ジャークソン(脚本)
〇研究装置
科学者怪人「ついに起動出来ます ジャークソン様」
ジャークソン「──ついにか」
ジャークソン「この装置を使えば地上に巣食う 人間共を根絶やしにすることが出来る」
ジャークソン「長かった──この時が来るのを 待ちわびていた」
〇地球
我々はこの地球の
地下深くに生まれた。
〇暗い洞窟
地上を調査し、『人間』という
種族が数多く生息していることは
分かっていた。
しかし、我々は地下に住む種族。
日の光も好まず、わざわざ地上へ
出ようなどと思うことはなかった。
〇渋谷の雑踏
しかし、人間は我々の存在に気付かず、
お構いなしに地下への開発を進めていった。
〇地下鉄のホーム
地下鉄だかデパ地下だか知らんが、
地下を掘り進め、我々の生息範囲を狭め、
穏やかな生活は脅かされていった──。
〇研究装置
人間を排除するために開発されたのが
この『中心核消滅マシン』である。
地上へ照射すれば、
瞬く間に地球中へ
エネルギー波が広がり、
人間を飲み込んでいく。
そして体の中心核を破壊し、
生命活動を行えなくするのだ。
ジャークソン「愚かな人間共よ── 今こそ制裁を受けるがいい!」
科学者怪人「いけませんジャークソン様! 乱暴に扱われては!」
科学者怪人「その装置はデリケートなので誤作動を 起こす恐れが──!!」
ジャークソン「え?」
ジャークソン「おい!なんか鳴ってるぞ! なんとかしろ!」
科学者怪人「早く緊急停止ボタンを!」
ジャークソン「ぐおおおおおおおおおおお!!!!」
〇大きな公園のステージ
さぁ、ニャンサムのダンスが始まるよー♪
ニャンサム「ニャンニャン♪サムサム♪ ネコのイケメン〜♪」
少女「ニャンサム可愛い〜! ダンスもキレキレだよ〜!」
少年「僕もニャンサムみたいに 踊れるようになれるかな〜?」
〇大きな公園のステージ
ニャンサム「・・・・・・」
ニャンサムランド従業員「ニャンサムさん お疲れ様です」
ニャンサム「あっ、お疲れ様です!」
ニャンサム「よいしょっと・・・!」
津田阿久太「ふぅ・・・」
ニャンサムランド従業員「ニャンサムさん、今日も良かったですね! とても代打のアルバイトさんとは 思えないパフォーマンスでしたよ!」
津田阿久太「あはは・・・ありがとうございます・・・」
津田阿久太(当然だ・・・僕は本当は テレビのヒーローに憧れて、 スーツアクターを目指して 日々体を鍛えていたんだから・・・)
〇荒野
身体能力やスタミナ、
パフォーマンスには
とても自信があった・・・。
しかし、僕にはある致命的な
欠点があったのだ・・・。
監督「カーット!!」
監督「何度言ったら分かるんだい? そこの演技はこうでしょうが!」
津田阿久太「す、すみません・・・監督・・・!」
僕は台本を覚えるのが
物凄く苦手だったのだ・・・。
〇大きな公園のステージ
津田阿久太(ダンスは体で覚えられるけど、 台本は文字だらけでよく分からないし、 頭が爆発しそうになる・・・)
津田阿久太(そのせいで、今はなんとか 自分に出来そうな仕事を探して 食い繋いでいるんだ・・・)
津田阿久太「くそう・・・台本なんて文化 滅べばいいのに・・・」
ソコノ・・・オマエ・・・
津田阿久太「ん・・・?」
チカラガ・・・ホシイカ・・・
津田阿久太「なんだこの声・・・? どこから聞こえて来るんだ・・・?」
〇大樹の下
津田阿久太「こっちの茂みの方からか・・・?」
津田阿久太「うわぁっ!?」
津田阿久太「なんだこれ・・・? 怪人のスーツ・・・?」
津田阿久太「中身も入ってないようだし、 やっぱりスーツだよな・・・ なんでこんな所に・・・?」
津田阿久太「ニャンサムランドにこんな キャラクターいるのか・・・? 世界観どうなってんだ・・・」
津田阿久太「しかし・・・」
津田阿久太「カッコいいなぁ・・・! なんか悪者っぽいけど、 こういうヒーローもありだな・・・」
津田阿久太「ちょっと着てみようかな・・・ 周りに人もいないし・・・」
津田阿久太「う〜ん・・・」
津田阿久太「どうせ仕事では着られないんだ・・・ ちょっとくらい良いだろ・・・!」
津田阿久太「よいしょ・・・」
津田阿久太「いやあ・・・良いなぁ・・・ やっぱりこういうスーツ着たいよなぁ・・・」
カンシャスル・・・
津田阿久太「ん・・・また声が・・・」
津田阿久太「なんなんださっきから・・・ 気のせいじゃないのか・・・!?」
キサマノカラダヲモラウゾ!!!!
