ものぐさな名探偵 ~つまらない依頼はお断り~

HALPIN

1.小さな依頼人(脚本)

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〇綺麗な会議室
久蔵「依頼を受けないとはどういうことだ!!」
功刀絢花「だって、面倒くさいし・・・」
功刀絢花「ペットショップに行けば餌用の冷凍ネズミが売ってますから」
功刀絢花「罠でも仕掛けておいたらどうですか?」
久蔵「ミャーちゃんをなんだと思ってるんだ!」
功刀絢花「猫でしょ。しかも十三歳の老いぼれ」
久蔵「なんだと!」
功刀絢花「事実を言っただけです」
功刀絢花「あなたには家族かもしれませんけど 私にとってはただの猫ですし」
久蔵「・・・」
功刀絢花「どうしてもって言うなら、出せますか? その猫の捜索のために1000万円」
久蔵「1000万だと!?」
功刀絢花「もし子どもが行方不明になったとしたら それくらい安いものでしょ?」
久蔵「むぅ」
功刀絢花「家族なんですよね?」
久蔵「・・・」
功刀絢花「お金が用意できないのなら お引き取りください!」
功刀絢花「・・・」
功刀絢花「・・・次の人、どうぞ!」
功刀絢花(めんどくさ・・・)
功刀絢花(今日もろくな依頼がないな)

〇雑居ビルの一室
  クヌギ探偵事務所・前
吉良誠一郎(今日で三ヶ月か・・・)
吉良誠一郎(絢花ちゃんも大変なんだろうけど)
吉良誠一郎(さすがに家賃を払ってもらわないとな)
久蔵「なんなんだ、あの女は!」
久蔵「何が探偵だ。期待して損したわ」
吉良誠一郎(絢花ちゃんだな また依頼人を怒らせて・・・)
吉良誠一郎(こんなだから、家賃も滞納になるんだな)
吉良誠一郎(探偵界のトップアイドルなんて言われて 人気もあるのに・・・)

