崖っぷち俳優、怪人始めました

サカミキ

怪人始めます(脚本)

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サカミキ

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〇大会議室
タカシ(若い子ばっかだな 俺だけ浮いてる)
ヒロ「ヒーロー役の榊ヒロです よろしくお願いします」
タカシ(キラッキラじゃねーか)
スタッフ「続いて・・・」
タカシ(なんとかこのドラマで爪痕残さねーと)
  視線を感じ慌てて立ち上がる。
タカシ「怪人役の海東タカシです よろしくお願いします」
スタッフ「では、来週から撮影よろしくお願いします」
ヒロ「先輩! この後お時間あります?」
タカシ(なぜ俺? なんかの勧誘?)
タカシ「時間はあるけど何で?」
ヒロ「ちょっとご相談が・・・」
タカシ(まぁいっか、主役とは仲良くしとかないとな)
タカシ「いいけど、何の役にも立てないと思うよ」

〇レトロ喫茶
タカシ「何かな? 相談って」
ヒロ「俺、主役とか始めてで上手くやれるか不安で・・・」
タカシ「たしかに俺は役者歴は長いけど脇役ばかりだし・・・」
ヒロ「先輩の出てる映画見ました。アクション、凄くカッコよかったです!」
タカシ「見てくれたんだ」
ヒロ「共演者の作品は見るようにしてるんです 体も、凄く作られてて ちょっと触ってもいいですか?」
タカシ「えっ!」
  ヒロがタカシの胸板に触れる。
タカシ(触っちゃうんだ)
ヒロ「やっぱ凄い」
タカシ「役の為に日頃から鍛えてるからね」
ヒロ「俺、痩せっぽちだから憧れるなぁ」
タカシ「いやいや、榊君はイケメンでキラキラで 俺の方が憧れるよ」
ヒロ「ヒロでいいです」
タカシ(凄い勢いで距離積めてくんな)
タカシ「ヒロは若いんだし、思い切ってやればいいよ 月並みなことしか言えなくて、ごめんね」
ヒロ「いいえ やっぱ先輩は理想的な人だ」
タカシ(理想的?)
タカシ「俺、強面だから、チンピラとかそーゆー役しかこないんだよ でも年齢的にも厳しくなってきて・・・」
タカシ「この怪人役にかけてるんだ」
ヒロ「それなら、怪人の役作りにとっておきなのがあるんですが、やってみませんか?」
タカシ「ヒーローショーとかそういうやつ?」
ヒロ「行ってからのお楽しみです」

〇研究機関の会議室
松元「お越し頂きありがとうございます 早速ですがこちらの書類にサインお願いします」
  〈秘密保持契約書〉
松元「よくあるでしょ?  『ここで見聞きしたことは他言しません』ってやつです」
タカシ「ああ」
  タカシがサインをする。
松元「ありがとうございます」
ヒロ「松ちゃん、どぉ? 良さそうでしょ?」
松元「ちょっと失礼?」
  松元がタカシの胸板に触れる。
タカシ(この人も触っちゃうんだ)
松元「いいですねぇ」
タカシ「なっ、何ですか?」
松元「失礼しました。体が資本の仕事なので」
タカシ「ヒロ、怪人の役作りって言ってなかった?」
ヒロ「そうですよ 本物に勝るものは無い」
タカシ「えっ!?」
松元「坊ちゃん、ここからは私が説明します」
タカシ(坊ちゃん?)
松元「まずは私と坊ちゃんの関係から」
ヒロ「いや、それはいいから」
タカシ(いや、そこ気になるから!)
松元「君も怪人にならないかい!?」
タカシ「いや、なりますけど! ヒーローショーとかそういうのですか?」
松元「いえ、本物のです」
タカシ「はぁ⁈ ヒロ、この人大丈夫?」
ヒロ「えっと、ココはいわゆる秘密結社なんですよ」
タカシ「ヒロも大丈夫?」
ヒロ「うちの親父がボスで・・・ でも、闇雲に悪事を働くわけではないので 安心して下さい」
タカシ(安心できねー)
松元「そうです! 私達が働くのは必要悪です!」
タカシ(何、ドヤ顔で言っちゃってんの!)
ヒロ「大丈夫ですよ先輩。怪人は兼業が認められてますので、俳優続けられますよ」
タカシ(えっ、そこ?)
タカシ「変身する系ですか?」
松元「はい 変身できる体に改造させていただきます」
タカシ「やっぱ改造するんだ?」
松元「心配無用です! 私も元怪人ですから」
タカシ(この人さらっと凄いこと言ったよ!)
タカシ「怪人になって、具体的に何するんですか?」
松元「警察で手に負えない悪を裁く! 『毒を持って毒を制す』」