津田阿久太「なっ・・・!?」
〇大樹の下
ジャークソン「フフフフ・・・」
ジャークソン「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ────!!!!」
ジャークソン「やったぞ!成功だ! 我は新しい体を手に入れたのだ!」
ジャークソン「一時はどうなるかと思ったぞ・・・」
〇研究装置
ジャークソン「おい!なんか鳴ってるぞ! なんとかしろ!」
科学者怪人「早く緊急停止ボタンを!」
ジャークソン「ぐおおおおおおおおおおお!!!!」
あの時の事故で我らの体は
中心核が破壊され、抜け殻のような
状態になってしまったのだ・・・。
そして中心核消滅マシンは爆発し、
その衝撃で抜け殻と化した我らの
体は地上へ吹き飛んだ──。
〇大樹の下
ジャークソン「意識は残ったままという なんとも奇妙な状態ながら どうすることも出来ず・・・」
ジャークソン「このまま放置され続けいずれは 処分される運命かと思ったが、 イチかバチかテレパシーを送って 新しい中身を呼び寄せたのだ!」
ジャークソン「あの爆発だ── 恐らく我らの住処は跡形もなく 吹き飛んでいるだろう・・・」
ジャークソン「中心核破壊装置も失った── となれば我自らの手で 地上を制圧するしかあるまい・・・」
ジャークソン「しかしさすがに一人となると 骨が折れる・・・我のように 新たな中身を得て活動している 同士は残っていないだろうか──」
ジャークソン様──!!!!
ジャークソン「む・・・?まさか 噂をすればという奴か──?」
科学者怪人「ご無事でしたか!! もう終わったかと思いましたよ!!」
ジャークソン「科学者、心配かけたな・・・ 貴様も新たな中身を手に入れたのだな?」
科学者怪人「えぇ・・・なんだか頭の悪い男が ふざけ半分で中に入ったようで・・・ 無事、動けるようになりました・・・!」
ジャークソン「住処も計画も何もかも失い、 途方に暮れていたところだ 科学者、何か良い案はないか?」
科学者怪人「それでしたら・・・まずはこの なんとかランドとかいう地を 制圧し、ここを拠点にするのは いかがでしょうか?」
科学者怪人「なにせここにいるのは 女子供ばかりです 私ひとりでも余裕で片付く 作業だと思いますよ」
ジャークソン「そうだな──それがいい 科学者、頼めるか?」
科学者怪人「えぇ、数分で片付けて見せましょう」
〇遊園地の広場
男性「な・・・なんなんだあいつは・・・!?」
女性「ばっ・・・化け物・・・!!」
科学者怪人「今まで地下で暮らしてきましたが・・・」
科学者怪人「地上で好き勝手暮らしてきた人間に 直接制裁を加えられるなんて、 こんなに気分が良いことだったんですねぇ!」
科学者怪人「年甲斐もなくはしゃいでしまいますよ! フフッ!!フフフフフフッ!!それっ!!」
ジャークソン「派手にやっているな── あんなにテンションの高い 科学者を見るのは初めてだぞ・・・」
ジャークソン「こうして見ているだけというのも いささか退屈ではあるが── わざわざ我が出て行くのも無粋か」
少女「あっ・・・腰が・・・ 腰が抜けて動けない・・・」