〇綺麗な会議室
祐実「浮気調査くらいできるでしょ!」
功刀絢花「お断りします」
功刀絢花「つまんなそうだし」
祐実「つまんなそう?」
功刀絢花「話を聞いただけで浮気は明らかです」
功刀絢花「じゃあ、そういうことで」
祐実「はぁ?」
祐実「なんなのよ、ここ」
功刀絢花(疲れた・・・ まだ予約があるんだっけ)
功刀絢花「次の人どうぞ」
吉良誠一郎「何やってるんだよ、絢花ちゃん!」
功刀絢花「誠一郎、何の用だよ?」
功刀絢花「仕事中なんだけど」
吉良誠一郎「仕事中ってね」
吉良誠一郎「さっきから依頼人を怒らせてるだけだろ せっかく来てくれたのに追い返してさ」
功刀絢花「だって、つまんない依頼ばっかなんだもん」
吉良誠一郎「どんな依頼だったら受けるんだよ」
功刀絢花「面白そうな仕事なら受けるよ」
吉良誠一郎「依頼はいっぱい来るのに断ってばかりでさ そのせいで年中金欠なんだろ?」
吉良誠一郎「仕事なんだから割り切らないと」
功刀絢花「うるさいなぁ」
吉良誠一郎「そんなんで家賃は払えるの?」
功刀絢花「いや、それはさ」
吉良誠一郎「三ヶ月も滞納してるんだよ これ以上は待てないんだからね!」
功刀絢花「うっ」
愛那「あの、すみません」
愛那「私の依頼は・・・」
功刀絢花「ほら、誠一郎のせいで依頼人が困ってる」
吉良誠一郎「あっ、すみません」
功刀絢花「どういう依頼ですか?」
愛那「夫が不倫してたんです」
功刀絢花「浮気調査ですか? それだったら・・・」
愛那「違います!」
愛那「夫はその不倫相手に殺されたんです!!」
功刀絢花「殺された?」
愛那「でも犯人の女が逮捕されなくて」
吉良誠一郎「えっ、どうしてですか?」
愛那「夫が会社の屋上から転落したとき 女は離れた場所にいたんです」
愛那「だから、犯行は不可能だって 夫の転落は事故ってことにされて」
功刀絢花「実際に事故だったんじゃ?」
愛那「そんなはずありません」
愛那「きっと屋上に呼び出されて あの女に突き落とされたんです!」
功刀絢花「だって、その浮気相手の人は 現場から離れた場所にいたんですよね?」
愛那「でも直線距離なら2kmです」
功刀絢花「2kmでも突き落とすのは無理ですよ」
功刀絢花「事故じゃないなら自殺か・・・」
愛那「夫が自殺するはずありません」
功刀絢花「じゃあ、犯人は別にいるとか」
愛那「いえ、犯人はあの女なんです!」
愛那「手付金です 女を捕まえられたら更に倍払います」
吉良誠一郎(これで、滞納分の家賃も回収できるな)
功刀絢花「お断りします」
愛那「どうしてですか!」
功刀絢花「浮気相手を恨むあまり その女が犯人だと思い込んでるんですよ 気持ちは分かりますけど・・・」
功刀絢花(思い込みのために調査なんて面倒くさい)
愛那「思い込みじゃありません!」
功刀絢花「それが思い込みなんだって」
吉良誠一郎「調査してみる価値はあります!」
吉良誠一郎「仮に思い込みであったと証明された場合も手付金はお返しできませんが」
吉良誠一郎「それでもいいですか?」
功刀絢花「誠一郎、おまっ」
愛那「ちゃんと調査していただければ構いません」
吉良誠一郎「でしたら、お引き受けします」
功刀絢花「何を勝手に!」
吉良誠一郎「三ヶ月分の家賃は? それとも、ここを出ていく気かい?」
功刀絢花「・・・」
功刀絢花「・・・お引き受けします」
愛那「よろしくお願いします」
吉良誠一郎「良かった良かった」
功刀絢花「よくねーよ!」
吉良誠一郎「良かったじゃないか 君は割のいい仕事をゲットできたし」
吉良誠一郎「僕も家賃を回収できた!」
功刀絢花「待て、それは生活費に!」
吉良誠一郎「お釣りは返すよ これだけあれば、何日かは大丈夫だろ?」
吉良誠一郎「じゃあね!」
功刀絢花(本当に持って行きやがった・・・)
功刀絢花「・・・」

〇綺麗な会議室
功刀絢花「ん? 誰か来た?」
宏斗「あの、探偵事務所ってここですか?」
功刀絢花「まあ、そうだけど」
宏斗「お願いします 俺の無実を晴らしてください」
功刀絢花「は?」
宏斗「お金は払います」
功刀絢花(500円・・・)
功刀絢花「疑いを晴らして欲しいってこと?」
宏斗「俺は竜を見ていただけなんです!」
功刀絢花「竜?」
宏斗「そうです。竜、ドラゴンです」
功刀絢花「どういうこと?」
宏斗「あの夜、塾の帰りに竜が飛んでたんです」
功刀絢花「はぁ?」

〇空
宏斗「あれっ!? 何か飛んでる!」
宏斗「何だったんだろ?」
宏斗「もしかして、竜?」
  パリーンッ!!
???「コラーッ!!」
宏斗「・・・」

〇一戸建て
与志之「この悪ガキめ!」
宏斗「えっ!?」
与志之「とぼけるな! 家に石を投げ込んだだろ!」
宏斗「俺、そんなこと」
与志之「この石だ!」
宏斗「俺、ただ空を見てただけで・・・」
宏斗「りゅ、竜が飛んでたから」
与志之「誤魔化すのならもっとましな嘘をつけ!」
宏斗「嘘なんか・・・」
与志之「窓が割れたんだ 親に言って弁償させてやる!」

