魔王様!その娘は人間だしスパイだし男です!!

千博

第一話 魔王様、告白する(脚本)

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〇教室
魔王カオス「お前に惚れている、 吾輩の恋人になってくれ」
  ―――ビリッ
天音「無理」
  吾輩が三夜寝ずにしたためた恋文が勢いよく二等分された。
魔王カオス「な、何故だ!」
天音「・・・はぁ?」
  破り捨てられ、情けなく落下する吾輩の想い。
  そんなもの微塵も気にすることなく、
天音「・・・自分で考えれば?」
  此方の顔を見ようとすらしない傲慢な返事と共に、魔界で最も美しい少女は教室を去った。

〇要塞の廊下
  ―――三日前―――
  ここは魔界唯一の学校である。
  若き魔族達が共に過ごし、己の能力や野望を見詰めなおし研鑽を積む場所だ。
  そして吾輩はこの世界を統べる権限を持つ魔王族の跡継ぎ『魔王カオス』。
  学内で最も強く、野心家で、強欲なエリート魔族だ。
  魔界全土を統べる大魔王の称号を持つだけでなく、人間界征服を完了させた偉大なる我が父上。
  そんな父上に見劣りしない立派な大魔王となるべく、この学園で日々修行を重ねている。
魔王カオス(・・・筈だったのだが)
モブ魔族女子生徒A「あの子、全然魔力を感じないよね」
モブ魔族女子生徒B「羽も角もないし、身体だって平凡過ぎ」
モブ魔族女子生徒A「気味悪い、一体なんの魔族なのかしら?」
天音「・・・・・・」
魔王カオス「か、可愛い!!!!」
魔王カオス(・・・しまった。 己の立場を改めることで心を律するつもりが、つい乱心した)
  仕方ない、それほどまでにあの少女は可愛らしい。
  くそっ、吾輩は大魔王の名を継ぐに相応しい男になる為にこの学園にいるのに
  あの少女を一目見てからは彼女のことばかり考えてしまう。
天音「陰口、聞こえてるんだけど。ボクに何か文句でもあんの?」
  小柄な彼女は女生徒達を睨みつける。赤子程度の魔力すら感じられないひ弱な少女にもかかわらず毅然とした態度。
  あぁ、なんと気高く美しい。
魔王カオス(いやいやいや、そんな事を考えている場合ではない!)
  確かに学校生活は将来吾輩が大魔王に君臨した際の妃に相応しい女を見定めたり、
  宰相や魔王宮騎士団長に値する優秀な人材を探す目的もあるが、それらは全て能力を重視しなくてはいかん。
  太々しい態度もクラスで孤立している事も、魔王妃には不適切。
  大体なんだあの軽薄にもほどがある服装は
  ふわふわと軟弱な装飾が不要な程ついているじゃないか、あんなもの自分が可愛いと思い込んでいなければ絶対に着ないだろう。
天音「はぁ・・・影でコソコソ愚痴ることしかできないなんて、お前等雑魚悪魔だな」
魔王カオス「可愛いのは事実じゃないか!!!」
魔王カオス(くそ、なんだ、落ち着け吾輩。 しかし可愛いが過ぎる!軟弱な服が霞む程の愛らしさ!なんだあの生き物は!)
  一体なんの魔族だ?あれだけ美しいのだからサキュバスの系統か?しかし羽は無いな。それに混じり気を感じない見た目だ。
  身体は固体だし変身しているとも思えない、一体・・・いや、考えていても仕方がない。
魔王カオス「もう認めよう、吾輩はあの少女が欲しい。 彼女に惚れている・・・!」
魔王カオス(どうせ魔王の寵愛を断る魔族など存在しないのだから、まずは吾輩の恋人にして、それから色々と尋ねれば良い!)
魔王カオス「よし!ならば直ぐに告白の準備だ。 女魔族の間では人間界でかつて流行していた手紙を用いた愛の告白がブームになっていたな」
魔王カオス「女性の喜ぶ形で愛を伝えるのは魔族の男として当然の掟。 吾輩が最高にセンスのある恋文をしたためてやろうではないか!!」

