第九話「もう一人の君」(脚本)
〇学校の屋上
俺の話を一通り聞き終え、
春斗は真顔になって言った。
高島春斗「で、お前は頭がおかしくなったと」
城井奏太「なってねえ! 本当なんだって!」
高島春斗「町が壊滅状態で、 地球の人口は10分の1で、 怪物があちこちにいて、」
高島春斗「消えた幼馴染がレジスタンスのリーダーになっていた・・・そんな話信じられるか!」
城井奏太「春斗にそっくりな奴もいたよ」
高島春斗「マジか。イケメンだったか?」
城井奏太「顔は一緒。 性格は向こうのほうが育ち良さそうだった」
高島春斗「育ち悪くて悪かったな!」
春斗は拗ねるように寝転がった。
俺は向こうにいたのと同じ時間、
ここを留守にしていたらしい。
放任主義の親は、俺が数日間行方をくらましていたことに気づきもしなかった。
向こうの世界での出来事が嘘みたいに、
ここではいつも通りの日常が続いていた。
城井奏太「証拠ならあるんだ・・・ほら」
バッグからレーザーガンを取り出す。
高島春斗「よくこんなオモチャ見つけてくるよな」
城井奏太「本物なんだって!」
高島春斗「はいはい。話はわかったっつーの」
城井奏太「なあ、頼むよ。調べるのに付き合ってくれ」
高島春斗「一人でやればいいだろ?」
城井奏太「誰も俺の話を信じてくれないんだ。 だから、もしまた俺が向こうの世界に 行ったら、証人が欲しいんだよ」
高島春斗「・・・ったく仕方ねえな。お前のクラスの女子に、伊藤って子いたろ? かわいい子。 あの子を今度紹介するのが条件な」
城井奏太「・・・性格は向こうの春斗のほうが 三割増しでいいな」
〇駅のホーム
俺と春斗は、ぐったりして椅子に座る。
高島春斗「これで満足だろ?」
向こうの世界に繋がりそうな場所を
回った。
向こうの世界に初めて行った路地裏や、
俺が飛び込んだあの橋も。
高島春斗「お前の想像力はたいしたもんだよ。いつか小説家になれ。案外売れんじゃねえの?」
城井奏太「うるせえ!」
からかってくる春斗を怒鳴った時、
線路を挟んだ向かいのホームに、
よく見知った女の子を見つけた。
思わず立ち上がり、何度も目をこする。
制服姿だったが、
それは紛れもなく彩音さんだった。
城井奏太「・・・彩音さん!」
桐島彩音「・・・・・・?」
高島春斗「お、おい! いきなりどうした?」
城井奏太「あそこ! 向こうの世界で知り合った 女の子がいたんだ!」
高島春斗「嘘だろ!?」
彩音さんは俺の声に気づかず、
そのまま人影の中に去っていった。
城井奏太「春斗! 俺、向こうのホームに行く!」
高島春斗「いや、突然何を言って──」
階段に向かって走り出す。
向かいのホームに電車が
入って来たからだ。
〇駅のホーム
祈るような気持ちで、階段を二段飛びで
駆け降りていくが、人混みが邪魔をして
前に行くことができない。
城井奏太「すみません! どいてください!」
発車ベルが鳴り、さっき入って来た車両が
目の前で出発しようとしていた。
この瞬間を逃したら、俺は彩音さんと二度と会えないような気持ちになっていた。
高島春斗「バカなことやめろ! 別人だったらどうすんだ?」
城井奏太「あれは絶対に彩音さんだ!」
高島春斗「もう行っちまったよ!」
城井奏太「・・・いや、まだだ!」
〇空
鞄からレーザーガンを出し、
空に向かって放った。
派手な音と共に、
一筋の光が空へとまっすぐに伸びていく。
その場にいた人々は、
驚いた顔をして辺りを見回していた。
〇駅のホーム
高島春斗「・・・あの銃、マジのやつだったのかよ」
だが電車はたくさんの通勤客を乗せて、
俺たちの目の前で出発してしまった。
〇駅のホーム
膝を崩して落ち込んだ俺の前に、
白くて長い足が見えた。
桐島彩音「あんた、どこかで会ったことある?」
彩音さんが不思議そうな顔で
俺を覗き込んでいる。
桐島彩音「ていうか、 さっきの光はあんたがやったの?」
城井奏太「彩音さん・・・! 彩音さんだよな!?」
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元の世界に戻ったのかって驚きました?!別人とはいえ、彩音さんに会えてよかったヽ(;▽;)ノ
次回も楽しみにしてます。