武士道悪神ブシドーベル〜悪の敵幹部が人助けなどするはず無かろう!〜

樹 慧一

武士道とは溶け込むことと見つけたり(脚本)

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樹 慧一

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〇時計台の中
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「人間、何と理解のできぬ存在だ」
ブシドーベル「我らが現れれば声を上げて逃げ惑い、震えるだけの小さき存在よ」
ブシドーベル「だが──」

〇荒野
レッド「何度倒されようと、助けを求める人がいる限り──俺達は何度でも立ち上がる!!」

〇時計台の中
ブシドーベル「あの者たちは──」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「わからぬものを征服するほど、恐ろしいものはない」
ブシドーベル「──!!そうだ」
ブシドーベル「わからぬのなら、知り尽くせば良いのだ!!」
「人の身に姿を変え、溶け込めば」
「自ずと奴らの本性も見えて来よう!!」
「待っていろ、愚かな人間どもめ、フハハハハハ──!!」

〇渋谷のスクランブル交差点
ブシドーベル「と勢い付いて来たは良いが──んん?」
「ひ・・・・・・っ!!ごめんなさい!!」
チンピラ「おうおうおう、ゴメンで済んだら警察は要らねえよなあ!?どうしてくれんだ、肩折れたぞ!!」
チンピラ「病院送りってやつだよなあ、ひでえなあ!!ああ!?」
気弱そうな男性「ご、ごめんなさい!!・・・・・・病院代は支払いますから見逃してください!!」
ブシドーベル(・・・・・・「ゆすり」か?何と愚かな)
ブシドーベル(どうせ愚かな人間同士の諍い・・・・・・だが)
気弱そうな男性「ひ、ひいい・・・・・・!!」
チンピラ「テメェ、こんなはした金で足りたら世話ねえんだよ!!」
気弱そうな男性「わあああー!!」
気弱そうな男性「────」
気弱そうな男性「・・・・・・あれ?痛くない?」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル(己より弱い同種を蹂躙しようなど、気分が悪い!!)
チンピラ「!?」
チンピラ「な、んだテメェ!?この俺のパンチを止めただと!?」
ブシドーベル「・・・・・・怪我した割に随分動く肩だな、人間」
チンピラ「ああ!?」
ブシドーベル「そんなに病院送りとやらが良ければ、もっと痛めつける必要があろう、なあ?」
チンピラ「い、いて、いてええええええ・・・・・・!!死んじまう!!やめ、てくれええええ!!」
ブシドーベル「・・・・・・」
気弱そうな男性「あ、あああああの!!」
気弱そうな男性「か、彼、痛がってます!!もう充分ですから!!」
ブシドーベル「!!」
チンピラ「うわああああああん、母ちゃんーーーー!!」
気弱そうな男性「・・・・・・」
気弱そうな男性「行っちゃった・・・・・・」
気弱そうな男性「あ、の。ありがとうございました!!彼には少し悪いけど、助かりました」
ブシドーベル「?」
ブシドーベル(自らを害していた愚物に「悪かった」?分からんやつだ)
気弱そうな男性「ええと、お礼をしたいのですが────」
気弱そうな男性「!!ああっ」
気弱そうな男性「待ってくださーい!!」
レッド「強大な敵の気配!!」
レッド「ってあれ?いない・・・・・・」

