読切【タイムアウト】 10 minutes(脚本)
〇モヤモヤ
怪人──
『知力』『体力』『精神力』
人間のそれらを喰らって、存在するモノ
〇銀座
怪人 レオ「・・・腹がへった。 喰わせろ」
怪人 レオ「オマエらの『頭ん中』をよぉ!」
怪人 レオ(まだ・・・足りねぇ。 空腹でカラダが乾いてやがる)
「怪人だ!!️ 怪人が出たぞ!!️」
「警察の特殊部隊はまだ来ないのか!?」
怪人 レオ「うるせーな。 その前に、オレがオマエらを飲み干して──」
怪人 レオ「う・・・」
レオ「クソッ・・・ もう10分たったのかよ」
レオ「チッ!!」
〇実験ルーム
怪人 ヤビ「この、ポンコツ野郎が!!」
怪人 ヤビ「テメーのせいで、こっちまで危ねー目にあっただろうが!?」
レオ「クッ・・・」
怪人 ノコ「うーん。 3人での狩りは、もう限界かもね」
怪人 ノコ「僕らを排除しようと、人間も策を練ってきてる」
怪人 ノコ「粗悪品のレオが一緒だと、まともに食事にありつけないよ」
怪人 ヤビ「ったく!! 足引っ張ってんじゃねー!!」
レオ「・・・」
レオ(何でオレだけ、怪人の姿を保てねーんだ?)
レオ(コイツらと同じように生まれた、兄弟だってーのに)
怪人 ヤビ「ほら! さっさと元に戻って、今日の成果見せろや!!」
レオ「いちいち、でけー声出すんじゃねーよ。 この脳筋野郎」
怪人 レオ「吸収した力を、送りゃーイイんだろ?」
『パロン』
オレたちの産みの親であり、コア
怪人 ヤビ「3人同時に行くぞ!」
怪人 ヤビ「ワッハハハ!! 見たか!! オレ様のパワーを!!」
怪人 ノコ「あーあ。 また、ヤビが1番か~」
怪人 ノコ「レオはダメダメじゃん。 先陣きっといて、結果がこれ?」
怪人 レオ「あぁ? こっちはハンデ抱えてんだ!」
怪人 レオ「余ってる力なんてねー。 腹満たすだけで、精一杯なんだよ」
怪人 ヤビ「吠えんな、ポンコツ! 地上で10分もたねーお前じゃ、オレらには勝てねーさ」
怪人 レオ(クッ・・・その通りだ)
怪人 レオ(もっと力を送らねーと、パロンが選ぶ 『至高の存在』にはなれない)
怪人 レオ(散々、オレをバカにしてきたコイツらを見返すには、どこかで出し抜かねーと)
1人で人間を狩る──。
もう、それしかねぇ。
〇銀座
アナウンサー「怪人が現れてから数時間が経過し、落ち着きをとりもどした現場に来ています」
アナウンサー「被害者は今回もみな、記憶障害や体力低下を訴えており、」
アナウンサー「警察は、極秘に配置した『怪人スイーパー』の活躍に期待して──」
〇説明会場(モニター無し)
夏目「・・・」
「先生、こんにちはー」
夏目「こんにちは。 宿題やってきたかー?」
〇オフィスビル前の道
レオ(クッソ! 腹へった・・・)
レオ(勢いで地上に降りたものの、どうやって食事にありつく?)
レオ「考えろ。 オレはあいつらと違ってアホじゃねー」
レオ(1人でも効率良く、人間を狩れるところ・・・)
人目につかない時間、場所
弱者の集い
オレの好物『知識』が溢れているところ──
「先生、サヨナラー」
「先生、ありがとうございました」
レオ「ん?」
レオ「・・・進学塾『Sena』か」
〇説明会場(モニター無し)
怪人 レオ「旨い!!️」
怪人 レオ(思った通り、弱っちい子供ばかり)
怪人 レオ(それも『知識』と『知力』のフルコースときてやがる)
怪人 レオ「オレは天才か? これならイケる!」
怪人 レオ「次はそこの、オマエだ!」
男子生徒「助けてー」
怪人 レオ「なっ・・・」
夏目「こっちへ逃げろ!!️」
夏目「怪人・・・これが」
怪人 レオ「何だ、テメーは? さっきの小僧の代わりに、頭ん中喰わせろ!!️」
夏目「うっ・・・」
怪人 レオ(ん! 何だ、コイツ!? すげぇ大量に『知識』が・・・)
怪人 レオ「なっ!?」
夏目「ツッ! 思ったより反動すごいじゃん。 政府のやつ」
怪人 レオ(か・・・躰が動かねぇ・・・ オレの攻撃が弾かれただと!? 人間ごときに!?)
