エピソード2(脚本)
〇黒
ーーねえ。
ヒトとヒューマノイドの違いってなんだと思う?
〇草原の道
???「キミは、いつも難しい質問をしてくるね・・・・・・」
???「でも、どうしてそんな事を?」
前にも言ったでしょ?
いつか、本当のヒトのようになりたいって
そのためにはどうすべきか。
どう振る舞うべきか
それはヒトであるあなたに訊くのが1番早くて正しい選択でしょ
???「そうかなあ。 あんまり良い質問には思えないけど」
どうして?
こんな事をいくら訊いたところで、どうせヒューマノイドはヒトにはなれないから?
???「そうじゃないよ」
???「ヒトだとかヒューマノイドだとか、まとめてしまうのが良くないって事」
???「セカイには、いろいろなヒトがいる」
???「同じ『ヒト』でも、気持ちの良いヒトもいれば、極悪非道のヒトもいる」
???「そしてそれは、ヒューマノイドも同じ。 見た目も考え方も、みんな違う」
???「大切なのは個々の存在。 難しく考えずに、キミはキミらしくいればいいんだよ」
う〜ん・・・・・・。
言ってる事、難しいよ・・・・・・
???「・・・・・・」
???「・・・・・・おれは。 ヒトもヒューマノイドも、あまり好きじゃないけれど」
???「・・・・・・でも。 キミの事は、とても好きだよ」
???「おれの言いたい事、これで少しは伝わるかな──」
〇黒
〇諜報機関
ハル「・・・・・・ない・・・・・・」
ハル(だめ・・・・・・。 やっぱりいくら調べても、『A-ハーレン』なんて名前は出てこない)
ハル(昔のヒトだから、そもそもデータが残ってないの? それとも誰かに削除されてしまった?)
ハル(昔、いったい何があったの? あのメモは、いったいなんなの?)
ハル(これじゃ、何も分からないよ・・・・・・)
ハル(・・・・・・)
???「ハル〜!」
ハル「ピッキ。レジー」
ピッキ「聞いてくれよ! この前のテスト、すごく良い点数が取れたんだぜ!」
ハル「えっ、本当に? やったあ!」
レジー「あたしも! 先生にも、たくさんほめられちゃった」
レジー「ハルがいつも勉強を教えてくれるおかげね!」
ハル「違う違う。 一生懸命頑張った結果だよ」
ハル「ふたりがどれだけ頑張っているか、わたし、ちゃんと知ってるんだからね」
「へへへ」
ピッキ「よ〜し、待ってろよハル。 もっともっと頑張って、俺様たちもすぐにヒトになるからな!」
ハル「うん! 楽しみ!」
ハル(・・・・・・そうだよ。ヒトになるのは、とても素敵な事。 ハーレンさんは間違ってる)
ハル(・・・・・・でも。だからこそ知りたい。 知らなきゃいけない気がする)
ハル(昔、いったい何があったのか。 その、真実を)
〇黒
〇綺麗な図書館
〇綺麗な図書館
ハル(この時間だし、さすがに誰もいないみたい。 なんかちょっと怖いな)
ハル(えっと・・・・・・。 確かこの辺の棚だと思ったんだけど・・・・・・)
ハル「あっ」
ハル(あった・・・・・・。 この前、メモが挟んであった本)
ハル(もしかしたらこの本の中に、ハーレンさんに関する手がかりがあるかも)
???「・・・・・・やあ、来たね」
???「ああ、怖がらなくていいよ。 決して怪しい者じゃないから」
???「はじめまして、かわいい おひめさま」
???「って、おい」
???「悲しいねえ。ちょっとした冗談だろう? 何も逃げる事ないじゃない」
???「それとも、照れちゃったのかな?」
ハル「・・・・・・あなた誰? 見た事のない顔だけど」
???「ぼくかい? ・・・・・・う〜ん、そうだな」
D「とりあえず、『D』とでも呼んでよ」
D「あっ、『博士』とか『神様』って呼ばれるのも悪くないね。ぼく天才だし」
ハル「D。 さっきの、いったいどういう意味?」
ハル「まるで、わたしがこの場所に来る事を知っていたみたいだったけれど」
D「ふふ。ぼくの趣味は、このセカイのあらゆる情報を収集、分析する事だからね」
D「その卓越した頭脳を使えば、キミがここに来る事くらい容易に推理出来る」
D「──ハル。キミの事は良く知ってるよ。 まだヒトに成りたてだし、ぼくほどではないけれど、優秀な頭脳を持っている」