科学者怪人「フフフフッ・・・!! 怖いですか?そうでしょうねぇ!? あなた達にはなんの力も無く 無力なんですから・・・!!」
少女「うぅ・・・!!」
科学者怪人「あぁ・・・その顔・・・ 最高ですねぇ・・・ 人を襲うのってこんなに 楽しいことだったんですねぇ・・・」
科学者怪人「病みつきになってしまいそうですよぉ!」
少女「誰か・・・助けて・・・!」
科学者怪人「おや?ジャークソン様も やってみたくなりましたか?」
科学者怪人「どうぞどうぞ、こんなに 楽しいことを私ひとりでなんて 申し訳ない気持ちに なっていたところですよ!」
少女「ひっ・・・!」
科学者怪人「ぐはっ!?」
科学者怪人「ジャークソン様!? 何をなさるんですか!?」
科学者怪人「いだだだだだだだだっ!?」
科学者怪人「お前・・・ジャークソン様じゃないな!? 何者だ・・・!?」
ジャークソン「こいつジャークソンっていうのか・・・」
津田阿久太「着こなしたぜ・・・!! この津田阿久太が・・・!!」
科学者怪人「な・・・なにィィィ──!?」
科学者怪人「ふざけるなッ!!ジャークソン様を 返せェェェ──ッ!!」
科学者怪人「どうだッ!!思い知ったかッ!!」
科学者怪人「き・・・効いてない・・・!?」
科学者怪人「いや、それはそうだ!! 体は無敵の肉体を誇る ジャークソン様なんだ!!」
科学者怪人「私の攻撃が通じる訳がない!!」
津田阿久太「ふふふ・・・これが ヒーローの気分って奴か・・・ 最高の気分だぜ・・・!!」
津田阿久太「台本もなく好きなように 怪人をぶん殴れるんだからな!!」
ジャークソン「くそッ──!! なんなんだこれは──!? 体が言うことを聞かん──!!」
ジャークソン「に・・・逃げろッ科学者──!! このままではお前を殺してしまうッ!!」
科学者怪人「うぐおおおおッ!?」
津田阿久太「これでトドメだっ!!」
津田阿久太「ジャークソン・リッパー!!」
ジャークソン「勝手に我の名前を技名に 使うなァ────ッ!!!!」
科学者怪人「ジャ・・・ジャークソン様ァ──!!!!」
科学者の中身「オフッ・・・!?」
津田阿久太「なるほど・・・外側を倒すと 中の人が出て来て、外の怪人は ただの着ぐるみに戻るって訳か!」
津田阿久太「これは面白い・・・! 他の怪人の着ぐるみも コレクションにしてやるぜ!」
津田阿久太「うッ・・・!?」
ジャークソン「はぁッ・・・はぁッ・・・!!」
ジャークソン「おのれ・・・津田阿久太・・・!! よくも科学者を・・・!!」
ジャークソン「絶対に貴様の思い通りにはさせんぞォ──!!」
こうして、奇妙な2人の
戦いが幕を開けたのであった──。
シリアスなお話なんですが、中の人が動かせるようになって、魔導師さんに攻撃し始めたところすごく楽しくて笑ってしまいました!
かっこいい!
イキイキしてますよね!
人が本体で、異世界から来た何かが憑依するのはよくあるストーリーですが、これが逆パターンになっていて面白い発想だと思いました。装置の爆発から中身を失い、スーツアクターにつなげていく展開も見事です。
着ているのか、着られているのか?
こんなに続きが気になるところで終わるなんて…
もう、焦らし上手サン!