えくすちぇんじ!

佐和山進一郎

プロローグ(脚本)

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佐和山進一郎

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〇海岸線の道路
  去年の冬休み、
  温泉旅行に出かけた僕たち家族は
  その帰り道で事故に遭った。
  深夜の国道、
  飛び出してきたネコを避けようとして
  路肩に車ごと突っ込んでしまったのだ。

〇黒背景
ばーちゃん「・・・あら、私に言われても困るわ だってあの時まだネコじゃなかったし」

〇海岸線の道路
  事故の衝撃で家族全員が意識を失った。
  ばーちゃんだけは打ち所が悪くて
  その時にはもう亡くなっていたらしい。
  僕と姉ちゃんと両親、それにじーちゃんは
  運び込まれた病院で意識を回復した。

〇黒背景
  ・・・でも、本当に大変だったのは
  ここからだったんだ。
  実はこれが今の僕だ。
  そしてこれが今の姉ちゃん。
  こっちが今のお父さんで
  こっちは今のお母さん。
  これが今のじーちゃんだ。
  そして何と、死んだばーちゃんは
  ネコになってしまった。
ばーちゃん「あらあらあら」
  そう、僕たち家族はてんでバラバラに
  入れ替わってしまったのだ。

〇総合病院
  事故の後、
  病院で色んな検査を受けたけど
  家族全員、脳には全く異常が無かった。
  どうしてこんなことになったのか
  原因も対策もさっぱり分からない。
  病院で出来ることは
  ただ経過を観察していくことだけらしい。

〇黒背景
  そうしてまた一か月が過ぎた頃
  僕たち家族はとうとう覚悟を決めた。
  いつまでも
  誰かのフリを続けるのも疲れるし
  元の体に戻ることはスッパリ諦める。
  親戚も友達も誰も居ない土地に
  家族そろって引っ越して
  今の体で新しい人生を生きるのだ。

〇大きな一軒家
  ここからは
  僕たちの生活がどんな風に変わったのか
  紹介していきたいと思う。
  誰と誰がどう入れ替わったのか
  慣れるまではこんがらがると思うけど
  これはゲーム小説だからありがたい。
  キャラクター名と外見を見比べて
  誰の心が誰の体に入っているのか
  分かってほしい。

〇男の子の一人部屋
  まず最初は、中学生から
  年金生活者になってしまった僕、
  黒須雄一の話から始めよう。
ばーちゃん「ユウちゃんは気の毒だったわねぇ いきなりこんな おじいちゃんになっちゃって」
雄一「そうでもないよ もう学校に行かなくていいし 働かなくてもいいんだし 気楽なもんだよ」
  そうは言っても、何もしないのも退屈だし
  僕は自宅で動画配信を始めた。
  動画のネタはズバリばーちゃんだ。
ばーちゃん「私なんかがモデルで 本当にいいのかしら?」
  ばーちゃんが協力してくれれば
  普通の配信者には撮影できないような
  可愛くて面白いネコ動画が簡単に作れた。
  投稿を始めてから8か月で
  銀色の盾を貰えるくらい
  登録者は伸びていて
  自分の小遣いはもちろん、家にも少しは
  お金を入れられるようになっている。
ばーちゃん「ユウちゃんのためだったら協力はするけど 汚いのと痛いのはイヤよ?」
  ばーちゃんは近所の野良ネコ
  飼いネコとも話が通じるらしくて
  時々僕の動画に
  ゲストを連れてきてくれる。
ばーちゃん「ネコとお話できるっていうのも 意外と面白いわよ」
ばーちゃん「そもそも私 あの事故で死んじゃってたはずなんだし この先の人生は オマケのつもりで楽しむわ」

〇おしゃれなリビングダイニング
  お父さんとお母さんは
  二人で体を入れ替えたような恰好だ。
お母さん「はいみんなー、ごーはーんー!」
  お母さんは家族の中で
  新しい生活に一番早く順応したと思う。
お母さん「だってあたしのやる事は変わんないもの 誰の体になったって、ご飯は食べるんだし お風呂は入るし、洗濯物は出るんだから」
  そんなお母さんは
  家計の足しにするために
  週に三、四日はパートに出ている。

〇シックなバー
  スーパーで買い出しをしていた時
  駅前のオカマバーの店長と知り合って
  調理担当として雇われたのだ。
お母さん「ダメよ、オカマバーだからって いい加減な料理ばかり出してちゃ お客さんからお金貰ってるんだから そこはちゃんとしなきゃ」

〇おしゃれなリビングダイニング
  以前、整体師として働いてたお父さんは
  引越して早々に新しい仕事を決めてきた。
お父さん「お父さんな、ショッピングモールんとこの スーパー銭湯で働くことにしたから♪」

