黒兎少女

武智城太郎

第八話 先輩(2)(脚本)

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〇電車の中
  放課後──
  倫子はサンドルと合流し、いつもとは逆方向の電車に乗り込む。

〇新興住宅
  降り立った先は、市内にある新興住宅地。

〇綺麗な一戸建て
柏木倫子「ここね」
  表札には『小柴』とある。
柏木倫子「返事はなし」
柏木倫子「サンドル、どう?」
サンドル「気配は・・・若い女が一人いるな」
柏木倫子「彼女ね。だったら押し入りましょう」
柏木倫子「中から玄関のドアを開けて」
サンドル「わかった」
  サンドルはバルコニーに駆けのぼり──
  ロックされていない窓を、前足で開けて忍び込む。
サンドル「入れるぞ」

〇飾りの多い玄関
柏木倫子「どこ?」
サンドル「女は二階だ」

〇家の階段

〇部屋の前
サンドル「手前のほうだ」
柏木倫子「居るんでしょ、入るわよ」

〇女の子の部屋
柏木倫子「いかにもな少女チックな部屋ね」
柏木倫子(でも化粧台には、OLみたいな流行のコスメ)
  壁に、パネル加工された超拡大プリントの写真が飾ってある。
柏木倫子「これが例の・・・」

〇学校の体育館

〇女の子の部屋
柏木倫子(横恋慕している鹿島という人ね)
  倫子は机にむかって、
柏木倫子「そこに隠れてるのはわかってるわ」
柏木倫子「市立清廉高校二年二組の小柴加奈恵さんで合ってるかしら?」
小柴加奈恵「な、なに!? あんた誰?」
  机の下から、加奈恵がおそるおそる上半身だけをのぞかせる。
小柴加奈恵「なんなの!? 人の家に勝手に!」
小柴加奈恵「今すぐ警察を呼ぶから!」
柏木倫子「取りあげて」
小柴加奈恵「ちょっ! なに、この猫!」
小柴加奈恵「スマホ、返しなさいよ!」
柏木倫子「これに見覚えがあるでしょ」
小柴加奈恵「し、知らないわよ!」
柏木倫子「やっぱり、あなたが出したのね」
小柴加奈恵「なによそれ! どこに証拠があるの!」
柏木倫子「わたしは二年一組の隅田朝美に依頼された者よ」
柏木倫子「彼女を呪ったわね?」
小柴加奈恵「呪いとか依頼って、意味わかんないんですけど!」
小柴加奈恵「あんたその制服、水色のリボンだから清廉女子の一年でしょ」
小柴加奈恵「あたしのほうが先輩なのよ! 態度でかいのよ!」
小柴加奈恵「調子にのんな! 頭おかしいんじゃないの!」
柏木倫子「あなた、呪いの腫瘍で隅田朝美を殺すつもりだったんでしょ」
小柴加奈恵「うるせーバーカ! 知るか、あんなブス!」
柏木倫子「あの呪いはわたしが解いたわ。彼女はもう健康そのものよ」
小柴加奈恵「・・・あんたが?」
柏木倫子「あなたが直接かけた呪いではないでしょう。誰に頼んだの?」
サンドル(それを聞き出すために、わざわざ訪れたんだ)
サンドル(面倒が起きる前に、少しでも相手の情報を得ておこうとな)
小柴加奈恵「だから知らないって言ってんでしょ!」
柏木倫子「誰に頼んだか言いなさい」
  反響のかかったような〈暗示〉魔法の発声で命令する。
小柴加奈恵「ま、ま、あ・・・・・・」
サンドル「むこうの口止めの魔法のほうが強力なんだ」
柏木倫子「〈呪いの代行〉をしてもらったんでしょ。その人も魔女なの? 答えなさい」
小柴加奈恵「ま、か、あ・・・・・・」
サンドル「これ以上追及しても無駄だな」
柏木倫子「・・・しかたないわ。帰りましょう」
小柴加奈恵「ちょ、ちょっと待って!」
小柴加奈恵「これも、あんたがやったの?」
  加奈恵が体をひねって背中を見せる。
柏木倫子「あ・・・」
柏木倫子「それ、いつから?」
小柴加奈恵「土曜の夜から。急によ」
  倫子はパジャマの背中側を無遠慮にめくりあげる
小柴加奈恵「ちょっと!」
  加奈恵の背中には、朝美とそっくりな腫瘍ができていた。
  倫子は右の掌をかざす。
柏木倫子(中身もそっくりおなじだ。醜悪な下級悪魔が宿ってる)
サンドル「やれやれ」
サンドル「また魔法に失敗したんだ」
サンドル「呪いを解くだけの〈解呪〉の魔法のつもりが、意図せずに〈呪い返し〉まで行ってしまってたんだ」
柏木倫子「・・・・・・」
柏木倫子(まあいいわ)
柏木倫子(どのみちこの女子はろくでもない俗物だ。因果応報だろう)
小柴加奈恵「どうしたら治るのよ、これ!」
小柴加奈恵「あんたがやったんでしょ? これ以上学校を休むとヤバイんだけど!」
柏木倫子「そのままだと、そのうち腫瘍が破裂してあなたは死ぬわ」
小柴加奈恵「えっ・・・!!」
柏木倫子「死にたくなかったら、隅田朝美への嫉妬や恨みをなくすことね」

〇総合病院
  十日後──

〇手術室
医者「ア~~ウア~~!!」
助手「先生!! どうしたんですか!?」
医者「ああああああああ!」

〇怪しい部屋
柏木倫子「小柴加奈恵が死んだそうよ」
柏木倫子「腫瘍の切除手術中に出血多量で。医者が突然発狂したらしいわ」
サンドル「まあ、そんなとこだろう」
柏木倫子「どうでもいいわね」

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