怪人サポートサービス

ササキタツオ

怪人サポートサービス(脚本)

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〇学校の屋上
  晴天の屋上。そこは・・・・・・
  告白の名所であった。
男子1「好きだ!」
男子1「俺と付き合ってくれ!」
女子A「それは・・・・・・」
「ちょっと待ったああああああ!」
怪人A「その告白、待った!」
男子1「出たな! 怪人!」
女子A「きゃー」
男子1「大丈夫! 俺が守る!」
怪人A「守れるかな!? 俺は怪人!」
男子1「黙れ! 必殺。連打拳!」
怪人A「うわっ、うううううう、」
怪人A「(殴るなんて聞いてないよ・・・・・・)」
男子1「どうだ!?」
怪人A「ま、参りました・・・・・・」
女子A「よ、弱っ・・・」
男子1「怪人も退治した」
男子1「告白の返事。聞かせてくれないか?」
女子A「それは。もちろん・・・・・・」
女子A「お断りです!」
男子1「え!?」
女子A「さよなら」
  彼女は去ってしまった。
男子1「・・・・・・・」
怪人A「あの・・・・・・」
男子1「お前のせいだ!」
怪人A「えっ!?」
怪人A「ええええええええっ!?」
男子1「必殺! 撲殺拳!」
怪人A「ううううう。ボロボロだ・・・・・・」
男子1「こんなことをしている場合じゃない」
男子1「彼女を追いかけないと!」
  彼も去って行った。
怪人A「俺、何しに来たんだろ・・・・・・」
甲斐 亨「ああ、スーツアクターって辛い」
甲斐 亨「怪人役も楽じゃないな」
  この物語は、怪人役に扮して他人の恋路の手伝いをする男子、甲斐亨の奮闘記である。

〇学校の部室
甲斐 亨「あー。疲れた」
桃山 志乃「亨。何疲れてんの?」
甲斐 亨「え。それは・・・・・・」
甲斐 亨「あれだよ」
甲斐 亨「新作映画作らないとなって」
桃山 志乃「映研だもんねえ」
甲斐 亨「まあ、なあ」
桃山 志乃「いつになったら私をヒロインにしてくれるの?」
甲斐 亨「え?」
桃山 志乃「冗談!」
甲斐 亨「志乃・・・・・・お前な」
  志乃と俺は、幼なじみだった。
甲斐 亨「(なんでコイツ、部室にいるんだ?)」
桃山 志乃「ねえ知ってる!?」
甲斐 亨「え?何?」
桃山 志乃「この学園に伝わる、怪人の噂」
甲斐 亨「ああ。怪人が現れると恋愛が成就するっていう・・・・・・?」
桃山 志乃「そうそう」
甲斐 亨「それがどうしたんだよ」
桃山 志乃「えっとー--」
甲斐 亨「(まさか、怪人が俺だって気づいて・・・)」
桃山 志乃「私と亨のところには現れないなーって」
甲斐 亨「は? それは現れないだろ」
桃山 志乃「なんで?」
甲斐 亨「告白とかしてないし」
桃山 志乃「そっかあ」
甲斐 亨「あー。それより新作考えないと」
桃山 志乃「わかった。またねー」
  志乃は、鈍感だった。全てにおいて。
暁 省吾「よ! 亨!」
甲斐 亨「省吾。おつかれー」
暁 省吾「いや。いま廊下で志乃ちゃんとすれ違ったけど」
暁 省吾「やっぱ。かわいいな」
甲斐 亨「お前、そればっか」
甲斐 亨「少しは新作考えてくれよ」
暁 省吾「新作は、もう亨が考えてんだろ?」
暁 省吾「俺は恋に忙しいの」
甲斐 亨「は!?」
暁 省吾「そこで、折り入って、頼みがある」
甲斐 亨「なんだよ・・・・・・・」
暁 省吾「怪人サポートサービス」
  俺はドキリとした。気づかれたか!?
暁 省吾「お前が窓口だって噂、本当か?」
甲斐 亨「(バレてなかった・・・)」
甲斐 亨「まあそうだけど」
暁 省吾「俺の恋もサポートしてくんない?」
甲斐 亨「え。相手は?」
暁 省吾「そんなの、志乃ちゃんに決まってるだろ」
甲斐 亨「決まってるか」
暁 省吾「決まってる」
甲斐 亨「うーん」
暁 省吾「どうだ? 頼めるか?」
甲斐 亨「省吾は、自信家なんだから、そんなサービス、頼らなくても・・・・・・・」
暁 省吾「俺、こう見えて超奥手なのよ。繊細さん」
甲斐 亨「絶対、そんなことねえ」
暁 省吾「とにかく、依頼よろしく頼むわ」
甲斐 亨「え・・・・・・・・」
  省吾はそういうと、去って行った。
甲斐 亨「全く・・・・・・どいつもこいつも・・・」

〇公園のベンチ
  帰り道。ずっと考えていた。
  省吾の告白の件。どうする? 志乃の事。どうする?
  だけど、答えは見えなかった。
桃山 志乃「亨! おつかれー」
甲斐 亨「おお。志乃。何? いま帰り?」
桃山 志乃「まあねー」
甲斐 亨「じゃあ、さっさと帰れ」
桃山 志乃「亨、待ってたんだよ」
甲斐 亨「え?」
桃山 志乃「私、色々考えたんだけど」
桃山 志乃「やっぱりね」
桃山 志乃「どう考えても」
桃山 志乃「映画のヒロインやりたい」
甲斐 亨「は?」
桃山 志乃「ダメかな?」
甲斐 亨「ダメじゃないけど」
桃山 志乃「亨が監督だよ?」
甲斐 亨「ダメじゃないけど」
桃山 志乃「じゃあ、本決まりだね!」
甲斐 亨「それ、ずっと考えてたの?」
桃山 志乃「うん」
甲斐 亨「なんだかすごいな」
桃山 志乃「え。どこが?」
甲斐 亨「全体的に」
桃山 志乃「褒められちゃった」
甲斐 亨「なあ。志乃」
桃山 志乃「ん?」
甲斐 亨「いや。その」
甲斐 亨「こんなこと聞くのなんなんだけど」
甲斐 亨「好きなやつとかいるの?」
桃山 志乃「え」
甲斐 亨「いや。だから・・・・・・・」
桃山 志乃「亨のバカ!」
  志乃は走り去っていった。
甲斐 亨「え」

