5話 見習い悪魔、出会う(脚本)
〇城の会議室
センセー(あの男は、最初はそんなに魔力がなかった)
センセー(わたくしに比べれば全然あるけれど・・・この魔力社会では大成できないような)
〇魔界
リリカを送り出す数日前──
センセー「え、何今どき手紙?珍しいわね」
新魔王着任の告示
前魔王に勝利した魔族ギーリ新魔王に着任
センセー「魔王の代替わり・・・こんな田舎の弱小魔族に連絡が行くわけだわ」
センセー「って、ギーリ?!」
リリカ「ん〜眠い・・・」
リリカ「おはよ、センセー。なんかあったの?」
センセー「い、いえなんでもないのよ」
リリカ「そーお?じゃあもう一回寝る・・・」
センセー「ちょ、二度寝はダメってば・・・!」
センセー「はぁ・・・。でも今日は叩き起こす気分じゃないわね」
センセー(ギーリ・・・かつてリリカを捨てた父親)
センセー(高いプライドに魔力が追いついてなかった哀れな男)
センセー(わたくしみたいな弱小魔族には高圧的で、逆に元魔王とかにはヘコヘコしてたっけ)
センセー(魔王を倒す力なんてなかったはず。それがどうして?)
センセー「調べてみる必要がありそうね」
〇英国風の図書館
司書バード「中央書庫へようこそ。お名前を頂戴します」
センセー「レイラよ」
司書バード「お手続き致します」
魔族A「レイラ?」
魔族B「引きこもりの弱小魔族じゃない」
魔族A「やだ、恥ずかしくないのかしら・・・」
センセー(これだから中央は嫌なのよ。魔力魔力、それ以外に言うことないの?)
司書バード「こちら入館証明となります。閲覧のみでよろしかったでしょうか?」
センセー「ええ。ありがとう」
センセー「さて、最近の記録は・・・っと」
センセー(ん?ここ暫く魔族の死亡記事が多いわね。滅多に死なないはずなのに・・・)
センセー(死因は・・・伏せられてる?)
センセー(死亡者リストが書かれてるだけで特に取り上げられてはいないようだし・・・)
キャサリン「あら、こんなとこで何してるの、レイラ?」
センセー「キャサリン・・・!あなたこそ」
センセー「ギーリが魔王になったって聞いたわ。あなたって魔王夫人じゃないの」
キャサリン「相変わらず生意気な口を聞くわね」
キャサリン「あんな男とは別れたわよ。私よりも魔力低かったし」
センセー(そう、それであってるはず。ギーリは妻であるキャサリンよりも低魔力)
センセー(そして二人を遥かに凌ぐ魔力を暴走させて捨てられたのがリリカ・・・)
センセー(そうか、最近の不審死は・・・)
センセー「ギーリは・・・魔族喰いをしたのね」
キャサリン「そうよ」
キャサリン「私も殺そうとしてきたのよ、あいつ。その時は逃げられたけど」
キャサリン「あいつ前の魔王も『喰った』わ。今はもう太刀打ちできない・・・」
センセー(魔族が魔力至上主義といえど、同族を殺して魔力を吸収するなんて禁忌中の禁忌)
センセー「そんなに魔力が欲しい・・・?」
キャサリン「さぁ。あいつのことなんて分からないわ」
キャサリン「ところで・・・・・・リリカは元気?」
センセー「は、なにあんた今更・・・!」
センセー「あんたたち・・・ほんとクズね」
〇魔界
センセー「ねぇリリカ。見習い卒業試験を受けてみない?」
リリカ「見習い卒業試験?」
センセー「えぇ。人間界に行ってヒトの願いを叶えるの」
リリカ「人間界?!東京行ける?服買える?」
センセー「・・・えぇ。行けるわ」
リリカ「やったぁー!じゃあ行く!」
センセー(ギーリとキャサリン・・・繋がってるのか対立してるのかはどうでもいい)
センセー(大事なのはキャサリンがリリカを探していること、そしてギーリが魔力を欲していること)
センセー(嫌な予感がする。なにか対策を練らないと)
センセー(わたくしはギーリ達と違う・・・この子の師なのだから)
〇城の会議室
センセー「・・・あの子は上手くやってるかしら?」
センセー(まさかギーリがここまで本気だと思ってなかったし・・・)
