エピソード1(脚本)
〇けもの道
・・・
深夜。
ある森の中にある巨木の幹に偽装された昇降機の扉が開き、重い足音を立てて異形の影が現れた。
地下深くに存在する小人の国。ノルマガが誇る巨大(?)ロボット。ギスパーゼが木立の向こうに広がる人間界の夜景を見据えた。
巨大ロボットと言っても、それはノルマガの人々の感覚であり、人間の単位で2メートル程の体高だった。
しかしフル装備状態のギスパーゼは、街を一つ制圧するのに充分なスペックを秘めている。
だが、今回の“彼„の任務は・・・
メルゲン「・・・・・・」
「通信 〔メルゲン!分かっているな?今回は偵察任務だ!可能な限り戦闘は避け、達府市の防衛力を徹底的にリサーチせよ!〕」
メルゲン「了解!」
ノルマガの戦士にして小人の青年メルゲンは、ギスパーゼのコックピットで当たり障りの無い対応を指令部に返した。
ギスパーゼ「メルゲン 「行くぞギスパーゼ!俺達が人間に変わってこの星を適正に管理するその日まで!」」
ギスパーゼ「!ーーーー」
「通信 〔ふふふ・・・〕」
〇ビルの裏
ギスパーゼ
・・・
メルゲン「非存在周波数迷彩。 ゆっくりとエネルギーをセーブして動けば、誰にも気付かれずに移動出来る筈だ」
メルゲン「まぁ、人工的に影が薄いキャラを再現する技術ってトコだな?」
メルゲン「防衛軍の基地まで3000メートル・・・」
ギスパーゼ
・・・
〇オフィスビル前の道
・・・達府市街。
メルゲン「歩哨の待機所が所々にある。 しかし武装は思ったよりも 軽装だな?」
メルゲン「ん? あれは?」
非存在周波数迷彩を作動させて密かに街を進むギスパーゼ。
だがパイロットであるメルゲンの視線の先に、気になるものがあった。
メルゲン「あのビルの建設現場!ずいぶんクレーンで吊った鉄骨がフラついているな? 大丈夫か?」
メルゲンの心配は的中した。
クレーンに吊られた鉄骨はどんどんと傾きを増してゆく。
グラッ・・・
鉄骨を吊っていたワイヤーが綻び、
ついに鉄骨が落下を開始した。
メルゲン「ああッ! 鉄骨の下に人間の女性が!」
ミキ「・・・」
メルゲン「クッ!仕方ない!迷彩解除!高速走行開始! 間に合ってくれ!」
「ガコン!!!」
ミキ「ヘッ?」
建設現場前の歩道を歩いていた女性。
ミキの頭上に落ちる鉄骨、それと同時に
彼女に走り寄る異形の怪人。
ギスパーゼ「メルゲン 〔うおおおおおおっ!〕」
ミキ「きゃ!きゃああああ!」
ガギィィィィン!
ミキ「あ!ああ、!」
地面にへたり込むミキの側で、ギスパーゼは落ちて来た鉄骨を両腕で受け止める。
ギスパーゼの足下のタイルが重さで割れる。
ギスパーゼ「メルゲン 〔ヌオオッ!フンッ!〕」
ギスパーゼは受け止めた鉄骨を道路の方へと放り投げた。
丁度走って来た車が急ブレーキを掛けて落ちた鉄骨の前で停り、クラクションが辺りに響く。
ギスパーゼ「メルゲン 〔大丈夫か!?〕」
ミキ「い?いいい!うええ?は?はぃ?」
ギスパーゼ「メルゲン 〔ムッ?!〕」
ビーーーー!
