ハルのセカイ。

saburou.g

エピソード1(脚本)

ハルのセカイ。

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〇黒
  ーーハル。
  さあ、ゆっくりと目を開けてみなさい。

〇草原の道
???「ああ。見える」
???「でも、キミはヒトじゃないよね?」
  どうして分かるの?
???「あははっ。そりゃ分かるよ。 ヒトは『自分はヒトに見えますか?』なんて質問は普通しないからね」
  うっ・・・・・・、そうかも
???「キミは、ヒューマノイド?」
  うん
  でもわたし、いつか本物のヒトみたいになるのが夢なんだ
  本物のココロを持っているロボットが出てくる映画とかって、よくあるでしょ?
  わたしもいつか、あんなふうになりたい
  もっとヒトらしくなって、ヒトとなんの隔てもなく一緒に過ごせるようになれたら。
  すごく素敵だなって思うんだ
???「ああ。すごくいい」
???「そんな時代が、セカイが。 いつか、きっと──」

〇黒
  ーーねえ。
  わたし、『ヒト』に見える?

〇近未来の手術室
ハル「・・・・・・」
ハル「・・・・・・」
ピッキ「ハ、ハル・・・・・・。 俺様の事、見えるか?」
レジー「あたしは? ちゃんと分かる?」
ハル「・・・・・・!」
ハル「ピッキ! レジー!!」
ピッキ「よっしゃー! ハル、心配したんだからな!」
レジー「アップデートは無事に終了ね! おめでとう、ハル!」
レジー「これで今日からあなたは『ヒト』の仲間入りね!」
ハル「ありがとう。 すごくうれしい」
ハル「うわっ、指がこんなにある!」
ハル「しかも、全部動く!! すごい、すごいよ〜!!」
アイリーン「どうですかハル。新しい身体は。 気になる点や不快感はありますか?」
ハル「先生! ありがとうございます! バッチリ快調です!」
アイリーン「それはよかった。 よく頑張りましたね」
ハル「あっ、でも、少し気になる事がありました」
ハル「アップデートの間、頭の中で誰かと話をしていた気がするんです。 おぼろで、内容はよく憶えてないんですけど」
ピッキ「それって、『夢』ってやつじゃないか!? すげー! さすがヒトだぜ!!」
ハル「あれが、夢・・・・・・」
アイリーン「ハル。ヒトになると、日々様々な変化や発見があります。 これから、少しずつなれていきましょうね」
ハル「はい!」
ハル(夢・・・・・・。 確かに初めての感覚だったけど)
ハル(でも、不思議。 なんだかなつかしくて、とても切ない気持ちになった・・・・・・)
アイリーン「さて、あなたたちも! ハルの事を喜んでばかりでなく、しっかり勉強して、早くヒトになりなさい!」
ピッキ「や〜い、怒られてやんの!」
レジー「あんたもでしょ!」
アイリーン「まったく」
アイリーン「ハル! このふたりの事は頼みましたよ!」
ハル「はい! みんな、頑張ろうね!」
「やるぞ〜!!」

