コドモタチノテキ

はじめアキラ

第十四話「シンジツ」(脚本)

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〇黒背景
  璃王の推理をまとめるとこうだ。
  恐らく、最初からこの騒ぎは“窓から緒方五月が、逸見真友を殺傷する”ことを目的として起こされたものだと。
  学校に爆弾を仕掛けた――放送室でそんなメッセージが流されれば、多くの生徒と教員たちはすぐに対処はできない。
  悪戯だと大半の者達は思うだろうが、それでも万が一本当だったら生徒も教師も命の保証ができなくなってしまう。
  厄介なことに、教職員も生徒も、実質“その場を動くな、部屋を出るな”と指示をされてしまっている。
  警察にも連絡するな、と来た。
  とすると、先生達も生徒達もができることは、生徒達に教室から出ないようにと命令し彼等が動かないように見張りながら、
  携帯電話を使ってお互いに連絡を取り合うことくらいだろう。
  ――学校を休んでいた生徒や、屋上でサボタージュを決め込んでいた智達を除けば。
神楽璃王「爆弾が嘘、だとわかればこの状況は一瞬で解消される」
神楽璃王「けど、その嘘かどうかを安易に確かめることができないのが問題。事態はしばし膠着状態になるだろう」
神楽璃王「・・・・・・俺は不思議だったんだ。これじゃ、犯人が本当に先生だったとした場合、犯人も動けなくなる」
神楽璃王「次の要求を追って出す、って言っておきながら犯人からの要求を知らせる手段もなくなるじゃないかって」
  また、爆弾は嘘なのでは?と多くの人達が考え、あるいは生徒達を制御できなくなった場合。
  教室から、人が出てきてしまう可能性がある。
  だから、追って遠隔操作で体育倉庫の爆弾を爆発させた。
  この時間、グラウンドで体育の授業をやっているクラスがないことを織り込み済みで。
  学校全体の時間割を知ることができるのは先生のみ。恐らく、休んでいた五月に遠隔操作の爆弾のスイッチを渡していたのだろう。
  まさにこのタイミングで学校にきて、爆弾を爆発させるようにと。
  また五月は同じく放送室に入り、言われた通りに次の犯行声明のテープをセット、再生する。そして即座に放送室を出る。
  その場で放送をするより、よほどリスクが少なくて済むやり方であるはずだ。
神楽璃王「爆弾が実際に体育倉庫で爆発し、あんな放送がかかったら。やっぱり爆弾は本当だったんだ、と誰もが思うだろう」
神楽璃王「今まで以上に慎重に指示に従おうとするはずだ」
神楽璃王「ただ、それは同時に指示を無視してでも警察に連絡しようとする輩が出る可能性が高くなることも意味している」
神楽璃王「・・・・・・でも、ここまで計画通りに行けば、もうあとは充分なんだ」
神楽璃王「犯人の狙いは最初から、騒ぎを利用して生徒達を教室に留めておくことなんだから」
  最大の理由は、六年三組の子供達に、座席通り座らせておくこと。
  そして、廊下や校庭、万が一流れ弾が当たりかねない場所に他の生徒や教員がいるのを防ぐこと。
神楽璃王「最初から、騒ぎそのものが時間稼ぎだったんじゃないかと俺は考えてる」
神楽璃王「全ては・・・・・・緒方五月が、逸見真友を殺す準備を整えるまでの」

〇体育館の裏
  恐らく、武器はボーガンのようなものだろう。
  クラスの窓の前には、大きな木がある。今の時期はまだ葉が生い茂っていて、小柄な五月が隠れるのには充分な環境である。
  そして、ほどほどに涼しくなってきた時期。エアコンをつけずに窓を開けていることは珍しくない。
  六年三組の教室もそうだったはず。
  ならば――窓ガラスに邪魔されず、窓際の席に座る真友を狙うことができるのではなかろうか。
  いや、ボーガンの殺傷能力次第では、窓硝子があっても貫通できてしまうかもしれないが。
田無智(つまり俺達がやるべきことは!教室での辻本先生を抑えることと、木の上にいるであろう緒方五月を捕まえて阻止すること!)
  辻本先生が、璃王の推理通り共犯だったのなら。
  仮に五月が失敗した場合、辻本先生がやぶれかぶれになって真友を襲う可能性が否定できない。
  ゆえに、二人を同時に抑えなければ事件は解決しないだろう。
  よって、自分達は再び二手に分かれることにした。
  武器を持っているであろう五月を抑えこむために智と璃王が外へと走り、教室へは雅が走る。
田無智(緒方・・・・・・!お前がどんだけ苦しんだのか、わかるなんて言えねえよ。いじめなんかクソだ)
田無智(逸見真友がやったことがマジなら俺だって許せねえし、女だろうが一発ブン殴ってやりてえのは本音だ!)
田無智(でも・・・・・・だからって、殺人は駄目だ!)
  確かに小学生は、罪に問われることはないかもしれない。
  でも人を殺してしまったら。殺せる強さを持ってしまったら、それを持つ前の自分にはけして戻れなくなってしまう。
  その事実が、一番自分の枷に、重荷になってしまいかねないのだ。己の人生の、あるいは魂の。
  復讐したい気持ちはわかるし、復讐そのものを止めたいとは思っていない。でも、手段は選ぶべきだ。
  その復讐によって、自分と大切な家族を苦しめないためにも。
田無智(綺麗事って言われるかもしれねえ。でも、俺は・・・・・・!)

〇木の上
  そして、校舎の外。六年三組の窓の前あたりまで来たところで、智は気づくのである。
  木陰に隠れてボーガンらしきものを構える、五月の姿を。
神楽璃王「まずい!」
田無智「駄目だ、緒方!やめろ――!」

〇黒背景
  智が叫ぶのと。鋭い矢が教室に向けて放たれるのは、同時だった――。

次のエピソード:第十五話「ナミダ」

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