〇浴場
  そこはお風呂とサウナだけでなく
  宴会場やカプセルホテル
  マンガ喫茶も併設された複合施設で、
  お父さんはそこでボディケアやアカスリの
  仕事をするつもりらしい。

〇おしゃれなリビングダイニング
雄一「・・・でもお母さん、本当にいいの? お父さん、すっごくエロい目してたけど」
雄一「体が入れ替わったから 女湯入り放題・・・ とか思ってるんじゃない?」
お母さん「大丈夫大丈夫、 あの人、スーパー銭湯のこと よく分かってないから」
お母さん「多分、観光地の有名ホテルかなんかと カン違いしてるんじゃない?」

〇浴場
お父さん「・・・あ、あれっ? うそ? おじちゃんおばちゃんと 親子連ればっかり? OLのグループとかいないの? マジで?」
  やたら調子が良いお父さんだけど、
  意外と器用で、キャンプでもDIYでも
  家族の散髪でもそつなくこなせる。
  このスーパー銭湯でも、
  何だかんだと文句を言いながら、
  送迎バスの運転や
  ボイラーの調整まで手伝っているらしい。
  さらに宴会場でカラオケを歌って、
  おじちゃんやおばちゃん、中高年客の
  アイドル的存在になっているとか。

〇女性の部屋
  姉ちゃんは、僕の体と入れ替わって
  大学生から中学生に戻ってしまった。
姉ちゃん「あ~あ、また高校受験とか大学受験を やんなきゃいけないの? めんどくさーい!」
  なんて言ってたけど
  編入した地元の中学でサッカー部の先輩と
  『運命的な出会い』をしたらしい。

〇白い校舎
姉ちゃん「え、ちょっと待って、ヤバくない? あんなキレイな中学生とか現実にいる? ヤバいヤバい、うちマジで推すわ!」
  そうして即サッカー部に入った姉ちゃんは
  憧れの先輩と一緒に県大会に出場すべく
  中学サッカーに打ち込んでいる。
  ・・・勉強の方はそっちのけみたいだ。
姉ちゃん「ユウは分かってないなー 推しはね 推せる時に推さなきゃダメなの!」
  ・・・本人には絶対に言えないけど
  僕の体で先輩に熱く迫るその姿は
  おかしなBLのように見えなくもない。

〇木造の一人部屋
  最後は
  年金生活者から女子大生になってしまった
  じーちゃんの話だ。
  じーちゃんは髪を短くして黒く染め直すと
  姉ちゃんが通ってたFラン大学を中退して
  地元の調理師専門学校に通いだした。
  料理人になるつもりなのかと思ったら
  何と『花嫁修業』でもあるらしい。
じーちゃん「せっかく生まれ変わって 若くなったんだから 何か世の中の役に立ちたいんだよ 昨今は少子化が大きな問題じゃないか」

〇広い厨房
  じーちゃんは専門学校でも
  結婚を前提とした交際相手を探していて
  その昭和全開な言動が
  少なからず話題になっているらしい。
じーちゃん「どうしてそんなに結婚や出産を拒むのか 私には理解できないな」
じーちゃん「誰だって子供の頃は 親のお蔭で大きくなったんだろうに 自分の番になったら その役割を放棄するのはおかしいよ」

〇男の子の一人部屋
ばーちゃん「まあでもいいんじゃないかしら? ひ孫の顔が早く見られそうで 私はちょっと楽しみだわ」
ばーちゃん「その時は、ユウちゃんも赤ちゃんのお世話 ちゃんと協力するのよ?」
  これが僕たち家族の新しい生活だ。
  それぞれが自由で勝手気ままで
  でもそれなりに楽しんでいると思う。
  これから何が起こるのか
  さっぱり予想できないけれど
  気が向いたら僕の話を聞きに来てほしい。

コメント

  • 体が入れ替わっても全員の元々のスキルが高いから、なんだかんだ第二の人生という感じで楽しそう。家族にしか分からない特殊な状況だからこそ、家族の結束も以前より強くなっていくでしょうね。読みながら「自分が〜になったらどうするか」を考えてしまうので、ある意味読者参加型ストーリーでもありますね。

  • とんでもない現実に直面しながら、潔く家族で新しい生活に踏み出したところ、読みながらとても勇気をもらえました。おじいちゃんがせっかく若くなれたのだからと前向きな姿勢にも頭が下がります。

  • 家族全員入れ替わってしまったのに
    誰も何ひとつ文句を言ったり嫌がることなく
    それぞれの立場にピッタリな仕事や生き方をすぐに見付けていて偉いなあと思いました(^^)
    私は猫になってみたいです!

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