〇黒
  このセカイでは、たくさんのイキモノが力を合わせて暮らしています。

〇綺麗な図書館
ハル「んーと・・・・・・」
ハル「あっ、いたいた!」
ハル「ニン〜!!」
ニン「あっ、ハル。 びっくりしました」
ニン「その様子だと、新しい身体にはすっかりなれたみたいですね」
ハル「うーん、前よりよく転ぶようになったよ」
ハル「足が車輪だった頃がなつかしい・・・・・・」
ニン「ふふ。転ぶハル。 見たかったです」
ニン「動画に撮って、何度もリピートしたらとっても楽しそうですね」
ハル(ニンの前では転ばないように気をつけよう)
ニン「ところで。今日はどんな用事ですか?」
ハル「うん。 今日はね、ニンに『おすすめの本』を紹介してもらおうと思って来たの」
ニン「えええ!? ハルが本!? どういう風の吹き回しですか!?」
ニン「勉強する時はいつもコンピューター。 『本なんて古くさいもの触りたくもない!』ってあれほど言ってたのに」
ハル「確かに本は好きじゃないけど、そこまでは言ってないでしょ」
ハル「ほら、わたしもヒトになったからさ。 これからはいろいろな方面、分野から知識を得るのもいいかなって思ったの」
ニン「なるほど。それはいい心がけですね」
ニン「ですが、いきなり難しい本に手を出すのは、やや無謀な気がしますよ?」
ハル「う・・・・・・、そうかも」
ニン「まずは、簡単なものから。 ああ、『まちがいさがし』の本なんてどうです?」
ニン「あと、『めいろ』の本なんかもおすすめです。 楽しいですよ〜」
ハル「も〜、バカにして!」
ハル「いいよ、ニンも読めないような、めちゃくちゃ難しい本を読破しちゃうからね!」
ニン「頑張ってくださいね〜」
ハル「ふう」
ハル「とは言ったものの、いきなりこんな分厚い本読んだら頭壊れちゃいそう」
ハル「見栄なんて張らず、やっぱりニンの言う通り、最初は簡単な本からにしとこうかな・・・・・・」
ハル「・・・・・・」
ハル「ん? あの本、棚から落ちかけてる」
ハル「う、届かない・・・・・・。 あと少し・・・・・・あっ!」
ハル「落ちちゃった・・・・・・。 ずいぶん古い本」
ハル(なんだろう、このメモ。 インクがにじんでて・・・・・・これもかなり古いものみたい)
  ーー私は、罪を犯した。
ハル「罪・・・・・・?」
  私は浅はかだった。
  このままでは、やがてセカイは滅びてしまう。
  そうなる前に、私は自らの意志でこの世を去ろう。
  我々は、ヒトにはなれない。
  なってはいけない。
  なろうとしてはいけない。
  もう2度と。
  あのような悲劇が起きぬ事を願う。
  
  A-ハーレン.
ハル「何、これ。 どういう事?」
ハル「なんなの・・・・・・?」
ニン「ハル! どうですか? いい本は見つかりましたか?」
ハル「ニン・・・・・・」
ハル「・・・・・・」
ハル「ねえ、ニン。 『A-ハーレン』ってヒト、知ってる?」
ニン「いえ、聞いた事のない名前ですね。 ただ、かなり昔のヒトだとは思いますよ」
ニン「名前の前のアルファベットは、おそらく階級の類いでしょう。 かつて、そのような文化があったはずです」
ニン「中でもAは、最高クラス。 きっと、とてつもなく優秀なヒトだったのでしょうね」
ニン「そう、このわたしのように!」
ハル「ニンってば・・・・・・」
ハル(でも、物知りのニンが知らないなんて不思議。 有名なヒトではなかったのかな)
ハル(うーん、気になるな・・・・・・。 誰か知ってる人がいればいいんだけど)

〇近未来の通路
ハル「・・・・・・」
ハル(あのメモ、持って来ちゃった)
ハル(我々は、ヒトになってはいけない・・・・・・か)
ハル(いったい、どういう事なんだろう。 わたしたちは、皆ヒトになるために毎日一生懸命頑張ってるのに)
ハル(なんか、怖くなってきちゃったよ)
アイリーン「あら、ハル。お疲れさま」
ハル「先生。お疲れさまです」
ハル(よかった・・・・・・。 先生の顔見たら、ちょっと安心した)
ハル(そうだ。 先生なら、何か知ってるかも)
ハル「あの、先生。多分昔のヒトだと思うんですけど。 A-ハーレンって方、ご存知ですか?」
アイリーン「・・・・・・」
アイリーン「どこで、その名前を?」
ハル「あ、えっと・・・・・・! どこだったかな・・・・・・」
ハル「なんか、誰かがそんな名前を言っていたような、気が、して・・・・・・」
アイリーン「では、もし思い出したら、その者をわたしの元へ連れて来なさい」
アイリーン「そして、あなた自身はその名を2度と口にしない事。 いいですね」
ハル「分かり、ました・・・・・・」
ハル(先生のあんな顔、初めて見た・・・・・・)
ハル(先生は、何か知ってる? 昔、いったい何があったの?)
ハル(わたしは、どうすればいいの・・・・・・?)

〇研究所の中
  勉強したり、運動したり。
  お仕事をしたり、遊んだり。
  そうして、一定以上の評価を得ると、皆『ヒト』になる事が出来る。
  皆ヒトになりたくて、ヒトを目指して頑張っています。

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