黒兎少女

武智城太郎

第五話 生贄(前編)(脚本)

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〇通学路
  深夜。

〇学校沿いの道
  小学校のそばの道を──
  和人は歩いていた。
  ベルトを装着して、大きなトランクケースを背負っている。
和人「ここでいいか」
  暗視カメラアプリで、校内の様子を確認する。
和人(グラウンドに人影はない)
和人「よし!」

〇田舎の学校
  柵を越えてグラウンドに下り立つと、校舎のほうに駆けていく。

〇グラウンドの隅
  飼育小屋の前に到着すると──
  中の様子を確認する。

〇古い本
  情報通り、今もインコを飼育していた。

〇グラウンドの隅
  背中のトランクケースを下ろし──
  中から、ボウガンを取り出す。
  正式にはクロスボウと呼ばれるものだ。
  その中でも、ピストルクロスボウという入門者向けの軽量の種類。
  だがけっしてオモチャではない。

〇サイバー空間
  専門店の通販サイトを利用して購入したのは、数か月前のこと。
  未成年者への販売は禁止されているが、身分証の画像をサイトにアップロードすればいいだけだったので──
  父親のパスポートを無断で借りて、難なくクリアした。

〇グラウンドの隅
和人「やるぞ・・・!」
  上着の内ポケットからアルミ矢を取り出し、セットする。
  安全装置を解除し、先端に取り付けている小型の懐中電灯のスイッチを入れる。

〇古い本
  インコは六羽とも目を覚まし、見知らぬ侵入者を警戒している。

〇グラウンドの隅
和人「おれは殺戮の王だ・・・!」
和人「そして恐怖の大王にして破壊の神・・・!」
インコ「ピピピッ!!」
  アルミ矢が頸部を貫通する。
  止まり木から落下し、青インコは絶命する。
インコ「ピッ・・・!」
  アルミ矢は腹部に命中し、床に落下する。
  だがまだわずかに息があり、クチバシをパクパクと動かしている。
  次は胸部に命中し、そのまま沈み込むように命が消滅していく。
  和人は、一羽目以上の興奮を得る。
和人(思い描いていた以上の手応えだ!!)
和人「おれは殺戮の王・・・!」
  だが奇妙な現象も起きていた。
  殺戮の途中から、ずっとガチガチに勃起しているのだ。
  射精まではしていないが、大量のカウパー液で下着がヌルヌルになっている。
和人(クラスの奴らの話とか、本に書いてあることとちがうような・・・)
和人(まあ、どうでもいいか)

〇一軒家

〇おしゃれなリビングダイニング
  和人は、家族とともに夕食をとっていた。
母親「和人、顧問の先生から、最近部活に出てないって連絡があったわよ」
和人「あんなのやめた」
和人「顧問に気に入られてるグループが調子に乗ってるだけだから」
和人「たいして上手くもないのに」
弟「二中のサッカー部って、あんまり強くないよね」
弟「テレビ見よっと」
母親「だったら学習塾に行く? みんな通ってるんでしょ」
母親「中間試験の結果もあまり良くなかったし」
和人「みんなじゃないし、そんなの行かなくても自分でやれるし」
キャスター「──先週末、白山市内の小学校で、飼育小屋のセキセイインコが何者かに殺されているのが見つかりました」
キャスター「事件があったのは白山第二小学校で、調べによると二八日朝──」
キャスター「飼育係の児童が、小屋の中で飼っているセキセイインコ六羽がすべて死んでいるのを見つけました」
  画面には、小学校の鳥小屋が映されている。
弟「ぼくの学校だ! インコが殺されたこと言ってる!」
和人「・・・・・・」
キャスター「セキセイインコには、ボウガンのものと思われる矢が複数本刺さっていました」
母親「こわいわねえ。二人とも気をつけないとダメよ」
母親「変な人を見かけたらすぐに逃げてね」
弟「あ、池の水全部抜くやつやってる!」
和人(やっぱり、おれはすごい!)
和人(他の奴らとはわけがちがう!)

〇雲の上
和人「凡人とは次元のちがう、特別な存在だ!」

〇並木道
  柏木倫子はとぼとぼと下校していた。
柏木倫子(自転車があれば楽なのに・・・)

〇住宅街
柏木倫子(今日はスーパーに寄らなくてもいいわね)
柏木倫子(納豆を買うのは明日でいいし、イワシの缶詰もまだ一個残ってるはずだし・・・)
シェパード「ワンワン!!」
柏木倫子「わっ!!」
  突然、門扉越しに、猛り狂った犬に吠えかかられる。
柏木倫子「こいつ、また・・・!」
柏木倫子(許せない。今度という今度は・・・!)
  まず頭に浮かんだ魔法は〈火吹き〉だ。
柏木倫子(まだ試したことはないけど、おそらく難しくはないわ)
柏木倫子(まるで大道芸人みたい。パスね)
柏木倫子「他には・・・」
柏木倫子「そうだ! 格好の魔法があるのを忘れてたわ」
柏木倫子「コウラーシトゥ キリウォス シリオ」
柏木倫子「カネイス ヒラー アブェレイスディ フォンニ ザス」
  不気味な響きの呪文。〈獣から声を奪う〉魔法だ。
柏木倫子「コウラーシ トゥ ディブロス!!」
柏木倫子(これで、この駄犬は永遠に沈黙して──)
シェパード「ワンワン!!」
柏木倫子「わっ!!」

〇古いアパート

〇怪しい部屋
柏木倫子「どうして、こんな簡単な魔法を失敗するのかしら?」
サンドル「翻訳間違いか、その犬への憎しみが足りてないのか」

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コメント

  • ボウガンでインコを...許せない...!思春期特有の承認欲求は理解できるけど...!みっちりと叱ってやってほしいです😓

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