復讐の果てに(脚本)
〇岩山
人目につかない
とある研究施設
〇秘密基地のモニタールーム
赤嶺 裕二「・・・」
メヴィル「こんなところで、何考え込んでるの?」
赤嶺 裕二「いや、別に・・・」
赤嶺 裕二「アイツのことを考えていただけだ」
メヴィル「そう・・・」
メヴィル「これから行くのね」
赤嶺 裕二「ああ」
赤嶺 裕二「アイツだけは許さない」
メヴィル「そう・・・」
赤嶺 裕二「・・・」
赤嶺 裕二「ありがとう、感謝している」
メヴィル「・・・」
メヴィル「感謝ならマドラス様にしなさい」
メヴィル「あの日、あなたに怪人の力を与えたのはマドラス様よ」
赤嶺 裕二「メヴィルも、俺が怪人の力を使いこなせるようになるまで手伝ってくれただろ?」
赤嶺 裕二「ありがとう」
メヴィル「・・・」
メヴィル「はぁ・・・」
メヴィル「あなたと一緒に怪人として世界を滅亡できると思ったのに・・・」
メヴィル「残念ね」
赤嶺 裕二「それはすまなかった」
赤嶺 裕二「俺はヒーローを目指している」
赤嶺 裕二「あんたらとは敵対することになる」
メヴィル「分かってるわ」
メヴィル「いつでもかかって来なさい」
赤嶺 裕二「!」
メヴィル「返り討ちにしてあげるから」
赤嶺 裕二「ああ、ありがとうメヴィル」
メヴィル「・・・さっさと行きなさい」
赤嶺 裕二「ああ!行ってくる!」
メヴィル「・・・」
マドラス「行ったかの?」
メヴィル「マドラス様・・・」
メヴィル「たった今行ったわ」
マドラス「寂しくなるのう」
メヴィル「全っ然! また新しい仲間を見つけるわ!」
メヴィル「マドラス様お願いね!」
マドラス「ふっふっふ・・・」
〇道
赤嶺 裕二「・・・ここは、あの時の」
〇未来の都会
〜3ヶ月前〜
第一回ヒーロー選抜大会!
いよいよ最後の競技となりました!
最後はバイクのレース対決です!
さあ!
いったいどちらがヒーローの座を勝ち取るのでしょうか!
赤嶺 裕二「これで勝てば、ヒーローに・・・」
赤嶺 裕二「絶対に勝つ!」
真道 大「よお!」
真道 大「最後もよろしく頼むぜ」
赤嶺 裕二「ああ!よろしく!」
赤嶺 裕二「勝っても負けても恨みっこ無しだ!」
真道 大「ああ」
真道 大「よろしく頼むぜ・・・」
さあ!
それでは両者、準備をお願いします!
赤嶺 裕二「これまで努力してきたのも 全部この時のためだ」
赤嶺 裕二「悔いが残らないよう、全力を出し切る!」
真道 大「へっ! ヒーローになるのは俺だ」
真道 大「あんなやつに負けてたまるか」
それでは、両者準備ができたようです!
泣いても笑ってもこれが最後!
両者共に悔いのないように!
レディー・・・
ゴー!!
〇道
レースはいよいよ終盤に差し掛かってまいりました!
赤嶺 裕二「このままあそこを曲がり切れば・・・」
赤嶺 裕二「勝てる!」
赤嶺 裕二「・・・」
真道 大「よお!」
赤嶺 裕二「え?」
ドンッ!
赤嶺 裕二「うわ!」
バキィン、ガシャンッ!
