第一話 トンカツ屋での激闘(脚本)
〇牛丼屋の店内
──都内某所
今日もそこに怪人は姿を現した。
そして、それを追うヒーローの姿も・・・
〇牛丼屋の店内
爆熱戦士レッド「出たな、怪人ユウザン! 今日こそはお前との決着をつけてやる!!」
怪人ユウザン「よかろう! 爆熱戦士レッドよ! 貴様には敗北の味を教えてやろう!」
怪人ユウザン「しかし、この店内で戦うのは無粋だ! まずは大人しく飯でも喰らうといい」
爆熱戦士レッド「ああ・・・ ひとまず旨いメシを食ってからだな!」
爆熱戦士レッド「やっぱ、ここに来たらトンカツっしょ! すみません、ロースカツ定食1つ!」
爆熱戦士レッド「あっ、ご飯は大盛でっ!」
大将「あいよっ!」
爆熱戦士レッド「揚げ立てのカツのサクサク感、 たまんねぇなぁ~♪」
怪人ユウザン「ほう、爆熱戦士レッドよ! 貴様はロースカツ定食を頼むのか!」
爆熱戦士レッド「トンカツを食べるのなら、 やっぱこれが大正義だろっ!」
爆熱戦士レッド「そういうお前は、何を注文したんだ!?」
怪人ユウザン「くくくっ・・・ もうすぐ来る、しかと見ているがいい!」
大将「へいお待ちぃ!」
大将「ロースカツカレー、お待たせしました!!」
爆熱戦士レッド「なにぃ、ロースカツカレーだと!?」
爆熱戦士レッド「折角の揚げ立てサクサクの衣が、 カレーに浸されて台無しだろうがー!」
爆熱戦士レッド「こんな料理は、 揚げ立てのカツに対する冒涜だろっ!」
怪人ユウザン「ふっ、甘いな・・・」
怪人ユウザン「では貴様は、カツの本質は 衣のサクサク感にあると言うのか?」
爆熱戦士レッド「そうだっ! ことトンカツにおいて、 衣の香ばしいサクサク感こそ大正義!」
爆熱戦士レッド「サクサク感を損なう食い方なんて、 もはやそれは悪の所業だっ! 貴様のようになっ!!」
怪人ユウザン「ほう、ならば問おう! 爆熱戦士レッドよ・・・」
怪人ユウザン「貴様は、この日本の国民食とも言える、 カツ丼は喰らったことがあるか?」
爆熱戦士レッド「ああ、数えきれないほどな! 俺の大好物さっ!」
怪人ユウザン「そのカツ丼は、トンカツを出汁で煮込み、 さらには卵でとじているのだ! そこにサクサク感はあるのか!?」
爆熱戦士レッド「うっ、確かに・・・」
怪人ユウザン「ソースカツ丼やタレカツ丼などといった 所謂ご当地カツ丼もまた然り!」
怪人ユウザン「貴様の言う揚げ立てサクサクの衣のカツを 即座にソースに潜らせたり、」
怪人ユウザン「濃厚味噌ダレやデミグラスソースなどを サクサク衣に目掛けてかけたうえで、 味が染みたところを喰らうものだ!」
怪人ユウザン「いずれも、揚げ立てトンカツに比べて、 衣のサクサク感は半分以下! それでも、人々は喰らい続けているのだ!」
爆熱戦士レッド「・・・くっ、反論できぬ!」
怪人ユウザン「貴様が言うように、 衣のサクサク感が「正義」なのは認めよう」
怪人ユウザン「しかし、多くの者が求めるのは、 衣に味が染みることによる旨味のブーストではないか?」
爆熱戦士レッド「う、旨味のブーストだと・・・」
怪人ユウザン「このカツカレーもまた然り! カレールゥの染み込んだこの衣こそが、 豚肉もコメをも旨くするのだ!!」
怪人ユウザン「貴様も口にしたことがあるだろう!? この旨さを知らないとは言わせぬぞ!」
爆熱戦士レッド「ぐっ・・・」
怪人ユウザン「爆熱戦士レッドよ!!」
怪人ユウザン「大多数の者が「正義」のみを求めていない この現状から目を逸らすではない!」
