あの日に戻れるなら(脚本)
〇黒
あなたは、結婚相手に何を求めますか?
お金?
容姿?
優しさ?
私は──
〇タワーマンション
そのすべてを持ってる夫と結婚した。
イケメンで、優しくて、お金持ちで、一途
文句なしの完璧な夫。
しかし───
夫はとんでもない束縛男だった。
〇高級マンションの一室
年々束縛はエスカレートし、
──そして、結婚10年目。
私は夫に監視されている。
『残業で遅くなる』
美沙子「よかった・・・」
監視されていることに変わりはないが、
夫がいないだけでだいぶ息がしやすい。
『わかった』
喜びが文字に出ないように平静を装う。
美沙子(結婚失敗したな)
美沙子(帰るのは12時過ぎか)
美沙子「どうせ帰るのが遅いなら 私が家にいてもいなくても変わらないのに」
もうしばらく友人に会っていない。
美沙子(最後に会ったのはもう何年前だろう)
美沙子(私の人生一生このままなのかな)
美沙子(なんの音だろ?)
〇広いベランダ
美沙子(気のせいか・・・)
???「っぷぅ!!」
美沙子「え?何?」
とりっぷぅ「いてえっぷぅ・・・」
とりっぷぅ「っぷぅ!!」
美沙子(鳥・・・?)
とりっぷぅ「そこの人間!!」
美沙子「は、はい!!」
美沙子(喋った!)
とりっぷぅ「見てねえで助けるっぷぅ!!」
美沙子「鳥さん大丈夫?」
とりっぷぅ「見りゃわかるっぷぅ 大丈夫なわけないっぷぅ」
美沙子(ずいぶんと口が悪い子)
美沙子(まあ、鳥に怒ってもしょうがないか)
美沙子「これで大丈夫かな?」
とりっぷぅ「礼を言うっぷぅ」
美沙子(悪い子ではなさそうだね)
とりっぷぅ「おい人間」
美沙子(しつけはなってないけど)
美沙子「なに?」
とりっぷぅ「腹が減ったっぷぅ なんか食わせろっぷぅ」
美沙子(図々しい子だな)
美沙子「でも鳥にあげれるものなんて・・・」
とりっぷぅ「邪魔するっぷぅ」
美沙子「ダメ!!!!!!!!」
とりっぷぅ「・・・な、なんでだっぷぅ」
美沙子「あ、あの、うちの主人が鳥アレルギーで」
とりっぷぅ「それなら仕方ないだっぷぅ」
とりっぷぅ「外ならいいだっぷぅ?」
美沙子「う、うん」
美沙子(ベランダなら確かわからないはず)
美沙子(久しぶりに夫以外としゃべるかも)
美沙子「ちょっと待ってて、食べ物とってくるね」
美沙子(持ってきたは良いけど 鳥ってたい焼き食べるのかな)
とりっぷぅ「それはなんだっぷぅ そんなもん食べれないだっぷぅ」
美沙子(やっぱりか)
美沙子「これはたい焼きっていってね とっても甘くて美味しんだよ」
とりっぷぅ「ふーん、食べてやらなくもねえだっぷぅ」
美沙子「・・・どう?」
とりっぷぅ「・・・」
とりっぷぅ「・・・うまいだっぷぅ!!」
美沙子「よかった」
美沙子「ねえ、どうしてあなたは喋れるの?」
美沙子「ご主人様に人の言葉を教えてもらったの?」
とりっぷぅ「オイラに主人などいないっぷぅ」
美沙子「じゃあ・・・」
とりっぷぅ「オイラはとりっぷぅ! 時間を自由に飛べる鳥なんだっぷぅ!」
美沙子「はあ・・・」
とりっぷぅ「信じてないだっぷぅ」
美沙子「あ、ごめんね」
とりっぷぅ「人間は、オイラを助けてくれたんだ タイムトリップさせてやるっぷぅ」
美沙子「タイムトリップねえ・・・」
とりっぷぅ「好きな時間に飛べる能力だっぷぅ」
とりっぷぅ「お望みとあらば過去でも未来でも 好きな日に飛ばしてやるっぷぅ」
とりっぷぅ「ただし!!」
とりっぷぅ「3回までしか飛べないだっぷぅ」
美沙子(好きな日・・・)
美沙子(戻れるなら結婚する前に戻りたいな)
美沙子(そしたら結婚なんてしないのに・・・)
とりっぷぅ「はやくするだっぷぅ」
美沙子「何年前でも良いの?」
とりっぷぅ「・・・」
とりっぷぅ「オイラの力だと 10年前までしか飛べないだっぷぅ」
美沙子「・・・」
美沙子「私と夫はね、9月15日に入籍したの」
美沙子「・・・10年前の9月15日」
美沙子「結婚するあの日より前に戻りたい」
美沙子「そして叶うなら・・・」
美沙子「夫との結婚を止めたい」
とりっぷぅ「それは人間次第だっぷぅ」
美沙子「・・・美沙子」
美沙子「私の名前」
とりっぷぅ「気が向いたら呼んでやるっぷぅ」
美沙子(可愛くないなあ)
とりっぷぅ「10年前に戻るだっぷぅ」
とりっぷぅ「それじゃあタイム・・・」
とりっぷぅ「とりっぷぅ!!」
〇黒
とりっぷぅ「あ!!言い忘れてたけど!! 到着場所は選べないだっぷぅ!!」
とりっぷぅ「健闘を祈るだっぷぅー!!」
──10年前、9月14日
〇教会の中
美沙子「ここは・・・?」
美沙子「私・・・の結婚式・・・?」
美沙子「・・・」
「到着場所は選べないだっぷぅ!!」
「健闘を祈るだっぷぅー!!」
美沙子「入籍前日の式場ど真ん中って・・・」
美沙子「ちょ・・・」
美沙子「ちょっと待ったー!!」
タイムトラベルできる回数
残り、2回
束縛するタイプかどうかは、実際に時間が経たないとわからないですからね。それにしても、衝撃的なタイムトリップ先で、次話は波乱必至ですね!
完璧な夫と結婚できて幸せと思いきや、束縛夫とは辛いですね。いっその事、離婚すれば良いのにと単純に思いましたが。それでは物語が面白くないか。
うーん…入籍日ってイヤな予感がしますね。
どうせなら出会った時に戻って、縁を結ばないようにしたいです。
束縛も度が過ぎれば困りますよね。