忘れ去られた世界の君へ

YO-SUKE

第六話「普通の日々」(脚本)

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〇廃墟と化した学校
  基地ではデフィジョンを討伐した宴が
  開かれていた。
  日頃は少ない食料でやりくりする
  兵士たちも、成果を上げた夜だけは
  贅沢が許されるらしい。
若者1「ほら新入り! お前も食え!」
城井奏太「いや、俺は・・・」
  みんなとは違い、気が乗らなかった。

〇荒れた倉庫
  基地の裏手に行くと、
  一匹の柴犬が駆け寄って来た。
  くすねてきた肉の切れ端を与える。
城井奏太「お前が三浦さんの家族か?」
柴犬「くぅーん」
桐島彩音「ポンチっていうの。変な名前よね」
  一人で宴を抜けてきたはずなのに、
  背後には彩音さんが立っていた。
桐島彩音「今日から私が飼い主になる予定」
城井奏太「・・・・・・」
桐島彩音「随分浮かない顔してるわね」
城井奏太「俺のせいで三浦さんが死んだ。当然だろ?」
桐島彩音「でも、あんたの射撃でデフィジョンは かなりのダメージを受けた」
桐島彩音「あれがなかったら、 もっと多くの被害が出たかも」
城井奏太「・・・・・・」
桐島彩音「勝利に犠牲は付きものよ」
城井奏太「だとしても・・・ ここの連中は、人の死に慣れすぎだ」
桐島彩音「なるほど・・・ やっぱあんた、別の世界から来たのかもね」
城井奏太「え?」
桐島彩音「人の死に慣れずに生きている人間なんて、 今この地球上にいないもの」
城井奏太「・・・・・・」
桐島彩音「はあ・・・仕方ない。私も上官だし、 少しは部下の気晴らししてやるか」
城井奏太「気晴らし?」

〇車内
  彩音さんは俺を助手席に乗せると、
  乱暴に車を運転した。
城井奏太「ス、スピード出しすぎだろっ! 免許持ってるのかよ!」
桐島彩音「平和な世界なら、今頃ちゃんと 免許取りに行ってたかもね」
城井奏太「え? てことは彩音さんって18歳?」
桐島彩音「そう。本当なら、高校三年生のはずだった」
城井奏太「マジか・・・二つも年上だったのか」
桐島彩音「あ、急に敬語とかやめてよ。 私、敬語使われるの好きじゃないから」
城井奏太「てか、デフィジョンやアビオが出たら どうするんだ!?」
桐島彩音「この地域は大丈夫。 デフィジョンは群れないから、 一匹倒せばその近くは当分安全なのよ!」

〇荒廃した遊園地
  俺たちはかつて遊園地だった場所に来た。
  彩音さんは射的場を見つけ、
  コルク銃を俺に渡す。
桐島彩音「はい、あんたから。 的は私が立ててきてあげるから」
城井奏太「俺はいいよ」
桐島彩音「なによ。射的やったことないわけ?」
  渋々とコルク銃を構えると、彩音さんが
  立てた小さな箱に次々と命中させる。
桐島彩音「やるじゃん。 やっぱあんた射撃の腕は私以上かも」
城井奏太「彩音さんもやるんでしょ?」
桐島彩音「当たり前でしょ」
  彩音さんはコルク銃を連発するが、力の
  加減が下手で、なかなか的に当たらない。
城井奏太「へえ。 彩音さんにも苦手なことがあるんだなぁ」
  意地悪くそう言うと、
  彩音さんはレーザーガンを取り出して、
  全部の的を撃ち抜いてしまった。
桐島彩音「やっぱ本物でないとねっ!」
城井奏太「さ、さすが・・・」

〇見晴らしのいい公園
  並んで座り、
  真っ黒な空に浮かぶ星を眺めていた。
桐島彩音「きれいでしょ?」
城井奏太「ああ」
桐島彩音「地球にデフィジョンが来て、 街から灯りが消えちゃったの」
桐島彩音「でも、おかげで星だけは 輝いて見えるようになったんだよね」
  うっとりと空を見る彩音さんの横顔は、
  兵士ではなく普通の女の子のようだ。
城井奏太「もし・・・地球にデフィジョンが来て なかったら、彩音さんは今頃どうしてる?」
桐島彩音「そりゃあ・・・真面目に学校通って、 クラスのイケメンを好きになって・・・ 放課後は友達と買い物に行ってるかな」
城井奏太「そんなの──」
  俺の世界では「当たり前」のことだった。
  そう言うのはなんだか残酷な気がして、
  言葉を飲み込む。
桐島彩音「奏太は意外とイケメンだし、同じ学校に いたら、彼氏候補くらいにはなったかも」
城井奏太「か、彼氏になんてなるか!」
桐島彩音「まあ今に見てなさい。 私はセナさんと一緒に、この地球上の全てのデフィジョンを殲滅してやるんだから」
桐島彩音「そしたら、 今までの青春は一気に取り戻してやる」

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コメント

  • いやぁ、もうまじでエグいって。。。また仲良くなった人を失ってしまうのか。。。かわいそうだ、彩音。。。
    せっかくセナに再開したのに、何だか雰囲気悪いですよね。。。1話から思いましたが、この世界のセナが別人だとしたら、3年前の出来事はどういうことなんですかね?次回も気になります!!

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