〇教室
  ・・・というのが先日の話。
魔王カオス「魔王族であり時期大魔王の吾輩が告白を断られるだと・・・何故だ!!?」
魔王カオス「しかも恋文を破り捨てて謝罪も無く去りおった!何を考えているんだ! 許せん!この吾輩を愚弄している・・・!」
  吾輩の想いを踏みにじったあの少女の顔を再び脳裏に浮かべる。
  ・・・・・・
魔王カオス「・・・・・・駄目だ!可愛い!! 嫌いになれぬ!!何者だあの少女は!くそっ!!」

〇本棚のある部屋
  魔界学校寮
天音「・・・はぁ。びっくりした。 なんだ、あのゴツイ魔族。急に告白なんてしてきやがって」
  魔界学校の学生寮が一人部屋で良かった。この広い魔界で、唯一安心できる場所。
天音「何で魔族の男が・・・人間のボクなんかに」
  そう、『人間の男』であるボクが気を緩める事が出来る唯一の場所だ。
  ボクが物心ついた時既に人間界は大魔王の手で支配されていて、人間は魔族へエネルギー提供するだけの存在となっていた。
  非道な扱いと奪われた様々な権利。
  武力では到底勝つことが出来ない魔族への対抗手段としてボクはこの魔界に送り込まれた。
  魔族の子供のフリをして大魔王の弱点を知り、人類は再び自分達の生活を取り戻そうとしている。
天音(つまりボクは、 人間界から魔界へと派遣されたスパイだ)
  潜入に成功したのはボク一人。人類が永遠に搾取され続けるか、一矢報いることが出来るのかボク次第だと言っても過言じゃない。
天音「男に告白された事なんて無かったから、結構ビビったけど。 ボクが人間だとバレてないよなぁ・・・」
  理由があるとはいえ、女装した事をさっそく後悔している。ボクにとって恐怖を抱く事は死に直結する可能性すらあるからだ。
  どうやら魔族は人間の恐怖心をごちそうのようないい香りに感じるらしい。
  恐怖心を抱けばそれだけでボクの正体がバレる。だからなるべく毅然として強気な態度でいなくてはならない。
  弱気な態度を取れば心まで弱気になってしまうから、無理にクールな自分を演じる。
天音「そのせいでクラスでも孤立している気がするけど・・・仕方ないよなぁ」
天音「危険は多いけど、これも全てボクを信じて待っている人類皆の為だ」
天音「身勝手で強欲な魔族共。 絶対ボクが大魔王の弱点を暴いてお前たちの非道なやり方を止めてやる・・・!」
  姿鏡に写る女子の恰好の自分を見て、ボクは再び決意した。

〇魔王城の部屋
魔王カオス「次期大魔王である吾輩の告白をあのような、麗しく気高く想像を絶する愛らしさを持つだけの女が無下にするなんて何たる無礼!」
魔王カオス「しかし吾輩はもうあの少女以外と交際するなどあり得ないと感じている!」
魔王カオス「絶対吾輩はあの少女と親しくなり、恋人・・・ いや、ゆくゆくは大魔王になった吾輩の妃。大魔王妃にしたい」
魔王カオス「絶対に吾輩のモノにするからな、 待っていろ・・・・・・愛しき女よ」

次のエピソード:第二話 魔王様、名前を知る

コメント

  • ストーリー設定が斬新で、会話もテンポよく読めました!続きが楽しみです!

  • 天音ちゃん(?)の設定が驚きのものですね。そんな彼女(?)への魔王カオスの恋心が、一途で情熱的で何だか応援してしまいたくなりますね。そんな2人の恋模様と人間界の未来、どちらも今後が気になります。

  • 誰かに気に入られる事は何処の世界でも決してマイナスな事ではないと思います。ぜひ魔王候補からの絶大な好意を活かし、人間の存続に役立ててほしいです!

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