『怪人会』の存続のためなら!

Nazuna

『怪人会』の存続のためなら!(脚本)

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〇遊園地の広場
市民A「楽しかったね」
市民B「ね!来てよかった!」
市民A「ねえ見て、この写真よくない?」
市民B「どれどれ?」
市民A「あ、ごめんなさい!」
市民A「きゃああああ!」
市民B「怪人よ!早く逃げて!」
市民A「誰か、助けて!!」
???「そこまでだ!」
レッドファイヤー「正義のヒーロー、参上!」
市民A「あ、あなたは!!」
市民A「助けに来てくれたのね、レッドファイヤー!!」
レッドファイヤー「もう大丈夫」
レッドファイヤー「君は離れていなさい」
レッドファイヤー「市民を怖がらせた責任は取ってもらうよ」
レッドファイヤー「喰らえ!」
レッドファイヤー「正義の炎!」
レッドファイヤー「ファイヤ・ブラスター!!」
レッドファイヤー「ふう」
市民A「助けてくれてありがとうございます!」

〇遊園地の広場
レッドファイヤー「いいってことさ」
レッドファイヤー「怪人を倒すのは、ヒーローの使命だからね」
レッドファイヤー「おっと、俺はもう行かなくちゃ」
市民A「もう行っちゃうんですか?」
レッドファイヤー「ああ」
レッドファイヤー「助けを呼ぶ声が聞こえるんだ」
レッドファイヤー「それじゃ!」

〇秘密基地の中枢
会長「・・・今見てもらったのは、五年前の映像だ」
会長「君らも知っての通り、この頃、」
会長「ヒーローという職業はみんなの憧れの的で」
会長「テレビでヒーローの姿を見ない日はなかった」
会長「いわゆる、ヒーロー全盛期というやつだ」
会長「そしてこれが、つい先週、同じ場所で撮られた映像だ」

〇遊園地の広場
市民D「ねえねえ、次どこ行く?」
市民C「そうだなあ、次は・・・」
市民C「うわあ!」
市民D「怪人よ!」
市民C「誰か、助けてくれ!」
市民D「誰か!!」
市民C「誰かいないのか!」
市民C「・・・」
市民C「・・・なあ、この怪人、さっきから全然近づいてこなくね?」
市民D「確かに・・・」
市民D「襲ってくる気配もないし」
怪人ダイヤマン「・・・・・・」
市民C「・・・なんか俺、こいつのことかわいく思えてきたかも」
市民D「はあ、あんたまじい?」
市民C「うん、なんかこの体のフォルムとか」
市民C「ゆるキャラ的なかわいさというか・・・」
市民D「うーん、言われてみれば確かに・・・」
???「何やってるんだ君たち!早く逃げなさい!」
「は、はい!」
市民C「ほら、行くぞ」
怪人ダイヤマン「・・・・・・」