〇綺麗な会議室
宏斗「お願いします 俺と一緒に竜を探してください」
功刀絢花「竜探し・・・」
宏斗「母さんも俺の話を信じてくれなくて」
宏斗「弁償すれば許してやるって あの爺さんは言ってるんだけど・・・」
宏斗「俺、何もやってないのに」
宏斗「悔しくて」
功刀絢花「だから、竜を見つけて証明するってこと?」
宏斗「はい。お願いします!」
功刀絢花「うーん・・・」
宏斗「やっぱり、500円じゃダメですか?」
功刀絢花「いや・・・」
宏斗「じゃあ、探偵さんも俺のこと 信じてくれないんですね・・・」
功刀絢花「・・・」

〇オフィスビル前の道

〇オフィスビル前の道
功刀絢花(まだかな、あいつ?)
吉良誠一郎「絢花ちゃん、あのメールはなんなんだ?」
功刀絢花「おっ、やっと来たか!」
吉良誠一郎「仕事を手伝えって、どういうことだよ?」
功刀絢花「お前が昨日、勝手に引き受けたんだろ あの妄想女の調査!」
功刀絢花「手付金も取って行ったんだし」
功刀絢花「その責任を果たせって言ってるんだよ!」
吉良誠一郎「あれは滞納分の家賃で・・・」
功刀絢花「あのあと、もっと大事な依頼があったんだ」
功刀絢花「その調査もしなきゃだから 一人じゃ手が足りないんだよ!」
吉良誠一郎「大事な依頼?」
功刀絢花「ああ」
吉良誠一郎「そっちはどんな依頼だったの?」
功刀絢花「それはだな・・・」
宏斗「竜を探して欲しいんです」
宏斗「お願いします」
功刀絢花「・・・って感じだ!」
吉良誠一郎「竜探し?」
功刀絢花「嘘をついてるようには見えなかったしな」
功刀絢花「じじ猫探しよりはずっと楽しそうじゃん!」
吉良誠一郎「竜なんかいるわけないだろ」
功刀絢花「私だってそう思って断ろうとしたよ」
功刀絢花「でも見ろよ、これ」
功刀絢花「SNSを調べてみたらさ」
功刀絢花「同じ日の夜、その辺りで空飛ぶ巨大生物を 見たって書き込みが何件かあったんだ」
功刀絢花「竜やドラゴン以外にも、 空飛ぶヘビやら、スカイフィッシュやら 証言はまちまちだったけどな」
功刀絢花「うなり声を聞いたってコメントもある」
吉良誠一郎「写真とかないの?」
功刀絢花「一瞬だったらしいし それに、夜中の空だからな」
功刀絢花「まともな写真はアップされてなかった」
功刀絢花「でも、何かあるのは間違いねえ」
功刀絢花「都会に住む竜。見つけたら大発見だぜ!」
吉良誠一郎「おいおい」
功刀絢花「それに、もう金は受け取っちゃったし やるしかないんだよ」
吉良誠一郎「500円で!?」
功刀絢花「何言ってる。ガキの500円は大金だぜ」
功刀絢花「ってことで、行くぞ! 竜探しだ!!」
吉良誠一郎「やれやれ」
吉良誠一郎「今日はオフだったのに・・・」
吉良誠一郎「転落死の方の調査も忘れないでね」
功刀絢花「ああ、分かってるって!!」
吉良誠一郎「まあ、僕にも責任の一端はあるし しょうがないか・・・」

次のエピソード:2.竜のねぐらを探せ

コメント

  • 自分の気に入った依頼しか受けない、ってなかなかやりますね彼女。
    そんな仕事の仕方がすごいと思いますが、少年の500円の依頼は受けるところとか好きです。

  • キャラクターが魅力的で台詞回しがとても上手で面白かったです!続きが楽しみです! 

  • 絢花さん、奔放すぎですねーw 滞納家賃返済よりも興味関心に従っての依頼の受諾。そんな彼女がこれからどんな捜査をするのか楽しみになります!

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