センセー(しょっちゅう呼び出されてあんまり様子見れてないのよね)
センセー「あら?」
リリカ「センセー!こないだ言ってた友達なんだけど、バイトしてるらしくて」
「あたしもバイトしたいの!いい?で同意書とか履歴書いるらしくて・・・」
センセー「ば、バイト?! いえ、なんか順調そうで良かったわ」
センセー「えーっと、履歴書・・・わたくしたち魔族が履歴書なんて書いたら絶対落とされるわね」
センセー「今あの子が住んでる家だって廃墟を魔法で改装したやつだし。住所とか・・・」
センセー「えーっと、適当に偽造しておきなさい 同意書はわたくしの名前使っていいから」
リリカ「偽造・・・していいのかな?」
センセー「住所とか経歴とかないんだから仕方がないわよ」
リリカ「そっか・・・わかった!じゃあねセンセー」
センセー「だいぶ人間界慣れてきてるわねあの子・・・」
センセー(ほんと、懐かしい)
センセー「あ。そういえば契約交渉の進捗聞くの忘れてた」
センセー「あの子忘れてるんじゃないでしょうね・・・」
センセー(でもその方が都合がいいか。こっち戻ってくると死にかねないし)
〇川に架かる橋
リリカ「で、明日バイトの面接なの」
トウマ「面接って・・・なんかやらかさないだろうな」
リリカ「しないわよ。カナ達とバイトしてみたいし。ちょっと書類は偽造したけど」
リリカ「受かったら私も週2でやりたいし、トウマ一人で帰ることになっちゃうわね」
トウマ「別に水曜と金曜だけだろ?というか別に俺はお前がいてもいなくても関係ない」
リリカ(とか言って〜なんでか最初より普通に話してくれるんだよね、最近)
リリカ「もー、僕一人で寂しいな〜とか言うとこでしょうがここは」
トウマ「言わない」
トウマ(最近のこいつほんとに悪魔なのか分からなくなってきたな・・・)
トウマ(・・・駄目だな。悪魔と話してて気楽だなんて)
トウマ「最初の頃、契約契約って言ってたけど。なんで契約したいんだ?」
リリカ「え?あぁ、言ってなかったっけ。試験があって。ヒトの願いを叶えないといけないの」
リリカ「あんた悪意度すごい高かったし・・・契約できたら良い成果になるでしょ?」
リリカ「成果が出たらパパ達が会いにきてくれるかもしれないもの。だから契約するの」
リリカ「最近言ってなかったわね。契約しない?」
トウマ「しない」
リリカ「なんでよ〜!」
トウマ「てか、親が会いに来てくれるって何?そういうシステムなのか?」
リリカ(うわこいつ露骨に話題逸らした・・・)
リリカ(まぁいいか。まだ、ぐいぐいいっちゃダメってことよね)
リリカ「別にそんなシステムとかないけど。ただあたしがやらかしちゃったというか」
リリカ「ちっちゃい頃魔力が暴走してね ママ達を怖がらせちゃったの」
リリカ「それで、離れて暮らしてて。センセーが魔法とか教えてくれるって言うから今修行中」
リリカ「あたしが怖くなくなったら・・・きっとママ達が会いに来てくれるもの」
トウマ(それは、捨て子なのでは・・・ というか迎えに来てくれるという想定はどこから・・・)
トウマ「契約したところで、」
リリカ「ん、なに?」
トウマ(いや、言っても意味ないか・・・どうせ俺は契約しないんだし)
トウマ(こいつのことを知ったって、何になるんだ)
トウマ「なんでもない」
トウマ(これ以上、気を許してはいけない。『望まれる長谷川トウマ』のために・・・)
〇市街地の交差点
リリカ「じゃ、またね」
トウマ「あぁ」
長谷川母「あら、トウマ。今帰り?」
トウマ「母さん?」
リリカ(え?!トウマの母・・・ですって?!)
お話に引き込まれて、ここまで一気に読んじゃいました!
センセーが一人で抱えているリリカのへの想いに切なくなりました。リリカが前向きでこういう性格だから、きっとセンセーも救われているでしょうね。
リリカが本当のことを知ったときに、どうなってしまうのか……
トウマの心の闇も少しずつ見えてきて、続きが楽しみです!