怪人 レオ「その武器・・・ オマエは何もんだ?」
夏目「オレは塾の先生── 兼、」
夏目「お前らを排除するための『怪人スイーパー』だ」
夏目「もうすぐ特殊部隊が来る。 大人しく連行されろよ」
怪人 レオ「人間の分際で──」
怪人 レオ「うっ・・・このタイミングで・・・」
レオ「クソッ・・・」
夏目「なっ? 人間!?」
レオ「ちがう! オレは怪人だ!!」
レオ(10分・・・ヤベェ ・・・力が・・・・・・)
夏目「お、おい・・・」
夏目「・・・弟、くらいの年齢か・・・」
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
レオ(・・・ここは?)
夏目「お、気づいたか? 俺の家だ」
夏目「お前、急に倒れてさ。 警察が来る前に、とりあえず車で連れてきた」
レオ「はぁ!?」
レオ「・・・何で引き渡さなかった? あの武器── 留目をさすことだってできただろーが」
夏目「人間は、ムリだろ」
レオ「何度も言わせんな!!️ オレはオマエら人間を喰う『怪人』だ!!️」
レオ「今は力が足りなくて、こんな姿なだけで・・・」
夏目「なー、怪人。 そもそもお前たちは何で、人を喰うんだ?」
レオ「はぁ!? 決まってんだろ。腹が減んだよ」
レオ「喰わなきゃ生きられない。 人間だってそうだろ? てめーらだけ正当化すんな」
夏目「そうか・・・ だったらとりあえず、コレを食え」
レオ「何だ、これ!? こんな人間の食いもん──」
レオ「ぐぅー」
夏目「倒れてる最中もずっと、腹鳴ってたんだよ。 ほら、試しにさ」
レオ「旨っ」
夏目「そりゃ良かった」
レオ「チッ こんなんじゃ腹は満たされねーよ!!️ オマエの知識と知力をよこせ!」
夏目「いいぜ。分けてやる。 加減して喰えよ」
レオ「はっ? いいのか!?」
夏目「その代わり、他の人間は喰うな。 俺だけにしとけ」
レオ(こいつ、バッカじゃねーの? んなわけ、あるか。 でもとりあえず・・・)
レオ「イイぜ。オマエだけだ」
夏目「よし、約束な」
怪人 レオ「じゃ、遠慮なく」
怪人 レオ(さっきも思ったけど、コイツはすげぇ)
怪人 レオ(知識の貯蔵庫? 喰いきれないほど積んでやがる・・・)
夏目「ん・・・なるほど。こんな感じか」
夏目「昨夜徹夜して読んだ本の内容、まるまる忘れたわ」
怪人 レオ「ん? その程度か? 普通の人間なら3日分の記憶は飛ぶぜ」
夏目「俺は毎日アンテナはって、仕事でも趣味でも膨大な知識を詰めこんでるから」
怪人 レオ(使える)
コイツと手を組めば、楽して腹を満たせる
それに、パロンに送るだけの力も溜められるに違いない
夏目「俺は夏目。お前は?」
怪人 レオ「レオだ」
夏目「よし! 人間と怪人が共存できる方法を考えようぜ」
怪人 レオ(はぁ? 共存? 何言っちゃってんだ)
怪人 レオ(せいぜい、利用してやる)
〇水中トンネル
レオ「夏目・・・ここはどこだ!?」
夏目「水族館だよ。 約1000種類の海洋生物と、その生体が学べる」
レオ「めんどくせーな。 何でこんなとこに、オレを連れてくんだよ」
夏目「まー、そう言わずに付き合え。 知識を増やすには最適の場所なんだ」
夏目「俺を美味しく食いたいんだろ? だったら頭の中に、新しい情報をどんどん入れていかないと」
レオ「チッ!」
夏目「ほら、レオも覚えろよ。 あれはチンアナゴと言って──」
〇映画館の座席
レオ「ここは?」
夏目「映画館、ここも知識の宝庫」
夏目「はいよ!」
レオ(うめえ・・・)
レオ「げ、横に獣が!!️」
夏目「盲導犬だ。シー! 仕事中だ。触るなよ」
レオ「・・・」
〇新橋駅前
夏目「こうやってさ」
夏目「いろいろ見ながら街を歩くだけでも、学べることはたくさんあるぜ」
レオ「な、何だあれは!?」
夏目「お、珍しい。ラーメンの屋台だ」