〇学校の屋上
  翌日。志乃を呼び出した。
  怪人の名前で。
  これは、告白の応援。俺は怪人。恋愛サポート。それが俺の・・・・・・仕事。
暁 省吾「志乃ちゃん」
桃山 志乃「省吾くん」
暁 省吾「今日は来てくれてありがとう」
桃山 志乃「え」
暁 省吾「いや」
桃山 志乃「え」
暁 省吾「あ。だから。いや」
桃山 志乃「あ。うん」
暁 省吾「(まだかよ、怪人・・・・・・)」
  俺は、出るタイミングを逸していた。
暁 省吾「志乃ちゃんって、さ」
暁 省吾「かわいいよね」
桃山 志乃「え。そうかな」
暁 省吾「そうだよ」
暁 省吾「亨がヒロインにしたいわけだ」
桃山 志乃「え。亨ぜんぜん映画撮ってくれないよ?」
暁 省吾「そりゃ。そうだろうな」
桃山 志乃「え。なんで?」
暁 省吾「それは。亨が」
「ちょっと待ったああああ!」
怪人A「怪人、参上!」
暁 省吾「お。出た出た」
桃山 志乃「本当に出るんだ・・・」
怪人A「省吾君。君は回りくどい男だね」
怪人A「私が来たからには、絶体絶命!」
怪人A「さあ。どうする?」
暁 省吾「あのさ。俺、ほんとは知ってんだ」
怪人A「え」
桃山 志乃「何を?」
暁 省吾「怪人の中身」
怪人A「そ、それは・・・・・・」
桃山 志乃「え。誰・・・・・・なの?」
暁 省吾「俺の罠にまんまと引っかかったバカなヤツ」
暁 省吾「そんな奴一人しかいねえ」
暁 省吾「なあ、亨!」
怪人A「え」
桃山 志乃「え!?!?!?!?!」
怪人A「省吾、貴様! 裏切るか!」
暁 省吾「鈍感なお前に代わって、俺が怪人になってやったんだよ」
怪人A「は?」
暁 省吾「映画のヒロインは志乃ちゃんだけろ? それって好きだってことだよ」
怪人A「そ、それは・・・・・・・」
暁 省吾「じゃあ、あとは二人で話しなさいな」
  省吾はそういうと、去って行った。
桃山 志乃「ほ、本当に、亨、なの?」
  俺は、言うか言わないか迷った。
桃山 志乃「亨なの!?」
怪人A「俺は・・・」
  決意した、俺は、怪人スーツを脱いだ。
桃山 志乃「亨・・・」
甲斐 亨「うん・・・俺」
桃山 志乃「学校の人たちの恋を叶えていたのも?」
甲斐 亨「ぜんぶ俺」
甲斐 亨「もともとは、映研に伝わる、伝統なんだ」
甲斐 亨「怪人の格好をするのも昔はウケたらしい」
桃山 志乃「そういうことじゃない」
桃山 志乃「わたしがききたいのは」
桃山 志乃「私のことどう思ってるの!?」
甲斐 亨「それは・・・・・・」
  そこへもう一人の怪人が現れた。
怪人B「ハッキリしない男、甲斐亨!」
怪人B「ハッキリしないなら、この私が、彼女を奪う」
甲斐 亨「え」
桃山 志乃「えー---」
怪人B「さあ。どうする!?」
甲斐 亨「俺は、俺は、俺は、」
甲斐 亨「志乃が好きだ!!!!!!!!」
甲斐 亨「変身!」
桃山 志乃「おー」
怪人A「速攻で、必殺!連打拳!」
怪人B「う、うわー-ーなんだその攻撃!」
怪人B「(殴るなんてズルいいいいいい)」
怪人A「はあ。逃げて行った・・・」
桃山 志乃「亨。ありがと」
甲斐 亨「え。あ。いや」
桃山 志乃「それに・・・・・・・」
桃山 志乃「嬉しかったよ」
甲斐 亨「え?」
桃山 志乃「亨! 大好き!」
甲斐 亨「俺も・・・・・・・」
甲斐 亨「好きだ!」
  本当にこれでいいのか。わからない。
  でも恋愛成就の怪人はまだ続けて行こう。
  俺は、志乃の手を取って、そう心に誓った。

コメント

  • 他人の恋の成就に協力してきた主人公は「どのような結末をむかえるのか」という目線で読ませていただきました。
    しかし、本当に恋のキューピットとなるのは主人公ではありませんでした。
    なるほど「怪人サポートサービス」


  • お友達も、享くんの気持ちがわかっていたから頼んだんでしょうね。
    最終的にハッピーエンドでよかったです。
    人の恋の成就だけじゃなくて、自分の恋も大切にしなくちゃですよね。

  • 怪人Aも怪人Bも仲いいですね。怪人 B の正体もたぶんわかっちゃいました。彼のように背中を押して応援してくれる、友達思いの友人がいるって幸せですね。

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