1カンデラ × =

きせき

エピソード16-水色の刻-(脚本)

1カンデラ × =

きせき

今すぐ読む

1カンデラ × =
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇港の倉庫
  日本より遥か彼方にあると言われると或る共和国。
  国名は伏せるが、その国では貧富の差が激しく、
  強盗や密売、暗殺等が日常的に行われていた。

〇港の倉庫

〇廃墟の倉庫
マフィアらしき男「おい、今日は確か、新入りがいるんじゃなかったか?」
SP3「はっ、確か、ノースという者が来る、と伺ってましたが・・・・・・」
「すみません、遅くなりました」
SP3「おい、遅いぞ!! ボスを待たせやがって!!」
「すみません、少し前の依頼が押してまして・・・・・・」
「本当にすみません、すぐに終わらせますね」
喜多井譲治「・・・・・・次は、ホテルのパーティー会場に現れる人物を仕留めて欲しいか」

〇廃墟の倉庫

〇結婚式場のレストラン
喜多井譲治「(えーと、ターゲットは・・・・・・っと・・・・・・)」
ターゲットの男「・・・・・・という訳ですな。この間は私もこんなことがありまして」
喜多井譲治「(あ、ターゲット、見つけた・・・・・・)」
喜多井譲治「(あとはグラスを持って、彼の前を通り過ぎる)」
喜多井譲治「(グラスに入っている毒は遅効性で無味無臭)」
喜多井譲治「(たとえ、解剖に回されても、心不全に近い状態で死ぬ為、気づかない)」
喜多井譲治「(あとは、今日の会で飲酒するのは彼だけ)」
SP2「あ、1つ、いただこう」
喜多井譲治「はい、お1つですね」
SP2「アペロ様、どうぞ」
ターゲットの男「ああ、すまんねぇ」
喜多井譲治「(最後だろうけど、良い夜を・・・・・・)」

〇廃墟の倉庫
  刺殺に、

〇結婚式場のレストラン
  毒殺。

〇奇妙な屋台
  銃殺に、

〇入り組んだ路地裏
  その他、犯罪行為。
  この貧しい国で生きる為に、
  喜多井(きたい)は何でもやってきた。
  ただ、そんな生活は突然、終わった。

〇怪しげな酒場
???「あの、本当に帰らないといけなくて・・・・・・!!」
酒場の男「そう邪険にしなくても良いじゃねぇか」
酒場の男「まだ明るいし、そんなに心配ならホテルまで俺が送って行っても良いぜ?」
  1人の女性に絡んでいる男。
  彼女はこの国の言葉に慣れていないのか、
  拙い言葉を繰り返し、男から離れようとする。
  だが、そんな細やかな抵抗で何とかなる程、甘くはない。
酒場の男「へへへ、そっちは壁だよ?」
???「あぁ・・・・・・」
喜多井譲治「・・・・・・」
酒場の男「なんだい? 兄ちゃん。ここの酒が不味くても、グラスは割っちゃあいけねぇよ?」
酒場の男「それとも、小学校では教えてくれなかったのかな?」
喜多井譲治「ああ、確かに不味い酒だな」
酒場の店員「うわぁ、これはひどい」
喜多井譲治「ああ、あんたがマスターか。悪いな・・・・・・」
喜多井譲治「グラスも割っちゃったし、酒も溢しちゃったし、粗大ゴミも作っちゃって」
喜多井譲治「これで、今日は勘弁してもらえると良いんだけど」
酒場の店員「え、こんなに?」
喜多井譲治「ああ、この店ならちょっとした改装とかもできるし、」
喜多井譲治「もっと立地の良いところに移転とかもできるんじゃないか?」
喜多井譲治「まぁ、為替屋に行かなきゃいけねぇけど・・・・・・」
酒場の店員「いえ、それでも、多すぎますよ」
喜多井譲治「ああ、手数料だとくらいに思ってよ。この粗大ゴミの片づけもしなきゃいけねぇだろうし」
喜多井譲治「それじゃあ・・・・・・」
???「あ、待ってください!!」

