いつか薔薇色の走馬灯

さくらだ

第6話「下僕の日々」(脚本)

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〇山中の川
  第6話
  「下僕の日々」
ローズ(武器を教えてくれるなんてどうして言い出したのかわからないけど・・・)
  私がここで足止め食らってる間に、ヴィクターはきっとヤングットの街に着いてしまうだろう。
ローズ(そしたら私も一人でヤングットまでいかなくちゃいけないのよね)
ローズ(そうなると・・・道中、武器くらいあった方がいいわよね?)
ローズ(もらえるものはもらっておくべきかしら・・・)
  悩みながら、洗濯物を再開する。

〇山中の川
  言いつけられた仕事がすべて終わったのは、夕方になってからだった。
ローズ「ふう・・・」
  私は見張りの男に声をかける。
ローズ「ねえ、チェスターに会いたいんだけど どこにいけばいい?」
盗賊団の男「お頭(かしら)ならこっちだぜ」

〇森の中の小屋
盗賊団の男「あの小屋が俺たちの拠点なんだ」
盗賊団の男「ま、拠点っつっても盗品をしまっておくだけだけどな」
ローズ「へえ・・・」
  ちょうどその拠点とやらからチェスターが出てくる。
チェスター「お、ヴィクター やっと終わったか」
チェスター「おまえの武器、見繕っといてやったぞ」
  弓矢を渡される。
チェスター「これならヒョロいおまえでも扱えるだろ?」
チェスター「矢、つがえてみろ」
ローズ「つ、つが・・・? えっと、どうやって?」
チェスター「なんだよ そんなとこからわかんねぇのか?」
ローズ「う、うん・・・」
ローズ(だって武器なんて触ったことないもの)
チェスター「貸してみろ こうだよ、こう」
  チェスターが一度お手本を見せてくれ、
チェスター「ほら、おまえもやってみろ」
  弓矢を受け取る。
ローズ「・・・こう?」
  私もチェスターの真似をして、矢を弦に引っかけて、引っ張り・・・
「わっ!!」
  ブスッ!
  ・・・暴発した矢が、木の幹に突き刺さった。
チェスター「あ、危ねぇな! 急に手ぇ離すなよ!」
ローズ「ご、ごめん 思ったより弓が重くて・・・」
チェスター「はあ!? 重いのかよ、これが?」
盗賊団の男「お頭・・・ こいつに武器くれてやるのはいいっスけど」
盗賊団の男「使えるようになるのはまだまだ先っぽいですね・・・」
チェスター「だな・・・」
ローズ「な、何だよ そんな目で見るなよ!」
ローズ(哀れまれるとなんか悔しいじゃない!)
ローズ(でも今後のことを考えると武器は使えるようになっておいた方がいいだろうし・・・)
ローズ(・・・決めた 今日からしっかり弓の特訓をするわ!)
ローズ(そして武器を使いこなせるようになったら・・・)
ローズ(こんなところさっさと出ていってやる!)

〇森の中の小屋
  それから1週間。
  私は盗賊団の雑用係をしながら、空いた時間に弓の稽古をつけてもらった。
ローズ「やった! 当たった!」
盗賊団の男「だんだん命中率上がってきたな!」
盗賊団の男「よし! 次は動いてる的で練習しよう」
盗賊団の男「鹿でも探して──」
チェスター「おい、おまえら」
ローズ「あ、チェスター」
チェスター「今から移動するぞ すぐに準備しろ」
ローズ「移動?」
盗賊団の男「了解っスお頭!」

〇けもの道
  盗賊団がぞろぞろと森を行進する。
ローズ「これ、何なの? どこに向かってるんだ?」
ローズ(もうずいぶん歩いてるけど・・・)
チェスター「西北の街道だよ 金持ちの旅商を移動ルートで待ち伏せするんだ」
ローズ「え? それってつまり・・・人を襲うってこと?」
チェスター「ま、それが俺たちの仕事だからな」
ローズ「そ、それって僕も・・・?」
チェスター「いや、おまえは戦力外」
ローズ「ほっ・・・」
チェスター「なに安心してんだよ やっぱ一緒にくるか?」
ローズ「い、いかないよ」
チェスター「今日の獲物は詐欺から殺人、不当な人身売買までなんでもござれの悪徳商人だ」
チェスター「殺しても良心は痛まないぜ」
ローズ「それでもヤダってば」
ローズ(いくら悪人でも襲撃するような度胸、私にはないわ・・・)

〇森の中
チェスター「この辺りでいいか」
チェスター「おいおまえら しばらくはここを拠点にするぞ!」
チェスター「荷物はあっちにまとめとけ」
盗賊たち「はい!」
チェスター「じゃあ俺たちは持ち場に移動するから」
チェスター「ヴィクター おまえはいつも通りに雑用よろしくな」
ローズ「う、うん」

〇山中の川
  私が逃げ出す素振りを見せないからか、
  最近は仕事のときに見張りをつけられないことも増えてきた。
  一人で水辺にやってきた私は、川で洗い物をしながら、
ローズ(信用されてきたってことは、きっとチャンスでもあるのよね)
ローズ(このまま逃げちゃおうかしら・・・)
ローズ(でもさっきの大移動のせいで、今どこにいるのかさっぱりわからなくなっちゃったのよね・・・)
  もはやどの方角にいけばヤングットの街に辿り着けるのかもわからなくなってしまった。
ローズ(下手に動いてまた迷っても嫌だし・・・)
ローズ(うーん、迷いどころだわ)
  考えながら、じゃぶじゃぶと洗い物を続ける。

〇山中の川
  夕方
ローズ(風が強まってきたわね・・・)
ローズ(あっ!)
  そのとき、ひときわ強い風が吹いて、
  ふわり
  被っていたウィッグが宙に浮き上がった。
  バサ!
  ウィッグが小川に落下し、長い髪が背中に流れ落ちる。
ローズ(いけない! ウィッグが流されちゃう・・・!)
  川面を流れていくウィッグを追いかけようと、慌てて腰を上げると。
チェスター「ヴィクター、終わったぜ そろそろ飯の支度を・・・」
ローズ「あ!」
チェスター「・・・あ?」
「・・・」
ローズ(ま、まずいわ・・・!)
ローズ(バレちゃったかしら? 私が女だって・・・)
チェスター「・・・」
  チェスターは無言で私に近寄ると、
  ぐいっ
  私の腕を引っ張った。
ローズ「!?」
チェスター「動くな」
  そして懐から短刀を取り出し──
  パサッ
ローズ「・・・え?」
  ──私の髪を、切り落とした。
  第6話「下僕の日々」終
  
  第7話に続く

次のエピソード:第7話「盗賊団の少女」

コメント

  • チェスターいい人で良かった
    それにしてもヴィクターはどこにいるんでしょう

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