〇グレー
  怪人12名
  潜入捜査員12名
  諜報・IT部12名
  研究室6名
  医療・メンテナンス室3名
  事務3名
  幹部2名+ボス

〇研究機関の会議室
松元「簡単に言うと、諜報・I T部が炙り出した悪を成敗しにいくのが怪人の仕事です」
タカシ「そこは警察に任せておけば」
松元「警察には限界がある 例えば警察は潜入捜査が認められていない だからウチの潜入捜査員が行う」
松元「本当の悪人は簡単に尻尾を出さない しかも捕まっても裁かれるのに時間がかかる そこをサクッと怪人が退治する」
タカシ(サラッと凄いこと言ってるよ!)
ヒロ「俺は潜入捜査員やってるんだ 俳優の勉強になると思って・・・」
松元「坊ちゃんは幼少の頃から見目麗しかったので・・・」
ヒロ「でも、人気出ちゃうと潜入捜査やり辛くなっちゃうな」
松元「困りましたねぇ」
ヒロ「でもいいや 本当は怪人になりたいんだから」
タカシ「じゃ、何で俺? ヒロが怪人になればいいのでは?」
松元「怪人になると身体能力が数十倍になります 元が1の人を数十倍にするより、10の人をした方が良いですよね?」
タカシ「たしかに」
ヒロ「怪人には元アスリートや○スケ常連が何人かいるんだよ」
タカシ「へぇー じゃ、俺より若くて体力がある人のほうが・・・」
松元「ボスはお優しい方で、余り若い人を怪人にしたがらないんです 安全第一でやっているとはいえ危険が伴いますので」
タカシ(やっぱ、危険なのね)
「ボス!」
ボス「松ちゃん、ここからは私が・・・」
  約25年前
  私がまだヒーローだった頃
タカシ「ちょ、語り始めたとこなんですが ヒーローだったんですね!?」
ボス「ああ、若かりし頃ね 続けていいかな?」
タカシ「は、はい」
ボス「じゃ、改めて」
  約25年前
  ヒーローだった私は限界を感じていた。
  ヒーローが倒すことができるのは
  怪人と表立って悪を行う者のみ
  裁けない悪が多すぎる・・・
  その頃、悪の組織に無理やり怪人にされた
  松元と出会った。
  私はヒーローを辞め、松元と共に
  怪人を使い悪を成敗する組織を作ることにした。
  
  そう、それが必要悪の秘密結社!
松元「ボスは、私の恩人で・・・」
ボス「その話は長くなるから今はいいから」
ボス「この組織は政府公認で警察上層部とも繋がってるんだよ」
松元「お嬢!」
千紘「こんにちは 娘の千紘です」
タカシ「こんにちは」
千紘「警察官やってます」
怪人チヒロ「怪人もやってます」
タカシ「女性の怪人もいるんですね」
怪人チヒロ「他に2人いるわよ」
松元「お嬢は、素晴らしい能力をお持ちで・・・」
怪人チヒロ「その話は今いいんで」
ボス「君のことは諜報部によって調査済だよ ぜひとも怪人になって貰いたい」
松元「断ったら、記憶消しますよ 秘密保持契約にサインしたでしょ」
ヒロ「先輩、お願い! 怪人になって!」
  タカシは3人+怪人に囲まれる。
タカシ(娘を怪人にするんだから、そこまで危険じゃないのかな)
タカシ「な、なります」

