最終章 坂口さんの秘密(脚本)
〇事務所
あの日から数日後、
私と彼女は転職をした。
私は何も言わず辞めるつもりだったが、
百合野さんがこの際と
全部ぶちまけてしまった。
部長たちは何かしらの処分が下ったのだろう。
でも、具体的には知ることができないし、
もう興味もなかった。
〇屋上の端(看板無し)
今は彼女とともに、
新しい会社でそれなりに忙しくしている。
でも、昼食の時間は一時間もらえるし、
屋上で澄みきった空を見ながら食べられる。
とにかく前とは大違いだった。
昼食の弁当を食べ終え、
片付けていると、彼女の視線を感じた。
坂口「どうしたの?」
華「改めて、口の傷治って良かったなぁって。」
あの日を境に
裂けた口はあっという間に塞がった。
呪いが望んだ結末にたどり着いた
ということなのだろうか……。
坂口「そうね。それなのに、寝坊しちゃったから メイクあんまりできなくて、 マスクで来ちゃって……。」
華「あ、そういえば坂口さんに 渡したいものがあったんですよ!」
それは以前彼女が見せてくれた口紅だった。
坂口「これって……本当に買ってきてくれたの? 私、もらっていいの?」
華「もちろんですよ。 なんなら今、塗っちゃいましょうよ!」
そう言って彼女は私の唇に
珊瑚色の口紅を引いた。
「どうかな……。」
私が問いかけると、
彼女はすぐに私のマスクを上げてしまった。
坂口「どうしたの? せっかく塗ってくれたのに。」
華「だって、他の人に見られたら ヤキモチやいちゃうなぁ、と思って。」
坂口「百合野さん……。」
華「もう、名前で呼んでくれていいって 言ったじゃないですか。」
坂口「なら、は、華さん。」
華「なんですか? 咲子さん。」
坂口「これからも一緒にいてくれる?」
華「もちろん喜んで!」
澄みきった青空の下、
叶えることができないと思っていた
小さな幸せを噛み締めていた。
人物の会話や心情描写は生々しいリアリティがあるのに、読後はどこかファンタジックな気分にもなりました。不思議なテイストの作品でとてもひきこまれました。最後も、決して二人の状況が良いとは言えないけれど、お互いの存在がそれぞれの希望になっていることが感じられて、爽やかさがありました。素敵なお話でした、ありがとうございます。
最終話まで拝読させて頂きました。華が出てきてから、物語もどんどん面白くなってきて、終わり方もすごく良かったです!
なんといっても、坂口さんと華の関係性が、魅力的でした。どちらのキャラもとても好きになりました。二人の心のつながりにも、感動がありました。素敵な作品をありがとうございます!