黒兎少女

武智城太郎

第九話 先輩(3)(脚本)

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〇電車の座席
サンドル「美夜子という女の家まで、どのくらいだ?」
柏木倫子「二度乗り継いで、到着まで二時間くらいかしら」
柏木倫子「東京郊外のベッドタウンね」
柏木倫子「森の中の怪しい小屋に住んでるってわけではなさそう」
サンドル「住みかは関係ない。罠である可能性は変わらん」
柏木倫子「・・・・・・」
サンドル「そこまで緊張しなくていい。やたらと徒党を組みたがる魔女もいるからな」
柏木倫子「そうね」
柏木倫子(どんな魔女なのかしら? 年は?)
柏木倫子(私とちがって、経験豊富な大人の魔女であることは間違いなさそうだけど・・・)
  倫子は、メモ帳を取り出して開く。
  昨夜、質問事項や禁忌に触れるかもしれないワードなどを書き出しておいたのだ。
柏木倫子(うっかり失礼に当たる言葉を口にしたら、どんな制裁を受けるかわからないわ)
柏木倫子「あ・・・!」
サンドル「どうした?」
柏木倫子「菓子折りって用意したほうが──」
サンドル「いるわけないだろ」

〇駅のホーム

〇田舎駅の改札
柏木倫子「あとは歩きね。この近くのはずだけど」
ジュリアン「ようこそおいでくださいました」
柏木倫子「どうして今日だとわかったの? 事前の連絡は一切していないのに」
ジュリアン「ミス美夜子は優秀な魔女でございますから。さあ、こちらです」

〇大きいマンション
  着いた先は、駅前の高級マンション。

〇高級マンションのエントランス

〇エレベーターの中
  エレベーターで十五階まで登り──

〇マンションの共用廊下

〇玄関の外
  1513号室のドアの前までくる。
ジュリアン「さあ、どうぞ。お入りください」
  ジュリアンがドアを開けてくれる。
サンドル「油断するな」
柏木倫子「わかってるわ」
柏木倫子「お邪魔します」

〇シックな玄関
???「いらっしゃーい!」
美夜子「初めまして、あたしが美夜子よ」
柏木倫子「ど、どうも、柏木倫子です。これは使い魔のサンドル」
美夜子「倫子ちゃん、若いのねぇ! カワイイ!」
美夜子「夢で見た以上だわ!」
柏木倫子(これは予想外だわ)
柏木倫子「美夜子さん、予知夢を見ることができるんですか?」
美夜子「ええ、得意なの。さあ、上がって」

〇家の廊下

〇豪華な部屋
美夜子「さあ、そこに座って」
柏木倫子「どうも」
  倫子と美夜子は、ソファーに対面して座る。
美夜子「高校一年生ですって? じゃあ十六歳?」
柏木倫子「まだ十五です」
美夜子「若いわねえ。いいわねえ・・・!」
美夜子「あたしが会った中で、いちばん若い魔女だわ」
美夜子「契約したのはいつ?」
柏木倫子「去年の六月です」
美夜子「それじゃあ、まだ一年とちょっとの新人さんね」
柏木倫子「はい。若輩です」
美夜子「〝じゃくはい〟ってどういう意味?」
ジュリアン「さあ、どうぞ」
美夜子「え! あなた一人で召喚の儀式をしたの? まだ中学生だったんでしょ?」
柏木倫子「はい、自分で文献を調べて」
美夜子「頭いいのねえ。あたしなんか、ぜ~んぶ先輩魔女にお任せだったもん」
柏木倫子(先輩魔女・・・)
美夜子「ねえねえ、倫子ちゃんはどうして魔女になったの?」
柏木倫子「それは・・・両親が離婚して家が貧乏で・・・」
美夜子「うん。それから?」
柏木倫子「それから・・・中学に入ったら、いじめに合って・・・」
美夜子「けっこうヒドかったの?」
柏木倫子「リーダーの女子は優等生で、教師たちの信頼もあったから訴えても無駄で」
柏木倫子「・・・屈辱的でした。それで彼女たちを退治したくて」
美夜子「魔女になったのね。その子たちはどうなったの?」
柏木倫子「殺しました、三人とも全員」
美夜子「それってもしかして、〈清廉女子中学生猟奇惨殺事件〉のこと?」
柏木倫子「はい。まだ魔女になりたてで、後始末の仕方もわからなくて。マスコミに騒がれてしまいました」
美夜子「そうなんだ。倫子ちゃん、けっこう大物なのねぇ!」
柏木倫子「いえ、未熟者もいいところです。魔法も失敗ばかりで」
美夜子「ねえねえ、どうしてその子たちは倫子ちゃんをいじめたりしたのかしら?」
柏木倫子「それはわたしが・・・友達もいなくて暗くて・・・」
美夜子「それだけじゃないでしょ?」
柏木倫子「わたしも怪訝に思って、魔法で自白させました」
柏木倫子「リーダーの女子が言うには、わたしの顔が気に入らないと。その・・・」
美夜子「うん。なに?」
柏木倫子「・・・私の顔立ちが綺麗すぎるのが許せないと」
美夜子「倫子ちゃんの容姿に嫉妬してたのね。女同士だとよくあることだわ」
柏木倫子(いかに先輩魔女の質問とはいえ、素の自分が、こんな恥ずかしい情報をペラペラとしゃべるはずはない)

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