第1章 神父暗殺計画(脚本)
〇荒廃した街
ソドム兵士「いけー!」
ゴモラ兵士「殺せー!」
今からおそよ35万年前
果てない空から雲を通り抜け地上に降りた先にある世界、廃墟となった街で争いが繰り広げられていた。
ソドム兵士「おぉっ!」
ゴモラ兵士「がはっ・・・」
敵に幾つもの罵声を浴びせ続ける者たち。
銃で撃ち剣で斬り、大量の血が流れる。
ゴモラ兵士「ガーディアンが来たぞぉ!」
ゴモラ兵士「マズい、退けー!」
ソドムガーディアン「ゴォォォン・・・・・・」
ゴモラ兵士「くそっくそっ!」
ゴモラ兵士「ダメだそんな銃撃効くはずない!」
ゴモラ兵士「ーーーあっ」
ソドムガーディアン「ビィィイイイイッ!!!」
「うわぁぁぁっ!!!」
巨大な機械を操縦する者、自らが機械と一体となり超人的な力を得た者、
そして生まれながらに超常的な力を得たばかりに戦場に駆り出された者。
しかしそれら全てに見境なく死が訪れるのが戦場。
様々な兵服を来た死体があちこちに転がっている。
信仰の国"ソドム"と棄教の国"ゴモラ"による終わりの見えない聖戦は続いていた。
〇塔のある都市外観
アダ「・・・・・・」
一方その頃、1人の女性が窓から街を眺めていた。
執事「巫女様、祈りの時間です」
アダ「分かっています」
この国ソドムを統べる神父の娘である巫女アダは礼拝堂へと向かった。
「お待ちしておりました、巫女様」
アダ「はい」
そしてアダは天の聖杯に備えられた神より授けられし樹の剣、その前形態グレイスフィアに向けて祈り始めた。
アダ「・・・・・・・・・」
すると閉じた瞼の裏に神の予言が見える。
アダ「っ・・・⁈」
その様子はとても言葉にはし難い、地獄のような光景だった。
また争いで人が大勢死ぬ。
神のための聖戦と言えど命を散らす行為には疑問を抱いていた。
執事「よくない光景でも・・・?」
アダ「・・・不吉な予感がします」
そう呟いたアダは立ち上がり礼拝堂を後にした。
アダ「アブラハム、どうか無事で・・・!」
ベランダに出て空を見上げる。
空の方から見えていたのは巫女たちの住む王城を中心として広がる現代よりも遥かに発展した近未来的な国、ソドムの夜景だった。
そしてその王城のすぐ側には全ての生命の源と呼ばれている"生命の樹"が聳えているのであった。
XenoUltima ADAM
〇地下駐車場
第1章 神父暗殺計画
アダが祈ったまさにこの瞬間、ソドムの街のはずれ。
戦時中にこの国の首領、"神父"が逃げ込み隠れる要塞に神父を守るための兵士が集められた。
神父は非常に用心深いためわざわざこのような要塞を用意し兵士も多く集めたのだ。
その中の一隊がたった今軍用車両に乗って送られて来た。
ソドム兵士「お待ちしておりました、サムエル隊長」
??「・・・・・・」
ソドム兵士「うっ」
ソドム兵士「どうした⁈」
??「・・・・・・」
ソドム兵士「貴様っ、何者だ⁈」
??「・・・後ろ、気ぃ付けた方がいいぜ」
ソドム兵士「うぐっ・・・」
??「ふぅ・・・」
??「おいおいしっかりしてくれよ? 一応首席なんだろ?」
サムエル「殺す事くらい慣れておけ」
??「くっ・・・」
血の滴る刃を見つめる。
サムエル「おい!行くぞアブラハム!」
アブラハム「は、はい・・・!」
そして2人は走り出した。
これから一体何をすると言うのだろうか。
〇近未来施設の廊下
ソドム兵士「止まれ!何者だ⁈」
サムエル「チッ、めんどくせぇ・・・」
そう言ったサムエルはアルターガンを構える。
サムエル「チキンは下がってな」
アブラハム「えっ?」
サムエル「第13隊隊長サムエル様の力見せてやるぜぇ!」
