エッターになってボクは楽園に行くんだ

長崎 一束

エピソードゼロ:エッター(脚本)

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長崎 一束

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〇おしゃれなリビングダイニング
  タクトとショウは幼馴染
  今日も二人仲良くTVに夢中だ
  TVでは人気のエッターワンが開催されていた
  勝者!インセクト型エッターカブトォォオオ
司会「さすが強い!これで三連勝です」
インセクトエッターカブト「フフフッ! 後2つ勝てば楽園行きの宇宙船(ふね)にのれるな!」
司会「頑張って行きましょう! 次の対戦相手、こちらは楽園へ王手を掛けてるBAX型エッターのキャリコ氏だ!」
BAX型エッターキャリコ「ぷしゅルルル お前を倒して楽園の切符は俺がいただくシュルル」
  では、いざ勝負!
  
  エッターファイト!!
  激しい戦いが
  エッターによる戦いが展開しています!

〇黒
ショウ(小学生)「カッケー やっぱインセクト型つえーよ 俺も成人したらインセクト型になりてー」
タクト(小学生)「うん!ショウならなれるね ボクもエッターになりたいなぁ」
ショウ(小学生)「タクトは何型になりたいんだ?」
タクト(小学生)「ウ~ン獅子王型もカッコいいなぁ でもボクは腕力ないし・・・ エッターに成れればなんでも」
ショウ(小学生)「おうさ! ガンバろーな 早く成人テストこねーかなぁ」
  ・・・
  こうして月日は流れ
  ショウの成人テストの日がやってくる

  人 々 は 齢(よわい) 16 に な っ た 最 初 の 朝 か ら
  成 人 テ ス ト を 受 け る の だ
  ──これがこの国の昔からある儀式である
  ──成人テスト
  それは職業不足になった人類があみだした新しい職業『エッター』への登竜門
  これに受かりエッターとなれば、のちの人生を豊かに暮らせる『楽園』へと行くことが出来る
  誰もが一度は憧れる職業だ

〇体育館の屋上
タクト「いよいよ明日だな」
ショウ「ん?」
タクト「とぼけんなよ 待ちにまった成人テスト!」
ショウ「おうさ! タクトより2ヶ月早く産まれてホントよかったよ! かぁちゃんにマジ感謝だぜ」
タクト「成れるといいなインセクト型」
ショウ「成れると?ジャネーよ 成るんだ! オレはなる だからお前もちゃんと来いよ!」
  こうしてショウはいよいよ成人テストを迎えるのだった

〇総合病院
ショウ「おうさ! んじゃ成人テストいってくるぜ!」
タクト「が、がんばれよ!」
ショウ「たいした事ねーよ! それより、オレのエッター変化の祝いでもしてくれよ!」
タクト「も、もちろん」
  こうしてショウは成人テストを受けた

〇研究施設のオフィス
ショウ「あーん、筆記試験あるのかよ わかんねーよ 全部〇でいいや」
成人テスト官「うーん筆記はあまり良くないなぁ まぁとりあえず注射しようね」
ショウ「えっオレ注射苦手なんだけど おうさー 頑張る!」
  ショウは注射を受けるとインセクター型エッターへと変化した
成人テスト官「おめでとう! 君はエッターへと進化したよ この後の人生は安泰だな ははははは」
「えっ!マジっすか おれエッターになったの? うぉおおおおおお おうさ!──」
  インセクター型エッターとなったショウは破竹の勢いでエッターワンを攻略していく

  シ ョ ウ が エ ッ タ ー と し て 活 躍 し
  
  2 ヶ 月 が 経 っ た

〇おしゃれなリビングダイニング
「タクト なによその恰好」
タクト「えっ あ、いやぁコスプレ?てか ほらなんかさカッコよくね?」
「何してんのよっ ショウ君エッターになってめっちゃ稼いでるって噂よ! あんたも明日成人テストなんだからね! がんばってよ」
タクト(母からの、母らしい応援だ)
タクト「う、うん! 俺も頑張ってエッターになる!」
  エッターとは、人類の約1割から2割しかなれない、憧れの職業
  そんな高貴な職業にタクトは成れるなどと思ってはいなかった

〇研究施設のオフィス
タクト「は、はい! 成人テスト番号イハ-251 タクトです」
成人テスト官「何その恰好 ・・・・・・ま、いっか んで、筆記は・・・・・・」
タクト「はぁ」
成人テスト官「まぁ、まぁね あ、ショウの幼馴染か ・・・・・・ふーん じゃ注射するよ」
タクト「はいっ! 頑張りま・・・」
  タクトは注射を受けると意識が遠のいた
プロム型エッタータクト「・・・・・・」
成人テスト官「えっ・・・これは珍しい! プロム型なんて何年いや何十年ぶりかしら」
プロム型エッタータクト「えっプロム型? ・・・・・・じゃ、エッターに?エッターに成れたの?」
成人テスト官「そうよおめでとう! あなたは晴れてエッターよ しかも最近じゃ見ないプロム型エッターよ エッタータクトの誕生よ!」
成人テスト官「あなた達のクラスから2人もエッターが出るなんてね・・・ ラッキーなのか、不幸なのか・・・・・・」

