エピソード1(脚本)
〇広い改札
花守 智恵理 ─ 待ち合わせ ─
駅構内の改札口手前の広間で智恵理は柱に背を預けながら友人の楓と、その双子の弟である
椛の二人を待っていた、
今日は入学式で彼らと一緒に行くと約束していた。
花守 智恵理(はなもり ちえり)(楓達・・・遅いな、駅に着いてからそろそろ30分・・・、メールしようかな)
智恵理が楓にメールをしようとした時
おはよう
という声が聞こえそちらに顔を向けると
智恵理と同じ様に待ち合わせをしていたであろう二人の学生達がいた、一人は男子でもう一人は女子だ、
「ブレザー似合ってるじゃない」
「ありがとうございます」と会話が聞こえる
花守 智恵理(はなもり ちえり)(楓じゃなかったか)
花守 智恵理(はなもり ちえり)(・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ、)
なんとなくその二人が気になり〝能力〟を使って思考を読んでみた
勇気(これから毎日優子さんの制服姿が生で拝められるのか、写真で見るのもいいがやはり生が一番良い!)
勇気(あぁ・・・本当に勉強頑張って良かった!!はぁ・・・好き・・・付き合いたい!)
優子(あぁ、まさか本当に私と同じ学校に受験して受かるとは・・・勇気くん頑張ったんだね、)
優子(・・・というか本当にブレザー似合ってるじゃない!!あぁもう好き、付き合いたい!)
花守 智恵理(はなもり ちえり)「ほぉ・・・」
花守 智恵理(はなもり ちえり)(あの二人は・・・、女子の方は2年か3年で、男子の方は私と同じ今日から1年生、そして二人は両想い・・・いや両片思いかな、)
花守 智恵理(はなもり ちえり)(男子の・・・勇気くんとやらは女子の、優子さんの事が好きで猛勉強して同じ学校を受験して合格した・・・ってとこかな)
智恵理には不思議な力があった、他人の隠し事や秘密、知られたら困る事を知れる能力だ
(正確に言えば相手自身が隠し事、あるいは秘密だと認識している思考、想像、記憶等を読んでいく能力である、
また認識していなくても知られたら困る事があるなら場合によっては読める事もある。
花守 智恵理(はなもり ちえり)(そういえばあの二人の制服見たことある、たしか偏差値が異様に高い学校だった様な・・・)
花守 智恵理(はなもり ちえり)(勇気くんすごく努力したんだ、好きな子と一緒の学校へ行くために・・・なんか良いな、)
花守 智恵理(はなもり ちえり)(あと勇気と優子って名前が似てるのも、小説のネタになりそう、ついでに記憶も見ておこう)
智恵理は能力で知った他人の隠し事や秘密をネタにネットで小説を書いていた、本も数冊出している。
二人に対して今度は記憶を読もうとした時、
ンおーっす、ちえりん
という声が聞こえた、
振り返ると待ち合わせ相手の楓と椛がいた。
姉弟だというが顔はまったく似ていない、姉が楓で弟が椛との事だが楓は小学生くらいの身長である、
なのでこう並んでいると楓が妹で椛が兄に見える。
花守 智恵理(はなもり ちえり)(今の二人以上にネタになる女子・・・)
花守 智恵理(はなもり ちえり)(いや〝男子〟が来たな)
朝桐 楓(あさぎり かえで)「いや~やっぱり先に着いてたか、」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「・・・もしかしてかなり待った?」
花守 智恵理(はなもり ちえり)「そんな事ないよ大丈夫」
花守 智恵理(はなもり ちえり)(30分程待ったけどね)
朝桐 楓(あさぎり かえで)「ふむ・・・」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「その表情と声色から察するに」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「30分は待ったと見た」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「・・・ホントごめんね」
花守 智恵理(はなもり ちえり)「勘いいな!いや、本当大丈夫だよ、」
花守 智恵理(はなもり ちえり)「それでそっちの彼が・・・」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「あ、えっと、」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「そう!この子が愛しのマイブラザー、椛君だ!!」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「・・・・・・」
椛が自己紹介をしようとするが楓が言葉を遮り楓が椛の紹介をする、
「今、自己紹介をしようと思ったのに・・・」という目で椛は楓を見つめる。
花守 智恵理(はなもり ちえり)「はは・・・」
花守 智恵理(はなもり ちえり)「えっと、楓から話や写真で君の事は知ってるけど会うのは〝初めて〟だよね、」
花守 智恵理(はなもり ちえり)「私は花守智恵理、智恵理でいいよ、よろしくね椛くん」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「あー・・・っと、」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「初めまして、」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「椛っていいますよろしくです」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「・・・・・・後姉がお世話になっております」
椛は少しどもりながら自己紹介をする、
その様子が可笑しく智恵理はクスりと笑いながら「敬語何ていいよ」と言う。