〇秘密基地の中枢
会長「・・・我々『怪人会』は、」
会長「怪人を各地に派遣するのが仕事だ」
会長「ヒーローが怪人を倒して人々を助けることで、」
会長「ヒーローの認知度やイメージの向上につながる」
会長「いわば怪人とは、ヒーローの人気を維持するためになくてはならない存在だったわけだ」
副会長「しかし、ここ2,3年でヒーローの人気は大きく落ち込んでしまいました」
副会長「きっかけとなったのは、大人気ヒーロー、「レッドファイヤー」の引退でしょう」
副会長「それからヒーローの数も減り、」
副会長「我々『怪人会』による、怪人派遣サービスの需要も減ってしまった」
会長「そうだ」
会長「映像のように、怪人が現れてもヒーローが来ないことが増えた」
会長「・・・誰か、『怪人会』の掟を言ってみろ」
???「人を襲う”フリ”はしても、本当に傷つけてはいけない」
会長「そうだ。もう一つは?」
???「ヒーローの人気向上に努め、必要以上に目立たない、です!」
会長「その通りだ」
会長「『怪人会』はこの掟を守り、ヒーローのために尽力してきた」
会長「しかし、このままでは『怪人会』の存続に関わる」
副会長「問題は、「レッドファイヤー」のようなカリスマ性のあるヒーローがいないことです」
会長「そこでだ」
会長「『怪人会』会長であるこの私から、一つ提案がある」
会長「ヒーローがいないなら、作ってしまえばいい」
会長「我々の中からヒーローとして活動する人材を一人選出し、」
会長「我々と戦ってもらおうというわけだ」
???「怪人がヒーローに!?」
???「俺らにだって怪人の誇りってやつが・・・」
???「いやでも、『怪人会』の存続のためなら・・・」
副会長「皆さん、静粛に!」
会長「勿論、怪人だということは隠して活動してもらう」
会長「実は、すでに一人、目星はつけていてね」
  誰だ・・・?
会長「それはね、サムライン君、きみだよ」
サムライン「・・・え?」
サムライン「僕ですか!?」
???「サムライン?」
???「あいつまだ入会して二か月の新人だろ?」
会長「彼は、怪人の中でも人間らしい姿をしているし、」
会長「ヒーローらしく武器も扱える」
会長「何よりまだ現場に出た回数が少ない」
会長「怪人だとばれる危険性も低いだろう」
会長「どうかな、サムライン君?」
サムライン「ええ・・・?」
会長「ヒーローとして怪人を倒し、ヒーローの株を上げる」
会長「そうすればヒーローの人気も戻り、怪人の需要も元通りさ」
会長「やってくれるね?」
サムライン(パワハラだ・・・)

〇駅前広場
  翌日
市民E「それでさー」
市民E「え?」
市民F「怪人よ!」
市民E「誰か、助けてくれ!」
  そこまでだ!
市民E「こ、この声は?」
サムライン「ヒーロー、参上!」
市民F「きゃあああ!仲間が来たわ!」
サムライン「いや違うんです、ちょっと待って!」
サムライン「私は、貴方たちを助けるために来たんです!」
市民F「嘘よ!そう言って私たちを騙すつもりでしょう!」
サムライン「いいえ、そんなことはありません!」
サムライン「今から私が、あの怪人を倒して見せます!」
クワガタン(よし、いいぞ!その剣で俺のことを斬るんだ!)
サムライン(相手は、いつもお世話になっているクワガタン先輩・・・)
サムライン(・・・でも、『怪人会』の存続のために!)
クワガタン「グッ!」
観衆「おお!」
クワガタン(いいぞ、そのままもう一発!)
クワガタン「グアア!」
サムライン「あ、すみません!ごめんなさい!」
???「なんか今、怪人のことを心配してなかったか?」
???「やっぱり、仲間なんじゃないかしら・・・」
クワガタン「おいバカ、何か言ってフォローしろ!」
サムライン「あ、ああ、えっと」
サムライン「・・・貴方たちのことが心配で、大丈夫ですか、と声をかけたんですよ」
サムライン「あはははは・・・」
???「じゃあ早く、その怪人を倒しなさいよ!」
クワガタン「さあ、もう一回俺を斬るんだ!」
サムライン「で、でも・・・」
クワガタン「俺は大丈夫だから、早くしろ!」
サムライン「・・・うおおおおお!」
???「やった!」
???「怪人が逃げていったぞ!」
サムライン「ふう・・・」
市民E「あ、あの」
市民F「疑ったりしてすみませんでした!」
サムライン「ああ、いえ・・・」
サムライン「お礼には及びませんよ」
市民F「あの、よければお名前を」
サムライン「名前・・・」
サムライン(まずい、ヒーロー名を考えていなかった)
サムライン(怪人名をそのまま言うわけにもいかないし・・・)
サムライン「私の名前は・・・」
サムライン「『サムライマン』です!」
サムライン(そのままじゃないかー!)
「『サムライマン』、ありがとう!」

