〇汚い一人部屋
　　星 太陽が『スローアライブ』の講演会をする
　　28年前・・・
楽本 優花(らくもと ゆうか)「・・・・・・」
優花の母「優花ちゃん・・・ もう部屋から出てきて・・・お願い」
楽本 優花(らくもと ゆうか)（お母さん・・・ごめんなさい 私もう学校行きたくない・・・）
楽本 優花(らくもと ゆうか)（・・・言えないよ）
楽本 優花(らくもと ゆうか)「お母さん・・・ 私まだ、体調が良くないの」
優花の母「・・・分ったわ 良くなったら、お母さんに教えてね・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「うん・・・ごめんなさい」
楽本 優花(らくもと ゆうか)（多分、私はもう・・・）
楽本 優花(らくもと ゆうか)（死ぬまで・・・このままなのかな）
楽本 優花(らくもと ゆうか)「・・・誰か助けて」

〇寮の部屋
　　それから28年後の今
楽本 優花(らくもと ゆうか)「それじゃあ・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「本当に私が40歳だって公表していいのですね」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「庭谷博士」

〇宇宙船の部屋
庭谷 昂(にわたに のぼる)「うん、大丈夫 星先輩も公表し始めたから」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「でも後で怒られそうだな」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「あっ！ 君は気にしなくていいよ」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「それはこっちで何とかなる」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「星先輩はのんびり屋だからね」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「スローアライブの研究と新エネルギー研究を同時にやってるから」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「あのペースだと実用化なんてまだまだ先になる」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「APの俺たちだって長生きできるとしても時間は限られるんだから」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「時間は大事にしないとね」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「じゃあ、楽本 優花さん」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「君から公表してくれたら」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「俺たちが説明するよりインパクトがある」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「是非よろしく頼むよ」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「それじゃ俺のケア・アワーそろそろ終わるから」
庭谷 昂(にわたに のぼる)「通信切るね、バイバイ」

〇寮の部屋
楽本 優花(らくもと ゆうか)「分かりました 頑張ります」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「それでは、失礼します」

〇寮の部屋
楽本 優花(らくもと ゆうか)「ファンの皆は何で思うかな」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「受け入れてくれなくても庭谷博士の支援があるからこれからも生活はできるけど」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私はまだ皆のアイドルでいたいなあ」

〇汚い一人部屋
　　28年前・・・
　　私のスマホに非通知の電話が鳴った
　　いつもなら絶対に取らない電話を
　　あの日だけは・・・
　　誰かと話したくて出てしまった
　　それが12歳の私と庭谷博士との怪しい出会いだった

〇寮の部屋
楽本 優花(らくもと ゆうか)（あれから私は庭谷博士の意向に沿って 28年間、スローアライブの生活を続けた）
楽本 優花(らくもと ゆうか)（お母さんにはたくさん嘘をついて・・・）
楽本 優花(らくもと ゆうか)（特別な施設で生活リズムに慣れるまで苦労して・・・）
楽本 優花(らくもと ゆうか)（私は庭谷博士の実験体なのだ・・・）
楽本 優花(らくもと ゆうか)（でも庭谷博士には感謝してる）
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私はその恩を返すの」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「そうよ・・・ その為に私はアイドルを目指したのだから」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「庭谷博士は私がAPの象徴になれることを期待している」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私はただの実験体じゃない」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「これからも皆のアイドルじゃないといけないの」

