狂鬼vs凶鬼

ペリパトス

読切(脚本)

狂鬼vs凶鬼

ペリパトス

今すぐ読む

狂鬼vs凶鬼
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇渋谷の雑踏
  僕は英雄にならなければならない。
  罪を贖うために。
  怪獣と戦う巨人の英雄が、ビルを少し壊したところで責められようか?
  英雄は罪を赦される。
  僕は英雄になって、罪を赦されなければならない。
  誰かが言っていた・・・
  「人を一人殺せば人殺しだが、百人殺せば英雄である」
  だから僕は百人を殺して英雄になる。
  あるひとつの罪を贖うために。
  変身。

〇CDの散乱した部屋
  『次のニュースです。』
  『昨夜9時頃、渋谷で・・・』
ニシキ「なんだよコイツは!」
ニシキ「こういうのって俺の専売特許じゃなかったのかよ!」
凶鬼「どうやら奴も貴様と同じく狂気を孕んだ者のようだな」
ニシキ「超常の力を引き寄せるほどの狂気を?」
ニシキ「そんなことあってたまるか。俺クラスがゴロゴロいるようじゃこの国は終わりだよ」
凶鬼「貴様が言えた立場か」
凶鬼「それに、我が見たところ奴の狂気はお前のを超えているかもしれん」
凶鬼「なにか強迫観念のようなものに突き動かされているようだ」
凶鬼「こういう奴は、強い」
ニシキ「そこまで言われちゃ俺の面目丸つぶれだね」
ニシキ「潰す」

〇荒廃した改札前
アカネ「なんで・・・」
アカネ「なんなのよ!!」
狂鬼「すまない」
狂鬼「僕が英雄になるために・・・」
狂鬼「死んでくれ」
アカネ「いやぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
狂鬼「これで・・・」
ノゾム「あと46人・・・」

〇ケーキ屋
シノノメ「なんだテメエ文句あんのか!!」
ニシキ「大有りだよ!!人が並んでんのが見えねえのかコラ!!」
ヤノ「うっせえ!!俺のツレなんだから良いじゃねぇかよ!!」
ニシキ「いーや良くないね」
ニシキ「『グループの方は揃ってお並びください』って書いてあんだろが!!」
ニシキ「日本語読める!?」
シノノメ「馬鹿にしやがって!!」
ヤノ「ぶっ殺すぞ!!」
ニシキ「お?言ったな?」
ニシキ「『殺す』」
ニシキ「確かにそう言ったな!?」
ヤノ「ああ言ったよ!!」
ニシキ「そういうセリフを吐くってことは、殺す覚悟と・・・」
ニシキ「殺される覚悟があるってことだな!?」
ヤノ「な、なんだよ・・・」
ニシキ「『撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだ』ってな」
ニシキ「ならコッチも遠慮はいらねぇ。何しろ言質とったんだからな」
ニシキ「変身」
シノノメ「な、なんなんだよ!!」
凶鬼「なんだも何も、世間を騒がす怪人サマだよ」
凶鬼「新参者の黒怪人に巷の話題をかっさらわれちゃ、先輩として立つ瀬がないんでね」
凶鬼「ここらでいっちょ暴れときますか!!」
シノノメ「ひぃぃぃ・・・!!」
ヤノ「助けてぇ!!」
凶鬼「よーし、せっかく変身したことだしあと何人かいっとくかぁ!」
凶鬼「俺こそが世を恐怖の闇に叩き込む怪人サマってなぁ!」

〇血まみれの部屋
  『次のニュースです。本日昼頃、新宿のケーキ店で・・・』
ノゾム「なんだよこれ・・・僕だけじゃなかったの!」
狂鬼「既に同等の力を持つ者がいることは把握していたが・・・」
狂鬼「私の口から伝えることは出来なかったのだ」
ノゾム「既に存在していた?ってことは・・・」
狂鬼「お前が力を手に入れる前からだ」
狂鬼「おそらくかなりの数の者を手にかけてきたのだろうが・・・」
狂鬼「どれも巧妙にやっていたのだろう。白昼堂々は今回が初めてだ」
ノゾム「そんな・・・じゃあ他にも・・・」
狂鬼「巷を騒がす詳細不明の連続不審死・・・」
狂鬼「ことここに至れば下手人は火を見るよりも明らかだ」
ノゾム「許せないよ・・・」
ノゾム「僕が止めなきゃ・・・」
ノゾム「同じ力を持つ者として・・・」
ノゾム「僕が裁かなきゃ・・・殺して良いのは英雄だけなんだ」
ノゾム「この力を振って良いのは僕だけなんだ・・・」
狂鬼「・・・」