〇秘密基地の中枢
  その日の夜
サムライン「ふう・・・」
クワガタン「よお、おかえり」
サムライン「先輩!」
サムライン「傷、大丈夫なんですか?」
クワガタン「こんなの、ほっとけば治るさ」
サムライン「すみません・・・」
クワガタン「気にすんな。いいヒーローっぷりだったぜ」
クワガタン「そういえば、これもう見たか?」
クワガタン「小さくだけど、お前のこと載ってるぜ」
  新人ヒーロー、『サムライマン』!!
  見た目は怖いが心は優しい!?
サムライン「本当だ」
サムライン「でも・・・」
クワガタン「どうかしたのか?」
サムライン「怪人の僕がこんなに目立っていいのかな」
クワガタン「いいのいいの。今のお前はヒーローなんだから」
クワガタン「やられ役は俺らに任せて」
クワガタン「ヒーローの人気を取り戻してくれ」
サムライン「・・・頑張ります」

〇秘密基地の中枢
  しばらくすると・・・
  新人ヒーロー、サムライマンが人気上昇中?
  謎の素顔に迫る!
???「サムラインのやつ、雑誌に特集組まれてるぞ!」
???「すげえ、怪人が特集組まれるなんてな・・・」

〇秘密基地の中枢
  またしばらくすると・・・
???「おい、テレビつけてみろ!」
???「なんだ、何かあったのか?」
???「いいから!」

〇テレビスタジオ
ニュースの司会「続いてのニュースはこちら!」
ニュースの司会「大人気ヒーローサムライマン、その魅力とは?」
ニュースの司会「3か月前に突然現れた新人ヒーロー、」
ニュースの司会「その名も、『サムライマン』」
ニュースの司会「彼はなぜこんなにも人気なのでしょう?」
ニュースの司会「まずは、こちらの映像をご覧ください!」

〇渋谷駅前
デビルドクロマン「はっはっはっ・・・」
デビルドクロマン「サムライマン、貴様の旅はここで終わりだ!」
サムライン「そんなことはさせない!」
???「サムライマン、こっち向いてー!」
???「かっこいいー!」

〇テレビスタジオ
ニュースの司会「こちらは、先日撮影された、サムライマンと怪人の戦いの様子です」
ニュースの司会「周りにはサムライマンの戦いを一目見ようと多くの人が集まっており、」
ニュースの司会「その人気ぶりが伺えます」
ニュースの司会「従来のヒーロー像にとらわれない斬新な見た目と」
ニュースの司会「四本の剣を使って戦う新しい戦闘スタイルが」
ニュースの司会「注目を集めているのは間違いありません」

〇秘密基地の中枢
???「すげえ!サムラインがテレビに出てるぞ!」
デビルドクロマン「大人気じゃねえか」
サムライン「先輩!」
サムライン「その節はどうも・・・」
デビルドクロマン「その調子で頑張ってくれよ」
サムライン「あ、はい」
怪人ダイヤマン「・・・頑張れよ」
サムライン「あ、ありがとうございます」
サムライン(あの人、喋れたんだ・・・)
会長「やあ、サムライン君」
サムライン「会長!?」
会長「調子はどうだ?」
サムライン「まあ、ぼちぼちです・・・」
会長「お前のおかげで、最近は他のヒーローも精力的に活動しているみたいで、」
会長「『怪人会』の仕事も増えてる」
会長「その調子で、「レッドファイヤー」ぐらい大物になってくれ」
サムライン「はあ、頑張ります」
会長「期待してるよ」

〇秘密基地の中枢
  そんなある日・・・
副会長「会長!」
会長「おう、どうした」
副会長「大変です、これを!」
会長「ん?新聞?」
会長「・・・これは!」
会長「まずいことになったな」
会長「今すぐサムラインをここに呼べ!」

〇秘密基地の中枢
会長「来たか」
サムライン「あの、何かあったんでしょうか?」
会長「これを見ろ」
  人気ヒーローサムライマン、怪人の仲間だった?怪人たちと話している衝撃の写真流出!
サムライン「え!?」
会長「お前が怪人だということがばれた。しばらくは外に出るな」
サムライン「そんな・・・」
会長「お前のヒーロー活動も、終了だろうな」
会長「これで、『怪人会』もとうとう潮時かな・・・」