そしてサムエルはアルターガンを連射した。
サムエル「おらおらおらぁ!!」
ソドム兵士「ぐぁあああっ!!」
サムエル「よし、行くぞ」
アブラハム「はい・・・!」
2人はどんどん奥へと進んで行く。
その道中も兵士たちが襲って来た。
サムエル「おぉっ!」
ソドム兵士「ぐはぁっ・・・」
サムエルのアルターガンで兵士たちを蹴散らして行く。
しかしどうしても懐に入られた場合は、、
サムエル「アブラハム!」
アブラハム「はい!」
ソドム兵士「ぐっ・・・」
返り血が服や顔にかかる。
その度に兵士たちの死に顔が目に写りその痛みが伝わって来る。
アブラハム「くっそ・・・」
そして兵士は最後の1人となった。
ソドム兵士「ひっ、ひぃぃぃ・・・」
アブラハム「っ・・・!」
サムエル「何やってんだ!顔を見られたら殺すしかないと言ったろ!それがこの計画に加わる条件だともな!」
アブラハム「〜っ!!」
サムエル「どうした、お前にもこの国を変える覚悟があるってんなら殺ってみせろ!」
アブラハム「くっ・・・!」
ソドム兵士「あぁっ!」
しかし空ぶってしまい戦闘服を斬っただけだった。
アブラハム「・・・?」
その戦闘服から何かが零れ落ちる。
よく見るとそれは写真だった。
今目の前にいる兵士とその妻と子らしき人物が写っている。
アブラハム「!!」
サムエル「何やってる!早く殺れ!」
アブラハム「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
アブラハム「はぁ、はぁ・・・」
サムエル「それでいいんだ」
先へと進むサムエル。
アブラハム(こうするしか無かった・・・!)
必死に自分にそう言い聞かせながらサムエルに着いて行った。
〇エレベーターの中
アブラハム「はぁ・・・」
サムエル「なぁ、そんなに辛いなら何でこの計画に参加した?」
サムエル「"仲間を殺す"事になるなんて分かってたろ」
そう、彼らもソドムの兵士なのだ。
アブラハム「それは分かってましたけど・・・」
アブラハムは先程殺した兵士の写真を見つめていた。
サムエル「いいか?俺達貧民の暮らしがいつまでも変わらねぇのはクソッたれた神父がゴモラの傘下に入るのを渋ってるからだ!」
サムエル「せっかくゴモラは良い条件で傘下に加えてくれようとしてんのによぉ、神父が断り続けるから戦争にまでなっちまった!」
サムエル「何故断り続けてると思う?それはなぁ、ゴモラが"平等"をモットーに生きてる国だからだ!」
サムエル「その傘下に加われば自然と貧民側に富裕層の金が取られて自分たちが豪遊出来なくなっちまう、それを恐れてるのさ!」
あくまでサムエルの推測に過ぎないが最もな意見だと思う、だからこそアブラハムも彼らに着いて行ったのだ。
サムエル「棄教の国が平等を掲げて、信仰の国で貧富の差が生まれる。普通逆だろう!」
アブラハム「そうですよね・・・だから仲間を殺してまで国を変える事を選んだんだ・・・!」
サムエル「おうよ。 ここから大佐と合流するんだ、大佐にはそんな態度見せんじゃねーぞ」
アブラハム「分かってます!」
〇研究施設の玄関前
エレベーターを降りると、、
ソドム兵士「止まれ!完全に包囲した!」
大量の兵士たちが待ち構えていた。
サムエル「ヤバいな・・・」
冷や汗をかいたその時、、
ソドム兵士「ぐぁぁぁああああっ!!!」
なんとあれほど大量にいた兵士たちが一瞬にして斬り捨てられてしまった。
アブラハム「⁈⁈」
サムエル「来たか・・・!」
ノア「無事か君たち⁈」
アブラハム「ノア!」
サムエル「てめっ、大佐に向かって・・・!」
ノア「アブラハムは良いんだ、小さい頃から面倒を見ているからね」
