(終)ヒロインではなくダークヒーロー志望!(脚本)
〇学校の校舎
2017年 3月1日…
あれからあっという間に月日が経ち、ついに今日は卒業式当日。
もちろん花火大会を最後に市川大和とは会っていない……。
〇体育館の中
不規則な学生達による規則正しい入退場。
開会宣言に誰も歌わない国歌斉唱。
名前も顔も知らない代表生がやる卒業証書授与。
校長の式辞は恐ろしく長く著名人の名言が付き物。
祝辞は卒業おめでとうございますが定番で稀に内容のない話をするレア客がいる。
来賓紹介は恩師でもない名前すら覚えていないない人達がやってくる。
場所と人だけが変わるだけでやる事といったら何一つ変わらない。
それが卒業式である・・・
〇教室
教室に戻ると公開処刑(告白)に写真大会。
そんなに仲良くない人からこそよく貰うただのゴミ(手紙)。
卒業式マジックに掛かった会話はどれも薄っぺらく安い言葉ばかりだ。
何がBFFだ…
ベッドフレンドフォーエバー?
まぁ、それなら分かるかも…。
佐藤沙緒理「ほんっとにくだらない……」
佐藤沙緒理(今日で最後だし記念に購買の自販機でジュースでも買っとくか)
〇渡り廊下
校内の桜が申し訳ない程度に咲いている──
佐藤沙緒理「もっと大胆に咲き乱れていいのに……」
そうしたらその満開の桜を眺めてこの荒んだ心を浄化出来たかもしれない。
智哉先輩「沙緒里!!」
佐藤沙緒理「…………え?! 智哉先輩…?どうしているんですか!」
智哉先輩「部活の後輩に会いに…いや、違う沙緒里に会いに来た」
智哉先輩「卒業おめでとう、少し大人びたな…」
佐藤沙緒理「ありがとうござい…!??」
市川大和(特撮ヒーロー)「いくよ、シュパァァアアアット!!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「僕、参上!!」
えぇぇえええぇぇええええ!??
待って呼んでないから!!
市川大和(特撮ヒーロー)「沙緒里、お前は誰の事も好きじゃない! お前が一番好きなのはお前自身だ…」
市川大和(特撮ヒーロー)「でも、僕はそんな沙緒里が好きでそんな沙緒里がいい!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「だから、ここで僕は君と誓う、愛の為に幸せの為に!!」
市川大和(特撮ヒーロー)「好きだ…沙緒里の事が誰よりも!!!」
特撮ヒーローは私に真っ赤な薔薇の花束を差し出した──
私は彼の元へ歩き花束を受け取った。
佐藤沙緒理「自分が誰を好きで誰と一緒に居たいのかなんてそんなの誰よりも一番自分が分かってる…」
佐藤沙緒理「選ばれるんじゃなくて私は自分で選ぶの!」
佐藤沙緒理「好きだったよ、大和…」
私は花束を片手に先輩の元へ走り出した──
ヒーローに守られて過ごすだけのヒロインなんてお断り。
だって私は自己愛の強いダークヒーロー。
佐藤沙緒理「受け取らないなんて絶対に言わせない!」
私はそう言って彼の首に手を回しキスをした──
佐藤沙緒理「おかえりなさい!!」
智哉先輩「ちょっと遅くなったけどただいま…かな?」
市川大和(特撮ヒーロー)「智哉先輩、沙緒里のこと大切にしなかったら真っ先に僕が奪いに行きますからね」
市川大和(特撮ヒーロー)「沙緒里、卒業おめでとう!!」
そう言い残すと彼は一度も振り返ることなく
遠くへ消えていった──
〇神社の石段
きっと彼自身も自分が私に抱いている感情が恋愛感情ではなく執着心だということを薄々気付いているだろう……。
それでも私を好きだと変わらずに言ってくれたあなたを私は許すことにした。
私ではない別の誰かの横で私を求め、想いながら過ごす偽り(幸せ)な恋愛をし続けることも私は許そうと思う。
むしろ私を忘れて幸せになるなんて絶対に許さないんだから。
だって好きだった人の幸せを祝える人なんていないでしょ?
それが本気であればあるほどに──
王道の恋愛ものかと思い読み進めていましたが、二話の展開にびっくりしました!
キャラクターの選び方も絶妙で、作品のコミカルさにとてもマッチしていました。
基本はコメディタッチなのですが、恋愛の痛々しさや、うまくいかないもどかしさも感じられる作品になっていて、読後にいろいろなことを考えられました。
とても面白かったです、最後まで執筆お疲れさまでした!
とにかく展開がぶっ飛んでいて、先が全く読めなくて面白いです。最初は復讐ものだと思って読み進めましたが、2話から早くも新展開で、予想がつきませんでした。復讐したい女の子と特撮ヒーローという設定も、ユニークで魅力的でした。キャラクター同士の会話も面白く、とても笑えます。その一方で、情緒あふれる感慨深いシーンも沢山るのも魅力でした。最後までノンストップで楽しめました!