〇開けた交差点
ブシドーベル(礼を、言われた)
ブシドーベル(いつもは恐怖で逃げ惑う人間に・・・・・・)
ブシドーベル(おかしな気分だ)
ブシドーベル「弱い同種を食い物にする屑も居たには居たが・・・・・・む?」
「やーいやーい、弱虫ーー!!」
いじめっこ2「弱虫じゃないならあのジジイの家のガラス割ってこいよーー!!」
いじめられっこ「そ、そんなの無理だよ・・・・・・!!」
いじめられっこ「うう・・・・・・」
ブシドーベル(脈絡のない嫌がらせだ)
ブシドーベル(人間は幼体もここまで愚かしいのか)
ブシドーベル「・・・・・・」
いじめられっこ「わ!!」
いじめられっこ「・・・・・・お兄さん、見てた?」
ブシドーベル「・・・・・・」
いじめられっこ「駄目だよね、僕」
いじめられっこ「こうやっていつも無理を言われて、仲間に入れて貰えない・・・・・・!!」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル(弱い人間の戯言・・・・・・だが)
ブシドーベル(ここで終わるのも、気分が悪い!!)
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「あのような愚物の仲間になど、なる必要があるか?」
いじめられっこ「え?」
ブシドーベル「お前に無理な要求をする同種は、お前にとって害にはなれど利にならぬ」
ブシドーベル「同種はあれのみではないのだ、ごまんといるだろう」
いじめられっこ「?・・・・・・??」
ブシドーベル「・・・・・・ええい!!あのような愚物、笑い飛ばしてやれば良いのだ!!」
ブシドーベル「そうして、己を大事にしてくれる個体と仲間とやらになればいい!!」
いじめられっこ「!!」
ブシドーベル「本物の仲間は、同胞に無理を強いたりしない」
ブシドーベル「常に、お前の味方だ」
ブシドーベル「・・・・・・我のいる場所はそうだ、人間」
ブシドーベル「お前たちがそうかは知らぬがな」
いじめられっこ「・・・・・・」
いじめられっこ「・・・・・・」
いじめられっこ「つまり、お兄さんは僕の味方ってこと?」
ブシドーベル「は?」
いじめられっこ「だって、僕のために怒ってくれてる、大事にしてくれてるもん!」
ブシドーベル「何、」
いじめられっこ「お兄さん、大好き!お兄さんと遊びたい!」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「三十六計、逃げるに如かず・・・・・・!!」
いじめられっこ「!!」
いじめられっこ「お兄さん、待ってよーー!!」
レッド「ここかっ!!」
レッド「あれ?違う・・・・・・?」

〇歩道橋
ブシドーベル「ここまで来れば・・・・・・」
ブシドーベル「?」
おばあさん「よい、しょ・・・・・・はあ・・・・・・」
ブシドーベル「老体の人間・・・・・・成程、ここを登るには荷物が重すぎるのか」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「・・・・・・・・・・・・」
ブシドーベル(・・・・・・ええい!!先程から若い個体も頑丈そうな個体も通っているというのに、なぜ誰も声をかけぬ!!)
おばあさん「・・・・・・よいしょ・・・・・・きゃあ!?」
ブシドーベル「!!おのれ・・・・・・!!」
おばあさん「────っ」
おばあさん「あら?」
ブシドーベル「はあ、間に合ったか────」
おばあさん「!!」
おばあさん「まあ、ごめんなさい!!こんなおばあさんと荷物なんて重かったでしょう!!ありがとうね、おかげで怪我をしなかったわ」
ブシドーベル「・・・・・・っ」
ブシドーベル「ま・・・・・・周りの個体共が不甲斐なかったから、仕方なく手を出したまでだ!!礼を言われる筋合いはない!!」
おばあさん「いいえ、貴方がとっても優しいことに変わりはないもの!!お礼をしたいわ」
ブシドーベル「れ、礼など・・・・・・」
レッド「・・・・・・!!追いついた!!」
ブシドーベル「・・・・・・ええい!!ついでだ!!荷物を寄越せ!!」
おばあさん「まあ!!悪いわ、そんな・・・・・・!!」
レッド「!!」
レッド「待て、怪人!!おばあさんから離れろっ!!」
「!!」
おばあさん「ま、待って!!誤解よ、この方は────」
ブシドーベル「ふん、見破られたのなら仕方ない!!」
ブシドーベル「ここがお前の墓場となるのだ、レッド!!」
「!!」
レッド「・・・・・・待て!!」
ブシドーベル「む?」
レッド(ここは人通りが多い・・・・・・一般の人が巻き決まれてしまう!!)
レッド「お前と・・・・・・決闘を希望する!!」
ブシドーベル「!!」
レッド「街外れの採掘場で・・・・・・一対一の、勝負だ!!」
ブシドーベル「フハハ、フハハハハハ!!いいだろう!!その意気や良し!!乗ったぞ、レッド!!」