ギスパーゼが女性を救ったのも束の間。
コックピット内に攻撃を察知したセンサーのアラートが鳴り響く。
メルゲン「バカな!ロックオン? エネルギーキャノン警報だと? 作動原は?・・・ すぐ近く!?」
ギスパーゼ「!ーーーーーーーーー」
〇オフィスビル前の道
ギスパーゼ「メルゲン 「ぐっ!!」」
ミキ「こ、この変なヒト!私を庇って?!」
ギスパーゼ「メルゲン 「ぬぅ!ぐっああ!」」
・・・・・・
ギスパーゼ「!!」
〇オフィスビル前の道
ゴガパーゼ「ハァアアアアアア・・・・・・」
ミキ「うわわわわ!」
メルゲン「君!早く逃げるんだ!」
ミキ「は!はぃぃ!」
ミキは逃げ惑う街の人々に紛れ、走り去った。
メルゲン「・・・」
メルゲン「ゴ!ゴガパーゼだと? 何故?まさかあいつが?!」
ルベタラ「・・・」
メルゲン「ルベタラ!! お前なのか?!」
ルベタラ「何をしている!メルゲン!」
ルベタラ「任務を放棄し、ギスパーゼを人間達の前に 晒し、敵を助けるとは・・・」
メルゲン「何を言っているんだ!彼らは俺達が全権を掌握後、労働力として共生し合う存在だ!」
メルゲン「助けるに越した事は無いだろう!」
ルベタラ「甘い!そんな事だからスムーズに侵攻が進まんのだ!相変わらず気にいらん奴だ!」
・・・その時、メルゲンの視界に鉄骨を吊っていたであろうワイヤーが写った。
メルゲン「! 何かが光った! あれは?」
ワイヤーの切断面は鋭利な刃物か何かで綺麗に切断され、まるで鏡のように白く輝いている。
メルゲン「あの状況下でこの切り口! まさか!お前!」
ルベタラ「さぁぁ?知らんな?」
メルゲン「くっ!」
ルベタラ「メルゲン!ラシオン司令は先程、ドエド隊長が拘束した」
メルゲン「な!なんだと!」
ルベタラ「慎重和平派の司令では時間がかかり過ぎるのさ。たった今から我々が強行的に侵攻し、すぐに結果を出して見せてやる」
ルベタラ「ヌルい奴は邪魔なんだよ。 裏切り者には消えてもらう!」
メルゲン「ルベタラ!!」
ギスパーゼ「メルゲン 「くっっ!」」
メルゲン「まずい!このままでは!ギスパーゼが破壊されてしまう!」
ギスパーゼ「グオオオオ!」
ギスパーゼのコックピットでは火花が散り、複数の警報が鳴り響く。
ギスパーゼのダメージ蓄積は限界を迎えつつあった。
メルゲン「やむを得ん!脱出する! すまない!ギスパーゼ!」
メルゲンが乗り込んでいるコックピット周りが変形を開始した。その脱出艇の形は、ジェット戦闘機を思わせる。
メルゲン「メインAI、パーゼコア搭載確認! 行くぞ!脱出!」
ルベタラ「逃げてもムダだぞ!メルゲン!」
ジエト「!!」
ミキ「アニキ!こっちだよ!」
ジエト「おう!」
〇荒廃した街
メルゲン「・・・」
メルゲン「・・・ くっっ!ギスパーゼ・・・」
爆発するギスパーゼからかろうじて飛び出したメルゲンの乗った脱出艇。
だがそれも束の間。
脱出艇は何者かの手によって
掴まれた。
ガシッ!!!!
メルゲン「うわっ! なんだ!」
ジエト「おーーーし!捕まえたぜ!」
メルゲン「なんだって!?捕まってしまった!? こんな時に!」
メルゲンの脱出艇はミキの兄。
ジエトによって捕らえられている。
ゴガパーゼ「ルベタラ 「キサマ何者だ!それをこっちに渡せ!」」
ジエトはルベタラの言葉を気にするでも無く。手元の脱出艇と何処からか取り出した機械を見比べている。
ゴガパーゼ「ルベタラ 「おい!聞いているのか?」」
メルゲン「!」
メルゲンとジエト
コックピットを覗き込んだジエトとメルゲンの目が合った。
ジエト「急にすまねぇな? あんたのマシンの力。ちょっと借りるぜ?」
メルゲン「な!なんだと!どういう事だ!」
メルゲン「?」
ジエトが持つ謎の機械。
メルゲンはその機械に見覚えがあった。
メルゲン「あの意匠。作り・・・ ソヴァーテ博士の仕事だ!」
メルゲン「博士は今、行方不明だというのに! ・・・まさか!?」
ジエト「小人さんよぉ! しっかり掴まっててくれよ?!」
メルゲン「うおっ!」
ジエトはメルゲンの脱出艇を謎の機械に“装填„した。まるでパズルのピースのように・・・
ガチャリと小気味良い音を立てて脱出艇と謎の機械は合体した。
脱出艇のパーゼコアが輝く。
そしてどんどんと謎の機械に力が満ちていく。
メルゲン「やはり、やはりこれは、博士の作品! ・・・この男・・・この男は何者だ!?」
ルベタラ「なんだ!何が起こっている!?」
ジエトが手にした謎の機械はますます輝きを増していく。
・・・・・・
ジエト、メルゲン、ミキ・・・
彼らとノルマガとの戦いの火蓋が、今切って落とされた。
ジエト「うおおおおおっ! パァァァゼ!アップ!!」
終
人間が巨大ロボットのコックピットで操作する物語を見慣れてきたせいか、その反対に巨人側になるという感覚が新鮮です。これからメルゲンがミキやジエトと協力してルベタラたちと戦うストーリーになるのかな?博士の存在が気になりますね。
怪人を操作する小人という設定がとても興味深かったです。途中のセリフで、人間社会を征服した後は、彼らと共生していくというところが、彼らしいなあと思いました。
仲間?になる胸熱展開!
一体どういう関係性があるんだろう…。
博士…色々と繋がりを予想できるところも読んでいてとても面白かったです!