〇市場
???「あの、待って。待ってください!!」

〇西洋の市街地
???「待ってください!! お願い!!」

〇奇妙な屋台
???「はぁ、はぁ・・・・・・」

〇バスケットボール場
喜多井譲治「・・・・・・」
???「はぁはぁ・・・・・・」
喜多井譲治「貴方もなかなか義理堅いというか、何というか・・・・・・」
???「はぁ、はぁ・・・・・・」
喜多井譲治「私が勝手にしたことです。酒が不味いから、彼が気に食わないからあの結果になった」
喜多井譲治「それだけのことですよ」
???「でも、貴方なら店を出る、だけで、良かった・・・・・・そうじゃあ、ない、ですか?」
???「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
喜多井譲治「そうですね。まぁ、そうなんだと思います」
  日頃から躊躇なく犯罪行為に手を染めているのに、
  時折、気まぐれのように誰かを助けたりする。
  それが、喜多井譲治(じょうじ)という男だった。
???「あの、私、まだ暫くこの国にいて、また貴方に会いたいんです」
???「お礼もしたいし、その・・・・・・会ったばかりの人にこんなことを言うのは」
???「おかしいかも知れないんですけど、貴方に惹かれていて・・・・・・」
喜多井譲治「私に?」
  それは流石にやめておいた方が・・・・・・と
  喜多井は言う。
喜多井譲治「悪いことは言わない。本当に、私は危険な仕事をしているんですよ」
喜多井譲治「(そうしなければ、生きていけなかったから・・・・・・)」
  だが、彼女は引かなかった。
???「危険なお仕事とは貴方の意思で? それとも、仕方なく?」
喜多井譲治「それは・・・・・・」
???「それは後者、なんじゃないですか? 貴方は悪いことができる人には見えないから」
  彼女は喜多井にとって、不思議な感じのする女性だった。
  そして、彼女に押し切られる形で数時間を過ごした
  喜多井は仕事を辞め、彼女の住む国に渡った。
  もっと言えば、自身のルーツでもある国に。

〇綺麗なキッチン
  慎ましくも、温かな生活。
  彼女と、
  彼女との間に生まれた子と、
  喜多井の3人で
  そんな生活がずっと続くかと思った矢先のことだった。

〇綺麗なキッチン
喜多井譲治「おい、いるのか? いないのか?」
喜多井譲治「あああああ!!!!!」
  喜多井の家は一晩中、燃え続け、喜多井は何とか、
  朦朧とした意識の中、這うように家から出れたが、

〇黒
  酷い火傷を負い、何日間も生死を彷徨った。
  だが、生きるかそうでないかで言えば、喜多井は
  死した彼女達と違い、生きていた。

〇公園のベンチ
「・・・・・・」
  夕焼けに染まる公園のベンチに座る喜多井。
  色んな人々の声が聞こえてくるのだろうが、彼の耳には
  聞こえているような、聞こえてないような状態だった。

〇空
「(帰ろうか・・・・・・あの国へ・・・・・・)」

〇港の倉庫
  そう、それはこの国ではない、あの貧しい国だ。

〇公園のベンチ
「(でも、もう生きるなんてどこへ行っても無理だろう)」
  生きる国を変えたところで、生きることなど
  あまりに無意味なことのように思えた。
???「あの、大丈夫ですか?」
「え?」
  喜多井が考えごとをしていると、
  目の前には1人の少年が立っていた。
???「あ、具合が悪そうだったので・・・・・・」
???「病院とか行った方が良ければ、家の者に運ばせますが?」
  年にして、喜多井の子より
  4、5歳上といったところか。
「(それにしても、大人びた子だ。遊びたい盛りだろうに、バイオリンのケースか?)」
「(それに、反対の手には参考書や分厚そうな本が・・・・・・)」
  喜多井は重くないのか、と無意識で聞いてしまっていた。
???「ええ、誰かに持ってもらうのは楽ですが、自分の為にはなりません」
  少年のきっぱりとした答えに、物理的にも、精神的にも
  重いものを持っているように喜多井の目には映った。
  少年は持つことを望んでいるように見えたが、
  あまりにもその手や身体は小さくて、何かの拍子に
  潰れてしまうのではないか、と喜多井は思う。
「私も大丈夫だよ・・・・・・少し前に少し顔に火傷を負ってね。たまに痛むんだ」
「大丈夫。今は火傷だらけだけど、薬も飲んでるし、」
「落ち着いたら、手術もして火傷もなくなる予定だから」
  喜多井はベンチから立つと、よろけそうになるのを
  耐えて、少年から去ろうとした。
  でも、

〇空
  できなかった。

〇公園のベンチ
「君はここへは良く来るのかい?」
???「はい。まぁ、雨が降ってる日には真っ直ぐ帰りますけど」
???「ここは・・・・・・他の場所と違って、嫌な声が聞こえないから」
「そう・・・・・・じゃあ、また会いたいんだけど、どうかな?」
  それはかつて、彼女が喜多井に言っていたように
  それは彼女との間に生まれた子を身守りたかったように
  喜多井から出た言葉だった。
???「貴方が、僕に?」
「うん、私が君に」

〇空
  そして、大人びた少年はそのまま大人になり、
  彼の隣には喜多井・・・・・・いや、彼がいた。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「本名、喜多井譲治。偽名、南田譲三郎(じょうざぶろう)」
黒野すみれ「(彼なら、毒も扱えるし、無駄なく私を刺せるだろう)」
黒野すみれ「(ただ、火で殺すのは・・・・・・難しいかも知れない)」

〇黒
  彼自身、酷い火傷を覆い、実の家族も失っている。
  とても、それは耐え難いものだろう。

〇貴族の部屋
  コンコンコン。
  私が彼の資料を読み終えて暫くすると、ドアのノックが
  聞こえてくる。すると、そこにはエマさんがいた。
エマ「失礼いたします。黒野様」
  エマさんと会うのも何だかとても久し振りな気がする。
  私はそんなことを思うと、エマさんは本題に入った。

次のエピソード:エピソード17-雑色の刻-

成分キーワード

ページTOPへ