怪人ユウザン「人の食べ方を「悪」と断じるのも結構! しかし人々は「正義」や「悪」は関係なく 旨いモノをただ追い求めるものだ!」
怪人ユウザン「出汁やソース、あるいはカレールゥなどで 旨味を増した衣こそ重要なのだ! それがサクサクかシンナリかは別の話だ!」
怪人ユウザン「多くの者がトンカツ料理を求めるが、 必ずしもサクサク感のみを希求しているわけではない!」
怪人ユウザン「貴様の言う「正義」などというものは、 所詮はその程度なのだ!!」
爆熱戦士レッド「うぐっ・・・」
怪人ユウザン「その未熟さで正義を語るなど片腹痛い! その正義を貫き通す力が無いのであれば 出直すがいい!」
怪人ユウザン「では、今日のところはここまでとしよう!」
怪人ユウザン「次に出会うときには、 もう少し力をつけていることを願う!」
怪人ユウザン「また会おう! 爆熱戦士レッドよ・・・」
爆熱戦士レッド「くっ・・・」
爆熱戦士レッド「俺の・・・完敗だ・・・・・・」
大将「あのー、お会計は・・・」
〇牛丼屋の店内
激しい戦いの末、
爆熱戦士レッドは敗れ去った・・・
その日のキャベツの千切りは、
普段のものよりも塩っぱい味だった・・・
しかし、彼は何度でも立ち上がる!
敗北を糧にし、何度でも何度でも、
怪人ユウザンへと戦いを挑むのであった
倒れようが、胃もたれに襲われようが、
爆熱戦士レッドは立ち上がるのだ!
爆熱戦士レッドは戦い続ける!
己が正義を貫き通すまで!
なお・・・
爆熱戦士レッドのキャラ設定が、
どう見ても戦隊ヒーローの一員なのは、
ただの気のせいだ!
「戦隊ヒーローなのに単独戦闘かよ」
こんなツッコミは遠慮してほしい!
爆熱戦士レッド「おにぃさんとの約束だぞ☆」
それと、イエローも登場させて
怪人とカレー対決をさせようと思ったのも
内緒の話である!
爆熱戦士レッド「絶対に秘密だぞ☆」
〇立ち食い蕎麦屋の店内
──次回、爆熱戦士レッド
第2話 予告
怪人ユウザン「かけ蕎麦の上に天婦羅を乗せるのは、 江戸時代から続く食文化! 油モノを乗せることで旨味が増すのだ!」
爆熱戦士レッド「しかし、折角のツユが濁るのではないか? 切れ味鋭いツユこそが大正義!」
怪人ユウザン「甘いわぁー、爆熱戦士レッドよ! 貴様の言う「正義」はその程度のものか!!」
お巡りさん「最近頻発している食い逃げ犯って お前らのことかー!?」
お巡りさん「署でしっかり話を聞かせてもらうからな!!」
〇立ち食い蕎麦屋の店内
──次回、爆熱戦士レッド 第2話
コロッケ蕎麦でレッド大逆襲
クサいメシでもヒト騒動 の巻
爆熱戦士レッド「コロッケ蕎麦も全部喰らいつくしてやる!」
爆熱戦士レッド「来週も絶対に見てくれよなっ!」
食の前には人(と怪人)は無力!
だが、食を語る者して、美味しい食事への感謝の証としての会計を怠るなど、言語道断!
罰として、客寄せ、皿洗いを命ずる!
(厨房スタッフその1)
食の正義!そうきましたかぁー!
旨味ブーストのくだり、めっちゃ共感しちゃいました。私もガッツリ食べる際は旨味の『足し算』で選んでたりします...絶対に美味しいので...笑
ユウザン最高ですね。レッドとは人間としての(怪人ですが)深みが違います。食を芸術の域まで高めています。レッドは次回以降もユウザンの前に敗北を喫するでしょうが、いつか一矢報いることができるでしょうか… トンカツ、カツ丼、カツカレー全部好きです(笑)