コドモタチノテキ

はじめアキラ

第十一話「シンソウ」(脚本)

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〇体育館の裏
  璃王と共に、慌てて学校に走る智。見れば、学校の校庭のあたりからもくもくと煙が上がっている。
田無智「雅!」
鈴原雅「智、璃王!」
  校庭には、既に雅が飛び出してきていた。
鈴原雅「た、体育倉庫のあたりから、爆発音が・・・・・・!」
田無智「くっそ!」
  まさか、本当に爆弾が仕掛けられていたとでもいうのか。三人は急いで、校庭の隅の体育倉庫へ向かう。

〇体育倉庫
  体育倉庫は硝子が割れており、中がめちゃくちゃになっていた。跳び箱は倒れ、マットは破裂したように抉れている。
  幸い、火事になりそうというわけではなかったが──
  焦げた床といい硝子といい、何かがボールのようなものが破裂した後であるのは間違いないようだった。
鈴原雅「時限爆弾、でもあったってこと?それとも遠隔操作?僕が駆け付けた時、ここから出てくる人影はなかったけど・・・・・・」
神楽璃王「何か装置があったとしても、俺達素人じゃわかるわけないな。くそっ・・・・・・」
  爆弾はブラフだと思っていたのに、と璃王が悔しげに呟く。
  校舎の方からは、この距離でも聞こえるほど悲鳴がや者がひっくり返るような音が響いてきていた。
  多分、今の爆発音を聞いて何人かがパニックになったのだろう。そりゃそうなるわ、としか言えない。
  しかも、追い打ちをかけるように再び放送がかかったのである。
  『皆さん、今の音は聞こえましたでしょうカ。たった今、体育倉庫に仕掛けておいた一番小さな爆弾を爆発させまシタ。
  これで、私が本気であることがわかってもらえたと思いマス』
田無智「放送室!またかよ!」
神楽璃王「俺達が離れた隙にこれか・・・・・・!」」
  慌てて立ち上がる智。
  『教室から出ようとする人がいるのが見えたので、見せしめもかねて爆破させていただきまシタ。次は、脅しではありまセン。
  ・・・・・・皆さんがいる、教室か特別教室、職員室・・・・・・人がいる場所を爆破させていただきマス。
  爆弾を探そうとした人がいたら、その人がいる場所を爆破しマス。皆サンは、私に従う他ないのデス・・・・・・!』
田無智「ふざけやがって!」

〇体育館の裏
  慌てて体育倉庫を飛び出す智。後ろから、璃王と雅もついてくる。
  三階の放送室だ。今度こそ、犯人を捕まえなければ!
  『皆さんは、自分の席について大人しく待っているのデス。
  言う通りにすれば、命は奪いまセン。あと少しだけ待っていてくだされば、無事に皆さんを解放しマス・・・・・・!』
神楽璃王「あと少し・・・・・・?」
  璃王が首を傾げている。だが、それに対して尋ねるのは後回しだ。

〇学校の廊下
  下駄箱で急いで靴を履き替え、廊下へ。

〇階段の踊り場
  そして階段を駆け上がる。
  『何も悪いことをしていない人達に、危害を加えるつもりはありまセン。
  ですが、私の邪魔をする人には容赦はしまセン。私は全てを見ていマス。死にたくなければ、従うことデス』
田無智「くそがっ!」

