第二話「キミョウ」(脚本)
〇学校の廊下
先に多少、この学校に関する説明をしておくと。此処は公立の小学校であり、建物もそれなりに年季が入っている。
防犯カメラ、のようなハイテクなものは正門と裏門のあたりにしかない。
警備員さんもいるにはいるが、カメラで監視できるのは門の周辺のみといういい加減っぷり。
まあようするに、セキュリティはとってもザルいのである。
そして仮に警察が来ても、カメラを使って中の様子を把握することが難しいということでもある。
『当然ですガ、警備員さん、用務員さんもその部屋から出てはいけませんし、警察に連絡してもいけまセン』
放送はまだ続いている。
『そして、全ての教室や職員室にいる教師に通達しマス。全ての窓とカーテンを開けてくだサイ。
従わない場合は、やはり爆弾をランダムに爆発させマス』
神楽璃王「妙だな」
放送室に向かいながら、首を傾げる璃王。
神楽璃王「普通、こういう事件を起こす場合って窓もカーテンも全部閉めさせる方が一般的なんだ」
田無智「何で?」
神楽璃王「決まってる。警察呼ぶな、助けを呼ぶなって言っても普通はこっそり呼ぶだろ。犯人だってわかってないはずがない」
神楽璃王「それでも窓が開いていて中の様子が丸見えだったら、外で張ってる警官達は中の様子を監視しやすい」
神楽璃王「それはつまり、状況の把握が簡単になるってことだ」
田無智「あー、確かに」
神楽璃王「この学校はただでさえ防犯カメラの類がなくて、中の様子が見えづらいだろ」
神楽璃王「それは本来、犯人にとってはメリットとして働くはずなのに・・・・・・何故それを捨てるようなことを・・・・・・?」
やっぱり璃王は頭がいい。自分とは見ている場所が違うな、と智は感心させられる。
確かに防犯カメラのようなものがあり、それで犯人に監視されている危険性があるのなら。
自分達だって、こんなに堂々と放送室へ向かうことはできなかったはずである。
鈴原雅「そういえば、窓は開けておけって言うのに、教室のドアを開けておけとは言わないんだね。これも何か理由があるのかな」
雅が首を傾げる。
鈴原雅「それに、あの言い方だと多分、廊下側の窓は開け忘れる人が出ると思うんだけど」
鈴原雅「・・・・・・ってことは、廊下側の窓を開けておくことは重要じゃないのかな」
神楽璃王「廊下の窓を空けておけ、とも言わなかったな?」
鈴原雅「うん。・・・・・・なんだか教室とかの窓から、誰かが侵入するのを手助けしたいみたいで変なかんじ」
ちなみに、今の時期は秋。極端に暑くもなく涼しくもないため、窓を開けておくことにさほど問題はない。
生徒達が暑さで倒れたり寒さで凍えるようなことはないはずである。犯人はそれもわかった上で指示を出したのだろうか。
田無智「ここだ」
放送室は三階。屋上からはそこまで距離も遠くなかった。
家庭科室の前を通る時だけは、室内の生徒や先生に気づかれないように身をかがめて通る必要があったが、
それ以外に大きなハードルもない。
放送はいつの間にか終わっている。犯人はまだ中にいるのか、それとももう出て行ってしまった後なのか。
田無智「俺が先に入るからな。お前らはサポート頼む」
鈴原雅「おっけ。万が一の時はちゃんと智を見捨てて璃王と逃げるから任せておいて!」
田無智「雅お前な!」
軽いジョークを飛ばしつつ、放送室のドアの前に待機した。
そっとドアに耳を当てて様子を伺うも、物音はしない。誰もいないのか、息を潜めているのか。
田無智「行くぞ!」
〇黒背景
そして智は、勢いよくドアを開けて中に入った。
そこにあった光景は――。