〇渋谷駅前
???「おい、ニュース見たか?」
???「サムライマンが怪人だったなんて・・・」

〇テレビスタジオ
ニュースの司会「ある一枚の写真が、世間をざわつかせています」
ニュースの司会「それがこちらの写真」
ニュースの司会「ヒーロー界の新星、サムラインマンが、怪人たちと談笑しているように見えます」
ニュースの司会「世間では「サムライマンは怪人なのではないか」という意見が大半を占め、」
ニュースの司会「本人による説明が待たれます」

〇SNSの画面
???「サムライマン怪人だったとかショック・・・」
???「仲間と示し合わせて戦ってたってこと?」
???「怪人が目立ちたくなっちゃったんだろうね」
???「ってか怪人ならヒーローに倒してもらった方がよくない?」

〇秘密基地の中枢
会長「ネットでも話題になってるな」
サムライン「やっぱり怪人の僕がヒーローをやろうなんて」
サムライン「おこがましかったですかね」
会長「・・・お前を選んだ俺にも責任はある」

〇テレビスタジオ
ニュースの司会「元ヒーロー、「レッドファイヤー」さんをスタジオにお呼びしています」
ニュースの司会「お話を聞いてみましょう」
ご意見番「いやーこれは駄目ですよね」
ご意見番「怪人がヒーローになろうなんて何考えてるんだか」
レッドファイヤー「・・・・・・」
レッドファイヤー「私が引退した理由をご存じですか」
ご意見番「いや、知らないですね」
レッドファイヤー「ヒーローになった当初は、怪人を倒すことで人気を得て、それが当たり前だと思っていました」
レッドファイヤー「ですが数年間活動を続けてきて、ふと思ったんです」
レッドファイヤー「怪人は本当に、悪者なんだろうかと」
ご意見番「そりゃあそうですよ」
レッドファイヤー「果たしてそうでしょうか?」
レッドファイヤー「思えば、私は怪人が市民に危害を与えているのを見たことはただの一度もありませんでした」
レッドファイヤー「ヒーローと怪人が戦えばいつも勝つのはヒーローで、」
レッドファイヤー「傷を負うのは怪人です」
レッドファイヤー「私は、ヒーローとしての立場に疑問を感じ、活動を引退することを決めました」
レッドファイヤー「引退してから、分かったことがあります」
レッドファイヤー「・・・・・・」
レッドファイヤー「怪人なくして、ヒーローは成り立たないのです」

〇秘密基地の中枢
サムライン「レッドファイヤーさん・・・」
会長「・・・彼の言葉には影響力がある」
会長「これで、怪人に対する風向きが少しは変わるかもな」
サムライン「それでこそ」
サムライン「ヒーローをやってきた甲斐があります」

〇SNSの画面
???「レッドファイヤー何言ってんの?」
???「いや、でも一理あるぞ」
???「怪人なくしてヒーローは成り立たない、か」
  レッドファイヤーの言葉により、
  世間の意見はサムライマン擁護に少しずつ傾いていった
  そして・・・

〇遊園地の広場
???「サムライマン、いけー!!」
???「クワガタン、負けるな!!」
  ヒーローが怪人を一方的に倒すような戦いはなくなり、
  怪人にもファンがつくようになった
クワガタン「まさか怪人が応援される日が来るなんてな」
サムライン「ヒーローをやってきた甲斐がありました」
  サムラインは今も、トップヒーローとして戦っている
  『怪人会』の存続のために・・・

コメント

  • 世の中にはスポットの当たりづらい仕事も多くありますが、どんなものであっても重要だと改めて感じさせてくれる作品でした^^
    見た目は怖いけど心優しい怪人たちも、とても魅力に映りました!

  • ギャグかと思ったら、意外と考えさせる内容でした。
    白黒付けることが正しいのか?悪とされる側に関わることは、悪とイコールなのか?
    とりあえずサムライン、オツカレ!

  • 子どもの頃、だれも鬼をやりたがらなかったのを思い出しました。
    鬼がいなければ遊びは成立しないので、最終的に鬼を引き受けてくれる子を、どこか「偉いな」と感じたのを覚えています。
    「怪人会」が本当の悪ではないように、必要だから演じていることって案外多いのかもしれません。

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