真のヒーロー

tomoya

真のヒーロー(脚本)

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〇華やかな寮
「キャーッ!!!!!!」
テン魔「ドゥフフフフフ・・・! さあ、人間どもよ。哭け、喚け! 混沌こそが我にとって蜜の味だ」
「ちょっと待てーーーーい!」
テン魔「ぬうっ!何者だ!?」
東野英雅「俺の名は・・・」
東野英雅「勇装戦隊ブレイブファイブ・・・ブレイブレッドだ!」
テン魔「お前が・・・。くぅ、いつも邪魔をしやがって! 今日こそ決着をつけてやる」
東野英雅「望むところだ! やる気、元気、勇気!」
東野英雅「うおおおおおおーっ!! セイントムカ着火ファイヤーーーー!!!!」
テン魔「ぐああああああっ・・・覚えておけ・・・」
東野英雅「ふんっ・・・・・・燃え尽きろ」
東野英雅「安心して。もう大丈夫だよ。 さあ、手を出して──」

〇教室
東野英雅「さあ、手を・・・ぐうう・・・出して・・・ぐうう・・・」
先生「誰だ!? 俺の授業で寝てる不届き者は。貴様かぁ! 東野!!!」
東野英雅「ほえっ!?」
東野英雅「俺・・・ヒーローじゃ・・・」
先生「何が『やる気、元気、勇気』だ!! 授業中に居眠りする者がヒーローな訳ないだろが! ま・・・東野はヒーローの器では無いな」
東野英雅「俺は・・・絶対に・・・ヒーローになる!!」
先生「おい!待て!東野! まだ授業中だぞ!!」
「生徒たちの笑い声──」

〇高い屋上
東野英雅「はぁ・・・俺・・・ヒーローになれないのかな?」
「そこの坊や、何を悩んでるの?」
東野英雅「あ・・・あなたは・・・!」
桃河せりな「あれ? 私のこと知ってる?」
東野英雅「も、勿論です。勇装戦隊ブレイブファイブの・・・ブレイブピンクこと、桃河せりなさん!」
桃河せりな「覚えてくれて嬉しい。励みになるよ」
東野英雅「でも、まだ・・・授業中じゃ?」
桃河せりな「私はヒーローだから、ゲマーズ出現時は学校の特別措置で公欠扱いに」
東野英雅「ってことは、今、ゲマーズを退治に・・・」
桃河せりな「うん。倒してきたとこ。今日も街の平和、守ったな〜。自分のご褒美にアイス買って帰ろ」
  せりな、帰ろうとした時──
東野英雅「俺・・・せりなさんみたいに、ヒーローになりたいんです!」
桃河せりな「え!? ヒーロー!?」
東野英雅「はい! ブレイブレッドを探してるって、ニュースで見ました!」
桃河せりな「だけど・・・大変だよ・・・?  睡眠も食事も・・・青春だって、すべて失うことに──」
東野英雅「俺・・・その覚悟はできてます! そうじゃなきゃ・・・こんなこと言いません!」
桃河せりな「・・・・・・」
東野英雅「せりなさん! お願いします!!」
桃河せりな「分かった。君の熱意に負けたよ。 放課後、ついてきて」
東野英雅「ありがとうございます!!」

〇古びた神社
  せりなに連れられてきた英雅。
  その場所は、山中の不気味な神社。
東野英雅「こ・・・ここは!?」
桃河せりな「ヒーローになれる場所」
東野英雅「え!? こんなおぞましい場所で!?」
桃河せりな「うん。私もここでブレイブピンクになれたの」
東野英雅「う・・・」
桃河せりな「ヒーローになりたいんだったら、弱気じゃ務まらないよ」
東野英雅「ご、ごめん・・・ どうすれば?」
桃河せりな「賽銭箱に100円玉を投げて、お参りする。 たったそれだけ」
東野英雅「え!? それだけでいいの!?」
桃河せりな「うん。簡単でしょ。 ま、熱い心が無い限り、ヒーローにはなれないから」
東野英雅「熱い心なら、誰にも負けないぞ!」
桃河せりな「うん、その意気!」
東野英雅「よし、じゃあ早速やるか!」
  英雅は100円玉を賽銭箱に投げ入れ、鈴を鳴らす。
東野英雅(どうか、ブレイブレッドになれますように・・・)
東野英雅「せりなさん、これでいいの?」
  辺りを見回すが、せりなの姿は無い
東野英雅「ええっ!? せりなさん!? せりなさーーーん!!」
  すると、英雅は体の異変に気づく・・・
東野英雅「か、体に何かが漲ってくる・・・ もしかして・・・これがブレイブレッドの力!?」
  英雅の体を、紫色の火の玉のようなものが包む。
東野英雅「すげぇ・・・ パワーが溢れ出す・・・!!」
東野英雅「ううっ!!」

