第十話(最終話) 先輩(4)(脚本)
〇豪華な部屋
美夜子「その蛇は猛毒よ。あと十五分であんたは死ぬわ」
柏木倫子「な、なんで・・・?」
美夜子「しらじらしい」
美夜子「人の縄張り荒らしたうえに、こんなマネしといて!」
美夜子は、ワンピースの背中側をガバッとはだける。
左の肩甲骨あたりに、卵大の腫瘍ができている。
美夜子「あんたの〈呪い返し〉のせいで、こんなになったのよ!」
柏木倫子(はあ・・・)
柏木倫子(ほとんどの呪力は小柴加奈恵にむかったけど、一部は術者である美夜子さんのほうにも送り返してしまっていたんだ・・・!)
柏木倫子(異論の余地なく、自分の未熟さが引き起こしたトラブルだ)
柏木倫子(意図的にやったことではないけど、それを正直に弁解すべきだろうか?)
柏木倫子(そんな言い訳が通用する相手ではなさそうだけど・・・)
倫子は、毒消しの万能薬を取り出して飲む。
美夜子「なにか飲んだわね。でもこの蛇毒は専用の解毒剤以外では消せないわ」
柏木倫子(頭がクラクラしてきた)
倫子は椅子から床に崩れ落ちる。
美夜子「ふふ・・・」
サンドルはまだ、ナイフでテーブルに釘付けにされたままだ。
美夜子「ジュリアン、さっさとこのドラ猫を始末しちゃって」
ジュリアン「かしこまりました、ミス美夜子」
とどめを刺そうとナイフを引き抜いた瞬間──
サンドルは躍りかかって、ジュリアンの腕に嚙みつく。
ジュリアンは力任せに腕を振り回して、サンドルを払う。
サンドル「かかって来な、坊主」
一方、美夜子は、テーブルに並ぶカップや皿を、あわただしく片付けている。
美夜子「フンフン・・・!!」
美夜子「あら、軽い」
倫子を抱え上げ、テーブルの上に仰向けに横たわらせる。
美夜子「はい、脱ぎ脱ぎしましょーね♡」
美夜子はむさぼるようにその胸を愛撫し、キスをいくつも落としていく。
倫子は意識はあるものの、身体がだるくて抵抗できない。
美夜子「どう? あたしの妹になるって誓うなら解毒剤をあげるわ」
倫子は声が出ないのか、口をパクパクと動かしている。
美夜子「え? なに?」
柏木倫子「ヘンタイ、レズ女・・・」
美夜子「ああそう! だったらこのまま死──」
倫子は口から火を吹き、美夜子の顔に浴びせかける。
美夜子「ヒィヤァァァーーッッ!!」
美夜子は部屋から飛び出ていく。
柏木倫子「ケホケホ!」
柏木倫子(こんなところで、〈火吹き〉魔法を使うなんて)
倫子は力を振り絞って立ち上がる。
柏木倫子(なんとか・・・歩けるわ)
柏木倫子「・・・!?」
部屋から出ていったはずの美夜子が、ドアの前で音もなく立っている。
柏木倫子(様子がおかしい・・・)
美夜子は、五メートルはあろう巨大な白蛇に変身する。
柏木倫子「変身の術・・・!?」
柏木倫子(大魔女クラスしか使えない最上級の高等魔法のはず・・・!!)
〇黒
倫子は一瞬で、巨大な白蛇に頭から丸飲みされる。
〇豪華な部屋
柏木倫子「・・・はっ!!」
まだテーブルの上で横たわっていた。
柏木倫子(夢・・・?)
柏木倫子(あのリアリティは普通の夢じゃない)
柏木倫子(自在に悪夢を見せる、彼女の攻撃魔法だ)
倫子はこんどこそ立ち上がる。
奥に目をやると、使い魔同士の闘いはすでに終わっていた。
ジュリアンは、床に大の字になっている。
完全に戦闘不能状態だ。
サンドル「不味い!!」
サンドルは、えぐり取ったジュリアンの目玉を吐き出す。
少しケガを負っているが平気らしい。
柏木倫子「サンドル」
サンドル「あの魔女はどうした?」
柏木倫子「たぶん洗面所」
〇家の廊下
柏木倫子(・・・やっぱり)
洗面所から、カチャカチャと物音が聞こえてくる。
〇白いバスルーム
洗面台にむかっていた美夜子が、ハッと振り返る。
顔に軽い火傷を負ったので、市販の薬用クリームを塗っていたところらしい。
準備していた悪魔入りのガラス瓶を手にし、
美夜子「我が望みにこたえよ、あの女をやっつけなさい イヨ ザティ ザティ アバティ!」
倫子は手近にあった花瓶を手にし、
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