真道 大「へっ・・・ヒーローの座は貰っとくぜ」
真道 大「じゃあな」
〇けもの道
赤嶺 裕二「ぐっ・・・」
赤嶺 裕二「はぁ・・・はぁ・・・」
赤嶺 裕二「どうして・・・」
〇道
赤嶺 裕二「・・・」
赤嶺 裕二「絶対に許さない」
〇未来の都会
〜大都市パリス〜
真道 大「みんな! 今日は来てくれてありがとう!」
真道 大「みんな怪我しないように! 順番な!」
ヒーローとして活躍する真道大は
握手会の真っ最中
少年A「いつもありがとう!」
女性A「いつも、応援しておりますわ」
女性B「連絡先教えてー!」
真道 大「へへ・・・参ったなあ ありがとうな!みんな!」
赤嶺 裕二「・・・」
赤嶺 裕二「握手会・・・」
少年B「この間、目の前で怪人をやっつけるとこ見た! めちゃくちゃカッコよかった!」
少年C「すげー! 俺も将来、絶対にヒーローになる!」
赤嶺 裕二「・・・」
〇未来の都会
真道 大「みんな! あっという間だったけどそろそろ行かなくちゃならない」
真道 大「今日は来てくれてありがとう! 困ったらいつでも呼んでくれ!」
少年A「ありがとー!!」
少年C「またねー!!」
女性B「連絡先はー??」
真道 大「へっ・・・じゃあな!みんな!」
赤嶺 裕二「・・・」
〇店の休憩室
真道 大「ふぅ・・・」
真道 大「今日もいい日だった」
コンコン
真道 大「ん?誰だ? はーい」
ガチャッ
赤嶺 裕二「・・・」
真道 大「あれ? 関係者以外は立・・・」
真道 大「!」
赤嶺 裕二「・・・俺を覚えているか?」
真道 大「お、お前は・・・」
真道 大「どうして・・・」
赤嶺 裕二「場所を変えて話そう」
赤嶺 裕二「30分後にガウス山の頂上に来い」
真道 大「・・・」
真道 大「くっ・・・」
真道 大「おい!」
真道 大「言いたい事があるならここで言えばいいだろ!」
赤嶺 裕二「あ?」
真道 大「!」
赤嶺 裕二「30分後にガウス山の頂上に来い」
真道 大「か、怪人・・・」
赤嶺 裕二「分かったな?」
ガチャッ
真道 大「・・・」
真道 大「くそ・・・」
〇岩山
赤嶺 裕二「・・・」
真道 大「・・・」
赤嶺 裕二「来たか」
真道 大「俺を恨んでるんだろ?」
赤嶺 裕二「当然だ」
真道 大「・・・」
真道 大「すまなかった!」
赤嶺 裕二「!」
赤嶺 裕二「は?」
真道 大「あ、あの時はどうかしてた! 勝つために必死で・・・自分の事しか考えてなくて・・・」
赤嶺 裕二「お前のせいで俺は死にかけた!」
真道 大「!」
赤嶺 裕二「俺を怪人に変えた奴らが見つけなかったら 俺は確実に死んでた!」
真道 大「す、すまなかった・・・」
赤嶺 裕二「すまなかっただと?」
赤嶺 裕二「そんな一言で終わらされてたまるか!」
真道 大「す、すまん! でも、俺には謝る事しか・・・」
赤嶺 裕二「人を殺そうとしたんだぞ?」
真道 大「う・・・」
赤嶺 裕二「それがヒーローを目指す者のやることか!」
真道 大「!」
真道 大「お、俺だって・・・」
真道 大「俺にも事情があるんだよ!」
真道 大「あの時は・・・」
赤嶺 裕二「もういい」
赤嶺 裕二「お前はヒーローに相応しくない」
真道 大「くっ・・・」
赤嶺 裕二「今日限りでヒーローをやめてもらう」
真道 大「く、くそ・・・」
真道 大「待ってくれ!」
真道 大「確かに、あの時の俺はヒーローに相応しくない」
真道 大「でも! ヒーローとして過ごしていくうちに変わっていったんだ!」
真道 大「今の俺はもうあの時のような俺じゃないんだ!」
赤嶺 裕二「今のお前がそうであっても これからのお前がそうであるとは限らない」
赤嶺 裕二「またすぐに人を裏切る」
真道 大「そんなこと・・・」
赤嶺 裕二「安心しろ お前の代わりに俺がヒーローになる」
赤嶺 裕二「だから・・・」
赤嶺 裕二「お前はもう必要ないんだ!!」
真道 大「!」
真道 大「ぐぁ・・・」
真道 大「うぅ・・・」
真道 大「く・・・そがぁ!!」
赤嶺 裕二「ち・・・」
赤嶺 裕二「ふん!」
〇けもの道
真道 大「ぐあ!」
真道 大「ちっ・・・ くそ・・・」
赤嶺 裕二「・・・」
真道 大「やめてくれ!」
真道 大「お前もヒーローになりたいんだろ?」
真道 大「2人でヒーローとして活動すればいいだろ!」