〇黒背景

〇近未来の手術室
松元「おはよう 改造成功だよ」
タカシ「ほんまですか?」
松元「さぁ、変身してみてくれたまえ」
タカシ「どうやって?」
松元「ああ、ココをこう押すんだよ 間違えて押しちゃわないようにね」
タカシ「変身!」
松元「別に『変身!』とか 言わなくて大丈夫ですから」
怪人タカシ「エヘへ」
松元「素晴らしい! 君はスタイルがいいから栄えるね」
怪人タカシ「ど、どおも」
松元「早速だが、初任務だ」
怪人タカシ「もうっすか?」
松元「大丈夫だ! 先輩怪人と一緒だから 闇堕ちしたヒーローの退治だ」
怪人タカシ「ヒーローと戦うんっすか?」
松元「説明しよう」
  我が組織はヒーロー協会と協定が結ばれており
  通常はヒーローと戦うことはない。
  だか、闇堕ちしたヒーローが悪事を働いた時
  
  ヒーロー協会の依頼で討伐にあたる。
怪人タカシ「で、討伐されたヒーローはどうなるんですか?」
松元「ヒーロー協会さんに渡す」
怪人タカシ「で?」
松元「殉職扱いにするんじゃないかな? あちらもヒーローにした責任があるから」
怪人タカシ(大人の事情!?)
松元「因みに、ウチの怪人が他の悪徳怪人と戦うことはない  そこはヒーロー協会さんにお任せしている」
怪人タカシ(ズブズブかよ)
松元「はいコレ 君のID」
松元「ヒーローに遭遇してもコレ見せれば襲われないから」
怪人タカシ(めちゃアナログ)
怪人タカシ「あのー 一旦戻っていいっすか?」
松元「ああ 戻る場合ココをこうね」
松元「怪人に変身している時は 諜報・IT部によって監視・・・じゃなくて 見守られてるから安心してくれたまえ」

〇ボロい倉庫の中
先輩怪人「頼むぞ! 新人」
怪人タカシ「はい!」
闇堕ちヒーロー「出たな怪人!」
先輩怪人「そーゆーのいーから」
闇堕ちヒーロー「だよな」
闇堕ちヒーロー「二人がかりとは卑怯な」
先輩怪人「いや、怪人に卑怯とかねーし」
怪人タカシ(えっ!?  ないの!?)
先輩怪人「闇堕ちしたヤツにいわれたかねーよ!」
闇堕ちヒーロー「くそつまんねーヒーローなんて やってられっかよ!」
先輩怪人「何やってんだ新人! 銃支給されてんだろ! 打て!」
怪人タカシ「う、打てません!」
先輩怪人「何でだよ?」
怪人タカシ「やっぱ、殺しなんてできねー!」
闇堕ちヒーロー「ヘタレ怪人め」
怪人タカシ「うわっ」
先輩怪人「おい、大丈夫か?」
闇堕ちヒーロー「あばよ」
先輩怪人「ちっ 逃げられた」
怪人タカシ「すいません!」
先輩怪人「他の応援を頼むから お前は本部へ戻れ」