サムエル「ふぅん、そうかよ」
〇上官の部屋
ノアと合流し行動を共にした頃、、
ガイ「神父様、ヘリの準備が出来ましたとよ」
神父「うむ・・・」
この男こそまさにアブラハム達が殺そうとしている神父その人だ。
ガイ「侵入者ですがどうしますか?」
神父「・・・正体は分かっているのかね?」
ガイ「いいや、監視カメラに映る前からカメラを狙撃されてっから相当な射撃の腕前のヤツである事は確かなんですがねぇ」
神父「あと、内部事情に詳しい人物だな」
ガイ「カメラの位置とか分かるならねぇ」
神父「まぁ、反乱は予想していたがね」
神父(そのための要塞だ)
ガイ「んで、どうします?」
神父「"スパイダータンク"を起動しろ、ヤツで力量を測るのだ」
ガイ「りょーかい」
〇研究施設の玄関前
要塞内部の廊下を走る3人。
ノア「マズい、ヘリが来た・・・!」
サムエル「撃ち落としてやる!」
ノア「やめろ、ハイリスク過ぎる・・・!」
サムエル「んだよ今のうちにやっといた方がいいだろ!」
ノア「ダメだ!あのヘリは特殊装甲で造られている、君の狙撃技術でも屋上に着くまでに撃ち抜くのは厳しいだろう・・・」
サムエル「クソが!」
ノア「君は判断が浅はか過ぎる、だから隊長止まりなんだ」
サムエル「あぁ・・・⁈」
アブラハム「あ、あの・・・早く行きましょう・・・!」
ノア「そうだな、アブラハムの言う通りだ・・・」
サムエル「チッ・・・」
アブラハム「絶対に失敗出来ないんですよ、仲間を殺してるんですから・・・」
ノア「そうだな」
サムエル「・・・」
そして3人は屋上へ通ずるエレベーターあるフロア、広いフロントにたどり着いた。
ノア「あのエレベーターだ、そこから屋上へ向かえる・・・!」
サムエル「よし、もうすぐだ!」
しかしその時、、
アブラハム「っ⁈」
エレベーターの扉が開き大量の兵士たちが降りて来たのだった。
ソドム兵士「観念しろ!神父様はもうすぐヘリでここを去る!」
しかし兵士たちはある違和感に気付いた。
ソドム兵士「あれ、貴方は・・・⁈」
ノア「くっ・・・」
サムエル「さすが大佐は顔が割れてるな! こうなったら全員殺るしかねぇ!」
ノア「こればかりは君の意見を尊重せざるを得ない・・・!」
アブラハム「あ、ちょっと・・・!」
ソドム兵士「くっ、来るぞ撃てぇーー!!」
だがしかし。
ノア「はぁっ!」
サムエル「おらぁ!」
2人の猛攻に兵士たちはなす術もなく倒れて行く。
ソドム兵士「ぐがっ・・・」
その様子を見ていたアブラハムは、、
アブラハム(何でこんな簡単に仲間を殺せるんだ・・・)
彼はこの作戦を決行する直前、初めて仲間を殺した時の事を思い出していたーーー
〇兵器の倉庫
ローブを着たアブラハムとサムエル。
隊の仲間を皆殺しにした後だった。
イサク「や、やめてくれ・・・殺さないで・・・」
最後に残った1人。
彼はアブラハムの親友であるイサクだった。
??(イサクには証人になってもらわなきゃ・・・)
??(ごめんよ)
イサク「うっ・・・!」
イサク「逃げ、ろ・・・アブラハム・・・・・・」
そしてイサクは気を失った。
??「・・・!!」
〇研究施設の玄関前
アブラハム「・・・っ」
思わず動けなくなってしまう。
そんな彼に兵士は気付いた。
ソドム兵士「おい、アイツ見ろ」
ソドム兵士「あれ確かマナ無しのアブラハムじゃないか?」
ソドム兵士「あぁ、ヤツなら楽に倒せそうだ」
兵士2人はゆっくりとアブラハムに近付き前に立ちはだかった。
ソドム兵士「おらっ!」
アブラハム「おわっ・・・」
慌てて剣で防ぐが尻餅をついてしまう。
ソドム兵士「よぉし思った通りだ」
アブラハム(マズい・・・!)