〇放送室
  息を切らせて、智が放送室へ飛び込むのと。放送室の放送が終わるのは同時だった。
  今度こそ捕まえられるかと思ったのい、またしても誰もいない。
  テープがカタカタと音を立てて回っている――ということは、
  これをセットした人間は、セットだけしてすぐどこかへ行ってしまったということなのだろう。
田無智「今度こそ捕まえられると思ったのに!また逃げられた!」
  悔しがる智。しかし。
神楽璃王「いや、こ、れで・・・・・・真相におおよそアタリはついたぞ」
田無智「え!?」
  璃王がとんでもないことを言い始める。驚いて彼を振り向く智と雅。一体どういうことなのだろう。
  が、本人は全力疾走のせいでかなり息が切れてしまっているようだった。
  そういえば、三人の中で一番体力がないのは彼だったと思い出す。
田無智「お、おい無理すんな。少し休めよ」
神楽璃王「そうも言ってられない。このままだと、本当に逸見真友が死ぬかもしれない」
田無智「は!?」
神楽璃王「・・・・・・移動しながら説明する。状況証拠だらけだけど、そう考えるとつじつまがあうことが多いんだ」
  とにかく急いで玄関へ、と璃王が言う。
  明らかに疲れ果てている様子の彼を気遣いながらも、本人がそう言うなら仕方ないと移動を始める三人。

〇学校の廊下
神楽璃王「まだ雅には言い損ねてたけど。さっき確認したら、緒方の家には誰もいなかったんだ」
鈴原雅「え!?」
  璃王の説明に、目を見開く雅。
神楽璃王「つまり緒方五月本人も不在だったってこと。それを念頭に置いて、今の放送だ。テープを仕掛けることができたのは誰だと思う?」
神楽璃王「最初の放送は、給食の時間のあとに先生がこっそり仕掛けることができただろうけど、」
神楽璃王「今はみんな教室からそうそう出られないような状態だ。先生や職員、学校に来ている生徒は無理だろ」
鈴原雅「う、うん」
神楽璃王「つまり、仕掛けられたのは俺達みたいにこっそりサボってた生徒か、」
神楽璃王「たまたまあのタイミングでトイレとかに立ってて教室にいなかった生徒か・・・・・・学校を休んでいた生徒くらいなんだ」
神楽璃王「つまり、学校を休んでた緒方五月本人にはそれができる。ましてや、俺達も含めてみんなの目が体育倉庫に向いてたしな」
神楽璃王「ちなみに、テープだったってことを知ってるのも俺達だけ」
神楽璃王「教室から出ようとした生徒がいなかったところで、さっきのはシナリオ通り爆破&放送される予定だったんだろう」
  確かに。教室などにいる先生や生徒に、今のテープを仕掛けるのは無理だろう。

〇階段の踊り場
神楽璃王「この事件は最初から、辻本先生と緒方の共犯だったと考えると筋が通る」
神楽璃王「そもそも、さっき校庭に誰もいなかっただろ?」
神楽璃王「体育倉庫の爆破だって、体育の授業をやっているクラスが一つでもあったら巻き込まれてる危険があったはず」
神楽璃王「この時間、どのクラスも校庭を使ってない、時間割が被ってないことを知っている人間は教職員しかいない」
田無智「言われてみればそうだ」
神楽璃王「な?カセットテープを使ってきたあたり、若い先生でもない」
神楽璃王「緒方と親しかったことからしても、辻本先生が噛んでる可能性はすごく高いだろう」
神楽璃王「先生が最初のテープを仕掛けて、皆を教室に留めておき、同時に監視する」
神楽璃王「その間に、緒方本人が学校に来てこっそりと動き出すって寸法だったんだ」
田無智「う、動き出すって何を」
神楽璃王「決まってる。・・・・・・窓から、逸見真友を狙うためさ!」
田無智「!!」
  全てが、一本の線で繋がった瞬間だった。
  カーテンを開けろ、なんて命令。席についていろ、なんてわざわざ言ったこと。
  そして、窓際の逸見真友の席。
鈴原雅「・・・・・・そういえば、全開の席替えの時ちょっと変だった」
  はっとしたように雅が言う。
鈴原雅「最終的に、多数決でみんな“仲の良い人同士”がいいっていったのに。辻本先生がほぼ強引に、席順を独断で決めてたような」
田無智「なんだよ、真っ黒じゃねえか!」
  ああ、何で気づかなかったのか。智は歯噛みする。
田無智「うちのクラスの、窓の外・・・・・・そこで、緒方が逸見を殺そうと狙ってるってわけかよ!」

次のエピソード:第十二話「ケセナイカコ」

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