〇研究機関の会議室
松元「どういうことですか」
タカシ「すいません 闇堕ちしたとはいえ、人間ですよね? 殺せません」
松元「はぁー」
ヒロ「松ちゃん 先輩を責めないであげて」
松元「そうは言っても、坊ちゃん」
ヒロ「強面なのに優しいところが 先輩の良さでしょ」
タカシ(強面は言わなくてよくない?)
タカシ「ヒロ、ゴメンな 記憶消されても仕方ない 俺、怪人辞め・・・」
ヒロ「ねー、松ちゃん 先輩には、アノ仕事がいいんじゃない? ネ・ズ・ミ」
松元「鼠ですか?」
ヒロ「うん 適材適所 先輩に殺人は向いてないよ」
松元「たしかに鼠は身体能力は必要ですが 戦闘は無いですし、地味なのでやりたがらない怪人が多いですが・・・」
タカシ「鼠?」
ヒロ「鼠はね 詐欺集団や悪徳業者から金品を奪う泥棒」
タカシ「泥棒?」
ヒロ「そう でも悪人からしか奪わない」
ヒロ「銀行預金や仮想通貨の類はウチの諜報・IT部が担当 で、資金を根絶やしにして、悪を潰す」
タカシ「奪ったお金は?」
松元「ココの資金源となり 別の悪を倒す為に使われる そう、必要悪です」
「ボス!」
ボス「私服を肥やす為じゃないよ 皆、危険を冒して働いてくれてるから それなりの報酬を払いたい それに、活動資金も必要だしね」
ボス「あとね、ヒーロー協会さんにも多額の寄付をしているよ あちらは表立って資金集めが出来ないからね」
タカシ(それ、バラしちゃうのね)
ボス「やってくれるかい?」
ヒロ「お願い! 先輩!」
タカシ「や、やります」
ヒロ「じゃ、早速 俺が潜入捜査したデート商法やってる宝石店 の撲滅はどうかな?」
松元「そうですね あそこは被害者から自殺者もでている 早急に対処しないと」
ヒロ「じゃ、ケツの毛までむしり取ってやりましょ」
松元「なっ、坊ちゃん! 麗しいお顔でなんてことを!」
ボス「じゃ、松ちゃん 計画お願いね」

〇グレー
  デート商法宝石店撲滅計画
  
  松元の計らいで、各部門の代表が集められ
  犯行?計画が綿密に練られた。
  全ては実行犯?である怪人を守るために
  断っておく
  この計画は、決して私服を肥やす為のものでは無い
  
  そう、これは更なる悪を倒す為の必要悪なのだ

〇宝石店
怪人タカシ(根こそぎ頂く!)
怪人タカシ(金庫も)
怪人タカシ(よし、撤収!)

〇繁華な通り
千紘「怪人コスプレ泥棒を捕まえるわよ!」
警察官A「はい」
  宝石店の周囲を見回る。
千紘(よかった 無事逃げたみたいね、怪人タカシ)

〇荒野
スタッフ「戦闘シーンの撮影をします 準備お願いしまーす」
ヒロ「先輩! お疲れ様です!」
怪人タカシ「ヒロ あの、この怪人って・・・」
ヒロ「特撮の怪人はウチの怪人からデザインされてるんですよ そうすれば見つかってもコスプレって誤魔化せるでしょ」
怪人タカシ(あなたのパパは、そんな力もあるのね)
怪人タカシ「あっ、ヒロは着替えなくていいの?」
ヒロ「俺は、諸事情でスーツアクター使ってるんで」
怪人タカシ「そっか」
ヒロ「でも俺、もっともっと鍛えて いつか本物の怪人にして貰うんで! 待ってて下さいね」
怪人タカシ「うん、待ってるよ」
スタッフ「怪人さーん 出番でーす」
怪人タカシ「はーい」
  完

コメント

  • 表向きはヒーローを夢見る怪人のスーツアクター。
    裏では本物のヒーローとして怪人を成敗・撹乱する。夢は叶いながらも、その念願は、人々に認知されることも、称賛されることもない。
    一方後輩くんは、ヒーロー役で脚光を浴び、絶賛ブレイク中。しかしながら、彼のヒーローとしての素養は、主にビジュアル面にあり、それ以外の資質はことごとく欠けていた。

    二人が相克することなく、支え合う関係なのがGooでした。


  • 良心を持った怪人を描いた作品は多いですが、これは最初から怪人が正義になっている斬新な話。もちろん今後はどうなるのかわかりませんが。
    普通は「怪人になんかなりたくない」と思っていても「こういう理由なら自分も引き受けてしまうかもしれない」と考え、少し怖くなってしまう作品でした。

  • 設定の細かさが楽しいですね。闇堕ちしたヒーローや悪徳怪人という存在や、ヒーロー協会との協定など、お話に奥行きが出ていいですね!

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