ソドム兵士「じゃあな」
その時だった。
ノア「立てアブラハム!」
アブラハム「⁈」
ソドム兵士「くっそ武器がぁ・・・!」
ソドム兵士「うぐっ・・・」
ソドム兵士「おぉっ!」
ノア「はっ!」
ソドム兵士「ぐはっ・・・」
ノア「アブラハム!この世界ではな、選び取れるものは限られているんだ!」
アブラハム「っ⁈」
ノア「君もそれを分かってここに来たんだろう⁈」
アブラハム「俺は・・・っ」
ノア「君の気持ちは分かる。 同胞を斬る辛さ、耐え難いものだというのは自分も痛感している」
アブラハム「じゃあノアもサムエル隊長も、、何でそんな簡単に殺せるんだ⁈」
ノア「あるだろう、この兵士たちよりも大切なものが」
アブラハム「あ・・・」
ノア「私達はそれを選び、他を諦めただけさ」
アブラハム「あの兵士たちよりも大切なもの・・・ イサク達よりも・・・」
アブラハムは目を閉じて考えた。
〇ヨーロッパの街並み
目を閉じると浮かんで来たのは故郷の街の姿だった。
そうだ、俺の故郷をあんな姿にしたのは・・・!
〇研究施設の玄関前
アブラハム「はぁ、はぁ・・・」
ノア「見えたか?」
アブラハム「あぁ見えた。 見えたよ、殺すべき敵が・・・!」
ノア「よし、それでいい」
アブラハム「おぉぉぉっ!!」
そしてアブラハムは兵士たちに突っ込んで行った。
ノア(全てを選び取る事なんて出来ない、しかし選んだものは掴み取れる。 行動しろ、選択肢全てを失う前に・・・!!)
アブラハム「おぉぉ!!」
ソドム兵士「うわぁぁっ」
ノア「よし!」
サムエル「遅ぇぞ!」
アブラハム「正直まだ悩みはあります、けど神父を殺すって事は決まってます!!」
アブラハム「うぉぉぉぉっ!!!」
こうして残りの兵士全員を蹴散らした。
〇研究施設の玄関前
サムエル「よし、後はエレベーターを登って・・・」
神父「聞こえるかね諸君⁈」
アブラハム「っ・・・⁈」
サムエル「神父の野郎の声がするぞ!どこだ!!」
ノア「無駄だ、スピーカーから出てる音声だ!」
神父「監視カメラを破壊してくれたため君たちの正体は残念ながら分からない、まぁ内部の事情に詳しい人物なのは確かだが」
神父「しかし君たちの計画は失敗だ、私は既にこの要塞を去った」
サムエル「何っ⁈」
ノア「間に合わなかったか・・・!」
アブラハム「俺が迷っていたから・・・?」
神父「君たちが仲間を殺した事は無意味となった訳だな、罪悪感を感じられる寛容さが君たちにあるかどうかは知らんが」
アブラハム「!!」
神父「そんな君たちにプレゼントを送ろう」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
サムエル「な、何だよ・・・!」
スパイダータンク「ガコガコォォン・・・」
ノア「スパイダータンク⁈まさかこんな兵器まで・・・!」
神父「楽には殺してやらんぞ」
サムエル「チクショー!!!」
ノア「スピーカーを撃っても無駄だ!」
サムエル「つってもよぉ!ムカつきやがるんだよぉ!」
ノア「よせ、今はアレをなんとかするんだ・・・!」
サムエル「チッ、しゃーねぇ・・・」
アブラハム(あの兵器にも人が乗ってるんだよな・・・)
アブラハム「やるしかないのか・・・っ!」
何の意味もない決戦が幕を開けた。
〇研究施設の玄関前
サムエル「おぉぉぉらっ!」
スパイダータンク「ゴォォォン・・・」
サムエル「硬てぇ!」