〇簡素な一人部屋
星 太陽(ほし たいよう)「スローアライブの体験応募はまだ少ないな」
星 太陽(ほし たいよう)「まあ、でもその方ががゆっくり時間を掛けて説明ができて良いかもしれない」
星 太陽(ほし たいよう)「やっぱり昨日の講演会だけじゃあ説明不足だったな」
星 太陽(ほし たいよう)「スローアライブは短期間の体験なら問題は少ないが・・・」
星 太陽(ほし たいよう)「長期間になるとスローアライブは成功しても失敗しても精神的な課題は避けられない」
星 太陽(ほし たいよう)「スローアライブに興味がある人にはしっかり説明しないと」
星 太陽(ほし たいよう)「APになる人が後悔のない選択ができるように」
星 太陽(ほし たいよう)「私は全力を尽くさなければな」
星 太陽(ほし たいよう)「今の段階では・・・迷っている人や怖いと感じている人・・・」
星 太陽(ほし たいよう)「特に幼い子供をこの実験には巻き込んではいけない」
星 太陽(ほし たいよう)「まずはそれでも未来を生きたいと願う大人たちから徐々にルールを定めていこう」
星 太陽(ほし たいよう)「これから忙しくなるな」
星 太陽(ほし たいよう)「さて、そろそろ寝る時間だ」
星 太陽(ほし たいよう)「明日、翡翠ともう一度スローアライブ体験の打ち合わせしとくか」

〇コンサート会場
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私のライブに来てくれてありがとう〜！」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「いつも短い時間しかいられなくてゴメンね」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「でも、私の全力出すから！ みんな〜付いてきてね！」
ファン「ゆうかてゃの声大好き！ 応援してる〜」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「ありがとう〜 でもゆうかてゃは忘れてくださ〜い〜 もう優花って言えるもん」
ファン「私ゆうかてゃの配信は毎日見てるよ〜 今日会えるだけで最高だよ！」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私もみんなに会えて最高〜！ ゆうかてゃはもう言わないけどね！」
ファン「ゆうかてゃでも優花でも俺の推し！」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「たから、ゆうかてゃは・・・ もう嬉しすぎてまた泣いちゃうかも」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私の歌を聴いてくれてありがとう」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「もし・・・何があっても・・・ 何年経っても・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「聴いてくれる人がいるなら 私は歌うのを絶対に辞めないからね」

〇コンサート会場
楽本 優花(らくもと ゆうか)「今日は皆に私の秘密を告白します」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「皆には黙ってたけど・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私は本当は40歳です」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「信じられないかもしれないけど・・・」
　　楽本 優花はこれまでの経緯と・・・
　　スローアライブのこと自分がAPであることを話した
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私の肉体は19歳なんだけど 実年齢は40歳」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私は20時間の睡眠を続けて 毎日４時間しか起きなくて」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「1時間しかアイドル活動できないけど」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「もし・・・こんな私をみんなが受け入れてくれるなら」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「これからの何十年・・・何百年先もみんなのアイドルでいたいです」
ファン「どういうことだ？ 40歳？マジで？」
ファン「スローアライブってなんだろう？ 200年も生きられる？」
「俺は目の前のゆうかてゃを信じる・・・」
ファン「でも、でも・・・ やっぱりゆうかてゃが好きだ」
ファン「まだよく分からないけど・・・ゆうかてゃが短い時間しかいられない理由はこれなのね」
ファン「俺はずっと応援してる〜！ これからも歌ってくれ！ゆうかてゃ！」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「ううっ、ふぇん・・・ ありがとう〜みんな〜・・・」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「この先・・・私のこと嫌いになっても忘れてもいいよ」
楽本 優花(らくもと ゆうか)「私の歌を聴いてくれる人がいるなら・・・私は歌い続けるからね」

〇研究開発室
　　ニュース
　　『アイドル楽本 優花は40歳』
　　『１日１時間のアイドル』
　　『20時間の睡眠で200年生きるAP』
久遠 翡翠(くおん ひすい)「ちょっと、何で・・・ アイドルのこの子がAPに！」
久遠 翡翠(くおん ひすい)「肯定的な意見もあるけど・・・」
久遠 翡翠(くおん ひすい)「この子やスローアライブへの批判も少なくないわね」
久遠 翡翠(くおん ひすい)「でもスローアライブの体験応募も想定より増えてる・・・」
久遠 翡翠(くおん ひすい)「早く太陽に知らせないと！」