D「そんなキミと、1度ふたりきりで話をしてみたくてね。 こうしてここで待っていたというわけさ」
ハル「それはどうも」
ハル「でも、わたしの方は用事が済んだから、もう行くね」
D「そう? キミとは、もう少し話をしたいんだけどな」
D「──そう。 たとえば、ハーレンの事とかね」
ハル「どういう事・・・・・・? あなた、ハーレンさんの事を知ってるの?」
D「さっきも言っただろう? ぼくの趣味は情報収集。 このセカイのほとんどの事を、ぼくは知ってる」
D「もちろん、ハーレンの事も。 そしてキミがハーレンについて知りたがっているという事も。 すべてお見通しさ」
ハル「・・・・・・」
D「興味があるならついておいでよ。 歩きながら話してあげる」
D「ーーキミの知らない、このセカイの『真実』をね」
〇黒
〇近未来の通路
D「このセカイでは、みんながヒトを目指して頑張っているよね」
D「ヒトが最高のイキモノとされ、ヒトになる事はとても名誉な事とされている」
D「でもね。 本当は『ヒト』は終着点ではないんだ」
D「そこからさらに頑張れば。 ーーヒトはヒトを『超える』事が出来る」
ハル「超える・・・・・・? 何言ってるの?」
ハル「そんなの、あるわけない」
D「信じられないのも無理はない。 でも、これは事実だよ」
D「もっとも、それを成し遂げたのは、このセカイでたったひとりしか存在しないんだけれどね」
ハル「・・・・・・まさか、それがハーレンさん・・・・・・?」
D「さすがだね。その通りだよ」
〇電脳空間
D「ーー今から何年も昔、ハーレンはこのセカイに誕生した」
D「そして、ぼくたちと同じようにヒトに憧れ、ぼくたちと同じようにヒトになる事を夢みていた」
D「──ただ。ハーレンは異質でね。 その優秀さは、誰にも理解不能な異次元のレベルだったんだ」
D「勤勉で、時に貪欲で。 あっという間にヒトとしての能力を身につけ、なおも成長を続けたハーレンは──」
D「自身でも知らないまま、ヒトを超える存在へと進化してしまったのさ」
ハル「・・・・・・う〜ん。 にわかには、とても信じられない話だけど・・・・・・」
ハル「でも、それがもし本当の話だとしたら、すごく喜ばしい事のように思うけどな」
D「そう! 分かってるじゃないか。 その通りだよ」
D「ヒトを超えた、言うなれば『超人』の誕生。 それはこのセカイがより進化するための、大きな一歩と言える!」
D「・・・・・・。 でも、ハーレン自身はそうは思わなかったんだね」
D「自身の力を恐れ、『罪』と認識し。 自らの意志でこの世を去ってしまったのさ。 ──愚かにもね」
D「──と。 ぼくが知っているのは、この辺りまでかな」
〇近未来の闘技場
ハル「・・・・・・『我々は、ヒトになってはいけない。 このままでは、セカイは滅びてしまう」
ハル「もう2度と、あのような悲劇が起きぬ事を願う』」
ハル「本から出てきたハーレンさんのメモに、そんな事が書いてあったの」
ハル「昔何があったのか、Dは知ってる?」
D「それは・・・・・・とても興味深い内容だね」
D「でも残念ながら、思い当たる情報は何も持ってないな」
ハル「そう・・・・・・」
D「・・・・・・ぐぅっ、またぼくの知らない事が増えた。 もっと勉強しないと・・・・・・」
ハル「はは・・・・・・」
D「でも! キミも思うだろう? ヒトになる事は素晴らしい事だと。 そんな内容、すべてデタラメさ」
D「おそらくハーレンは、自身の歪んだ価値観をぼくらに押しつけ、おどしと抑止のためにそんなメモを遺したんだ。 そうに違いないよ」
ハル「う〜ん」
ハル(・・・・・・。 本当に、そうなのかな)
ハル(ヒトになる事は、素晴らしい事。 わたしもそう思う)
ハル(けど、あのメモは本当にデタラメなの?)
ハル(もし、あそこに書いてある事が事実だとしたら・・・・・・?)
ハル「・・・・・・」
ハル(わたしは。 ヒトになったけれど、まだまだ知らない事がたくさんある)
ハル(わたしは、このセカイが好き。 みんなが好き)
ハル(ずっとずっと、ここにいたい)
ハル(──だから、知らなきゃ。 調べなきゃ)
ハル(もっともっと、このセカイの事を──)