〇白
  英雅は意識を失う。

〇森の中
東野英雅「いててて・・・ 俺、どうしてたっけ・・・」
東野英雅「あれ!? ここにあった神社は!? それに・・・せりなさん・・・ 一体、どこへ・・・」
東野英雅「とりあえず、探さないと・・・」

〇センター街
  英雅は街の中を歩いていた。
  行き交う者たちは皆、英雅の姿を驚いて見つめる。
東野英雅(あれ? 俺、みんなに見られてる? もしかして・・・ブレイブレッドになった俺を見てる!?)
東野英雅「ひゃっほーい。 これで・・・俺もヒーローだ──」
「キャーーーーー!」
  遠くで女性の悲鳴
東野英雅「よし・・・俺の出番だ・・・!」
一般人A「た・・・助けて・・・」
カッパ・ゲマーズ「キキキキッ・・・ 俺を振るとは・・・思い知らせてやる!!」
一般人A「イヤーーーッ!」
東野英雅「やめろ!!」
カッパ・ゲマーズ「お、お前は・・・!?」
東野英雅「俺は・・・勇装戦隊ブレイブファイブのブレイブレッドだ!!」
東野英雅「さ・・・お嬢さん、早く安全な場所へ──」
一般人A「こ、来ないで! この・・・ゲマーズ!!」
東野英雅「え・・・ 俺はブレイブ──」
一般人A「キャーーーーー!!」
  女の子は走り去ってしまう。
東野英雅「ど、どうして・・・」
  英雅は、カフェのガラスに映る自分を見つめる。
東野英雅「──!!」
東野英雅「俺・・・俺が・・・ ゲマーズに・・・」
カッパ・ゲマーズ「何だ、お前。 俺の仲間じゃねぇのかよ」
東野英雅「そんな・・・ これは何かの間違いだ・・・」
カッパ・ゲマーズ「ブツブツとうるせえ野郎だ 邪魔するなら──」
  カッパ・ゲマーズは英雅に掴みかかろうとして──
東野英雅「やめろ!!」
カッパ・ゲマーズ「ぐほあっ・・・!!」
  英雅のパンチで、カッパ・ゲマーズは空高く飛ばされていく。
東野英雅「凄い・・・なんてパワーだ・・・ この力さえあれば、平和を守れる── 痛っ・・・!」
  英雅に飛んできたのは石だった
東野英雅「誰が・・・」
一般人B「ゲマーズなんて、この街から居なくなれ!!」
東野英雅「痛っ・・・!!」
一般人A「消えろー!消えろー!消えろー!」
東野英雅「君まで・・・」
  街中の人々から石を投げられ、消えろコールを受ける。
一般人B「おい、あれ見ろよ! ブレイブピンクじゃねぇか!」
一般人A「やったぁ! 正義の味方・ブレイブピンク!」
桃河せりな「みんな! 待っててくれてありがとう!」
  せりなは、街中から歓声を浴びながら現れる。
桃河せりな「さあ、ゲマーズ! 観念なさい!」
東野英雅「あの・・・せりなさん・・・ 俺です、俺・・・ 昨日の──」
桃河せりな「オレオレ詐欺?」
東野英雅「ほら、昨日、屋上でヒーローになりたいって・・・覚えてませんか?」
東野英雅「神社で願い事したのに、ブレイブレッドじゃなくて、こんな・・・」
桃河せりな「フフッ、全く知らないなぁ・・・」
東野英雅「えっ!? だって、あなたが・・・」
桃河せりな「往生際が悪いゲマーズだこと・・・ 私が滅してあげる!!」
東野英雅「えっ、えっ!?」
桃河せりな「一撃必殺! ミラクルスーパー桃色フラッシュ!」
  マンホールの蓋が開いている。
  英雅はそこから逃げた模様。
桃河せりな「あー、逃げちゃった。 意気地無しな奴ね」
桃河せりな「皆さん、これで街は平和になりましたよ。 さっきの奴はちゃんと始末しておくので、安心してください」
一般人B「ブレイブピンク、最高!」
一般人A「私の憧れです!ピンク姉さん!」
  街は喜びの声に包まれる。

〇地下道
東野英雅「ここなら追いかけて来ないか」
  英雅は腰掛ける。
東野英雅「どうして・・・ 俺は・・・ヒーローになりたかっただけなのに・・・」
東野英雅「こんな姿じゃ、街も歩けない・・・」
東野英雅「元の姿に戻りたい・・・ 平凡だった日常に・・・」
  目の前に、猫に追われるネズミがやって来る。
東野英雅「やめろ!」
  英雅は猫を威嚇する。
  猫は怯えて去っていく。
  英雅はネズミを撫でる。
東野英雅「よしよし、お前も俺と同じだな・・・」
  ネズミは仲間の元へ帰っていく。
東野英雅「元気でいろよ。 ・・・ん?」
  下水道の奥で、何やら光るものが──