赤嶺 裕二「!」
赤嶺 裕二「ふざけるな!」
赤嶺 裕二「お前なんかと一緒するな!」
真道 大「うぅ・・・!」
真道 大「はぁ・・・はぁ・・・」
真道 大「ダメなんだ・・・」
赤嶺 裕二「は?」
真道 大「俺はヒーローだ! 俺が負けたらダメなんだ」
真道 大「俺の存在がみんなの安心に繋がるんだ!」
赤嶺 裕二「いい加減にしろ!」
赤嶺 裕二「お前は必要ないと言っただろ!」
真道 大「俺は・・・」
真道 大「負けるわけにはいかないんだ!!」
真道 大「はあぁぁぁぁっ!!!」
赤嶺 裕二「ぐあっ!」
赤嶺 裕二「くっ・・・」
真道 大「これで、終わりだ・・・」
赤嶺 裕二「ふざけるな・・・」
赤嶺 裕二「そんなもので・・・!!」
赤嶺 裕二「・・・!」
〇未来の都会
少年B「この間、目の前で怪人をやっつけるとこ見た! めちゃくちゃカッコよかった!」
少年C「すげー! 俺も将来、絶対にヒーローになる!」
赤嶺 裕二「・・・」
〇けもの道
赤嶺 裕二「・・・」
赤嶺 裕二「がはっ・・・!」
真道 大「はぁ・・・はぁ・・・」
真道 大「どうして・・・」
赤嶺 裕二「はぁ・・・はぁ・・・」
赤嶺 裕二「逃げろ」
真道 大「え・・・?」
赤嶺 裕二「他の怪人に見つかったらやられてしまうぞ」
赤嶺 裕二「・・・もういい」
真道 大「お前・・・」
赤嶺 裕二「・・・さっさと行け」
真道 大「う・・・」
真道 大「す、すま・・・」
赤嶺 裕二「行け!」
真道 大「!」
真道 大「ああ、わかった・・・」
赤嶺 裕二「はぁ・・・はぁ・・・」
赤嶺 裕二「はぁ・・・はぁ・・・」
メヴィル「・・・」
赤嶺 裕二「! ・・・メヴィル」
メヴィル「バカね」
赤嶺 裕二「ああ、本当に・・・」
メヴィル「復讐に取り憑かれたあなたは 間違いなくこちら側よ」
赤嶺 裕二「はは、気付くのが遅かったよ」
メヴィル「・・・」
メヴィル「その傷じゃ助からないわね」
赤嶺 裕二「ああ、もういいんだ」
赤嶺 裕二「俺はヒーロー失格だ」
メヴィル「本当にいいの?」
赤嶺 裕二「・・・」
赤嶺 裕二「本当は・・・」
赤嶺 裕二「もっと誰かの役に立ちたかった!」
赤嶺 裕二「どうして俺だけがこんな目に!」
赤嶺 裕二「何も出来ず俺の人生は終わってしまった・・・」
メヴィル「・・・」
メヴィル「見てられないわ」
メヴィル「世の中そんなに残酷じゃないの」
メヴィル「私の前で、そんな顔して死んだりしないで」
メヴィル「来なさい!」
赤嶺 裕二「え・・・?」
〇未来の都会
〜2ヶ月後〜
赤嶺 裕二「これで最後だ!」
怪人A「ぐあぁぁぁ!」
赤嶺 裕二「はぁ・・・はぁ・・・ 大丈夫かい?」
少女A「うん! ありがとう!」
赤嶺 裕二「気を付けて帰るんだよ」
少女A「うん!」
赤嶺 裕二「ふぅ、さて次はどこかな?」
〇未来の都会
メヴィル「・・・」
マドラス「ふっふ・・・ 最近、活躍してるじゃないか」
メヴィル「ええ」
メヴィル「そうね、よかったわ」
マドラス「いずれワシらの敵になるやもしれぬぞ?」
メヴィル「ええ」
メヴィル「・・・」
メヴィル「いいわ!」
メヴィル「その時は悔いが残らないよう コテンパンにしてあげるから!」
マドラス「ふっ・・・」
メヴィル「マドラス様、仲間! 増やすわよ!」
マドラス「ふっふっふ・・・」
マドラス「そうじゃな」
赤嶺 裕二「ん?」
赤嶺 裕二「今、懐かしい声が・・・」
THE END
怪人とヒーローを区別する境界線とはどこなのかを考えさせられる作品でした。人の心がある限り、100%の悪者も100%の善人もいないということですね。ヒーローとはある意味、自分の弱い部分と戦い続ける存在でもあるということなんだなあ。
「ヒーローに相応しい者と相応しからぬ者」という対立関係が、いつからか逆転していたことに気づかされるのは切ない。
復讐に傾きすぎたことでヒーローとしてはちょっと恐ろしい姿になってしまったかもしれないけれど、本来の夢に立ち返ってリスタートし、受け入れられる結末が素敵。
姿や人種がなんであれ、その人の持つ本質って変わることがないんだなあと感じました。たとえその事が本人を苦しめることになっても、自分の良識に従っていれば後悔なく生きれるように思います。