恋する妊婦

紫陽花

エピソード1(脚本)

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〇住宅地の坂道
  紫陽花の香りが漂う昼下がり
  梅雨が明け、いよいよ夏が始まる
なぎさ(空はこんなに青く太陽は眩しいというのに 私の心はどんよりと沈んでいる)
なぎさ(お腹に赤ちゃんができて 一番幸せなときだというのに)
なぎさ(どうしてだろう 心が・・・晴れない)
なぎさ(誰か・・・私を助けて)

〇住宅地の坂道
なぎさ(なんて思っていたら 空までが曇り始めた)
犯人「・・・獲物を見つけた」

〇住宅地の坂道
  男は、背後から忍び寄り
  なぎさのバッグを奪った!
なぎさ「誰か! 誰か助けて!」
  平日の真昼
  住宅街は静まり返っている

〇住宅地の坂道
  ところが
  またもや背後から
  なぎさに近付く姿があった
なぎさ「きゃあ!」
卓也「どうしたんですか」
なぎさ「バッグ・・・私のバッグを あの男が!」
  短く頷くと
  彼は走り出した

〇開けた交差点
犯人「ここまで逃げれば、もう大丈夫だ」
卓也「追い付いたぞ!」
犯人「だ、誰だお前は」
卓也「さあ、早くバッグを返すんだ!」
犯人「・・・やばそうな奴だ ここはずらかるしかない」
  犯人はバッグを投げ捨てた!

〇開けた交差点
  卓也はバッグを手に取り、抱えた
卓也「・・・無事みたいだな」
なぎさ「危ないじゃないの!」
卓也「いや、でも」
なぎさ「見ず知らずの私なんかのために 無茶しないで!」
  なぎさは、足がガクガク揺れている
なぎさ「でも、ありがとう ありがとうございました」
  卓也は、そっとバッグを差し出した
卓也「私なんか、なんて言わないで下さい」
なぎさ「え?」
卓也「あ、自分は『卓也』といいます 近くの高校で野球部に所属しています」
卓也「だからこの辺り、いつもジョギングしていて あなたのこと・・・」
なぎさ「あ、そうか 私、いつもぼんやり散歩しているから ジョギングの邪魔しちゃっていたのね」
なぎさ「ごめんなさい❤️」
卓也「まずい・・・かなりの天然さんだぞ」
卓也「だがしかし・・・それがいい」
なぎさ「じゃあ ありがとうね」

〇おしゃれなキッチン
  なぎさは、いつもより朗らかに帰宅した
なぎさ(爽やかな男の子だったなあ きっとモテるんだろうなあ あ!)
なぎさ(私ってば 名乗るの忘れてた!)
なぎさ(まあ、いいか)
なぎさ(さあ、お夕飯作らなきゃ)
なぎさ(ん 今日は頑張れた 私の心も明るくなれたし お天気も回復していたし あの男の子のお陰ね、きっと)

〇野球のグラウンド
  卓也は、まだ部活に励んでいる
卓也「おい、まだ練習するぞ」
学「いや、もう塾に行かないと」
遊「おいらもデートがあるし」
卓也「なに言ってるんだよ 最後の大会が残ってるじゃないか」
学「二年生に任せておけば余裕だろう」
遊「そうそう あいつらの方が、センス良いし」
学「じゃあな」
遊「またな」

〇清潔な浴室
  なぎさは入浴していた
  歌をうたい、お腹を撫でて
  赤ちゃんが健やかに育ちますようにと

〇野球のグラウンド
  卓也は、ひとりで自主練を続けていた
卓也「できることは、まだある」
綾香「卓也、まだ終わらないの?」
卓也「おお、なんだ綾香 まだいたのか」
綾香「・・・失礼な ずっといたわよ」
卓也「・・・ いつも、マネージャーの仕事ありがとうな」
綾香「何よ、改まっちゃって 今日の卓也、らしくない」
綾香「はい、檸檬アメ」
卓也「やった これ、美味いんだよ 大好きなんだ」
綾香「・・・私も」
卓也「奇遇だな」
綾香「卓也ばかり見てるんだから 奇遇なわけないじゃん 全く、天然なんだから」
卓也「ん? 何か怒ってるか?」
綾香「知らない 私、もう帰るから」
卓也「ひとりで帰るの、危ないだろ」
綾香「大丈夫! 卓也は練習、頑張って」
卓也「おお、そうだな 気をつけて帰るんだぞ」
  この決断を
  彼は生涯
  後悔することになるのだった

コメント

  • 妊婦さんの心が晴れない理由はなんなのか、旦那さんが変わった人なのかな、気になりました。
    二つの恋が動いてて、今後の展開がとても楽しみです!

  • 爽やかな高校球児と幸せそうな妊婦さん。
    この二人に今後何が起こるのか気になります。
    部活は周りのやる気がないと、チームプレイだとどうしようもないですよね。

  • ”出会い”や”人物設定”、”人間関係”が示された第一話ですね。彼女たち彼らが今後どのように関わっていくことになるのか気になります。

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