邪神の首斬り(リストラ)特派員

鷹村アキラ(ゆた)

リストラ対象『どるぷ課』(脚本)

邪神の首斬り(リストラ)特派員

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〇中世の街並み
  人が心から行動を起こす時。
  そこには、信念を支える『納得感』が
  必要だというのがアルマの考えだ。
アルマ「正義感とか、親切心だとか・・・」
アルマ「自分が納得できるものを 握りしめてたいだけなんスよ・・・・・・」
アルマ「ひゃっ・・・!」
  隠れた壁の向こうからは、怒号と絶叫と
  化け物じみた咆哮が轟いていた。
  何かの繊維がちぎれる音。
  戦意を喪失した悲鳴。
  殺戮者から被害者への遷移は
  いっそ哀れだ。
アルマ「やだなぁ・・・ 怖いなぁ・・・」
アルマ(何で自分 こんな場所で こんなことしてるんスかね)
アルマ(自分にとっての納得感って なんなんスかね)
アルマ(もし一億円あったら こんな目に遭ってないっすかね)
アルマ(・・・一億円当たったら 何に使おうかな・・・)
ガラ「逃げろ悪魔ァ!」
「びゃい!!!」
アルマ(ひ、ひどい・・・! こんなのくらったら人間は・・・)
ガラ「せいっ」
アルマ「無傷!?」
ガラ「流石にちったァ骨あんな・・・」
ガラ「・・・まぁいい。来いよ」
ガラ「てめぇが最後だ」
  それは、魔物だった。
  体長5mほどの奇怪な生き物。
  ナメクジのように
  全身からどろどろと赤い粘液を垂れ流し
  甘さと酸味の混じった異臭を放ちながら
  高速で床を這い回る異形。
アルマ「殺された魔物を食って また大きくなってる・・・!」
ガラ「面白ェ、上等だ」
ガラ「悪魔ァ゛!」
アルマ「あいあいさーです!」
アルマ(この怒鳴り方・・・!)
アルマ(大技撃たせろって意味だ・・・!!!)
  震える指で、印を結ぶ。
  恐怖に乾いた喉で、魔術を紡ぐ。
アルマ「まぜらぎ、ばさなん どうぎら、ゔぉんざん がんじゃら、がっさい・・・」
アルマ(わわっ! やっぱりこっちに来た!)
アルマ(でも、詠唱止めるわけには・・・!)
アルマ(魔物に食われるより ガラさんに殴り殺される方が早い・・・!)
アルマ「じゃごんど、ざぎらん!」
  呪文が完成すると同時に、
  男が地面を蹴り、大きく身体を捻った。
  凶悪なまでの筋肉バネを乗せた拳が
  セットされる。
アルマ「な、なむさん!」
  魔術をまとう鉄拳が打ち出された瞬間。
  化け物の半身が、見事に消し飛んだ。
  ぼたぼたと青い血の海を降らせながら
  化け物の半身がのたうつ。
  赤い粘液と青い血液が混ざって
  紫色のマーブル模様が床に広がっていく。
  時折ジュウジュウと音がするのは、地面が溶解しているせいだろう。
ガラ「まだ動きやがる しぶてぇな」
  男の軽い蹴り一発で
  魔物が灰となって消滅する。
アルマ「ふ、ふぇ・・・」
アルマ「腰抜けた・・・」
アルマ(思い出した・・・ 自分の、『納得感』・・・)
アルマ(こんな場所で こんなことしてる、理由・・・)
アルマ(この人が強すぎるから・・・)
アルマ(言うこと聞かなきゃ死ぬ、って 『納得』させられたんだ・・・)