ノア「正面から戦ってもダメだ!」
スパイダータンク「ゴォォォ・・・」
サムエル「あぁっ?」
ノア「砲撃だ!避けろ!」
スパイダータンク「ドォォォンッ!!!」
サムエル「うぉっ⁈」
ノア「大丈夫か⁈」
サムエル「熱っちぃ、掠っちまった・・・!」
ノア「轟音は砲撃の合図だ、次は避けろ!」
グォングォン・・・
サムエル「でかいのに速ぇ!」
ノア「はぁっ!」
ノア「ダメだ硬すぎる・・・!」
サムエル「どうすりゃいいんだ・・・⁈」
ノア「サムエルはアサルトモードだと限界がある、モードチェンジを駆使するんだ!」
サムエル「あぁそうだった!」
サムエル「よぉし、ブラスターモード!」
サムエル「喰らいぃぃぃやがれっ!!」
スパイダータンク「グォォン・・・」
サムエル「まだ浅ぇか・・・!」
ノア「フォトンランチャーはあとどれくらいで使える・・・⁈」
サムエル「今ブラスター撃っちまったからな、もう少し冷却しねぇと・・・!」
ノア(ブラスターで行けると思ったがフォトンランチャーまで追い詰められるとは・・・!)
ノア「とにかく急いで冷却するんだ! そしてマナを大解放しろ!」
サムエル「あ、あぁ!」
ノア「マナを大解放すればしばらく動けなくなる、必ず当てろよ・・・!」
サムエル「おう!」
スパイダータンク「ゴォォォン」
ノア「来るぞ、避けろ!」
サムエル「おう!」
サムエル「よし避けた! アサルトモード!」
スパイダータンク「ガガッ・・・」
サムエル「お?足なら効いてんじゃね⁈」
ノア「そうだ足の関節だ!関節を狙え!!」
ノア「アブラハム!」
アブラハム「えっ・・・⁈」
サムエル「何突っ立ってんだ!」
ノア「こっち来て手伝ってくれ!」
ノア「サムエルがマナを大解放出来るように支援するんだ!」
アブラハム「っ・・・はい!」
アブラハム(また仲間を殺すのか・・・)
ノア「アブラハム、足の関節だ! そこを狙え!」
アブラハム「はい・・・!」
アブラハム「硬っ⁈」
ノア「装甲ほどじゃない!斬り続ければ断てる!」
ノア(私なら2撃で断てたが、、)
アブラハム「おわっ」
スパイダータンク「グォンッ」
ノア「焦るなアブラハム! 相手の動きをよく見るんだ!」
アブラハム「分かってるけど・・・!」
スパイダータンク「グォングォン」
アブラハム「動きについてけない・・・!」
ノア(やはりマナ無しにはキツいか・・・?)
アブラハム(何とか隙を見つけて・・・)
アブラハム「そりゃっ!」
スパイダータンク「グォォォ・・・」
アブラハム「断てた!断てたよノア!」
ノア「よし、その調子だ」
ノア(まぁ、首席なだけはあるか)
アブラハム「はっ、やぁっ!」
ノア(だがこの調子ではすぐに限界が来る・・・ 早い内にこちらが終わらせなければ・・・!)
ノア「おおぉぉぉぉっ!!!」
アブラハム「すげぇ・・・!」
ノア「足は残り5本だ!一気に決めるぞ!」
アブラハム「あぁ!」
サムエル(アイツ、味方の人じゃなければ躊躇なく斬れるんだな)
〇研究施設の玄関前
アブラハム「おぉっ!」
スパイダータンク「グッググ・・・」
ノア「マズい避けろ!」
アブラハム「え?」
スパイダータンク「ドバババババッ!!!」
アブラハム「ぐぁぁぁっ!!!」
ノア「まだそんな武器を隠していたなんて・・・!」
アブラハム「足からも弾丸出るとか隙ねぇじゃん!」
ノア(やはりマナ無しには・・・!)
