いとしこいし

甘楽カラ

エピソード2(脚本)

いとしこいし

甘楽カラ

今すぐ読む

いとしこいし
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇広い公園
村上君「・・・怒りの糸を切った?」
小石川糸「うん。私じゃなく、憤気にぃなんだけどね、ホントは」
村上君「小石川の・・・兄貴?」
小石川糸「私と違って噴気にぃは、怒りを繋ぐ糸が見えるの」
村上君「ってことは小石川にも見えるのかよ、別の糸とか」
小石川糸「私に見えるのは、運命の相手と小指と小指が繋がっている赤い糸」
村上君「ああ、だから小石川のとこに女子たちがいつも群れてんのか」
小石川糸「・・・村上君、最近よく笑うようになったね」
村上君「そうかもな。・・・変か?」
小石川糸「ううん。ぜんぜんいいよ。怒ってたときより、ずっといい!」
村上君「怒りの糸を切ってくれたってのはホントかもな。最近、父さんに対して前ほど頭に来る、ってことはなくなったんだ」
村上君「前よりも殴られることも、なくなったし・・・」
小石川糸「うん・・・。村上君のお父さんも、本当は痛いんだと思う」
村上君「痛い?」
小石川糸「村上君を傷つけたり、殴ったりしてる時、お父さんの心も、傷ついて、ボコボコになって、痛かったと思うんだ」
村上君「そうなのかな? でもその怒りの糸を切ってくれたおかげで、もう大丈夫なんだろ。ありがとな」
小石川糸「それが・・・。怒りの糸を切った話を家で一番上のお兄さんにしたら・・・」
「はい、オレがその糸の一番上の兄、小石川喜一で~す」
小石川喜一「感情の糸ってのはさ、一度断ち切ればそれでいいってもんじゃないんだよね」
小石川喜一「人間、お腹いっぱい食べても、時間が経てば腹が減る! そんな感じだな」
小石川糸「喜一にぃ、そのたとえ話、ちょっとわかりにくい!」
小石川喜一「そうか? んじゃ~ぶり返す感じ? まあとにかくすぐに湧いてきちゃうんだよ、怒りってヤツは」
村上君「・・・そうなんですね。この平和が長く続くわけじゃないんだ」
小石川糸「だからね、村上君とお父さんを喜びの糸で結んだらどうかな、って思ったんだ」
村上君「喜び?」
小石川糸「お父さんだって本当は村上君を育てる喜びを感じているはずでしょ?」
小石川糸「村上君だって、お父さんと暮らしていて嬉しい事、たくさんあるでしょ?」
小石川糸「二人が互いに喜ばせたり、喜んだりの感情で結びついたら、怒りも湧かないんじゃいかと思って!」
村上君「そんなことができるなら・・・。本当にできるんなら、頼むよ!」
小石川喜一「ところが問題はそんなに簡単じゃないんだな。君の親指からは見えないんだよ、黄色い糸が」
村上君「えっ?」
小石川喜一「思い出してくれないか? 君がお父さんと暮らす中で嬉しかったことを! どんな小さな喜びでもいいから!」
村上君「父さん・・・喜び・・・。あれかな~。母さんが死んで間もない頃、ねだって作ってもらったオムライス」
小石川喜一「いいね、いいね、その調子で思い出して!」
村上君「母さんの作るオムライスとは似ても似つかない、形も味もそりゃ~ひどいオムライスだったけど・・・」
村上君「それでもなんだか父さんが作ってくれたってだけで、おいしくてさ」
小石川喜一「よおおお~し、生えてきた、生えてきた!」
「のうまん さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うんたらたかんまん!」
村上君「うううううう・・・」
村上君「・・・あぁ、なんだかすっきりした」
小石川喜一「上手くいったみたいだな」
恭子「いと~~~! あっ、喜一お兄さんも、こんにちは! 糸、聞いてよ~、あいつマジにむかつくんですけど~」
小石川糸「また彼とケンカ? 別れる? だったら赤い糸、切ってあげるよ、すぐに」
恭子「ヤダヤダ! 切らないで! だって・・・好きなんだもん、やっぱり」
小石川糸「仕方ないな~」
「天 元 行 躰 神 通 力!」
小石川糸「はぁ、はぁ・・・。今度はもやい結びにしておいたから、これでしばらくは大丈夫だと・・・思う」
小石川喜一「もやい結び? かた結びじゃなく?」
恭子「もやい・・・結び?」
小石川喜一「語源の「もやう」は、左側に舟、右側に方角の方と書いて「舫う」 船を杭に結び付けるときに使われるんだ」
小石川糸「ほどけにくくて・・・はぁはぁ・・・用途が広いことから「結び目の王」って呼ばれている」
小石川喜一「糸師の中でも、この結び方ができるのは、ほんの数人・・・。オレにはできない結び方だ」
恭子「すご~い! 糸、私のためにすごい技、使ってくれたんだね。ありがとう~♪」
小石川糸「はあ・・・はあ・・・はあ・・・」
小石川喜一「大丈夫か?」
小石川糸「うん、だいぶ・・・落ち着いてきた。最近ね、糸術を使うとすごく疲れるんだ。喜一にぃは、そんなことない?」
小石川喜一「う~ん、いまのところ、大丈夫かな、オレは。心配だから、哀史たちにも聞いてみよう」
小石川糸「うん・・・」
小石川喜一「腹減ったな~。今日の食事当番って・・・あっ、楽哉か! じゃあ、今日はカレーだ。あいついっつもカレーだもんな、作るの」
小石川糸「一応、いつも違うカレーを作ってるんだって。この前はチキンカレーでしょう、その前はポーク、そのまた前は野菜カレー!」
小石川喜一「いや、だから、どれも味は一緒じゃん!」
小石川糸「でも今日は新作カレーだって! 期待しててって言ってたよ」
小石川喜一「なんだよ、新作って。嫌な予感しかしないんだけど」
小石川糸「え~と、なんだったっけ・・・。あっ、そうだ、ちくわぶ! ちくわぶ入りのカレーだって!!」
小石川喜一「嫌な予感的中」
  糸術を使った直後に、感じる疲労。
  最初は、たいしたことはなかったそれは、次第に激しさを増すようになっていった・・・

次のエピソード:エピソード3

コメント

  • 村上君の今後と糸ちゃんの今後が気になります。続き、楽しみにしております。

  • 村上君、元気になって良かった良かった♪
    今頃気づいたんですが、糸が切れるって事は相手の方も切れるって事で、だから父親も怒り狂わなくなったんですね⋯なるほど!
    そして念押しの喜びの糸って素敵❤こちらまで嬉しくなります!喜一にぃは、私が想像していたより優しい人で、さすが糸ちゃんのお兄さんって感じです。
    糸ちゃんの疲労感心配ですね〜どうなるんだろう💦頑張れ〜♪
    ちくわぶカレー〜意外と美味しい?w(笑)

成分キーワード

ページTOPへ