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きせき

エピソード13-玄色の刻-(脚本)

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〇黒
  玄人。本名、玄田真人。

〇配信部屋
  明石青刻の専属使用人。

〇タクシーの後部座席
  元・タクシーの運転手だったが、売上強盗に遭い、
  その際に負傷。
  その後、完治し、職場復帰したものの、
  不景気や負傷時のトラウマ、復帰後の同僚の陰口等、
  様々な要因にて退職。
  そして、退職直前に、明石青刻に出会ったのも
  彼の退職を後押ししたという。
明石青刻「すみません。このお金で、行けるところまで行ってもらえます?」
玄人「え?」
  まるで、ドラマか映画でしか見ないような
  そんなシチュエーション・・・・・・。
  彼の手には
  我が国の偉人が10000という数字と共に1人いた。
明石青刻「あの、もしかして、足りない? だったら・・・・・・」
玄人「あ、いえ・・・・・・。どちらの方向とかご希望はありますか?」
明石青刻「ああ、方向ねぇ〜。じゃあ、西かな。夕陽に向かって走って、お兄さん」
玄人「あ、はい。かしこまりました」
  かれこれ、3年程。タクシー運転手をしてきたが、
  なかなかする体験ではないだろう。
  とにかく、玄田は青刻の希望通り、西へ西へと
  タクシーを走らせる。
明石青刻「お兄さんって運転上手だね。丁寧な感じする」
玄人「あ、ありがとうございます」
  タクシーを運転するには一種免許ではなく、
  二種免許が必要だ。
  しかも、玄田は地理試験も受けて合格していて、
  タクシー会社で独自に実施されているマナー講座も
  非常に良い結果を修めていた。
明石青刻「お兄さん、玄田真人さんっていうんだね」
玄人「えぇ、祖父曰く、真っ直ぐな人生を、ということらしいです」
明石青刻「へぇ、お爺さんにつけてもらった名前なんだね」
明石青刻「僕は明石青刻。青に時刻の刻って書く。赤いか青いか、はっきりしない名前だよね」
玄人「いえ、赤は情熱的ですし、青はクールですし、素敵な名前じゃないでしょうか」
明石青刻「はは、お兄さんって何って言うか、良い人だよね」
玄人「そう、なんでしょうか?」
明石青刻「うん、真面目そうだし、誠実そうな感じで良いんじゃないかな?」
玄人「・・・・・・」
  誠実。そんなものが何になるのだろうか、と
  玄田は思う。
  誠実であれば、不幸にならない。
  誠実であれば、幸せになる。
  そんなことは関係ない。
  負け組はどこまで行っても、勝つことはないのだ。
明石青刻「お兄さんってさ、今のお仕事ってどう?」
玄人「どう・・・・・・って言いますと?」
明石青刻「うーん、楽しいか。楽しくないか、とか?」
明石青刻「辛いでも良いし、やりがいあるとかでも良いし、何でも」
玄人「・・・・・・」
  なんて答えるのが正しいのか、
  今の玄田には分からなかった。
  仕事なんて楽しいものじゃない。
  未だに夜道を走っていたら、震えそうになることもある。

〇タクシーの後部座席

〇休憩スペース
タクシー運転手A「なぁ、聞いたか? 玄田、また運転できないらしいぞ」
タクシー運転手B「ふーん、やっぱり、あの件で?」
タクシー運転手A「さぁな、まぁ、気の毒ちゃ気の毒だけど、もう続けられないのなら辞めたら良いのに」
タクシー運転手B「ああ、この業界は甘い業界じゃない。手当目的なのは俺らだって良くは思わんさ」
タクシー運転手A「全くだな・・・・・・あ、呼び出しだから行くわ」
タクシー運転手B「ああ、俺は帰るよ。じゃあ、また明日・・・・・・」

〇タクシーの後部座席
明石青刻「玄田さん、玄田さんっ?」
玄人「はいっ!! あ、仕事、どう思ってるか、でしたっけ?」
明石青刻「あ、それもあるけど、10000超えてる」
玄人「あ、すみません。9000円超えると、1割引になるんですよ」
  玄田はそう言うと、
  タクシーをきっかり1万円で行けるところで停める。

〇海辺
明石青刻「海だ・・・・・・」
玄人「えぇ、海ですね」
明石青刻「・・・・・・」
玄人「・・・・・・」
  2人が話さなくなると、辺りは波の音しか聞こえなくて
  時折、バイクの走り去る音が聞こえるだけだった。
玄人「すみません、ここじゃあ、タクシーが拾いにくいし、泊まるところもないですね」
  大通りまで戻りましょうか、と玄田はタクシーに乗る。
  だが、青刻はタクシーに乗ろうとしない。
玄人「あの・・・・・・」
明石青刻「ねぇ、僕って朝兄さんや東兄さんみたいに車を運転するのって好きじゃないんだ」
明石青刻「趣味で運転するのに時間を割くくらいなら引きこもって駄作ゲームでもやってた方がマシ」
明石青刻「だから、玄田さん。僕の運転手さんにならない?」
明石青刻「まぁ、今の仕事を辞めたくないなら、断ってくれて構わない・・・・・・」
玄人「運転手、なります」
明石青刻「けど・・・・・・って良いの? 給料とか、休みとか聞かなくて・・・・・・」
明石青刻「まぁ、今のところよりは悪いようにはしないつもりだけどさ」
玄人「ええ」
玄人「必要・・・・・・とされていないところより、されるところにいけた方が良いです」
玄人「必要・・・・・・としてくださいますか?」
明石青刻「うん、分かった。じゃあ、次の行き先に向かおうか」
玄人「はい」
  青刻が言った「次の行き先」はなんと玄田の務める
  タクシー会社で、玄田は会社を辞めた。