夏目「経験してこその知恵と知識。 よし、食ってくか!」
レオ「おうっ」
〇ビルの裏
夏目「よし、ここら辺にするか」
レオ「ん? 今度は何すんだよ」
夏目「レオの食事だ。 そろそろお腹が空いたんじゃないか?」
レオ(そう言えば、コイツを喰ってねーのに、 今日はあんまり腹が・・・)
レオ「・・・」
怪人 レオ「遠慮なく」
夏目「ああ、約束だからな」
怪人 レオ(な、何だ 力が妙に溢れて・・・)
夏目「ふぅ。 お前の食いっぷり「カレーは飲み物」って言葉を思い出すわ」
怪人 レオ「・・・」
夏目「ん? もうイイのか?」
怪人 レオ「い、いや! まだ喰える!」
夏目「そうか。でも、レオ。 少しは『自給自足』できでるんじゃないか?」
夏目「今日1日、俺の知識を増やすと同時に、お前の知識も増えたはずだろ?」
夏目「人間の姿で得た『知識と知力』を、怪人のレオが自ら食って、」
夏目「少しはお腹が満たされるんじゃないかって、そう考えたんだ」
怪人 レオ(少しどころじゃねぇ・・・)
怪人 レオ(これで人間を喰えば、有り余るほどの力が手に入る)
パロンに選ばれし『至高の存在』になるのは
オレだ!!
夏目「試しにさ、この問題解いてみろよ」
怪人 レオ「漢検、数検問題集? はぁ? 何でオレが!」
夏目「完全に自立するために、色々試す価値はあるだろ?」
夏目「中学生レベルだ。 本気で取り組めば、かなり力がつく」
怪人 レオ(クッ 難しい・・・何だこりゃ)
怪人 レオ「ざけんなっ!! 怪人が、こんな人間みたいな真似──」
〇繁華な通り
男性「急に体が・・・」
子供「ママ~😭」
女性「あー、うるさい!!️」
夏目「何だ、これは」
レオ「『体力』と『精神力』が喰われてる。 ヤビとノコの仕業だ」
夏目「俺はここにいる人達を避難させる! レオはあいつらを止めろ」
レオ「はぁ!? 命令すんな」
夏目「頼む。 あとでお腹いっぱい、頭の中を食わせるから」
レオ「チッ!」
怪人 レオ「約束、守れよ」
夏目「ああ」
怪人 レオ(約束、だってよ。 怪人のオレが、人間みてーなことを)
怪人 ヤビ「なっ!?」
怪人 レオ「おい、オマエら。 ここはオレのテリトリーだ。出てけ!」
怪人 ヤビ「何だ、オマエか」
怪人 ノコ「あれ? レオってば、ちょっと見ないうちに、パワー増したんじゃない?」
怪人 ヤビ「コイツが少し力をつけたとこで、所詮ポンコツだってーの」
怪人 レオ「黙れ!! オマエらよりも人間を喰って、オレこそがトップに立つ!!」
怪人 ヤビ「はぁ? やるかー!?」
「うっ・・・」
夏目「レオ、無事か!?」
怪人 レオ「ああ。問題ねー」
怪人 ヤビ「レオ、てめー!! 何、人間とつるんでやがる!!」
怪人 ノコ「くっ」
怪人 ノコ「ヤビ、ここはいったん引こう」
夏目「・・・」
怪人 レオ「約束だ。食わせろ」
夏目「なあ、お前。 本当に今、腹が減ってるのか?」
怪人 レオ「は?」
夏目「食わなきゃ生きていけない。 そう言ってたから、協力したんだ」
夏目「怪人同士の争いのために、頭の中を食われるなんて御免だ」
怪人 レオ「ウッ・・・」
レオ「オレは、この躰が不満だった。 ずっとアイツらにバカにされて・・・」
レオ「見返すためにも、至高の力を手に入れる! もっと人間を喰う必要があんだよ!!」
レオ「だから大人しくテメーの知識をよこせ」
夏目「やだよ。 だったら自分で増やしてみろよ」
夏目「人のものを、簡単に横取りすんな!」
レオ「チッ!」
夏目「レオ・・・」
〇実験ルーム
怪人 レオ「クソッ! まだ力が足りねー」
〇オフィスビル前の道
レオ(手っ取り早く、ガキを狙ってやる)
男子児童「先生、さよーならー」
レオ(おっ! まずはコイツから──)
男子児童「あ、ゴメンナサイ!!」
レオ(漢検・・・だと? こんなガキが!?)