朝桐 楓(あさぎり かえで)「別に世話になってる分けじゃないぞ、」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「俺は椛の世話してるけどな、今朝だって支度を手伝ったんだ」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「いや何言ってるの、」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「支度は昨日の夜に殆ど終わらせたから手伝わなくていいって言ったのに、」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「再確認だ!とか熱測った?とか言って俺にかまけて自分の支度忘れて」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「逆に俺がねーちゃんの支度を手伝ったんじゃないか、それで30分の遅刻というね」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「ンナギー?何でバラすのー?」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「いや、まあ、忘れ物がないか確認するのは大事だし、」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「せっかくの入学式なのに熱が出て行けませんでしたってのは嫌でしょ」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「もう大丈夫だって、今はもう弱い体じゃないんだし、」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「一応測ったけど熱無かったでしょ、ついでに忘れ物も無かった」
花守 智恵理(はなもり ちえり)(そういえば楓から聞いたな・・・)
〇大きい病院の廊下
椛は幼い頃から体弱く、怪我や病気等で病院への入退院もよく繰り返していた、
中学生になってからはまたさらに重い病気にかかり三年間ほぼ毎日を病院で過ごしていた
(ちなみに椛の中学と智恵理と楓の中学は別である)、
だがある時智恵理と楓が受験を終えて数日後、急に元気になった。
しかもただ元気になっただけじゃなく体の弱さが無くなり、
それどころか常人以上に強く健康な体になった(椛が病室で逆立ち歩きやバク転をしていた)、医者も驚いていた。
さらに椛は「ねーちゃんと同じ学校に行きたい」と言い出した。
〇おしゃれなリビングダイニング
試験はもう終わったのだが母親がどこかへ連絡したらしい、
翌日、学校から再試験の連絡が来た。
母親はさらに知り合いを家庭教師として呼び、再試験の日までの数日間、椛は勉強を見てもらっていた
(楓も一緒に勉強を見たが椛にうざいと一喝され一日でやめさせられた、またこの数日間に智恵理と楓の合格通知が届いた)。
〇学校の校舎
そして再試験の日、試験は母親も着いていった、電車に慣れてない椛を心配してだ、
試験場である学校に着くと母親は「終わるまで適当に時間潰してる、終わったら連絡して」と言い、去っていった。
〇教室
再試験は椛以外にも数人いた、試験が終わった後は個人面接で椛が最初だった、
そして面接も終わり母親と一緒に帰宅し翌日、椛にも合格通知が届いた。
〇広い改札
花守 智恵理(はなもり ちえり)(前に楓から椛くんの写真を見せてもらったけどやつれていて元気がない感じだった、でも今は何か元気そう)
花守 智恵理(はなもり ちえり)(・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ)
彼もネタになりそうな気がする、そう思い智恵理は椛に能力を使う・・・・・・が、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
花守 智恵理(はなもり ちえり)(・・・・・・?)
読めなかった。おかしいなと思いもう一度能力を使うがやはり読めない、思考も記憶も。
花守 智恵理(はなもり ちえり)(・・・読めない?珍しいな)
それほど驚きはしなかった、前にもこういう事はあった、今まで幾人もの人の秘密を読んできたが読めなかった者は数人だがいた、
なぜ読めないかは考えても理由が分からなかった
(赤ん坊やまだ物心ついてない子供も読めないが、それは年齢故にまだ秘密、隠し事だと認識していないからである)
がそういう人達もいるんだなと気にしないようにしていた。
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「ねーちゃん、智恵理・・・さん、そろそろ行こう」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「そうだね遅刻したけどまだ間に合う」
花守 智恵理(はなもり ちえり)「じゃあ、行こっか」
三人は歩き出す。
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「ってか遅刻したのはねーちゃんのせい」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「ごめんて、あと普通に智恵理でいいと思うぞ」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「初対面でいきなり呼び捨ては・・・」
朝桐 楓(あさぎり かえで)「智恵理は気にしないよ、なんならちえりんでもいいし」
朝桐 椛(あさぎり なぎ)「馴れ馴れしいな」
花守 智恵理(はなもり ちえり)(・・・・・・あ、)
そういえばと、先程の二人の男女、勇気と優子を探す。
花守 智恵理(はなもり ちえり)(いない・・・)
いつの間にか先に行ったようだ。
花守 智恵理(はなもり ちえり)(まあ、この駅が最寄駅ならまた見かける事もあるだろうし、あの二人の秘密の記憶は また今度にしよう)
と駅のホームへと向かう。
ちえりちゃんのような友達いたら、自分が何考えているか全部バレバレだということですよね。まあ、知らなければ何もかわらないんでしょうけど。ちえりちゃんはそんな自分の能力どう思っているのかなあ。
こんな能力があったら便利な時もあればなんとなくつらい気分になる時もあるんでしょうね、
でも一度は経験してみたいかも?続きが読んでみたい気がします。
人の心が読めるのも良し悪しだと思うんですが、彼女にとっては便利な力みたいですね。
これからなぎくん達とどうなって行くのか楽しみです。