〇豪華なベッドルーム
アップル「揺れ動く女心に取り憑いて、愛を壊す魔霊は許せない」
アップル「ウェディング・アップルが不滅の愛を教えてあげるわ」

〇豪華なベッドルーム
　　アップルが口上を唱えると、世界がモノクロームに変化した。
ブクロク「ほざくなぁぁぁ～！」
　　ブクロクがアップルに黒いオーラを放ちながら突進する。
アップル「わっ」
　　アップルは後退してブクロクの攻撃を避けつつも、呪文を唱えた。

〇水玉2
アップル「お色直し！ ア・ブライズ・チェンジ・オブ・コスチューム！」

〇豪華なベッドルーム
ブクロク「俺様に逆らっても無駄だ」
　　ブクロクは先の尖った杖を構えると、アップルに攻撃を繰り出す。
　　次々と襲いかかるブクロクの攻撃を寸前のところでかわすアップル。
　　アップルは大きく後ろに下がると、ウェディング・ベルを手に取った。
アップル「ウエディングベル！」
ブクロク「ウオォォ～～」
アップル「美久さん、千佳さんを信じてあげて！」
　　リン、リン、リン
ブクロク「ウオォォ～～」
　　ブクロクから黒いオーラが吹き出し、取り込んでいた美久の体が分離する。
加納美久「うわぁぁぁ～～」
　　ベルの音が鳴り響き、美久の中に千佳との思い出の日々が蘇る。

〇豪華なベッドルーム
佐伯千佳「あなたの絵、美しい。 でも、綺麗に整いすぎている」
加納美久「え？」
佐伯千佳「魂のほとばしりが感じられない」
加納美久「魂のほとばしり!?」

〇豪華なベッドルーム
加納美久「日展、また落ちちゃった・・・」
佐伯千佳「あなたはデッサン力がある。 足りないのは絵に対する情熱よ」
加納美久「情熱？」
佐伯千佳「私が教えて上げる」
加納美久「！」

〇豪華なベッドルーム
佐伯千佳「止めてはダメ。諦めないで。 もっと大胆に！ 心を込めて！」
加納美久「はい！」

〇豪華なベッドルーム
佐伯千佳「美久、あなたを初めて見た時から」
加納美久「千佳、今は何も言わないで」
佐伯千佳「あなたは私だけのもの」
　　千佳はそっと美久をベッドに引き寄せた。

〇豪華なベッドルーム
「ウワァァァ～」
アップル「ラブリィ・ショット!! こっちを向いて、はい、ＬＯＶＥポーズ」
ブクロク「ギャオオ～ッ！」
　　絶叫するブクロク。その体から夥（おびただ）しいオーラが噴き出した。
　　オーラは黒い渦となり、やがて塵（ちり）と化して消失した。
アップル「悪霊、消滅～!!」
アップル「以上をもちまして、本日の事件は滞りなく解決し、お開きでございます」

〇豪華なベッドルーム
　　アップルが口上を言い終えると、モノクロームの世界が再び色を取り戻した。
アップル「あれ？ 魔霊は？」
女神「よくやりました。アップル」
アップル「あなたは・・・誰なの？」
女神「あなたの遠い遠い祖先です」
アップル「ご先祖さま？」
女神「今、魔霊たちは地上の人々を悪の心に染めようとしています。危険が迫っています」
女神「魔霊の出現に気づかぬあなたはまだ未熟者。一人で立ち向かうのは難しい」
女神「新たな仲間の愛天使を探すのです」
アップル「え？ 探せって言われても・・・どうしたら？」
女神「困った人を救いたい。そう強く思った時、愛天使の血は発露します」
アップル「・・・変身できたのはその所為なの？」
女神「そのような人が必ずいます。 見つかるはずです」
アップル「・・・・・・」

〇林道
　　美久のアトリエの周囲に漂っていた黒い霧がみるみる薄れていく。
　　木陰に倒れていた千佳が、ゆっくりと体を起こした。
佐伯千佳「・・・私、何をしていたのかしら？」

〇謎の施設の中枢
？？？「ブクロク、惨めに逃げ帰ってきたな」
ブクロク「うるせえ！」
？？？「愛天使の正体は掴めたのか？」
ブクロク「うるせえ、うるせえ！」
？？？「フッ、手柄を焦ると失敗に終わる。 悪しき手本だ」
「はっははは・・・」
ブクロク「ケッ、ちょっとばかし油断しただけだ」
ブクロク「今度は必ず愛天使の正体を暴いて、ぶっ殺してやるぜぇ！」

〇華やかな裏庭
　　数日後。林檎は美久の個展に招かれて画廊を訪れた。
　　画廊の庭先には、千佳をモデルに絵を描く美久の姿がある。
朝陽林檎「女性同志の愛ってあるものなのね」
　　ブオォォォン！
　　バイクに乗ってきた優斗が、飛び降りてヘルメットを外した。
朝陽林檎「・・・なに？」