〇古びた神社
東野英雅「ここは・・・」
  英雅は下水道を抜けると、あの神社があった。
  その時、英雅は誰かの気配を感じて隠れる。
高校生「ここで拝めば、ブレイブレッドになれるんだっけ?」
桃河せりな「うん、そうだよ」
高校生「じゃあ、早速やるわ!」
  高校生は100円玉を投げ入れようとした時──
東野英雅「ちょっと待った!」
高校生「ゲゲゲ、ゲマーズ!?」
東野英雅「やめろ! それは罠だ!」
桃河せりな「何を言ってるの・・・? ゲマーズ如きの話など、誰が聞くのかしら?」
東野英雅「俺も・・・こいつに嵌められた。 ブレイブレッドになれるって・・・ だけど、願掛けしたら、こんな醜い姿に。 君は逃げろ!!」
高校生「へっ!? せりなは嘘つかないだろ? せりな?」
  せりなは高校生を気絶させる。
東野英雅「なんてことを・・・」
桃河せりな「こうなったのもあんたのせい・・・ 許さない──!! 変身!」
桃河せりな「桃色の鼓動! ブレイブピンク!」
桃河せりな「いくよ! 桃色パンチ!」
東野英雅「ぐあっ・・・」
桃河せりな「桃色バレット!」
東野英雅「なんで・・・こんなこと・・・!!」
桃河せりな「知りたい? 有名になるにはゲマーズが必要だから」
東野英雅「ええっ!?」
桃河せりな「ヒーローは敵がいるから、ヒーローになれるの。 ブレイブファイブにとっては、ゲマーズがいないと」
東野英雅「そんな身勝手な・・・ ただの自己顕示欲の塊じゃないか!」
桃河せりな「あん!? 誰が自己顕示欲ですって!?」
東野英雅「ぐああああああっ・・・」
  倒れる英雅。
桃河せりな「そろそろトドメね。 最後に言い残したことは無い?」
東野英雅「お前は・・・正義の味方じゃない。 ただのコスプレイヤーだ!!」
桃河せりな「バイバーイ! 一撃必殺! ミラクルスーパー桃色フラッシュ!」
  と、その時──
  英雅が助けたネズミたちが、せりなの体を這いずり回る。
桃河せりな「やだっ! 気持ち悪い!」
東野英雅「俺は・・・ お前みたいな自分勝手な正義を振りかざす奴が嫌いなんだ!! 喰らえ〜!」
桃河せりな「うああああっ!」
  せりなは空の彼方へ──
東野英雅「よくやった、お前たちのお陰だ」
  英雅はネズミを撫でる。
高校生「すげぇ!」
東野英雅「あ、ありがとうございます・・・」
高校生「カッコ良すぎて、痺れた。 あんた、真のヒーローだよ!」
東野英雅「え・・・ヒーロー・・・」
高校生「ああ、ヒーローだ。 見た目はゲマーズでも、君は俺を守ってくれたんだからな!」
高校生「あ、しまった。 配信切るの忘れてた・・・ えっ、凄い。物凄い数のリスナーさんが見てるよ!」
東野英雅「配信!?」
高校生「うん。 みんな君のこと、真のヒーローだって」
東野英雅「真のヒーローだなんて・・・ だけど、これから皆さんに認めてもらえるよう、頑張ります」
東野英雅「まずはゲマーズにされてしまった人たちを戻さないと・・・」
高校生「君もだね」
東野英雅「あ・・・うん。 みんな、待っててくれ。今、助けにいくからな!」
  こうして俺は、ブレイブレッドにならなくとも、ヒーローになれることを知った。
  そして・・・英雅は真のヒーローとして、世界中の人々に認められた。ゲマーズになった人たちを治すため、今日も奔走する。

コメント

  • 短いストーリーの中で善と悪が何度も反転する展開がユニークですね。ゲマーズからヒーローの姿になるというハッピーエンドではなく、ゲマーズの姿のままで正義を遂行していくラストが清々しい。

  • 怪人にされた主人公を彼に助けられたネズミたちが偽ヒーローをやっつけているシーンを想像して、なんだかこちらまで嬉しくなりました。彼は正真正銘のヒーローです!

  • 悪がいないと輝けないヒーローって、なんだかかっこ悪いですね。笑
    英雅君こそ真のヒーローですよね!
    でも、100円入れると怪人になってしまう神社って、ヒーロー達が作り出したものなんでしょうか。

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