〇荒野
レッド「はあ、はあ・・・・・・」
ブシドーベル「ククク、もう終わりか」
レッド「いや、まだだ・・・・・・!!」
レッド「俺は、諦めない!!」
ブシドーベル「な、何だ!?この力は──グワアアアアアア!!」
ブシドーベル「覚醒、か・・・・・・クク、ハハハハ!!人間にここまでしてやられようとはな!!」
ブシドーベル(我は最早ここまで・・・・・・しかし、ただでは散らぬ!!)
レッド「!?」
レッド「まさか、自爆──!?」
レッド「くそ・・・・・・っ!!させるか!!」
ブシドーベル「ハハハハ!!無駄だ!!この武士道悪神ブシドーベル、我が生に一塵の悔いもなし!!共に逝こうぞ、レッド────!!」
「待って────!!」
「!?」
「・・・・・・!!」
レッド「な・・・・・・っ!?」
ブシドーベル「お前達!?」
レッド「ここは危ない!!怪人の前から離れるんだ、みんな!!」
いじめられっこ「いやだ!!」
気弱そうな男性「ヒーローさん、彼は悪い人じゃないんです!!僕を怖い人から助けてくれました!!」
おばあさん「彼は、私の荷物を持ってくれようとしただけよ、戦うのをやめて、ヒーローさん!!」
いじめられっこ「お兄さんは僕のために怒ってくれた!!味方になってくれた!!」
いじめられっこ「お兄さんは僕の仲間なんだ、今度は僕が助けるよ!!」
レッド「・・・・・・・・・・・・」
ブシドーベル「・・・・・・?」
レッド「怪人は、みんなを脅かす悪い奴らばかり・・・・・・それは・・・・・・思い込みだったのか?」
ブシドーベル「何?」
レッド「俺は・・・・・・今この怪人に、とどめを刺してしまって良いのか?」
レッド「!!あれは────」
ブシドーベル「闇の転送ゲート!!」
ブシドーベル「フハハ、どうやら運は我に味方したらしい!!」
レッド「!!待っ──」
ブシドーベル「残念だったな、レッド!!」
いじめられっこ「お兄さん────!!」
ブシドーベル「我に止めを刺さなかった事──いずれ後悔するぞ、人間共!!フハハハ、フハハハハハ!!」

〇時計台の中
ブシドーベル「────・・・・・・」
ブシドーベル「・・・・・・」

〇荒野

〇時計台の中
ブシドーベル(人間は、やはり愚かしい存在だった、だが)
ブシドーベル(あの個体共は、危険を冒してまで我を────)
ブシドーベル「・・・・・・ええい!!らしくもない」
ブシドーベル「奴らも状況にあてられただけ、次に相見えれば我のこの姿に恐れ慄かぬ筈も無い!!」
ブシドーベル「フハハハ、レッド・・・・・・次の一騎打ちまで、我も力を蓄えようぞ!!」
ブシドーベル「ハハハハハハハハ!!」
  助けた人間の介入と、レッドの迷いでブシドーベルは斃れなかった
  そして、今度こそレッドを一騎打ちで屠るべく揚々と戦地に赴いたのだった────

〇開けた交差点
  ────が
いじめられっこ「待ってよー!!ブシドーベルお兄ちゃん!!」
ブシドーベル「黙れ!!こっちへ来るな!!」
いじめっこ1「アイツの友達、かっこいいなあ・・・・・・」
いじめっこ2「・・・・・・良いなあ」
「・・・・・・」
ブシドーベル「ええい!!少しは怖がれ!!幼体共!!」
気弱そうな男性「ブシドーベルさん、ぜひお礼を!!」
おばあさん「ブシドーベルくん、地域の皆様とお茶会があるの!!お礼に是非──」
ブシドーベル「おおおおお前たちまで!!」
チンピラ「ひゃあああああん、もう悪いことしないから来ないでええええ!!」
ブシドーベル「貴様は引っ込め!!我の退陣を阻むな!!」
レッド「待ってくれブシドーベル!!俺達は分かりあえるはずだ!!」
ブシドーベル「はあああああああ!?」
いじめられっこ「ブシドーベルお兄ちゃん!!」
気弱そうな男性「ブシドーベルさん!!」
おばあさん「ブシドーベルくん!!」
レッド「ブシドーベル!!」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「・・・・・・」
ブシドーベル「に・・・・・・」
ブシドーベル「人間など、嫌いだあああああ────!!」
  そこには、企みとは真逆に人間から好意満々で追い回されるブシドーベルの姿が、有ったとか────

コメント

  • ブシドーベルめっちゃいい奴…!
    おもわず、彼らの勢力に降伏してもいいか、と思えました(ヲイ)

  • 人間から感謝されてしまう悪人を、もしもあの時ヒーローが殺してしまっていたらどうなっていたのか、と考えてしまいました。
    少なくとも、あの3人は悲しんだでしょうし、ヒーローを恨んだかもしれません。
    善悪の判断は難しいものだと改めて考えさせられた作品。

  • ヒーローも悪者も根っから悪い人はいないと思います。
    価値観の違い?なのかもしれませんが、子供の頃に見ていたヒーローは悪を倒す、というよりかっこいい存在であったと思います。かっこいいに悪も正義も関係ないですよね。

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