〇大会議室
巡査「警部、頼まれていた資料をお持ちしました!」
老刑事「ありがとう。こんな老人の戯言に付き合ってくれるのは君だけだよ」
巡査「いえいえ、何でも申し付けてください。それに・・・」
巡査「渋谷と新宿、立て続けに堂々と事件が起これば上も怪人の存在を認めざるを得ません」
巡査「コツコツと調べ続けた甲斐があるってものです」
老刑事「はは。だが奇妙でもあるな」
老刑事「これまで犯行の瞬間を人目に晒さず、わずかな目撃証言の中にしか存在しなかった怪人が急に白昼堂々と暴れるとは・・・」
老刑事「先に衆目を浴びたのは渋谷の怪人だが、私が追ってきたのはむしろ新宿のものに近い」
老刑事「つまり新宿が1号、渋谷が2号というわけだ」
老刑事「なぜ1号は今までの闇討ちスタイルを一転させたのか、2号はどこから湧いてきたのか・・・」
巡査「それについてですが・・・渋谷事件以前に、2号の特徴と一致する怪人の目撃例を発見しました」
老刑事「何!?」
巡査「路上で不審死体が発見された件で、その死亡推定時刻に怪人を見たという証言があります」
巡査「さらにその被害者の姉も行方不明で捜索願が出ています」
巡査「当時はまともに取り合われず、私も今まで追っていた怪人の特徴と一致しないのでリストから外していたのですが・・・」
老刑事「怪人は実は2匹いたと」
老刑事「行方不明の姉も怪人に襲われたのだとしたら、」
老刑事「今まで被害者に共通点が見られなかった中で異例のケースだ」
老刑事「そこにヒントが隠されているかもしれん」

〇墓石
ノゾム「カオリちゃん・・・ごめん・・・」
ノゾム「でも・・・仕方ないよね・・・」
ノゾム「僕の禊が終わるまで、お姉さんの死を知られるわけにいかなかったんだ」
ノゾム「この力に目覚めた時、僕は君のお姉さんを・・・」
ノゾム「だから、『お姉ちゃんをどこにやった』なんて聞かれたら、殺すしかないじゃないか・・・」
ノゾム「でも喜んでよ。お姉さんの死が赦されるための百人の犠牲の一つになれるんだから」
ノゾム「それと、僕にもう一つ目標が出来たよ」
ノゾム「新宿の怪人、あれは僕が倒す」
ノゾム「この力は英雄になるためのものだ。それをあんな風に使うなんて赦せないよ」
ノゾム「だから僕があいつを倒して、英雄になる」
ノゾム「それまで、待ってて」

〇入り組んだ路地裏
ヒヤマ「ひ・・・ひぃぃぃ!!」
凶鬼「よく逃げたモンだね。でもそろそろ死んでもらうよ」
ヒヤマ「な、なんで殺されなきゃいけねぇんだよぉ!」
凶鬼「アンタにイラついたから。他に理由がいるか?」
ヒヤマ「頭も見た目も滅茶苦茶だぁ・・・」
巡査「警察だ!そこで何を・・・って怪人!?」
凶鬼「チッ、流石に目立ち過ぎたか」
老刑事「お目当ての方とは違ったが、ようやく尻尾を掴んだぞ」
凶鬼「お目当て?渋谷のヤツか?」
老刑事「そうだ。お前と渋谷の個体の関係は!?」
凶鬼「どいつもこいつも渋谷のヤツばっか話題にしやがって・・・」
凶鬼「由緒正しき初代怪人はこの俺だってのによぉ!」
巡査「警部、危険です。一旦退いて応援を呼びましょう!」
凶鬼「死ねやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