男子児童「あ、あの・・・」
『人の努力を横取りするな!』
レオ「・・・」
レオ「ほらよ」
男子児童「ありがとう!!」
『レオ。お前は自分で知識を増やせるよ』
レオ「クソッ。自給自足か・・・」
〇説明会場(モニター無し)
レオ「夏目、協力しろ・・・いや、してくれ」
夏目「・・・」
レオ「オレはアイツらに負けたくない。 どうしても、1番になりたい」
レオ「オレにやれることを、教えて欲しいんだ!」
夏目「レオ。 努力は報われるとは限らないけど、絶対に裏切らない」
夏目「どこまで届くか、やってみようぜ!」
レオ「おうっ!」
夏目「よし。 そうと決まったら、まずはコレだ!」
レオ「げっ・・・やっぱこれか」
夏目「日常にプラスαで、知識を増やすには手っ取り早い」
夏目「まずは3級合格だ!」
レオ「あはっ」
〇実験ルーム
「・・・」
怪人 レオ「最後の勝負だ。 パロンが選ぶ『至高の存在』は誰か」
怪人 ノコ「力の強い者が勝つ。 恨みっこなしだよ」
怪人 ヤビ「3人同時に行くぞ!!」
怪人 レオ「何だ、コレは!?」
「うわっ!!」
〇渋谷の雑踏
数年後──
〇倉庫の搬入口
仕事仲間「ヤビさん、頼む! 腰やっちまった」
ヤビ「あぁ!? またか!?」
ヤビ「このポンコツが~」
〇病室
ノコ「そろそろ窓を閉めますね」
おばあちゃん「ノコちゃん、ありがとね。 このオヤツ、一緒に」
ノコ「わーい🎵」
〇整頓された部屋(ハット、靴無し)
レオ「お! 解けた!」
夏目「やれば出来んじゃん」
夏目「レオ、明日の教員試験、ガンバれよ!!️」
レオ「おうっ!!」
知力、体力、精神力
3人の力が集まった『至高の存在』とは──
『人間』だったみたいだ
レオ(知るって、クソ楽しーわ)
レオの弱点が原因の出会いからの逆転、爽快でした。
個人的にはレオと夏目の関係にももえました。二人の距離感が程よくて微笑ましかったです😁
あとずっと思っていましたがワンちゃんのアイコン可愛いですね^^
面白かったです!✨️
レオが半年で教員試験を受けるまでになるなんて!?
お腹いっぱいに知識を詰め込んで幸せそうで良かったです😊しかも3人ともとは🎵
エフェクトの使い方も上手くてほほー!となりました。読んでて楽しかったです😆💕
怪人の話を読んでいたはずが、いつの間にか人間についての話に変わっている…爽やかな読後感を感じると同時にとても考えさせられる作品でした^^
学生時代、レオのような空腹感を感じられたら、自分ももっと勉強できたかも?と少しうらやましくもなりました。笑