第四話「彩音さんの夢」(脚本)
〇保健室
春斗に許可をもらい、
パソコンを確認した。
そこには3年前のデフィジョン襲来による
戦死者の顔写真が並んでいた。
そこで、自分の顔写真を見つけた。
高島春斗「少し幼さが残るけど・・・ これはやっぱり君だよな?」
城井奏太「城井奏太・・・13歳・・・死亡」
高島春斗「名字も名前も同じかい?」
城井奏太「ああ。 3年前なら、年齢もちょうど一致する」
高島春斗「まあこの3年間で、世界の人口は 10分の1以下になったらしいし、 君が死んでても不思議はないよ」
この世界の俺に出会ったからと言っても、
元の世界に帰れるわけでもない。
ただ、存在していたはずの自分が
死んでいるという事実に困惑した。
高島春斗「・・・もうすぐ作戦会議が始まる。 来るかい?」
城井奏太「いや、俺は──」
高島春斗「セナさんに会いたいんだろ?」
城井奏太「セナが来てるのか!?」
〇荒廃した教室
部屋に入ると、彩音さんと二十数名の
若者たちがすでに集まっていた。
近藤孝久「そろそろ始めるぞ」
近藤孝久(こんどうたかひさ)と呼ばれるリーダー格の男は、俺と春斗に座るように指示をした。
城井奏太「なあ、セナは──」
高島春斗「しっ! もう始まるぞ」
近藤が小さな箱のスイッチを押すと、
そこにセナが現れた。
城井奏太「セナ・・・!」
高島春斗「立体映像さ。 残念ながらこちらの声は届かないよ」
神崎セナ「スミダー基地から南方10㎞地点で、 新手のデフィジョンを発見した。 視察隊の様子では中級クラスだという」
城井奏太「スミダー基地?」
高島春斗「この基地の名称さ。だいたいどの基地も、 かつての地名の名残があるんだ」
神崎セナ「デフィジョンがアビオを増やす前に、 早急に叩く必要がある」
神崎セナ「近藤の指揮で動いてくれ。 それでは武運を祈る」
映像はそこで途切れた。
近藤孝久「ご覧の通りだ。3日後に作戦を決行する。 そこで7人編成の討伐部隊と、 スリーマンセルの偵察部隊を作りたい」
近藤孝久「志願する者は手を上げてくれ」
近藤の言葉に、
周囲の緊張感が一気に高まった。
それは、その作戦がそれだけ危険と責任を伴うものだということを物語っていた。
近藤孝久「どうした? 誰かいないか」
桐島彩音「私、行きます」
近藤孝久「またお前か・・・ 第四部隊は討伐には参加できないと 決まっている──」
桐島彩音「偵察部隊なら問題ないはずです」
近藤孝久「この死にたがりが」
桐島彩音「武功を上げたいだけですっ!」
近藤孝久「お前は・・・ダメだ」
桐島彩音「なんでですか!?」
近藤孝久「聞いてるぞ。その得たいの知れない男の お守を任されているんだろ?」
周囲の目線が一斉に俺に集まる。
城井奏太「お、俺は──」
桐島彩音「チームの中に彼がいれば 問題ないですよね?」
近藤孝久「なんだと?」
桐島彩音「3日以内に彼を戦える兵士にします」
城井奏太「!?」
桐島彩音「春斗に聞いた。 あんたセナさんに会いたいんでしょ?」
桐島彩音「だったら手っ取り早いのが早く 一人前の兵士になることよ」
城井奏太「セナに、会える・・・」
近藤孝久「おい、新入り。お前はどうなんだ?」
城井奏太「俺は──」
〇河川敷
俺は先を走る彩音さんに追いつくために
必死だった。
彩音さんは息切れせず走り続け、
時々現れるアビオを素早く狙い撃ちする。
桐島彩音「さっさと走りなさい! 偵察部隊だって、 戦闘に巻き込まれることはあるのよ」
城井奏太「うおおおおおぉぉぉ!!!」
〇河川敷
息切れして大の字に寝ていると、
彩音さんが水を持ってきた。
城井奏太「あ、ありがとう・・・」
桐島彩音「この辺りのアビオはデフィジョンの 支配下にはない」
桐島彩音「人間を見ると反射的に襲ってくる タダの雑魚よ」
城井奏太「ざ、雑魚か・・・」
桐島彩音「3日間、 食事と睡眠以外の全てを訓練にあてる」
城井奏太「いっ!?」
桐島彩音「5分後に訓練再開よ」
〇廃列車
訓練は夜も続いた。
かつて電車が走っていた場所を走り、
左右から現れるアビオを狙い撃ちした。
アビオ「ギィャァァァァ!!」
桐島彩音「今度は右!」
反射的に銃口を彩音さんの方に向ける。
桐島彩音「バカ! こっちじゃない!」
トリガーを引くと、レーザーは彩音さんをかすめて背後にいたアビオに命中した。
桐島彩音「後ろに!?」
城井奏太「冷静な状況把握と優先順位・・・ コツはゲームと同じ・・・かな」
右から飛び出したアビオを撃ち抜くと、
一気に気が抜けてその場に座り込んで
しまった。
桐島彩音「・・・・・・」
〇廃墟と化した学校
かつて中庭だった場所には焚火があり、
兵士たちの憩いの場になっていた。
身体中に感じる痛みに耐えながら、なんとかこの三日間の疲れを取ろうとしていた。
彩音さんは音を立てずに横に座ると、
焚火の中に小さな木切れを投げ入れる。
桐島彩音「・・・見直した」
城井奏太「え?」
桐島彩音「正直、あんたがこんなに頑張るとは 思っていなかった」
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