〇血まみれの部屋
  『速報です!!』
  『現在、品川付近で・・・』
ノゾム「あいつだ・・・」
  『なお、この怪人は以前新宿に出現したものと酷似して・・・』
ノゾム「僕があいつを止めなきゃ・・・」
ノゾム「イオリちゃん、行って来るよ」
ノゾム「あいつを倒せば、僕の罪は赦されるんだ」
ノゾム「そしたら、天国で一緒になろう」
ノゾム「待ってて」
イオリの死体「・・・」

〇川沿いの公園
巡査「警部、警部ぅぅぅぅ!!!!!!!!!!」
凶鬼「次はテメェの番だ。手こずらせやがってよ」
凶鬼「まあ、お前が呼んでくれたマッポのぶん俺様のキルスコアも増えた訳だが」
ノゾム「見つけたよ・・・」
巡査「こら!危ない!!」
凶鬼「テメェ・・・」
ノゾム「君は僕が止めるよ」
ノゾム「変身」

〇超高層ビル
凶鬼「オラ!オラ!」
凶鬼「テメェは!俺が!殺す!」
凶鬼「この力は!俺だけのモンだぁ!」
狂鬼「違う!この力は、英雄になるための力だ!」
狂鬼「そんな力の使い方をするお前にその資格はない!」
狂鬼「お前を倒して、僕は英雄になる!」
凶鬼「英雄だぁ?」
凶鬼「なんでそんなモンに?」
狂鬼「英雄になれば、罪は赦される・・・」
狂鬼「僕はお前を倒して、百人を殺して、罪を贖わなきゃいけないんだぁ!」
凶鬼「そうか・・・何かに突き動かされてるってこういうことだったのか」
凶鬼「確かにこりゃあ、狂気だ。とびっきりのな」
凶鬼「滅茶苦茶だぜ、お前。だがそれだけ強い」
凶鬼「その狂気(つよさ)、俺様がいただく!」
凶鬼「俺はお前を倒して、お前を超える!」
狂鬼「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
凶鬼「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
  ズギャァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ニシキ「な?変身が、解けた!?」
ノゾム「力のぶつかり合いに耐えられなかったのか」
ノゾム「でも裏を返せば、この力で相手を倒せるってことだ」
ニシキ「お?俺も同じこと考えてた!」
ニシキ「それじゃあ似た者同士、第二ラウンドと行こうぜ」
  「「変身!」」
狂鬼進化態「何だこれは!?」
内なる狂鬼の声「おそらく戦うことでより強く互いを意識し、さらなる狂気へと至ったのだろう」
内なる狂鬼の声「それほどまでに君たちは互いに刺激し合っている」
内なる狂鬼の声「それに奴も」
凶鬼「うぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」
凶鬼進化態「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
狂鬼進化態「お互い第二形態ってワケか」
凶鬼進化態「さあて、まだまだ夜は長い」
凶鬼進化態「楽しもうぜ、後輩」
狂鬼進化態「ああ、いくらでも付き合うさ」
狂鬼進化態「そっちが倒れるまでね」
凶鬼進化態「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」
狂鬼進化態「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
凶鬼進化態「テメェは俺が!」
狂鬼進化態「君は僕が!」
  「「ぶっ殺す!!!!」」

コメント

  • 心に弱さや優しさを持つ人間の方が、一度吹っ切れると半端ない狂気を発動するんですね。真性の狂気VS無限の凶暴性のバトル、決着がつかないままENDなのは現実社会でも同じかもしれませんね。

  • 人を殺すという行為で殺人犯にも英雄にもなれるというフレーズが読み進めながらしっくりきました。狂鬼と凶鬼、その微妙な塩梅が私達の奥底にあるのでしょうね。

  • 思想は違うが同じ力を持つ相容れぬ者。
    互いに他者の存在を認めないのに、それと戦うことによって形態がレベルアップするのは皮肉なもので、現代の必要悪を連想させるような深みを感じました。

コメントをもっと見る(5件)

成分キーワード

ページTOPへ