやがって!こっちには人質がいるんだぞ!(ロシア語)」
バスの中から人質のマリー嬢を盾に男が出てくる。
警官A「いや、日本語以外で叫ばれても判らん!」
ZZZ団リーダー「こっちには人質がいるんだぞ!」
長門勇気「あ、言い直した・・・というか、盾にするならせめてお前さんの妹だろうに馬鹿かね?」
鬼ヶ崎武蔵「人質は二人しかいないから、必要な方を手元に置きたかったんだろ」
長門勇気「ああ、なるほど」
鬼ヶ崎武蔵「じゃあこちらも動くか・・・応着!」
長門勇気「よっしゃあ!応着!」
俺と勇気は掛け声とともにブレスレットで変身する。
そして俺と勇気が変身するのに合わせバスの中が光る。
謎の怪人一號「とう!ハイジャンプキック!」
謎の怪人一號「大キック!」
謎の怪人二號「お嬢こっちだ」
勇気が快足でお嬢をかっさらっていく
戦闘員「ぎゃ」
バスから戦闘員が蹴りだされてくる
レディホーネット「レディホーネット、参りますわ!」
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下手なブラック企業よりブラックなヒーロー協会ってやばいですね。時と場合によりますが、毒をもって毒を制すヴィランのやり方も一理あるような気がします。颯爽と現れてやることやったらすぐに帰るバードマンズ、ショッカーみたいな雑魚集団のZZZ団も面白かったです。
これからヒーローという存在に対する評価が変わってしまうような気がします。正義を羽田に掲げてもなかなかうまくいかないものなんですねえ。大多摩市の平和を祈ります!