  エッターになったタクトの最初の相手は
  シ ョ ウ だった

〇格闘技リング
司会「さぁ今日の対戦は 楽園への切符に王手をかけている インセクト型エッターショウ!」
インセクター型エッターショウ「おうさ!!!」
司会「そしてこのエッターショウに対戦するのは な、な、な、」
司会「なんと! 20年ぶりに出現したプロム型エッター タクトだ!!」
プロム型エッタータクト「ショウ! やったよボクもエッターに成れたよ」
インセクター型エッターショウ「・・・・・・」
司会「両者、準備はいいか?」
  Ready・・・
  
  エッターファイっ!!
プロム型エッタータクト「ショウ 2人ともエッターに成れてよかった」
インセクター型エッターショウ「うー・・・」
プロム型エッタータクト「ショウは嬉しくない?」
インセクター型エッターショウ「うー」
  シャキーン!
  
  ショウはするどい攻撃を仕掛けた
プロム型エッタータクト「ショウ! ほんとは戦いたくなんかないよ」
  危ない!
???「戦わないでどうする? ショウはもう君の事は忘れているぞ」
プロム型エッタータクト「えっ あなたは?」
プロム型エッタータクト「ぼ、僕と同じエッター?」
  ら、乱入者だ!
プロム型エッターザイオンス「ちっ、頑張れよ後輩!また後でな」
司会「今のは、20年前に出現したエッターのザイオンスだ! なぜここに現れたのか?!」
司会「とにかくプレイ続行だ!」
  ファイッ!
プロム型エッタータクト「僕の事忘れているって 本当なの?」
インセクター型エッターショウ「うー・・・」
プロム型エッタータクト「い、痛いっ こうなったら 僕も戦うよ!」

  タ ク ト の 攻 撃 の 前 に 
  力 尽 き る シ ョ ウ
  ショウは傷を負い倒れてしまう
インセクター型エッターショウ「オ、オレは・・・」
プロム型エッタータクト「ショウ!! 大丈夫?」
司会「さートドメを打つんだタクト!」
インセクター型エッターショウ「う・・・タ タ・・クト?」
プロム型エッターザイオンス「とどめを指しちゃいかんぜ! 俺と一緒にくるんだ」
プロム型エッタータクト「え、ショウの意識が ボクだよ!」
プロム型エッターザイオンス「よせ! 早くするんだ」
  ザイオンスは留まろうとするタクトを捕まえると会場警備の隙をついてエッターワンの会場から抜け出した
  起き上がれないショウは病院へと運ばれた

〇高速道路
プロム型エッタータクト「ザイオンスさん!一体どうして なんでショウを置いていくんだ! 僕をどうする気」
ザイオンス「うぅ、俺もそろそろやばいかな・・・」
プロム型エッタータクト「ショウを病院に連れて行こうよ」
ザイオンス「いやもう助からない 元々そうなってるんだ」
プロム型エッタータクト「え? どういう事」
  タクトを連れて逃げるザイオンスは
  それまでのいきさつをすべて話した

〇個別オフィス
要人1「出来の悪い人間は早いうちに間引くに限る なぁ教育省大臣よ」
大臣1「えぇ悪い芽は早いうちに摘まないといけないわ じゃないと周りまで悪くなってしまうもの」
要人1「しかしこんなエッターシステムを作るなんて政府も悪い おかげで従順な人間ばかりになって統制するには良いけどな」
大臣1「何言ってんの この国が出来た時からあるシステムよ」
大臣1「人は何人か居ると必ず怠けるのが出てくるのよ」

〇先住民の村
  遥かな昔の昔のまた昔
農園主1「おーい また彦兵衛はなんもせずに家さ 引き籠ってるべか」
農園主2「ほんに困ったもんだべ 男手が必要な時期になんもせんと!」
農園主1「どうじゃ! 今夜の酒宴で彦兵衛とイノシシの見世物でもやってもらうべ」
農園主2「ほう、そりゃ面白そうじゃの んじゃどっちが勝つか酒飲みながら賭けるとすっべか」
彦兵衛「お、おで イノシシと戦うなんて コエ―だよ」
農園主2「仕事もせんと なんもせん奴はエッタって言ってな 飯だって食えないんじゃぞ! じゃもんでワシ等に楽しいとこ見せろや」
イノクマ「ガルルルル」
彦兵衛「ひ、ひえぇ イノシシじゃなくてクマ? 嘘つき」
農園主2「ひゃっははは こりゃ愉快 ほれ戦え! イノクマ相手じゃ命がけじゃで」
「さーどっちが勝つか楽しみじゃのお 賭けろ賭けろ」
(負けて死んでくれりゃ食い扶持減って万々歳じゃで)

