二話 もう一人のエージェント(脚本)
〇警察署の医務室
中井 雛「よし、チェック完了! 超健康だよ、次も問題なく身体能力向上装置が使えると思う」
黒沼 晶「いつもありがとうございます」
中井 雛「いえいえ! これも仕事だからね」
彼女は地球外生命体対策組織、「リベリオン」の研究員兼保険医である中井 雛 先生。
そして、身体能力向上装置を開発した張本人でもある。
彼女にはギャラジーと戦ってきたこの数年間、ずっとお世話になっている。
中井 雛「昨日の戦闘も、頑張ったね」
〇渋谷のスクランブル交差点
〇警察署の医務室
黒沼 晶「・・・いいえ」
中井 雛「ある程度の犠牲は仕方がないよ」
中井 雛「上の人たちがそれを責めるのは、君のことをなんでもできるヒーローだと思っているから。 みんなと同じ人間なのにね」
先生だけは俺に優しくしてくれる。
きっと、俺のモチベーションやメンタルの保護をするためなのだろうが。
それでも、自分の心は先生の言葉に守られている。
もし先生が義務的に言っているとしても、その事実は変わらなかった。
黒沼 晶「そういえば、昨日もう一人のエージェントに会いました。あいつは何者ですか」
中井 雛「杏ちゃんのことかな? 杏ちゃんはすごく良い子だよ、優しすぎるくらい」
黒沼 晶「あいつが!?」
渋屋 杏「失礼します」
中井 雛「お、噂をすれば。 晶くんと一緒で、身体能力向上装置使用後の検査だね?」
渋屋 杏「はぁ・・・お前もいたのね。 できるだけ早く終わらせてください、お願いします」
黒沼 晶(こいつが優しすぎるって、流石の先生も甘く見過ぎじゃねーのか・・・?)
渋屋 杏「そういえば昨日、一般人を見殺しにしたわね」
渋屋 杏「弱い上に人の命を守れないなんて、心底残念。 同じエージェントとして恥ずかしいわ」
中井 雛「杏ちゃん、そこまで言わなくても・・・!」
渋屋 杏「私たちエージェントの役目は人を守ること。私利私欲のために戦ってるなら、この組織から抜けてくれない?」
渋屋 杏「お前がいなくてももう大丈夫だから」
中井 雛「杏ちゃん!」
黒沼 晶「昔、お前と同じことを言っていたエージェントがいた。 人を守るために戦って、人のために死んだ」
黒沼 晶「その結果、しばらくの間日本には大型ギャラジーと戦える人間はいなくなり、被害者は増加した。 俺が何を言いたいか分かるか?」
渋屋 杏「自分を正当化したいだけでしょ。 お前の弁明なんか聞きたくもない」
中井 雛「もう、いつかは二人で共闘するんだよ!? 仲良くしなさい!」
中井 雛「あと、杏ちゃんは検査するからこっち!」
渋屋は俺を睨んだ後、先生に連れられて奥の部屋へと入っていった。
渋屋は見た目だけで言うと、高校生や大学生くらいだ。
少なくとも俺と五歳は離れているだろう。
なら、正義だけを追いかけていたい彼女の気持ちも理解できる。
若気の至りというものだろう。
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