〇森の中
  アルマが魔界から
  生者の世界へ登ってきた最初の日。
  アルマは
  一人の男に遭遇した
ガラ「・・・お前が、次の悪魔か?」
アルマ「うぇ!? 何のことッスか!?」
アルマ「自分はあの ただの通りすがりで・・・」
アルマ(なんで悪魔ってバレたッスか!? それに、「次」・・・って・・・)
アルマ(この人間、一体・・・)
ガラ「ゴタクはいい 俺に契約をよこせ」
アルマ「え、えぇ!?」
ガラ「さっさと俺を 「魔女」にしろっつってんだよ!!」
アルマ「あ、あの・・・」
アルマ(・・・マズイっす)
アルマ(「悪魔であることはあくまでナイショ」 「契約する相手は、悪魔たる自分が選ぶ」)
アルマ(その他諸々・・・ この一瞬で規則違反がいっぱい・・・)
アルマ(・・・こういうときは逃げるに限るッス!!)
アルマ「あの・・・何のことかわからないので 自分はこれで・・・」
ガラ「・・・チッ」
ガラ「おい、これ見ろ」
  そう言って男は、上着を脱ぎ
  自分の腕を見せた
  人間には、ただの腕にしか見えない光景。
  だが、アルマの目には
  無数の刺青がびっしりと見えていた。
アルマ(あれっ!?どういうこと・・・!?)
アルマ(この刺青、物理次元の肌には 彫られてない・・・)
アルマ(生者の物理原則じゃなくて 魔次元の層が肌を覆ってる・・・!!)
アルマ(それに、この刺青・・・! これは・・・!)
アルマ「あなた、魔物殺しの魔女ッスか!?」
アルマ「魔女っていうか 魔男ってか魔王って感じッスけど!!」
アルマ「あーでも流石にまおとこだと 語感サイアクッスよね!?」
ガラ「・・・何言ってんだお前は・・・」
ガラ「とにかく・・・ もともと組んでた悪魔が死んで困ってんだ」
ガラ「俺と契約して魔女に戻してくれ」
アルマ「あの・・・ 契約はあくまで悪魔が主導で・・・」
ガラ「いいからサッサとしろ テメェどう見たって新人だろうが」
アルマ「ギクッ」
ガラ「さっさと業績上げて 円滑にリストラ進めてェんだろ?」
アルマ「・・・内部事情詳しいッスね・・・・・・」
アルマ「そうッス・・・自分は 生者の世界に来たばっかの新人で・・・」
アルマ「魔物のリストラ計画を 進めていかなきゃいけないので・・・」
アルマ「生者の世界で手助けしてくれる・・・ 「物理次元」の人間と・・・ 契約する必要があって・・・」
ガラ「契約規則なら知ってる いちいち読み上げんな面倒くせェ」
アルマ「ミランダ警告慣れした 歴戦の犯人ッスか・・・」
アルマ(でも、あのえげつない刺青の数・・・ それだけ多くの 魔物を殺せたって証だ・・・)
アルマ(逃げるのも・・・ 無理そうだし・・・)
アルマ「えーいままよ・・・!」
アルマ「あなたと契約 結ばせてもらうッス〜〜!!」
ガラ「・・・そう来なくっちゃな」
アルマ「ここに契約を! 汝を魔女と化す、悪魔の契約を交わす!」

〇中世の街並み
アルマ(あのときの判断は 間違ってなかった・・・)
アルマ(魔次元への適合率も高いし メンタルもフィジカルも、ずば抜けてる)
アルマ(だから自分は『納得』した・・・)
アルマ(・・・まぁ、ちょっとかなりだいぶとても 想定外の強さではあるッスけど・・・)
ガラ「さてと・・・」
ガラ「あぁ、あったあった」
ガラ「じゃ、いただきます・・・」
  男は宝石を口の中へ放り、ゴリゴリと咀嚼し始めた。
  男の身体に新たな刺青が浮かび上がる。
  右上腕、紫色の刻印。
アルマ「・・・う、わ・・・ ァ、ァア・・・ッ」
  アルマの心臓がどくりと高鳴った。
  全身の血が沸騰し
  力が増幅していくのが分かる。
アルマ「ふはっ・・・ァはッ・・・♪」
アルマ(力が、流れ込んで来る・・・! この高揚!この勝利!!!)
アルマ(すごく・・・すごく・・・!!)
ガラ「おい」
アルマ「は、・・・・・・ハイッ!!!!!!!!!」
アルマ(しまった・・・! 返り血まみれのステゴロモンスターの前で うっかり恍惚しちゃって・・・!!)
ガラ「お前な・・・」
アルマ「ヒッ・・・!!」
  ぽん、と
  ガラは軽く、アルマの背を叩いた
アルマ「え・・・?」
ガラ「逃げずに詠唱してくれてあんがとな おかげで助かった」
ガラ「今ので全部か?」
アルマ「は、ハイ!」
アルマ「今のが『どるぷ課』の課長さんだったので 今日最後の、討伐対象社員ッス」
ガラ「良かった 流石にもう限界だ。すーげぇ眠ィ」
ガラ「じゃ、また明日な お疲れさん」
アルマ「あ・・・ おつかれさんッス・・・!」
アルマ(・・・おっかない、だけの人でも ないんだよなぁー・・・)
アルマ「さてっ 明日もリストラがんばるか・・・!」
  新人悪魔、アルマ
  歴戦の魔女、ガラ
  これは、邪神のリストラを請け負う
  特派員たちの物語だ

次のエピソード:リストラ対象『しれど課』

コメント

  • いいコンビですね!
    馴れ初めの話もおもしろかったです。
    この世界での魔力って、悪魔と契約してから使えるんですね。
    アルマさんも、ちょっと怖いけど優しい人と契約できてよかったです。

  • 魔物のリストラ!斬新な設定で面白かったです!
    ミランダ警告慣れ...ツッコミのセンス最高です!

  • やたらと詳しいですね…。
    二人のやり取りもとても面白いですし、なんだかんだで二人で上手くやっていける良いパートナーになるのでは?と思ってしまいました!

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