  かつてこの国では働かない者(不良人間)を獣と戦わせ、賭けをして楽しみそして死ぬまで戦わせ合法的に間引きをしていたのだ
  権力者による不良人間の間引きは代々受け継がれてきた
  今ではそれがエッターという憧れの職業とされているがその実は間引きを誤魔化す為の方便だったのである

〇個別オフィス
大臣1「国が近代化すると不良人間の処理にも困ったわ そこで獣から抽出したDNAを改造して与えると怪人に変身する者が現れた」
要人1「それがエッター 成人テストか」
大臣1「エッターが開発された当時は校内暴力や暴走族問題が社会問題となって不良にも手を焼いていたからすんなりと受け入れられたわ」
要人1「生身のプロレスや格闘技はエッターの前に全部衰退してったな そりゃそうだ迫力が違う」
大臣1「そうね そして優勝しても楽園への切符など与える筈もないわ」
要人1「注射の時にマイクロチップも入れてるんだろ」
大臣1「一年以内に死ぬようにね だから楽園なんて行けるわけないのよ 人間の時の記憶も徐々になくなっていくしね」

〇廃工場
  ザイオンスはエッターの事について調べたことをボクに話てくれた
ザイオンス「注射された腕を出してくれ」
  小型の探知器をボクの注射された腕に当ててしばらくすると
  チクっとした
プロム型エッタータクト「いたっ ・・・・・・ これで?」
ザイオンス「あぁ マイクロチップは破壊した だから死に至ることは無いさ」
  マイクロチップには徐々に体を弱体化するDNAが入っていて注射後一年以内に死ぬようになっているらしい

  ところでショウは無事なのかなぁ

〇荒れた倉庫
  ザイオンスの指示でボクはTVを付けて見た
  
  そこには負けたハズのショウが勝ち名乗りを上げていた
司会「勝者! ショウ」
インセクター型エッターショウ「おうさ!」
司会「勝ったショウには楽園行きのチケットが授与されて、今後は楽園で一生楽しく過ごすことになります」
プロム型エッタータクト「え、ショウ元気だ」
ザイオンス「あれはVR合成だ もう死んでいるさ 怪我したエッターはそこから腐って死んでいくんだ」
プロム型エッタータクト「嘘だ! あんなに元気だし ちゃんと最後ボクの名前だって」
ザイオンス「20年同じような光景を何度も見てきた俺だからわかる 断言してもいい もう死んでいる」

  ザイオンスはさらに続ける

〇荒れた倉庫
ザイオンス「この20年、俺の後継が現れるのを息をひそめて待っていた」
プロム型エッタータクト「それは何故?」
プロム型エッターザイオンス「このエッターの事を公にしこれ以上無駄死にする人間を、間引かれる人間を助けてくれ」
プロム型エッタータクト「え、そんな事言われても」
プロム型エッターザイオンス「う、くそ、俺のDNAは完全に取り除けていない、もはやこれまでか」
ザイオンス「君に俺がこの20年培った技と資料をすべて託す」
  ここにすべてが入っている
ザイオンス「君なら、出来る筈だ」
ザイオンス「政府による人間の間引きをやめさせてくれ 引き籠ってても、悪の道に行っても 人間を間引くなどやってはならないんだ」
  そう言ってザイオンスは僕の手を取り資料を託した

  息を引き取るザイオンス
  ボクの手を握っていたザイオンスの手の力が抜けて床に落ちた
  その姿に何か心の中から湧き上がるものが
プロム型エッタータクト「わかった ボクやってみるよ!」
  こうしてエッターとなったタクトの物語がここに始まるのだった

コメント

  • 物心ついたときから「皆が目指すべき場所」だと言われ続けて、その仕組みもできあがった世界で、誰が疑うことができるだろうか。
    この作品で描かれていることは、現実世界でも普通に起きている、そんな気がしました。

  • ストーリーの展開が楽しくてイメージを膨らませながら読ませて頂きました。会話のテンポもよくて時折、クスッと笑えるところもよかったです。

  • 物語に入りこみながらも、現実的に見聞きすることを想い馳せながら読み進めました。おぞましく感じてしまう昔の風習を、こう名寄せしてさらにおどしをかけるようなことは決してあってはならないですね。私が深読みしすぎているかもしれませんが・・・。

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