温泉の女神様

塩味鷹虎

第二話 田舎温泉の女神、うどんを流行させる(脚本)

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〇うどん屋台
  ──東京・新橋。午後11時23分。
会社員A「ふぃ~、呑んだ呑んだ!」
会社員B「こう、いっぱい呑むと・・・締めが欲しくなるよなぁ」
会社員A「おー、わかる! こう、ズルルっと・・・」
ミコト「だったら──ちょっと寄っていかない?」
会社員A「わぁっ!?」
会社員B「な、なんだよ、アンタは!?」
ミコト「あなたたち、うどんを食べていきなさい!」
会社員A「うどん? なんだよ、屋台か。今時珍しいな?」
会社員B「ちょうど細くて長いもんが食いたかったところだ! 一杯くれ!」
ミコト「はい喜んで! どうぞ!」
会社員B「お、おお? ずいぶん早いな。どれどれ・・・」
  ズ、ズズズ・・・。
会社員B「まずっ!? なんだ、こんなうどん! 食えたもんじゃないぞ!」
会社員A「オエッ! どぶのような味がしやがる!」
ミコト「うーん、同じ川の水でも、やっぱり隅田川の水じゃダメね」
会社員A「ちょっと待て、そんな水で茹でたうどん食わされたのか!?」
ミコト「待っててね、すぐにおいしいうどんを作ってあげるから!」
会社員B「いや、そんなことより川の水のうどんのわびをだな」
ミコト「はぁぁ・・・どっせぇい!」
  ゴゴゴゴッ・・・
  ブッシャアアァ!!
会社員A「う、うわぁっ!? じ、地震!? 水道管が破裂したぞ!?」
会社員B「ち、違う、温かい・・・これは──温泉だ!?」

〇温泉の湧いた渋谷
会社員B「ということで、こうなっちまったわけよ」
神谷竜司「いや、まるで意味が分からんですよ!?」
  湯煙に包まれてしまった大都会・渋谷。
  ハチ公前からは間欠泉が吹き上がり、いつの間にやら足湯の施設が出来上がっている。
  あまりにも異様な光景に驚いた俺は、足湯を堪能している2人組の会社員から事情を聞き出そうとしたのだ。
会社員A「で、その温泉で茹でたうどんが、見違えるように美味くてなぁ」
神谷竜司「いやいや、そこじゃないって! 地面を殴って温泉が出ることに、納得せんでくださいよ!」
  地面をぶん殴って温泉を出して、そのお湯でうどんを茹でたって・・・。
  そんなことができるのはもはや人間じゃない。ということは・・・。
会社員A「おいおい、そんなに考え込むなって!」
会社員B「そりゃあ、俺たちも気になるよ。温泉でうどんを茹でると、どうしてあんなに美味いのか・・・」
会社員A「ホント、こうやって浸かっても癒されるし・・・いやぁ、温泉最高! 尊敬しちゃうね!」
神谷竜司「は、はぁ・・・」
  だんだん頭が痛くなってきた。温泉は尊敬するもんじゃない。
会社員A「それにしても・・・まだかなぁ・・・」
会社員B「今日は渋谷でやるっていってたんだけど・・・」
神谷竜司「?」
  そういえば、この人たちはどうして、平日の真っ昼間から渋谷の足湯なんかに?
  心なしか、周りの人もそわそわしているような・・・。
???「おーい、うどんの時間よ!」
  聞き覚えのある声がした。
  すると、会社員2人組はおろか、周りの若い人たちまでもが一斉に声のほうを向く。
街の人々「うおおおおおっ! 温泉うどんをくれぇぇぇ!」
ミコト「はーい、まいどありっ!」
  しばらくして周りを見ると、全員がさも当たり前のようにどんぶりを抱え、
  まるで酔いしれるような表情で麺をすすっている。
  ・・・どんな悪夢だ?
警察官「ちょっと、君!」
ミコト「はい?」
  ミコトの前に警官が現れた。
  そりゃ、こんなところで許可もなく屋台を出してたらおまわりさんに怒られるだろう。
警察官「本官にも一杯くれないか?」
神谷竜司「いやいや! しっかりしろよ、国家権力!」
ミコト「あら? その声・・・」
ミコト「竜司じゃない! どう、私の温泉うどんの実力は!」
神谷竜司「温泉うどんの実力って・・・」
会社員A「うおおおおおっ! うどん! 温泉! ヒャアアアアアア!? 桃源郷が見えてきたァァァ!」
会社員B「温泉、温泉に入りながらうどんを喰いたいイイイイッ!」
神谷竜司「なんだか、目がイッちゃってないか?」
ミコト「みんな、喜んでて楽しそうじゃない。おいしいものを食べるとみんな幸せになれるのよ!」

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