〇華やかな広場
  そして、後日・・・・・・。

〇配信部屋
明石青刻「やぁ、待ってたよ。玄人君」
玄人「玄人君?」
明石青刻「うん、玄田さんじゃ堅くない? げんだんとか、まひまひとか色々、考えたけど、」
明石青刻「玄人くんって良くない? こう、達人って感じで」
玄人「ふふ、そう・・・・・・ですね。これから、青刻様の運転手、頑張りますね!!」
明石青刻「うん、よろしく。じゃあ、プレイヤー名・玄人。ゲームを始めよう!!」
玄人「は、はい。青刻様」

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(青刻さんの専属使用人が玄人さんの採用後、)」
黒野すみれ「(すぐに退職したことから玄人さんが彼の専属使用人も兼ねることになった、か)」
  私は『玄田真人について』と書かれた封筒に入っていた
  資料を読んでいた。
  ちなみに、今でこそ売上強盗の時よりはマシになったが、
  ナイフや包丁等の刃物は苦手なようで、
  毒なんかも入手がしやすいという人物
  という訳でもなかった。
黒野すみれ「(あぁ、だから、手が震えてたのかな?)」
  食事用の、しかも、フィッシュナイフはそんなに
  刃が鋭いという訳ではない。
黒野すみれ「(それなら少なくとも、無理な罠や襲い方がある)」

〇古民家の居間
  胡蝶庵の玄関を開けると、現れる
  お茶室を思わせる空間のナイフが飛んでくる罠。

〇貴族の部屋
黒野すみれ「(それに、夕梨花さんを見ていた時に私の背後にいた人とも違う)」
  ナイフなのかは背後だったので、はっきりしないが、
  鋭い刃先で突き刺されたような感覚だった。
黒野すみれ「(でも、彼にも怪しいところがない訳じゃない)」
  例えば、初めて、胡蝶庵で彼と会った時だ。

〇古民家の居間
  ガラガラガラ
黒野すみれ「(だ、誰!?)」
玄人「失礼しま・・・・・・あ、黒野様・・・・・・」
  ガラガラと戸を開けて、入ってきたのは紙袋を持った
  玄人さんだった。
黒野すみれ「玄人さん・・・・・・?」
玄人「はい、玄人です。って、本当にいらっしゃるとは思わなくて、すみません」
玄人「びっくりしてしまいました」
黒野すみれ「私が本当にいるとは思わなかった、って?」
玄人「ええ、実は、青刻様にここに黒野様がいるから貴方の手伝いをしてくるように、と」
玄人「頼まれてやって来ました」
玄人「ただ、ここは先日まで立ち入り禁止だったもので、本当にいらっしゃるかは半信半疑で」
黒野すみれ「・・・・・・そうなんですね」
玄人「それに、どうやら、ここに青刻様が受け取る筈の荷物が間違って届いてしまったらしくて」
玄人「それを取りにきたというのもあります」
  玄人さんはそう言うと、
  ある像の写真を私に見せてくれる。
玄人「像に見えますが、オルゴールだそうです」
玄人「何でも、ご友人に修理を頼まれたらしいのですが、待てど暮らせど青刻様の元に来なくて」
玄人「こちらに誤って届いていることが分かったんです」
玄人「青刻様はああ見えて、面倒見も良いし、手先も器用でして」
黒野すみれ「・・・・・・」
  私は怪しさ半分、怪しくなさ半分で、玄人さんの
  探し物を探しながら、部屋も探索する。

〇屋敷の書斎
黒野すみれ「あ、これじゃないですか?」
玄人「あ、はい。青刻様と名前があって、送り主も聞いていた方と同じ名前です」
  ありがとうございます、と箱を受け取る玄人さん。
  だが、彼はとんでもないことを言い出す。
玄人「あの、黒野様。電気をつけられた方が良いのではないでしょうか」
  勿論、電気をつけてしまうと、謎の爆発に巻き込まれ
  私も彼も死ぬだろう。
黒野すみれ「いや、電気はさっき、つけようとしたら、つかなくて。だから、つけなかったんです!!」
玄人「ああ、そうだったんですね」
玄人「あ、すみません。仕事のメッセージが・・・・・・」

次のエピソード:エピソード14-玄色の刻-

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