アブラハム「クッソ・・・負けてたまるかッ!」
スパイダータンク「ガキィン」
アブラハム「うあっ・・・」
ノア「アブラハム!!」
アブラハム「ノア⁈」
ノア「おぉっ!」
ノア「もういい、君はよくやった。 これ以上は命を散らす事になる・・・!」
アブラハム「何言ってんだよ!俺だってノア達の仲間だ!神父を殺す気持ちは一緒なんだよ!」
ノア「くっ、、 こんな事言いたくなかったが、やはり君には荷が重過ぎた・・・」
ノア「マナ無しは戦場に来るべきじゃないんだ・・・!」
アブラハム「!!」
この世界の人々の身体に流れる神の恵マナ。
人々はそれを力に変えて生活を豊かにして来た。
その力は時に炎や水、雷や土などの属性を司り人々と神が共に在る象徴であったがいつの日か争いに使われるようになった。
アブラハムにはそのマナが生まれつき宿っていない。
そのため常人より戦闘力が劣るのだ。
ノア「君がそれを気にしているのは分かってる。 だから私も触れないで来た」
ノア「しかし本当の戦場ではその優しさは無意味だ、君の命が最も危険に晒されてしまっている・・・!」
スパイダータンク「グォォォンッ!」
ノア「くっ、話す隙も与えてくれないか・・・」
ノア「君はもう逃げろ!幸い正体は知られていない、これからも普通に生活出来るだろう!」
ノア「そしてもう戦場には来るな、君は君の人生を生きるんだ!」
ノア「おぉぉぉ!!」
アブラハム(そんな、酷いよ・・・)
アブラハム(ノアだって分かってるじゃないか、俺がどれだけ神父を恨んでいるか・・・・・・)
アブラハム「家族を大切にしていたか・・・!!!!」
ノア「サムエルまだか⁈」
サムエル「もうちょっと待ってくれ!結構時間かかんだよコレ!」
スパイダータンク「グォォンッ」
ノア「くっ・・・」
ノア(流石に1人じゃ持ち堪え切れない・・・!)
スパイダータンク「ゴォォォ・・・」
サムエル「マズい砲撃来るぞ!」
ノア「避けられない・・・!」
スパイダータンク「ドォォォォンッ・・・!!!」
ノア「ぐぁあああっ!!!」
サムエル「ノアーーーッ!!」
スパイダータンク「ゴゥン、ゴゥン・・・」
ノア「クッソ・・・」
スパイダータンク「ドドドドッ・・・!」
ノア(ダメだ・・・っ!)
アブラハム「ノアッ!」
アブラハム「んぎぎぎぎっ・・・!」
ノア「アブラハム⁈大丈夫か!」
アブラハム「はあ、はぁ・・・ほら、マナ無しでも少しは役に立つでしょ、、」
ノア「君、、傷が・・・」
アブラハム「これくらいどうって事ないよ・・・ あの神父から受けた痛みに比べれば・・・!」
ノア「アブラハム・・・」
アブラハム「ノアが俺に戦場は向かないって言っても、俺は俺の意思で戦場に行くよ・・・!」
アブラハム「あの神父を殺して・・・! もう俺たちのような痛みを味わわなくていい世界を創るんだ!!」
ノア「そうだったな、君ほどの強い意思は誰かに言われて止められるようなものじゃない・・・」
ノア「よし、ついて来れるな?」
アブラハム「もちろん!」
〇研究施設の玄関前
サムエル「おぉ、すげぇ・・・」
アブラハム「せりゃっ!」
ノア「はぁっ!」
スパイダータンク「グォォォ・・・・・・」
ノア「足は全て切り落とした! サムエル、準備はいいか⁈」
サムエル「もちろんだぜ!!」
サムエル「うぉぉぉ! マナ大解放!!」
サムエル「喰らいぃぃぃぃぃ、、 やがれぇぇぇぇえええええええ!!!!」
スパイダータンク「グゴォォォ・・・・・・」
サムエル「よっしゃぁぁーーー!! おぉっと・・・」
アブラハム「大丈夫ですか・・・⁈」
サムエル「ちょっとフラついただけだから大丈夫だ・・・」
ノア「後は操縦士だな」
アブラハム「あ・・・・・・」
ノアの言葉を聞いてアブラハムは思い出した。
そうだ、このスパイダータンクにも人が乗っているのだ。
ノア「お・・・」
機能停止したスパイダータンクのハッチを開けて中を確認した。
そこには、、
ソドム兵士「降参・・・!降参します・・・!!」
アブラハム「っ・・・!」
ノア「すまないが、その願いは聞き入れられない・・・」
アブラハム(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
ノア「・・・終わった」
サムエル「あぁ・・・」
その中でただ1人、アブラハムは浮かない顔をしていた。
〇ヘリコプターの中
ガイ「スパイダータンクからの通信が途絶えました」
神父「ほう、アレを退けるとは」
ガイ「じゃあ最終手段っすか?」
神父「あぁ、スイッチを入れるんだ」
ガイ「りょーかい ポチッとな♪」
〇研究施設の玄関前
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ・・・
サムエル「何だぁ⁈」
ノア「まさか爆発っ⁈」
サムエル「はぁ⁈この要塞もろとも俺達を殺そうってのか!!」
ノア「早く脱出するんだ!」
〇近未来施設の廊下
サムエル「5分もねぇだろコレ!」
ノア「こっちだ!」
3人は走り続けた。
しかしその途中、、
サムエル「おわぁっ!」
ノア「マズい、アブラハム!」
なんと瓦礫が崩れてアブラハムと分断されてしまった。
ノア「おい!無事かアブラハム⁈」
アブラハム「何とか・・・」
サムエル「クッソ完全に分断されちまった!」
サムエル「もう時間もねぇぞ!」
ノア「く・・・・・・」
ノア「アブラハム、私達は本来のルートで出口へ向かう。 君はそこから単独で出口を目指してくれ」
アブラハム「分かった、後で会おう・・・!」
ノア「あぁ・・・!!」
こうして二手に分かれて出口を目指す事となった。
〇近未来施設の廊下
アブラハムは剣を片手に不安げに瓦礫の崩れる廊下を走っていた。
アブラハム(もう保たないじゃないか・・・!)
すると、、
ソドム兵士「止まれ!武器を捨てろ!!」
アブラハム「⁈」
アブラハム(何でこんな時まで・・・! 施設が爆発するってのに逃げないんだ⁈)
ソドム兵士「"何としても逃すな" 神父様のお言葉だ・・・!」
冷や汗をかき、震えながら言う兵士たち。
アブラハムは動けずに固まってしまった。
アブラハム(そんな・・・ そんな事が出来るなんて、、 神父め、なんてヤツだ・・・!!!)
怒りと悲しみが同時に沸き起こって来る。
自分は進まなければならない、しかしそのためにはこの絶望的な状況に置かれている彼らを斬らなければならない。
アブラハム「くっ、どうすれば良いんだ・・・!」
仲間を殺す事を恐れる心が全面に出て来てしまい遂には剣を落としてしまった。
ソドム兵士「もう時間が無い・・・! 早くやるぞ!!」
ソドム兵士「うわぁぁぁ!!!」
恐れる兵士たちが発砲を始める。
アブラハム「ぁ・・・」
結局自分は自分の弱さに負けてしまうのか。
そう思ったその時、、
ソドム兵士「ぐはぁぁぁっ!!!」
アブラハム「っ・・・⁈⁈」
突如目の前で兵士たちが全員散った。
アブラハム「な、何だ・・・⁈」
そこに現れたのは、、
ヨベル「・・・・・・・・・」
見た事もない禍々しい剣を持った1人の男だった。
アブラハム「ぁ・・・・・・」
その男の異様な雰囲気に思わず絶句してしまう。
氷のように冷たく静かだが同時に激しい何かを感じさせるその雰囲気は初めて味わうものだった。
ヨベル「ククク・・・」
ヨベル「何を恐れているんだアブラハム?」
アブラハム「俺の名前を・・・⁈」
ヨベル「わたしはお前に興味がある。 マナを宿さない身で運命に抗うその姿、わたしが見たかったものだ」
アブラハム「何を、言ってるんだ・・・?」
ヨベル「さてアブラハム、お前は何故運命に抗う?」
運命?
まさか神父を殺そうとした事を言っているのか?
アブラハム「決まってる。 あの神父を殺してみんながもう二度と俺達のような想いをしなくていい世界を創るんだ!」
ヨベル「違うな」
アブラハム「何っ・・・⁈」
ヨベル「お前は自分の事しか考えていない。 自分の都合のみ正当化している」
アブラハム「そんな事・・・!」
ヨベル「では何故、敵とみなした神父は殺せて味方であった兵士を殺すのは躊躇う?」
アブラハム「そ、それは・・・」
ヨベル「簡単だ、お前は非難される事を恐れているんだ」
アブラハム「ぁ・・・っ」
ヨベル「無事に帰れたとして殺したのが味方であれば自ずと嘆きの声が聞こえる・・・」
ヨベル「お前はその声が自分に向けられていると自覚するのを恐れているんだ」
アブラハム「そんな・・・そんな訳ないっ!!」
ヨベル「自分勝手な都合で人を殺す・・・ まさにわたしが望んでいた罪人が現れたのだよアブラハム」
アブラハム「罪・・・? 罪だって・・・?」
ヨベル「そうだ、耐え難い罪を背負いそれでも尚自らを正当化しその罰を受けまいと更に罪を重ねる・・・」
ヨベル「まさにわたしの理想だよ」
アブラハム「な、何を訳の分からない事を・・・!」
ヨベル「予言しよう。 自らの罪を認められないその弱さ、それはいつの日か選択肢を全て奪う」
アブラハム「選択肢だって・・・?」
それはノアが言っていた事と同様の選択肢だろうか?
しかし何故この男がそれを知っている?
ヨベル「逃れたいか? ならばアブラハム」
ヨベル「神の御心に委ねるんだ」
アブラハム「・・・・・・っ」
ヨベル「選び、戦い、そして祈り続けろ」
ヨベル「その先にわたしは居る」
アブラハム「何を訳の分からない事ばかり・・・っ」
アブラハム「うおおぉぉぉぉっ!!!」
アブラハム「っ⁈ どこだ・・・⁈」
そうだ、それで良い。
待っているぞアブラハム。
アブラハム「何だったんだ・・・ 幻覚・・・?」
そのままアブラハムは疑念を抱いたまま先に進んだ。
〇塔のある都市外観
無事に脱出し出口前でアブラハムを待っていたノア達。
サムエル「おい、これ以上待ったら俺達も巻き込まれるぞ・・・?」
ノア「もう少し、もう少しだけ待たせてくれないか・・・?」
サムエル「でもよ、流石にもうやべぇだろ・・・」
要塞のほとんどは既に崩れておりもう少しで出口の所まで爆発が到達する所だ。
ノア「くっ、アブラハム・・・」
サムエル「ん? お、見ろよ・・・!」
ノア「え・・・?」
そこにやって来たのは、、
アブラハム「ノア!サムエル隊長!」
ノア「アブラハム!」
サムエル「よく無事だったなお前!」
アブラハム「まぁ色々ありましたが、、 ってそんな事より!!」
ノア「あぁ、すぐにここから離れるぞ!!」
こうして3人は顔を知られる事もなく無事に脱出。
しかし計画は失敗。
要塞は大きく爆発し崩れ、飛び散った破片が近所の街にまで降り注いだ。
予想外の被害を出しこの計画は失敗したのだ。
to be continued・・・
神父を殺す為、3人の活躍が今後も期待されるところであります。悪の根源は誰かが断ち切らねばなりません。アダムスの活躍を期待してます。
現実世界とは価値観が大分違うとは思いますが、人を殺すって中々難しいと思います。
敵とか味方とか、友人とか…。特に死と直面する機会だからこそ考えることができないのかなぁ。
最後まで一気に読ませて頂きました。ストーリーの展開に引き込まれました、人を殺す殺さない、そんなことを考えないといけない、決断しないといけない状況って過酷ですよね、今後の展開が気になります。